爆豪「質問を質問で返すなあーっ‼」   作:あたらんて

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第2話

「うん? こんな所にゴミが落ちてるじゃあないか……。全く、『ゴミ』を『ゴミ箱』に捨てられないような『ゴミ』が最近は多くなったものだ」

 

 爆豪勝己はひょいと道端に落ちていたペットボトルを拾い上げる。

 中にはヘドロのようなものが詰められており、正直「臭い」もハンパなかったのだが、几帳面な彼の性格上道に落ちているゴミは見過ごせなかったのだ。

 

「第一こんな『ヘドロ』を集めて『何』になるって言うんだあ~~? 環境家気取りの偽善活動かい。その結果が『ポイ捨て』だっていうんじゃあ意味ないなあ~~」

 

 彼はかなり「細かい」ことを気にする「男」である。

 ゴミを捨てるときの作法にまで口を出すような人間だ。たまたま見つけたペットボトルすら、きちんと中身を出してからゴミ箱に入れる。

 

 そんな彼の「細かさ」が今回は「裏目」に出たッ!!!

 ペットボトルの「蓋」を開け、排水溝に「中身」を捨てようとしたその時! 彼は人生で「初めて」(ヴィラン)に襲われることとなる!!

 

「調子に乗った…………隠れミノ……」

「!!!!」

 

 意外! それは人間ッ!!

 その身を「ヘドロ」と化す異形型個性の持ち主!

 

 爆豪勝己は到底あずかり知らぬことではあるが、つい先ほどオールマイトが捕らえ、そして緑谷出久との接触の中で取り逃がした(ヴィラン)である!

 

「『キラー・クイーン』ッ! こいつを爆破しろォーーーーッ!!!」

「良い『個性』……! 『当たり』だ……!!」

 

 爆豪勝己は己のスタンド「キラークイーン」を瞬時に発動するッ!

 が、時すでに遅し! 爆豪勝己の体内に入り込んだヘドロヴィランは、彼の「キラークイーン」の制御を「奪って」いた!!

 

「暴れるなよ……苦しいのは約45秒………すぐに終わるさ……気づいた時には解放されてる……手術の時の全身麻酔みたいなモンさ………」

(やられたッ! この『クソカス』がァーーーッ!!)

 

 屈辱ッ! 今の爆豪勝己の内心を占める感情はただそれのみ!

 真っ向から向かって戦えばまず「負け」は無いヴィランに、ただただ良い様にされるがままという屈辱ッッッ!!

 

「本当に良~い個性だ………遠くを攻撃できないのが難点だけど……パワーは十分……! そこいらのヒーローは蹴散らせるぞ……!!」

(この私がッ! 木っ端(ヴィラン)如きに!)

 

 何とか「キラークイーン」の制御権を奪い返しこのゲボにも劣る臭いを放つ(ヴィラン)の爆破を試みるが、その度に後一歩のところで「キラークイーン」が明後日の方向に行ってしまう。

 結果、辺りは爆破の跡でまみれ、一方ヘドロ(ヴィラン)の体は無傷のまま、段々と、段々と爆豪勝己の体の侵食のみが僅かずつ進んでいくのであった。

 

「クソッ! 『見えない爆弾』がある! 消火を急げ!」

「地雷系の能力か!? 迂闊に近寄るのは危険だ!」

(何をやっているこのウスラトンカチ共ォォ~~~!!! そのデカいだけの図体はいったい何のためにあるんだァ~~~!?)

 

 いつの間にか「キラークイーン」による爆破を目にした野次馬とヒーローたちが駆けつけ、爆豪勝己の救出を試みているが姿の見えない「キラークイーン」に対応しあぐねている。

 もうかれこれずっとその状態から変化していない。希望は唯一、新たに来るヒーローの増援のみだ。

 

(この爆豪勝己の人生に…こんなヒドイ事が………あっていいはずがない………)

 

 段々と薄れていく意識に、自然と爆豪の抵抗も小さくなっていく。

 そもそも彼は余りタフネスのある人間じゃない。危機に瀕した時の生き汚さこそあるが、いわゆる「筋トレ」などを行って「体力」をつけているスポーツマンとは違う。

 尤も、彼の元々の体のスペックが故か、スポーツなどで良い成績を残すのはそう難しいことではなかったのだが。

 

 そんな彼がここまでヘドロヴィランの侵食に耐え続けてきたのは、ひとえに彼のプライドが理由である。

 「個性」の強力さも相まって自身の能力に絶対の自信を持っている爆豪勝己は、当然そこらの(ヴィラン)に体を乗っ取られるなど許すはずもない。

 ただ不意を衝かれたのみで、本来ならば「キラークイーン」の指先一つで触れてスイッチを押すだけで木っ端微塵になっている相手に、ここまでの横暴を許すなど爆豪勝己にとってはあってはならないことなのだ。

 

 しかし、そんな彼も終わりの見えない苦痛にとうとう音を上げ始める。

 彼の現状を例えるならば、潮の流れに逆らって陸地へ向かい泳ぎ続ける漂流者! 

 いつまで経っても陸は近づかず、呼吸もままならないまま体力だけが消耗していく!

 

「――かっちゃん!!」

 

 そんな絶望的状況の中、一つの変化が訪れる。

 緑谷出久! 「無個性」である彼がッ! この場の誰よりも「力」の無い彼がッ! 何の作戦も無しに、何の武器も無しに爆豪勝己を助けるためだけに飛び出した!

 

「『』を『』んでくると書いて『運命』! この 『爆豪勝己』に『』は『味方』してくれているッッ!!」

「うん、ちょっと静かにしていようねかっちゃん! 僕も勝手に体が動いたんだけどさ!」

 

 飛び出してきた「無個性」の緑谷出久は、カバンを投げつけて怯ませることでヘドロヴィランの侵食を一時的に止める。

 尤もそれは、爆豪勝己が望んでいたような救援ではなく、ただわずかに侵食を遅らせたにすぎなかった。

 

「邪魔をするなあああああああ!!!!」

 

 一瞬怯んだものの、すぐさま緑谷は脅威でないと理解したヴィランは、その豪腕を振るって緑谷を攻撃する。

 「無個性」であった彼の「行動」はやはり何の助けにもならなかった。

 

 しかしその「勇気」ある行動はッ! その「正義」の心はッ! 一人の「ヒーロー」を立ち上がらせたッッッ!!!!

 

 

「――もう大丈夫……私が来た!!!

 

 

 No.1ヒーロー「オールマイト」の振りぬいた拳は、その風圧のみで爆豪勝己に取りつく(ヴィラン)を吹き飛ばし、生み出された上昇気流は天候をも変えた。

 このヒーロー社会の頂点に立つ男は、見事爆豪勝己を救い出したのだ!!

 

「――ハァッ、ハァッ、ハァ………」

「君、大丈夫か! ここまでよく耐えた! 落ち着いて、ゆっくり呼吸を整えて……」

 

 (ヴィラン)の束縛から解放され、ようやく自由を取り戻した爆豪は呼吸も荒いまま立ち上がった。

 当然体を心配するヒーローたちは彼を止めようとするが、爆豪はある一点を目指してフラフラと歩き続ける。

 

 その一点とは、先の(ヴィラン)のこと。オールマイトにその身のほとんどを吹き飛ばされた彼は、ズルズルと体を引きずりながらもその場からの逃亡を試みていた。

 

 そんなヘドロ(ヴィラン)の前に爆豪は立ち尽くすと、突然彼はその健脚を以て(ヴィラン)を踏み抜いた!

 

ギェェエェエェ~~~~ッッッ!!

「このッ、このッ、『ゴミカス』めがァ~~~ッ!! よくもこの私に『恥』をかかせてくれたなァ~~~!?」

 

 あまりのことに思わず言葉を失うヒーローたち。そのタフネスを見込んで勧誘を行おうとしていた一部のヒーローも、慌てて発言しようとしていた言葉を撤回する。

 

 すぐに正気を取り戻した彼らは爆豪を羽交い絞めにしてこの奇行を止めるのだが、当然の如くオールマイトには引かれたし爆豪の内申は下がったのであった。

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