Beyond the Loop   作:たかお

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胎動

 

 三ヶ月ばかり付き合った相手からの別れの電話は、私の心に少しも傷をつけなかった。そんな私の態度に、むしろ相手のほうがひどく傷つけられたようで、自尊心からくる最初のやさしさといたわりの言葉を放り投げてから、短い捨て台詞を最後に電話を切ってくれた。電気信号と心の両方の繋がりがほどけたのを確認して、私はほっとため息をついた。やっと帰ってきた、帰ってきてしまった。

 今にして思えば、どうして彼と交際をはじめたのか考えをめぐらせてみて、そのきっかけとなった出来事も、そのときの感情も、なにもかもが色褪せてしまっていることに気付く。ただ、彼(そういえば、下の名前は何といっただろう?)の不満の根源が、私がいろいろと理由をつけて彼の身体に触れることを避けてきたことと、それに付随して肉体関係を拒んできたからだということはわかっていた。けれど、私は彼が笑ったときのえくぼが少しだけ素敵だなとは思っていたし、左胸に小さく浮き上がった黒子を眺めているだけでも、十分に満たされていたというのに。

 とはいえ、私自身のそういう噂は何度か耳に入っていた。そしていかにも誠実そうに近づいてきた彼も、自分こそが私を征服する最初の人間になるという馬鹿げた野心を持っていたことについて、私ははじめから知っていた。どうして私たちは、相手に触れようとすることなしに、心と心を通わせることができないのだろうかと、不思議に思う。

 別に異性相手に限らない、私は他人に素肌を見せることを無意識のうちに忌避している。かつての傷口はとっくに癒えたのにもかかわらず、折に触れて、ノースリーブの裏地に擦過した皮膚が、じくじくと腐敗していくような感覚を抱いてしまうから。けれど、それはどうしてだろうか? 私の手首はなぜいつも突然、思い出したかのように発熱して、何かを伝えようとしてくるのだろう。言い換えれば、私はいつまでも何に引きずられているのだろう。こうした疑問については、三日前の帰郷が答えの一部を導き出してくれたようにも思う。雛見沢の風景そのものはすでに儚い夢のように遠く霞んでいたけれど、その霧さえうち晴らせば、そこにある実体をつかめるはずだという確信が、戻ってきてからずっとずっと、私の内部で渾々と湧き出ているから。

 横たえていた身体を起こし、再び受話器を握りしめる。片手には、父が隠していた電話番号を写したメモがある。しわくちゃになったその紙に書かれた文字をたどりながら、間違いのないように、一つずつ丁寧に数字を打ち込んでいく。

 電話がつながる。私は過去と交信する。

 

 

 

 

 

「あなたの家には行きません。私の家は竜宮の家です。もうあなたとも会いたくありません。二度と呼ばないでください」

「でもね礼奈、お父さんの方に残ったらこれからの生活……」

 これからの生活。そのあとに、彼女は何を言おうとしていたのか。平穏で幸福な生活を破壊した張本人が、辛いことばかりで大変よ、とでも続けるつもりでいたのか……。

 母の記憶が薄れていくにつれて、母との最後の場面の記憶だけが、輪郭のはっきりしたものとして浮かび上がってくる……。

 彼女は私からの電話を受けて、最初の数秒間息を呑んでいたように思う。次いで私が用件を切り出そうと、すっと息を吸いこんだとき、礼奈なの? あなたは礼奈なの? と、小さく、呆然と呟いていた。対する私はといえば、彼女の動揺がそのまま反射されて、そうです、礼奈、竜宮礼奈です、と馬鹿みたいな正直さで、彼女に肯うことしかできなかった。そして、彼女が、そう、とため息にも似た相槌の声を漏らしたのを最後に、母娘の間に過去の蟠りが蘇った。沈黙が私たちを包むとともに、急速に思考が冷えあがっていった。ただ、脳裏をかすめていたのは、受話器越しだったとはいえ、彼女の声からかつての張りがほとんど感じられなかったということだった。昔の私が憧れていた、彼女の自信に漲った美しい声。女王のように他人を指図して平伏させ、すべてを意のままに作りかえる声。私が最初に困惑したのも、彼女の声のイメージが、記憶の中にあるものと乖離しすぎていたからに他ならなかった。

 彼女が勢いを失うのと同時に、私は勢いを取り戻した。母は老いたが、私は若い。アキヒトおじさんも老いただろう。あれから10年以上の時が経ったのだ。彼女たちの時代は終わった。根拠のない自信に支えられて、私は電話口で畳み掛けた。たじろぐ相手の息遣い、ただおろおろと言われるがままに流される彼女。失望が胸を襲い、突然私は脱力した。そのあと何を話したかわからないけれど、気付けば彼女と会うことになってしまった。私の手帳にも予定が書かれている。そこには、6月末の週末の欄に、時間と場所だけが淡々と記入されている。

 いま、私は手帳を見返して、何度も何度も間違えていないかと確認してみる。あと20分、いや、四捨五入すればあと10分ほどで私は過去に遡るだろう。待ち合わせをしたのは、離婚のことを告げられたあの場所と雰囲気のよく似た喫茶店で、腕時計の針が時間を引き裂いていくのを見つめながら、私は過去を待っている……。

 

 

 

 待ち合わせ時間の午後2時からきっかり5分前に、目の前の空席が埋まった。

 彼女が姿を見せたことで、私の胸に、はっきりとした失望が去来した。覇気もなければ生彩もない、くたびれた中年女性がそこにいる。こんな人を打ち負かしたところで、私の人生に、いったい何の意味をもたらすというのだろう?

 私の視線に気付いたのか、彼女は不自然なまでに媚びるような上目遣いで私を見つめて、そろそろと切り出した。礼奈ちゃん、久しぶりね。その声は人畜無害そのもののかわりに何の魅力もなかった。そのせいで彼女の繰り出す月並みな言葉に対して、返事をするのも億劫になった。私は何気なくストローの先をいじくって、彼女へのやや理不尽な軽蔑の意を表した。

 先に店に着いた私はオレンジジュースを注文していた。この年齢には似つかわしくない、甘くさわやかな飲料。それが、彼女に苦々しい思いを抱かせるのではないかと小さな期待を持っていた。けれど、彼女は悲しい表情でそれを見つめたのち、ふと目をそらして、店員を呼びつけてブラックコーヒーを注文した。その瞬間、私はなぜだか自分がとてつもなく恥ずかしく、ちっぽけな存在に感じられた。

 話はいっこう弾まなかったが、とにかく、私は父と連絡を取るのをやめるように言った。私の言いたかったことはただそれだけで、それ以外あなたと話したいことはない、と私は口に出さないで言った。彼女は視線をあちらこちらにさまよわせたり、そうかと思えば突然落ち着きはらったりしながら、それはできない、なぜならば連絡をくれるのはいつも彼からで(彼女は結局この再会の間ずっと、父のことを代名詞でしか呼ばなかった)、私はそれを無視しないでいるだけであり、お互い十年以上前の確執をどうこう言うほど若くはない、というようなことを言った。確執? あなたの罪、あなただけの罪ではないの? そう私は詰め寄った。

 すると、ふいに彼女は憐れむように私を見た。何も知らない小娘、とでも言うような目で。唐突に、まるで切れた蛍光灯が何かの弾みで再び光を放つときのように、激しく燃えたぎるものが、彼女の目の内側で鮮やかに蘇った。身を乗り出した彼女の香水の匂いが鼻をつき、私は顔をしかめる。彼女が訥々と語る。

 

 

 

 あなたが娘だと名乗りながら、私の内部で蠢いたとき、私は人生の絶頂にいた。私は若くして才気煥発で、成功者だった。あらゆる男たちが私に傅いた。女としての私にではなくて、成功者としての私に。私は必要とされていたのよ、あの瞬間までは。

 幸せの絶頂では、いつだって転落の陰がちらついている。

 産婦人科で検査を受けたとき、私はもう絶望しきっていたわ。きっと妊娠しているに違いない、そしてたとえ堕胎したとしても、あなたが私の足にしがみついて、成功の道への歩みを妨げるに違いない、って。幸い彼が無能で、私の力がなければ何もできない男だったことが、私を慰めたけれど。彼は私を抱くまで女を知らなかった。

 あなたは私の中で凍りついたままでいるべきだったのに。私はなぜあのとき、あなたのことをほんの少しでも愛おしく思い、あなたの細胞を温めてしまったのか、いまでは自分が許せない。

 

 私は顔をしかめている。彼女の香水の匂いがとてもきついから。

 

 あなたが齧りついたものはすべて私の一部、だからちゃんと返してくれないと。

 あなたの躊躇いがちの胎動の、ぞわぞわした感覚には怖気が走ったものよ。今でも思い出せる。あなたはいつだって私を攪拌して、私を拭い去っていった。身体を丸めて、憐れそうに、狡猾な手つきで。勝手に着床したあなたが私に寄生してから、どれほど私を苦しめたのか、今のあなたにはまだわからないでしょう?

 

 私は顔をしかめている。彼女が「あなた」と言うたびに、香水の匂いがよりきつくなるから。

 

 そしてある日、経験したことのないような痛みで視界が白み、あなたが私を食い破って産まれた。それなのに、看護婦さんが嬉しそうに私に近づけてきたあなたの顔は、信じられないほどに醜かった。私はあなたに母乳を与えるのが苦痛になって、すぐに離乳食へと切り替えた。これ以上あなたに何を奪われなければいけないの? あなたが私の身体に触れることは、私の皮膚をえぐることよ。

 

 私は顔をしかめている。彼女の香水の匂いのきつさで、視界がぼやけていくのを誤魔化したいから。

 

 人生は辛いことばかり、幸福なんて存在しない、それだけが真理だと彼女は言った。

 彼女から激しい感情の昂ぶりをまともに浴びせられている間、私は何も考えられないでいた。私は彼女のことを憎んでいたはずなのに、どうして逆の立場になって、憎まれることを悲しんだりするのだろう? その答えは、ずっと前から用意していた。

 つまり、私は今なおこの人を愛している。論理的な理由は一切なしに、理屈を超えたところで。そしてそれはおそらく彼女も一緒だった。しわがれた声で嗚咽混じりに私を非難する彼女の表情が、かつてのように綺麗に見えたから。

 私たちの間には、愛の裏返しとしての敵意と、敵意の裏返しとしての愛があった。

 そして幼いころの私はといえば、どちらをも敏感に感じとっていた。そのバランスは、母の不貞によってあっけなく崩壊したかに見えてその実、膨らんだ敵意と同じぶんだけ、膨らんでいたものがあった。

 父について、彼女は敵視しないかわりに愛しもしなかった。父は彼女にとって自尊心を維持するための都合の良い生贄だった。今にして思えば両親の間に身体の結びつきはほとんど感じられなかったように思う。真っ先に寝室へと向かうのは、疲れて帰ってきた彼女で、父は私が眠るまで起きていたから。もしかしたら、そのやさしさこそが彼女を堕落させたということについて、父は悔いているのかもしれない。ひどい言い方をすれば、残忍で狡猾なやさしさ。彼女の心を繋ぎとめるためだけのやさしさ。もちろん、父に落ち度と言えるほどのものはない。いずれにせよ、私に隠れるように、未練がましく彼女と連絡を取ろうとする老いた父への不満が、なんとはなしに薄れていくのを感じる。

 それにしても、私はずいぶん彼女に甘い態度をとっている。結局のところ、彼女は自己保身に走っているにすぎないのに。最初の動揺がなによりの証拠で、彼女は開き直っているだけなのに。たぶんそれは、彼女の額に刻まれた皺の深さのせいかもしれない。ふと思い返せば、鷹野さんと再会したときの梨花ちゃんも、同じような気持ちだったのかもしれない。もちろん梨花ちゃんとは比べものにならないほど、私の不幸はちっぽけなものだけれど。許すという行為の難しさを実感する。

 かつて私は母であった彼女を憎んだ。それは、私がまだ幼くて、彼女の弱い部分を認められなかったからだった。何をどう言い繕ったところで、結局のところ誰だって自分が一番可愛くて、けれどもそれを誤魔化すために愛や恋といった美しい感情を生み出したということを知らなかったからだった。

 いま、私はかつての彼女と同化していくのを感じている。彼女が醜態を見せれば見せるほど、いまの私は安らぎを得ることができる。私もやっぱり自分が一番可愛くて、だからこそ彼女の身勝手さを受け止めることができる。彼女も同じように、私と同化しているだろう。

 限りないほどのやさしい気持ちが、私の胸のなかを満たしてゆく。

 彼女は顔をくしゃくしゃにゆがめて、声を震わせて言う。

 

 あなたに感謝する瞬間があるとすれば、あなたを愛しているふりをしなくなってよくなった時よ。

 

 愛しているふり。

 けれど、擬態を続けていくうちに本当に生まれる愛もある。

 いや、もしかしたら世間で言う愛という言葉の正体とは、習慣化した感情がみせる形態のひとつなのかもしれない。

 だとするならば、あの時、私はもっともっとこの人と話し合わなければいけなかったんだ。たとえ結果が同じになろうとも、話し合うこと。彼女の視線から目を逸らしたり、彼女の言葉から耳を背けたりしてはいけなかったんだ。

 目を合わせれば、彼女の目は潤んでいる。私の両の頬に、母のあたたかな感触がある。礼奈、ごめんね、ごめんね、と泣いている。礼奈、レナ、ごめんね、レナ……。

 いいんだよ、お母さん、レナのこと、レナって呼んでくれてありがとう……。

 今からでも遅くはないと思う。

 遅いなんてことはないんだ。

 やがて、母のぬくもりが私の頬から離れていった。

 私は顔をしかめている。母の香水の匂いが、少しだけ薄らいでしまったから。

 

 

 

 

 

 頬をくすぐる心地良い夜風が私の身体を冷ます。

 中心駅から離れたこのあたりの路地は、都会のわりには街灯が少ない上に薄暗くて、月の光がよく映える。帰り道、私はいつもこうやって、月を見ながらゆっくり歩く。

 夕方からアルバイトのシフトを入れていた私は、あれから少しだけ話をしたのち、せわしなく席を立って、母と別れた。

 お互いに一応の和解を果たしたとはいえ、私たちを包む空気はあいも変わらずぎくしゃくしたままで、会話が弾んだりはしなかった。けれど、それでよかったとも思う。憎しみと愛がこんがらがったような、この厄介な想いを大事にしていたいから。

 ただ、そんな中でも母から聞いた話によれば、父からの連絡は私の進路が決まったことを伝える手紙が最初だったらしい。簡素で形式的で、あの人らしい面白みのない文章だったわ、と母はぎこちなく笑みを浮かべて言った。父は、偶然再会したかつての同僚から母の近況を知って、いろんな伝手を頼りに母の住所にたどり着いた。再婚相手(例の不倫相手ではない)との間に子どもができなかった母は、父の手紙を読んでいるうちに薄らいでいた娘の記憶が輪郭を帯びてきて、衝動的に返事を出してしまったのだという。もちろん母が再婚していたことを父は知っていたから、話はもっぱら娘の私のことだけで、それほど頻繁にやり取りをしていたわけではなかったけれども。

 父は、本当は母が私のことを愛していたことを知っていた。私が進路を決めかねていたときに、父が私にこぼした胸中。男親では娘の相談に乗ってやることもできない。そんなことないよ、お父さん。お父さんがいれば私は幸せだよ、と慰める私を見つめながら父はぽつりと呟いた。綺麗になったな、礼奈。まるで……。

 当然、言わんとすることを察した私だったけれど、そのとき意外にも、以前に比べてそれほど負の感情を抱かなかった。かつては自分の身体に母の血が巡っていると考えるだけでも怖気が走っていたのに。 

 このとき私は、離婚以来初めてお母さん、と口にした。自分でもどうしてなのか分からなかったけれども、父はとても驚き、それから口元を綻ばせた。私は父がいつのまにか母への憎しみをなくしてしまっていることに呆然とするだけだった。

 私は言った。

「お父さん、もうあの人が憎くないの?」

 私の声は震えていた。

 父は、もちろん憎かった、今もまだ、憎んでいないと言えば嘘になる。けれど、成長していく礼奈を見ると、憎しみよりも、こんなに出来た娘を産んでくれた感謝の方が大きくなるんだよ、と言った。

「あの人は、お母さんは、礼奈のことを本当に愛していたんだよ」

 母の痕跡を片っ端から打ち壊していく私を、父はどんな心境で見ていたのだろうか。父は、私がまた以前のようになったりしないかと窺い、私が落ち着いたままでいるのを確認してから、財布から一枚の写真を取り出した。褪色した写真には父と母と、生まれたばかりの私が写っている。写真のアルバム類も、母が写ったものはどんなに大事な写真でも例外なく、すべて破り捨ててきたはずだった。でも、この一枚は肌身離さず、父が守っていた。きっと、私に見せたら引き裂いてしまうに違いないと思って、今まで隠してきたのだろう。

 写真の中で赤子を抱いている母は本当に美しくて……。

 この時、自分の感情に決着をつけないといけないと思った。道は一つしかなかった。

 

  

 

 

 

 帰宅してみると留守番電話が入っていた。私に電話をしてくる人はほとんどいない。何人か付き合った人とも、頻繁に電話をするのは最初のうちだったし、会話が弾まないからか、友人たちも別段の用事がなければ私に電話してくることもない。

 だからおそらく、母がらみのことで父が電話をくれたのだろうと当たりをつけて、再生ボタンを押してみた。

 けれど、受話器から聞こえてきたのは意外な相手だった。少し遅い時間帯だったけれど、躊躇うことなく折り返しの電話をかけた。電話はすぐに繋がった。

 

「もしもし、圭一くん?」

「おう、レナ。どっか出掛けてたのか? 待ちくたびれたぜ」

「ごめんね、さっきまでバイトだったの。圭一くんこそどうしたの?」

「実はレナに頼み、いや相談があってさ。ほら、雛見沢のことだけど、あれから俺、考えてみたんだ。雛見沢にいない俺たちだからこそ、できることがあるはずだって」

 雛見沢にいない私たちだから、できること――。

 

「ほら、レナも覚えてるだろ? 雛見沢の掟」

 

 一人に石を投げられてたら二人で石を投げ返せ。

 二人で石を投げられたら、四人で石を。

 八人に棒で追われたら、十六人で追い返せ。

 そして千人が敵ならば村全てで立ち向かえ。

 一人が受けた虐めは全員が受けたものと思え。

 一人の村人のために全員が結束せよ。

 それこそが盤石な死守同盟の結束なり。

 同盟の結束は岩よりも硬く、水を通さないダムすら通さない……。

 

「だからさ、今度は俺たちがそれをやるんだよ。たとえ雛見沢にいなくても、俺たちはやっぱり雛見沢の人間なんだ」

 そう、私は雛見沢で産まれた。父と母があの土地で私に命を吹き込んでくれた。

 遠く離れてしまったように見えても、雛見沢はいつも私の原点で、どこにいたって私の中にあった。そんな当たり前のことを、ちょっと居なくなっているだけで忘れてしまっていた。

 懐かしい想いが蘇ってくるのとともに、心が弾んでいくのを感じた。そしてできるなら、いつまでもこの人と馬鹿をやっていたい、そう思った。

 

 まず何から始めようか? 

 そうだな、まずは無難に署名活動からだよな。それから陳情する。前の時みたいにな。でも今度は計画の凍結なんて生温いやつじゃない、今度こそぶっつぶすんだ! 

 私たちにできるかな? かな? 

 できるんじゃない、やるのさ。燃えてくるだろ?

 ……うん、そうかも。よーし、レナも頑張るよ!

 おお、やる気になったな。……あのさ、レナ。

 うん? 何?

 なんかいいことでもあったのか? 

 うん! あのね圭一くん、今日ね――。

 

 

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