白い奇跡が描く軌跡   作:崇藤仁齋

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合同練習

 

 

 ハッピーミークを交えて始まったミドリマキバオーの夏合宿。

 当初はウマ娘二人トレーナー二人での合同練習のはずだったのだが、どうにも様子が違うようだ。

 

「オー! ミドリマキバオーがすごいコトは知ってマシタがハッピーミークも中々やりマスネ!」

「デスデース! 本当に短距離から長距離までこなせるなんてファンタスティックデース!」

「今年入ったポニーちゃんたちの中ではそこまで注目はされていなかったけど、これはとんでもない爪を隠していたものだ」

「担当トレーナー曰く奇跡のウマ娘……か。ハッ! タイマン張る時が楽しみだぜッ!」

「ミドリマキバオーちゃん、タイプムーンちゃん、アウセンザイターちゃんにハッピーミークちゃん。同世代にこれだけ沢山の実力あるウマ娘が揃うだなんて。ふふっ。まるで私たちみたいです」

「白き世界を己の白に染めるため、遥か頂きに立つ白の王に挑むはもう一つの白! うむ! 中々どうして映えるじゃないか!」

 

 タイキシャトル、エルコンドルパサー、フジキセキ、ヒシアマゾン、グラスワンダー、テイエムオペラオーのリギル所属のウマ娘たちがマキバオーと共にトレーニングに励むミークを見て彼女をそう評する傍ら――。

 

「どうですか? 悪くないはずなんですけど……」

「確かに今の走りを見た限りでは全くと言っていいほど問題はありませんね」

「レコードタイムで勝った天皇賞春から走り方も変わっていませんし、不調っていう感じでもないですね。重賞レースでも十分勝てる仕上がりだと思います」

「しかしライスシャワーは勝てない、と」

「はい。本番でも今と変わらない走りなんですけど何故か勝てないんです。こんなこと他のトレーナー――それも最も大事な時期である最初の三年を担当されているお二人やトップチームのチームトレーナーにお願いするのは担当トレーナーとして恥ずかしい限りなのですけど私もコレが限界で……。ですので、どうか皆さんの知恵をお借りできないでしょうか!?」

「ウマ娘を導くトレーナーとて人だ。時に力及ばぬ時もあるだろう。そんな時、こうして担当ウマ娘のために他の者に頭を下げられる君は良いトレーナーだ。そしてそんな心あるトレーナーの願いを無下にするほど私は鬼ではない」

「私もどこまで力になれるかわかりませんが力をお貸しします。それにライスシャワーさんにはうちのマキバオーもお世話になっていますしね」

「確かに俺たちが担当する子たちは同じレースに出れば鎬を削るライバルになりますが同じ学園で夢を追う仲間じゃないですか。それはトレーナーである俺たちも同じですよ!」

「皆さん……、っ! ありがとう、ございますっ!」

 

 頭を下げるライスシャワーの担当トレーナーに、彼女を励ますリギルチームトレーナーの東条ハナ、マキバオー担当の葵にハッピーミークの担当トレーナー――と、トレーナー陣はトレーナー陣で込み入った話をしていた。

 マキバオーとミークの二人での夏合宿合同練習だったはずが何故こんなことになっているのか?

 種を明かせば話はそう難しいものではない。

 マキバオーとミークの合同練習にルームメイトのよしみからライスシャワーが参加し、生徒会のつながりからルドルフ、ブライアン、エアグルーヴも参加。それならばいっそのことと生徒会の三人が所属するチームリギルも合同練習に合流したのである。

 

「そら、どうした!? もっと喰らいついて来てみろ!」

「んあ~! 負ッけないのね~!」

「ほらほら。もっとギアを上げないと置いて行っちゃうわよ!」

「……はぁ……はぁ。……まだまだ、……ついて行きます」

 

 思いのほか大所帯となってしまったがマキバオーとミークを除き皆GⅠレースを制して来た歴戦のウマ娘。それも短距離から長距離まで隙なく揃えられた人材はまさに最高のトレーニング環境だ。

 マキバオーには三冠ウマ娘のナリタブライアンが、ミークには彼女ほどではないが全距離に適正を持つ先達としてマルゼンスキーが並走パートナーを買って出てくれていた。

 厳しくも密度の濃いトレーニングにさらに力をつけたマキバオーだったが、それ以上にハッピーミークは一皮も二皮も剥けた印象だ。

 入学時点では力不足だったが今やタイプムーンやアウセンザイター同様、マキバオーのライバル格を名乗るに相応しいレベルまで実力を高めてきていた。

 後は彼女自身にマキバオーと戦う意思があるや否や――。

 それが今、試される。

 

「さて。そろそろ……か」

 

 ライスシャワーの件にひとまずの結論をつけたのかトレーナー陣の輪から外れたミーク担当のトレーナーはトレーニングを終え休憩に入っているミークに歩み寄る。

 

「お疲れ様。ミーク」

「……トレーナー。……はい。……お疲れ様です」

「次のトレーニングなんだけどな、一対一の模擬レースをしようと思う」

「……模擬レース。……がんばります。……むん」

「よし。じゃあ一息入れたら準備しよう。相手は――」

 

 ――同世代最強ウマ娘、ミドリマキバオーだ。

 

 

 

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