判明後別キャラをルームメイトにして書き直そうかと思いましたが考えていた今後の展開や前世のライバルとの絡みも考えそのままとしました。
原作原理主義の方はお気を付けください。
「やっぱりレースはいいものなのね~」
そう独り言ちるのはトライアルを終え帰路に就くマキバオー。
当世では初めて他のウマ娘と轡を並べてのレースに昔を思い出して上機嫌だ。
とは言え課題も浮き彫りとなった。
「この身体だと前のように速く走れないのが悩みどころなのね。ちゃんとした芝のコースを走ってみて改めてわかったのよ。今のぼくは皆よりずっと遅いのね」
ここでマキバオーのいう皆とは前世で鎬を削ったライバルたち。
カスケード、アマゴワクチン、ニトロニクス、サトミアマゾン、アンカルジア、トゥーカッター、エルサレム、ブリッツ。
先のトライアルで記憶にある全盛期の彼らのイメージを追いかけてみたが惨敗。昔の自分ならもっといい勝負ができたことを思うと何とももどかしい。
ちなみにイメージのベアナックルは下り坂後のコーナーを曲がり切れず埒を突き破って何処かへ走り去ったが、まぁ些細なことだ。
「でも今日のレースの結果を見てトレーナーさんが決まるって話だったから、ちゃんとウマ娘としての走り方を教わればきっと前のように速く走れるようになるのね。楽しみなのよと言いつつ寮に到着なのね。学園と寮が道路挟んで向かいだなんて登下校が楽ちんなのね」
そうして到着したのはトレセン学園学生寮。
トレセン学園には栗東寮と美浦寮がありマキバオーが入寮するのは数奇なことに前世でも世話になった美浦トレーニングセンターの名を冠する美浦寮だ。
「ミドリマキバオーなのね~! 今日からお世話になるのよ!」
寮の入り口でそう挨拶するマキバオーを褐色肌の面倒見のよさそうなウマ娘が出迎えた。
「おっ、来たな期待のルーキー。アタシは美浦寮寮長のヒシアマゾンだ。気軽にヒシアマ姐さんって呼んでくれ」
「よろしくなのよヒシアマ姐さん」
「なかなかいいノリじゃないか。今日の走りといい気に入った!」
「んあ? ひょっとして今日のレース見てたのね?」
「おお! 身体のポテンシャルだけであれだけの走りができるたぁ大したもんだ。いつかはタイマンはりたいもんだな」
「その時はお手柔らかにお願いするのよ」
「ハッハハ! それはできない相談だが、まぁまだ先の話だな――っと、ちょうどいいタイミングだ。ライスシャワー!」
帰宅してきた小柄なウマ娘にヒシアマゾンが声をかける。
そんな黒鹿毛の毛並みのウマ娘――ライスシャワーはビクつきながらも返事を返した。
「は、はい!」
「今日からお前のルームメイトになる新入生のミドリマキバオーだ。ルームメイト兼先輩として面倒見てやれ」
そう言ってヒシアマゾンにずいと背中を押されたライスシャワーはマキバオーと対面する。
他のウマ娘と比べて小さいライスシャワーよりなお背の低いマキバオーに驚きながらもライスシャワーは丁寧にお辞儀する。
「初めましてライスシャワーです」
そんなライスシャワーの姿に何故かサトミアマゾンの姿が重なった。
同じアマゾンの名を冠するヒシアマゾンではなく何の共通点も見いだせないライスシャワーにサトミアマゾンの姿が重なったのかマキバオーは「はて?」と首をかしげる。
が、その疑問も次のヒシアマゾンの言葉で解消した。
「コイツこう見えて菊花賞と天皇賞春を勝ってるんだぜ。しかも両方断トツの一番人気を差すヒットマンスタイルでレコードタイム叩き出しつつな」
「GⅠ二勝!? しかもレコードタイム!? すごいのね!」
どおりでサトミアマゾンと重なるはずだ。
彼のスタイルも強い馬をマークしてゴール前で差すヒットマンスタイル。しかもGⅠ勝利数も――ライスシャワーは芝、サトミアマゾンはダートの違いやライスシャワーは現時点でのという枕詞はつくが――二勝同士。
不思議な縁もあったものだ。
「あ、ありがとう。でもライスその後が全然で……」
「そう言えばスランプなんだってな。まぁ、レースを走る限り勝ち負けは常に付きまとうもんだ。気を落とさず頑張れ」
「ぼくも応援するのよ。レコードタイムで勝てたライスシャワーが遅いなんてことは絶対ないのね!」
「ヒシアマゾンさん、マキバオーちゃん……」
二人からの温かい言葉にライスシャワーは瞳を潤ませるが、そこに場違いな腹の虫の音が鳴る。
「お腹減ったのね」
「ハハッ! そりゃあんだけデカイ音鳴らしゃあ、そうだろうな」
「くすっ。そうですね。じゃあ部屋に荷物を置いて食堂に行きましょう。ここのご飯すごく美味しいのよ」
「んあ~! りんご! りんごはあるのね!?」
「あるぞ。メインにサイド、フルーツにスイーツなんでもござれの食べ放題だ」
「それは楽しみなのね~!」
「アタシはまだ片さなきゃならない仕事があるから二人で行ってきな。ライスシャワー後よろしくな」
そう言って片手をあげて去るヒシアマゾンを見送った二人だったが、そこでマキバオーは何かを思い出したのか声を上げた。
「あっ、忘れてたのね!」
「学園に忘れ物?」
「うぅん、そうじゃなくて――これからよろしくなのよ。ライスシャワー」
差し出された手にライスシャワーは一瞬目を瞬かせるが次の瞬間には笑みを浮かべマキバオーの小さな手を握り返した。
「こちらこそ。改めてよろしくね、マキバオーちゃん」
こうしてマキバオーのトレセン学園での初日は過ぎていったのだった。