リリカル For FFXI   作:玄狐

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熱が…ヤヴァイorz


無印期
渇望


 タスケテ―――

 誰か、助けテ―――

 誰カ、聞こエマセんか―――

 ノイズの様な音を聞いた気がした私は目を覚ましました。

 男の子が不思議な塊と戦っている夢、時計を見ると針は6時30分を指しているのに気が付いて、知らないうちに二度寝をしそうになっていた私は飛び起きた。

 髪を部屋の備え付けの鏡で梳かすといつもの髪形に整える。

 桃子さんが何度か髪形を変えたら?と聞いてきたがあの人が褒めてくれた髪形を直す気はない。

 以来、桃子さんに髪を梳かしてもらうのを止め、自分でやるようにした。

 自分で出来たほうが、桃子さんの手を煩わせないですむからだ。

 パジャマのまま、台所に降りると朝食の準備を始める。

 あの時、あの人が『おいしい』と言ってくれてから料理をずっと勉強してきた。

 刃物を使うのにいい顔をしなかった士郎さんだったけど最近、手も切らないし手馴れてきたら何も言わなくなった。

 あの人が練習試合や家に帰ってきたときだけ、あの人にお弁当を作ってもっていく。

 それが何よりの楽しみで、困った顔をしながらもちゃんと食べて感想やアドバイスを聞くと事細かに答えてくれる時間は私にとっての何よりの楽しみだ。

 みんなの分のご飯を作り、できればあの人にいつもお弁当を持っていけたらと考えるが、我が儘は言ってはいけない。

 我が儘を言うとあの人たちは困った顔をする。

 あの人みたいに何をしてくれる訳でもなく、ただ、やめるように言われる。

 イイコダカラガマンシテネ―――

 そうやって、みんなは私にとって魔法の言葉を使う。

 その言葉を使われると、私は人形にならないといけない、一人はとてもさみしいから。

 お弁当を作り終えるころ、桃子さんは翠屋から、ほかのみんなは道場からリビングに集まり朝食を食べはじめる。

 時間にして7時30分ころだ。

 私は一足先にご飯を食べ始めている。

「おはよう、なのは、いつもごめんね」

「ううん、気にしないで桃子さん」

 最初は私が作ると、桃子さんは言っていたがいつからかこの状況が当たり前になった。

「おはよ~、なのは…ううう、私が作れればよかったんだけどなぁ」

「美由希さん、おはよう、無理に作らないで私に任せてね?」

「そうだな、お前が作ると食えるものも食えない。…が、つらいならいいんだぞなのは?」

「自分で作りたいから作ってるんだから、気にしないで恭也さん」

 ひどいよ~と掛け合いをしながらリビングに入ってくる二人を迎える。

 美由希さんは味覚やセンスが壊滅的で、恭也さんは何を思ったのか武道にのめり込んでいるらしく、つらいなら、と言うのものの翠屋のほうで手伝いこそするが家では基本的にあまり、台所に立とうとはしない。

 翠屋の厨房ならたつのに、と、不思議に思うけど、言っても二人を困らせるだけだからそんなことは口にしない。

「おはよう、なのは。娘の美味しい朝食を食べられるなんて幸せだなぁ」

「おはよう、士郎さん。おかわりあるからたくさん食べてね」

 どうやら、私の料理を食べると幸せになれるらしい士郎さんが最後に入ってきて朝食が始まる。

 あら、あなた、口に―――美由希、リボンが曲がってる―――すまないな、桃子―――え、どこどこ?恭ちゃん、なおしてくれる?―――もう、貴女ったら、子供たちが見てますよ―――たく、おまえはてのかかる―――

 二組のペアがお互いに我が儘を言っても苦笑いをしながら受け入れてくれるこの状況で、私も受け入れてもらえるのだろうかと、何度思っただろう?

 何度か、口にしたことがある。

 僅かなりの希望を持って、でも、みんなは苦笑いをするだけで、指摘するだけでしてくれなかった。

 私は、この『家族』の輪において浮いている…。

「ごちそうさま」

 静かに、そう言って食器を下げる。

 みんなは、私の一言に適当な一言をかけると、二人の時間に戻っていく。

 私はいなくても、きっと変わらないのだろう。

 部屋に戻ると窓に飾ってある小瓶を抱きしめ、そっと元の位置に戻すと帽子をかぶり、瓶に向かって一言だけ呟いて家を出掛けた。

 行ってきます、お兄ちゃん―――

 たまに、あの人は家に帰ってきて掃除をして次の日は歩いて学校に行く。

 そんなときは家に明かりがついているので、無理をしてでもお弁当を作ってあの人と学校へ行くんだけど残念ながら帰ってきてはいないのを確認している。

 小さくため息をこぼすとバスに乗り込み、親友の二人と顔を合わせ、挨拶をする。

「おはよう、なのはちゃん」

 静かに微笑みながら挨拶をしてくれるのはすずかちゃん、月村すずかちゃんだ。

 紫がかった髪に透明感のある日本人らしい肌色、大和撫子と言う言葉がよく似合うであろう女の子で

「おはよ、なのは…その分だと、愛しの彼にまた会えなかったみたいね」

 少しからかうような言い方をするのはアリサちゃん、アリサ・バニングスと言うダブルの女の子だ。ヒマワリのような金色の髪に白人特有の白さが際立ち、ビスクドールの様な完成したかわいらしさを持つ女の子。

「おはよう、二人とも…でも、アリサちゃん行き成り意地悪だよ~」

「そうだよ、アリサちゃん。二人で応援するって決めたでしょ?」

「ごめんね、なのは…でも今度試合行くんでしょ?鮫島に言って車を出してもらうから許して、ね?」

「も~、また、アリサちゃんそうやってごまかす~」

「あははは、ごめんてば~」

「うふふふ」

 とりとめない会話、物凄くほっとしてここに居ていいんだと実感する。

 でも、私は二人に釣り合っているんだろうか?

 二人は私に三人でいるからちょうどいい。と言ってくれる。

 不安になる私を支えてくれる。

 だから、という訳じゃないけど、だから、安心して二人といれる。

 願わくば、あの人と三人、一緒に入れることを心から願いながら、私はバスに揺られていった。

 

 

 

 

 

「将来の希望ってなに?」

 お弁当の時間にアリサちゃんはそう切り出した。

 先ほどの社会の授業で気になったのだろう

「私は当然、両親の会社を受け継ぐことよ!」

 宣言するアリサちゃんがまぶしく感じた。

 いずれは、親の手伝いをはじめ小さな分野でいいので任してもらい、そこで自分の力をふるいたい。

 私は何をしたいんだろう?

 私はもう、強く何かしたいと思わない、強いて言えば、態々、私立に通わせてもらった感謝はしないといけない。

 その恩は何らかの形で返すべきなんだろとは思う。

「私は、工学系の勉強をしたいかなぁ?」

 すずかちゃんは、お姉さんにあこがれている。別に変な意味じゃなくて、明るくてはきはきしてていつも笑ってる。

 昔はそんなに、感情を表に出すような感じじゃなかったらしいんだけど、それでも一生懸命、すずかちゃんを気遣って育ててくれたことに感謝しているらしい。

 恭也さんとすずかちゃんのお姉さんが仲がいいので何度かあったことがある。

 そんな二人がとても、私はうらやましい。

 きっと、すごく贅沢なんだろうって思う。

 けど、私の親は心配してくれていたけど、心配してくれるだけだった。

 話をしてくれるけど、聞いてくれなかった。

 私を観てくれるけど、見てくれなかった。

「なのははどうなのよ?」

 いつまでも口を開かない私にアリサちゃんがきいてきた。 

 そう、私は―――

「なにになりたいんだろう」

 自分で作ったお弁当を突きながら、小さくつぶやいた。

「なのは?」

「大丈夫?」

 二人が怪訝な顔をしながら心配して聞いてくれる。

 そう、私は、何がしたいのかわかってないんだ―――

「て、てっきり、あんたのことだからお兄さんのお嫁さんとかだと思ったんだけど?」

 アリサちゃんが慌てた様にまくしたてるのを聞いて確かにとうなずいたすずかちゃんが続いた。

「そうだよね?私もそう思った」

 確かに、それは私の希望。

 あの状況から手を差し出してくれたあの人と一緒ならどんなに幸せだろうと思う。

 でも、だ。

「きっと、お兄さんはそんな風に私を見てくれない」

 美由希さんはもう、胸が膨らんで女性として成長している。

 おっきい、小さいを別にしたってなのはと比べれば差は一目瞭然、中には私たちみたいな小さな子が好きでしょうがない人がいるのは知っているけど、それはとてもいけない事なのは、私でもわかる。

 なにより、怖いのだ。

「もし、私がおっきくなる前に好きな人ができたらきっとその人と一緒になっちゃう」

 それはある意味、当然なんだ。

 私だって、お兄さんと一緒になることを夢に見ない訳じゃない。

 けど、お兄さんはもう17歳、私は9歳と言う年齢の差もある。

 あの人は私が子供だから見てくれる。

 私が大人になったら、もう見てくれないかもしれない、見てくれなくなったら…。

 

 

 

 私は将来―――

 いったい、何を見て、どう生きたらいいのだろう?

 




ちと風邪をひきました、頭やみがおかしいレベルで来てます。


ちなみにこのなのははあくまで『信志という介入を受けてしまった』世界のなのはです。
そのため、原作以上にある種のゆがみを抱えてしまっています。

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