ホシノ先輩が2年前の雰囲気に戻った時の話 作:John.Doe
アビドス廃校対策委員会の面々がアヤネとシャーレの先生のバックアップを背に出発してしばらく。砂漠の中に埋もれる、通信設備らしきものを備えた風化した建物が現れた。
『目的の建物はそれだ。警備も迎撃も無いのが気になる。気を付けて』
通信越しに聞こえた先生の注意喚起に、前線を担当するホシノ、セリカ、ノノミが視線を鋭くする。銃口を扉に向けたまま近づいたホシノが、背後でセリカとノノミのバックアップ体勢が整ったのと同時に扉を蹴りつけた。
「……本当になーんにもいないねぇ。人もオートマタも、幽霊だっていやしない」
蹴り飛ばされた扉が鋼鉄製の床と音を立て、しかしそれ以外の音は一切返ってこない。警備用のシステムさえも動作している気配が無く、地下へ続く梯子がかかる円形の降り口までただの廊下が続いているだけであった。
「ちょっと、本当にここで間違いないのよね?」
『建物の裏に車が止まっていたので、それは大丈夫かと。ホシノ先輩、下はどうですか?』
「……静かだね。ただ、無人って訳じゃない」
最初に梯子を降りたホシノの声色が変わった。戦闘時でさえどこか昼行燈な調子を見せる彼女だが、今は違う。それだけで、下りてきている途中の2人も、通信越しの2人でさえも、緊張感を募らせた。
まるで全員が下りて来るのを待っていたかのように、非常灯だけが点いていた室内に照明が点灯する。照明が逆光になり顔は見えないが、銃と思しきものを手にした人影があった。
「……シロコ、ちゃん?」
その人影の輪郭を見て、ノノミが困惑混じりに漏らす。背丈も、頭部から生える狼のような耳も、彼女そのものであった。しかし纏う気配が、明らかに砂狼シロコのそれではなかったことが、困惑の原因だった。
「ようこそいらっしゃいました。アビドス対策委員の皆様」
丁寧な口調で、しかし嘲りを隠そうともしない男性の声がどこからか反響混じりに聞こえてくる。ホシノはその声に僅かに眉を顰めた。
「ふむ、直接お越し頂いたのは3名のようですが……もう1人はモニターしていらっしゃるのでしょう? それと……同じく見ているはずですね、先生?」
どこから見ているのかは分からない。しかし刺すような視線だけを通信越しでも感じ、呼びかけられた先生の頬を一筋の冷や汗が伝う。
「あの時私は、貴方が切ると思っていなかった手札に後れを取りました。しかし、貴方が思ったよりも適切に手札を切れると言うなら、それを踏まえた上でこちらも手札を切るだけのことです。さあ、貴方の次の「切り札」は一体何ですか?」
挑発するような、あるいは強大な敵へ挑戦するかのような、深奥にある心情の読み取れない言葉。こちらの「大人のカード」という既に使った切り札以上の手札が無い、と確信した上での言葉に、沈黙だけが返答する。
沈黙の間、アビドスの生徒からの縋るような気配と、黒服と思われる男からの嘲笑しているとさえ感じられる気配が、シャーレの先生に全て突き刺さる。
その沈黙の間、意外なことにと言うべきか、シロコに似た人影は一切動きを見せなかった。拘束されている気配はない為、動けないわけではなく動いてない、動かない、といった様子だ。
「先生……いいね?」
『……うん。やれることを、やろう』
先生に切れる手札が無い、と察したホシノは、通信機に短く問いかける。その意味を理解して、先生は答えた。僅かに腰を落としたホシノに続くように、戸惑いと共にセリカとノノミもいつでも動き出せる態勢に構える。
「ええ、そうでしょうとも。貴方達にはそれしか残っていない。しかしよろしいのですか、小鳥遊ホシノ? 貴女にその覚悟があると?」
「うるさいな、少し黙れよ」
集る羽虫を払い除けるような声色で返すとともに、目で追えない程の踏み込みを見せるホシノ。その目的地が自分のところだ、と感じ取ったのか、ついにシロコのような人型が動きを見せる。
「ちょっ、追い切れない……っ!?」
悲鳴のような泣き言をセリカが漏らした。ホシノの踏み込みを躱したシロコらしき影。その互いの1歩目を皮切りに、他の面々が見たことのないような高速での戦闘に突入した。
シロコが動き回りながら射撃戦を行う、というのはここにいる全員の予想の範疇だった。普段からそういった立ち回りをしていたし、体力がある事も知っている。
しかし、ホシノのそれは全くの予想外という程ではないにせよ、ここまでアグレッシブに攻めるスタイルでの戦闘は予想を裏切ったと言わざるを得ない。
セリカとノノミが援護射撃をしようにも、そもそも的を定めることが出来ない。何より人影が「シロコ本人かもしれない」という疑問が、2人のトリガーにかける指を鈍らせていた。
それをよそにホシノ達の戦闘はヒートアップし、遮蔽物の少ない現在地を縦横無尽に蹴りつけて加速することで、互いに照準を定めさせることがない。自身の切り返しの僅かな隙でさえ、発砲によって打ち消していく。もはや何者にも立ち入る事の出来ない空間が生み出されていた。
「……やっぱり、か。ごめんね、こうならないように頑張ってはみたんだけど」
「意味が分からない。何を知っているのか分からないけど、どうでもいい」
どんな意図があったかは本人達にしか分からないが、結果として2人の距離は急速に詰り、ほとんど本能だけで2人は互いの銃を盾にぶつかり合った。
それは即ち、鍔迫り合いのような状態であり、2人の目にも止まらないスピードでの戦闘が一度「静」のタイミングに入ったということになる。
「シロコちゃん……何で……」
引くか押すか、その読み合いで2人が動きを止めたことで、不明瞭だった人影がはっきりとノノミとセリカにも認識できた。勿論、通信越しの2人にもだ。そしてその人影を見て、ノノミが呆然と声を漏らす。
いつもの制服や水色のネクタイではなく、黒を基調としたワンピースドレスのような衣服を纏ってはいるものの。白を基調としたアサルトライフルは形をそのままに黒く変わってしまっているものの。それは確かに、シロコの姿であった。
「シロコ先輩……でも、なら何で!」
「あ……ヘイロー、が……」
シロコと思しき人物の図上に浮かぶ光の環、ヘイロー。それはこの場にいる面々が良く知る水色に光るではなく、深淵を思わせる漆黒であった。更にと言うべきか、辛うじて形を保って入るものの所々が割れてしまい、円形であった、と呼ぶべき状態になってしまっていた。
「ああ、そうそう。私は別に、彼女を洗脳したとか薬漬けで自我を失わせたとか、そんなことはしていませんよ。小鳥遊ホシノさん、貴女なら何となくわかっているでしょう。私は彼女の背を押したに過ぎない」
「そうだろうね……それにしたって胸糞悪い」
ホシノもまた、最早アビドスの面々が良く知る彼女の姿とは違っていた。昼行燈な性格は一切鳴りを潜め、眠気等全く感じさせない鋭い眼光がシロコ越しに背後にいるだろう黒服を睨んでいた。
互いに下手に下がれば不利になると理解している為、銃身を用いた圧し合いは未だギシギシと銃身の悲鳴と共に続いている。シロコとホシノの体格差からは信じられない拮抗だった。
「……とりあえず、私を置いてけぼりに話を進めるなら、消えて」
ホシノの拮抗は手加減されていたものだったのだろうか。押しのけるようにホシノが突き飛ばされ、体勢を整え切る前に銃撃がホシノを襲う。辛うじて展開する前の折りたたまれた盾で銃弾を弾き、応射を試みるも、既にシロコは回避体勢に入っており呆気なく回避された。
「ホシノ先輩下がって!」
無理な体勢での応射で、僅かに立て直しが遅れた。それを感じ取って、セリカが反射的とも言える速度で銃口を向けて引き金を引く。
攻撃の気配にシロコが飛び退き、その隙を使ってホシノはどうにか体勢を立て直した。ノノミとホシノが、シロコに注意を向けながらもセリカの方へ視線を向けた。
「っ、ああもう! やってやるわ、やってやるわよ! ホシノ先輩ばっかりに押し付けられる訳ないじゃない!」
味方だった人に、今でも敵として戦うことが信じられない人に、銃口を向けている。その状況に涙が滲んでいるのを振り払うようにセリカが叫んだ。
それを聞いて敵対行為と認定したのか、シロコの意識と深海のような視線がセリカにも向いた。底知れぬ深淵の闇に射貫かれたような恐怖がセリカを襲い、決意を固めたはずの体が凍り付く。
「……消す」
「セリカちゃん!」
地面を踏み抜かん勢いで叩くと、隠されていた小型の飛行ドローンが飛び上がる。搭載された小型のミサイルがセリカ目掛けて殺到し、周囲諸共吹き飛ばそうとする。
恐怖からセリカの反応が一瞬遅れた。その一瞬は、爆風を伴うミサイルの範囲から退避するには致命的な遅れとなり、間に合わなくなったことを悟ったノノミが叫ぶ。同時、吊り下げるように構えていた機関銃を手放して、セリカを抱きかかえるようにして飛び退く。
「セリカちゃん、大丈夫ですか?」
「ごめんなさい、あんな啖呵切っておいて……」
ノノミが触れていたセリカの体は小刻みに震えていた。殺意に直視されたのが余程堪えたのだろう。ミサイルを回避して次の攻撃が来るのに警戒していたノノミは、ホシノが突撃しそれを防いだのを見てセリカへ意識を向けた。
「セリカちゃん。ありがとうございます。私もようやく決心がつきました。今のシロコちゃんを止められるのは私達だけ。ホシノ先輩だけに押し付けちゃいけないって、セリカちゃんが言ってくれたから、私も目が覚めたみたい」
立ち上がって、セリカに己の背中を向ける。戦闘の余波で僅かにクリーム色のカーディガンと亜麻色の髪が揺れた。そんな、普段はおっとりしている先輩の頼もしい広い背中に、セリカが動揺から立ち直る。
「邪魔……」
「そう。じゃあ全力で邪魔するしかない」
流石に不意打ちでもなければ今のホシノには分が悪いと踏んでいるのか、ドローンからミサイルが放たれることは無い。明らかに殺意を互いに向ける2人に、今はノノミの機関銃とセリカの小銃による援護が加わり、より激しい戦闘を繰り広げる。
一体何発の銃弾が飛び交っただろう。一体何度銃声が響いただろう。数え切れない銃撃の交錯を経て、ついにシロコと黒服は新たな手札を切る事を選んだ。ホシノへ向けて一際強く踏み込んで、再度銃身同士の鍔迫り合いにもつれ込む。
しかし、圧し合いは拮抗を見せて間もなく終わりを迎えた。シロコの背後から機械音がしたのを聞いて、ホシノが後ろへ跳ぼうと脚に力を入れる。それをシロコが力の向きを変えて抑え込むことで、離脱に必要な距離に届かせない。
「先輩!」
セリカの声だったか、ノノミの声だったか。どちらのものか分からない悲鳴が、ミサイルの爆音にかき消された。煙を突き破って、ホシノが地面を掴むように着地する。黒煙が纏わりついた、一部が欠けた盾を投げ捨てるホシノ。どうにか直撃だけは避けたようで、セリカとノノミが胸をなでおろす。
「流石としか言いようが無いですね。今のを避けるとは」
「クソッ、いつまで高みの見物を決め込んでるつもりだか知らないけど……!」
「ですが、それくらい想定内です」
直撃を避けただけで、負ったダメージは重い。そこへ壁から飛び出した、大量のミサイルハッチがホシノを捕らえる。先程の小型ミサイルによる奇襲は、あくまで手札のうちの1枚でしかない、とでも言うように。
「させない!」
ホシノへ向けて降り注ぐミサイルに、逆行するような軌道でいくつかのミサイルが突撃し爆発する。連鎖するようにミサイルが爆風に巻き込まれ、弾幕に穴が開く。ホシノのショットガンと、どこからか飛んできた射撃が更にミサイルを打ち抜き、弾幕を弾幕と呼べない密度へ撃ち落とした。
薄くなったミサイルの群れにホシノは鋭い視線で殊更に薄い位置を見抜き、そこへ飛び込みながら更にショットガンの引き金を引く。
「馬鹿な……馬鹿な馬鹿な馬鹿な! 何故! 貴女がここにいる! いるはずがない、貴女は既にそこにいるのだから!!」
焦りと困惑、そして怒りを孕んだ黒服の声が木霊する。ドサリ、と何かを地面へ落とす音に他の面々もそちらを見ると、逆光ながら見覚えのある輪郭の「誰か」が立っていた。
「何故、も何も。ただここにいるから、私はここにいる。哲学的なことを言いたいわけじゃない。私には、何に取り乱しているか……え、どういうこと?」
アビドスの面々がよく聞き覚えのある声が、凛としたものから途中で間の抜けたトーンに変わった。こちらへ近づいて、ここにいる人物を把握して、状況が分からなくなったらしい。
「シロコちゃんが……」
「2人……?」
『ちょっと待ってください、どういうことです? え、何が起きたんですか!?』
「いやぁ、ちょっと私にも分かんないなこれは」
アビドスの面々に混乱が奔り、それはシャーレの先生や目の前にいる黒いシロコも同様であった。いっそコミカルな様相すら呈したいつものシロコと黒いシロコの対面に、2人は同じ驚愕の表情で立ち尽くす。
「ちょっとよく分からない……目の前にいる私は誰?」
「こっちの台詞。確かに私はここに連れてこられて、ホシノを倒そうとして……」
「私も2日程前に現金輸送車のルートを偵s……じゃなかった、趣味の観察をしてたら落とした携帯を見つけて、この場所が書いてあったから来ただけ」
先程までの死闘が嘘のような間の抜けたやり取りを交わす2人のシロコ。最早銃口を向け合う事すらなく、困惑を解消するための会話へ移っていた。それに納得がいかない人物が1人いた。黒服だ。
「ク、ククク……誰も望んでも予想してもいない事態、ですか。随分とコケにしてくれますね。ですが、それならそれで、私も私の切り札を1つ切るだけ。大人とはそうやって状況を動かすものです」
黒服がそう宣言した直後、ミサイルハッチと入れ替わるように壁から何かが出て来た音に全員の視線がそちらへ向いた。出てきたのはカイザーが提供している大型の機械兵器、ゴリアテを少々サイズダウンしたような機械兵器だった。
『小型のゴリアテ……数にして12、恐らく裏に更に隠れています!』
「ッ、入口側にもいる、逃がすつもりもないってことね」
「兎に角、皆こっちへ集まって。時間は稼ぐから、あいつらが掃射の切れ目を見せたらすぐに走って逃げるよ」
「それじゃホシノ先輩が……!」
セリカの声に、ホシノは返さず、後輩達にただ背中を向けていた。その気配は再び、先程までのナイフのような鋭い物に戻っていて、しかし後ろにいる後輩達を必ず守るといういつもの優しい彼女のものを含んでいた。
『……ホシノ。それは駄目だ。それではきっと、アイツの思惑通りの結果になってしまう。誰一人としてアイツの手に落ちてはいけない』
「先生、だっけ。彼の言う通りだと思う。私がここにいるのがその証拠のひとつ」
漏れ聞こえる通信を聞いていたのか、先程まで殺し合いをしていた黒い方のシロコがシャーレの先生に同意する。恐らく彼女も、現状を想定していることは黒服から聞いていなかったのだろう。
「とりあえず、やることは決まってる。ノノミ、私に合わせて」
「勿論です、いつでもどうぞ~」
青空色のマフラーをはためかせながら、ドローンからミサイルを入口付近に陣取るゴリアテ擬きに放つ。ほとんど同時にノノミが機関銃で薙ぎ払うように掃射し、致命打にはならないものの動きを止めた。
『小さいゴリアテ……面倒だな、イシビベノブとでも呼ぼうか。あれらはゴリアテより小さいけれど、火力そのものはあまり落ちていないようだね。シロコの言う通り、一点突破による後退を主眼に据えよう』
シャーレの先生が本格的な指揮の態勢に入り、通信越しに何らかの機械を操作する音が聞こえた。その指揮に迷いは一切なく、アビドスの面々が最も懸念していた事項さえも関係が無いと言わんばかりだった。
「……当たり前のように逃げようとしてるけど、このまま逃がすと思われてる?」
セリカとノノミが固唾を飲んだ。黒いシロコが、制服を着たシロコへ片手に持った小銃の銃口を向けていた。それは間違いなく命を狙う行為でありながら、ホシノも、銃口を向けられているシロコ本人も、取り乱す様子も警戒している様子も見せることは無い。
タァン、と乾いた銃声が一発だけ響いた。銃口を向けられていたシロコの背後で、一拍遅れて爆発音が響く。イシビベノブの肩に懸架されていたミサイルポッドが1基爆ぜた音だった。
「私は私の考え方が分からない程馬鹿じゃない。今一番ムカついているのは、自分を騙して捨て駒にした男」
平然としていたシロコが、黒いシロコの内心を述べた。心を読んだというような大層な話ではなく、自分の考えくらい自分でわかるのは当たり前だ、というように。
「その通り。そういうわけだから、ここを出るまでは便乗する」
その意思は今見せたでしょ、と言わんばかりに黒いシロコはアビドスの面々を見た。制服のシロコは特にリアクションを返すことも無く、ホシノも肩をすくめるだけで戦闘態勢に戻る。
そんな2人の姿を見たからか、毒気を抜かれてノノミとセリカも困惑気味ながらも黒いシロコへの敵対態勢を解いて機械兵器達へ相対する。そこから始まったのは、黒服の陰謀をものともしない一方的な戦いだった。
2人のシロコがドローンからミサイルを放ち、突破口を開く。ミサイルの嵐はノノミの弾幕とセリカの援護射撃が打ち抜いて、機関銃弾は盾の残骸を巧みに操るホシノが防ぎきる。ミサイル搭載のドローンが1人分ならば、ここまで容易く突破されることはなかっただろう。
黒服がシロコを洗脳していたら、あるいは黒いシロコが共闘の意思をみせていなかったら、こうはいかなかった。しかしアビドス対策委員会の性格を見抜けなかった黒服は、こうして自らの企みを突き崩されるのを、ただただ見送る事しかできなかった。
「んー、それで、この後2人はどうするつもりなのかな?」
黒服からの追手が無いことを確認して、砂原に埋もれる岩の影でようやく一息ついた一同。そんな折、ホシノが2人のシロコに向けて問いかけた。
ハイローが黒く染まり所々割れている黒いシロコも。いつも通りの制服を身にまとうシロコも。そのどちらもが本物であってもそうでなくともおかしくない状況だった。
「……多分、どっちかが生き残って、どっちかは消滅する。それだけだと思う」
先に告げたのは、制服を着た方のシロコだ。シロコは何となく、あるいは直感的にそう理解していた。どちらかが死ぬ必要さえない、と。
「多分、私達はあの黒服のせいで無理やり2つに分けられたようなもの、みたい。やった張本人も気づかなかったみたいだけど。だから、その内元に戻る、と思う」
引き継ぐ様に、黒いシロコが述べた。その内、と言うのがどのくらいの期間なのか、本人を含めてここにいる誰もが分からない。しかし、遠からずその時はやってくるのだろうとも思っていた。