白い奇跡が描く軌跡   作:崇藤仁齋

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かつて見た光景

『全てのウマ娘が目指す頂点、日本ダービー! 栄えあるウマ娘たちの本バ場入場です! 一枠一番はモノクロメリー。一枠二番はクロスボウ――』

 

 アナウンサーの宣言に東京レース場に詰めかけたファンたちが大歓声を上げる。

 今日はダービー。

 ウマ娘なら誰もが憧れる栄光、ダービーウマ娘の称号を賭けた一大レース。

 アナウンサーの紹介のもと歴戦のウマ娘たちが姿を見せる中、一際小さなウマ娘の登場に東京レース場が一気に沸き上がる。

 

『――さぁ、そしてこのウマ娘です! 五戦五勝のパーフェクトウマ娘。ただ一人三冠ウマ娘の資格を持っています!』

 

 子供のウマ娘が迷い込んだのではないかと疑われるほどに華奢で小さな身体。

 耳と尻尾の毛並みもポニーテールにした長髪もくすみのない美しい白色。

 身体と同じく幼くも愛らしい容貌はしかし勝負を前に凛と引き締まり王者の風格を漂わせている。

 そんな彼女が身に纏う勝負服は毛色と同じ純白のノースリーブワンピースにパフスリーブ付きの長手袋。首元や衣装の細部を彩るは黒色のリボン。

 それは当世にて新たに友となった者たちが自分のためにと贈ってくれた親愛と友情の証。

 髪を結うリボンは赤青白のトリコロールカラー。

 赤は前世で自身に騎乗していた騎手の勝負服の色、青は前世の自分の名付け親である親分の服の色、そして白は前世当世通じて自分の毛並みの色。生まれ変わっても勝負の時は変わらず彼らと共にあるという絆の証。

 右耳に冠すは黒い王冠。

 それは好敵手である《漆黒の帝王》より引き継いだ王者の証。語り継がれる伝説の継承者として彼の最強を証明し続ける覚悟の証。

 

『奇跡のごとき美しい白毛を閃かせて描くは勝利への軌跡! 二枠三番、その名も《白い軌跡》ミドリマキバオーッ! 堂々の一番人気です!』

 

 生まれ変わってからしばらくは雌雄の違いや二足でのレースに戸惑いはしたが、それでも自分は根っからの競走馬だったらしい。

 自然と勝負の世界に身を置き、今やかつての好敵手と同じ視座に立っている。

 

「(だからこそわかるのね。あっちの日本ダービーでカスケードが何を想っていたのか。どんな想いでこのレースに臨んだのか)」

 

 そうしてマキバオーは後ろを見やる。

 そこにはカスケードを追い続けたかつての自分がいた。

 

『そして忘れてはならないもう一人。ミドリマキバオーと同じ白毛のウマ娘。朝日杯三着、皐月賞は二着。ダービーはどうだ? GⅠが欲しい! 打倒ミドリマキバオーの大将格! 奇跡を起こすは今日にあり! 芝ダート不問、距離不問の奇跡のウマ娘にしてもう一人の《白い奇跡》! 六枠十二番ハッピーミークだッ!』

 

 これは《白い軌跡》を追う《白い奇跡》の物語。

 共に史実には存在しない二人の白毛のウマ娘の絆と勝利の物語。

 

 

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