「つまるところ、ぶよぶよのアレはノイズってやつで、普通の兵装による攻撃はほとんど効果がなく、攻撃が加えられるのは聖遺物と呼ばれる古代文明のオーパーツの欠片を軸として作り出されたシンフォギアだけ、とな」
「あら、理解が速くて助かるわ」
2課への連行の後、突如現れて「裸になれ(意訳)」と言ってきた変態おばゲフンゲフンお姉さんから2年前の事件について色々と教えてもらった。
無駄に長い説明をまとめると、ノイズを相手どれる人材少ないから協力して、とのことだ。
因みに俺のことは説明できないとして、あまり踏み込んでもらわないようにしてる。別世界から来た、なんて面倒な説明はしたくないのだ。
さて、どうするよ俺、協力するか?響が牙を剥いて今にも赤い髪のおっさんに噛みつきそうだぞ。
だかな俺よ、もしかしたら目的達成の足掛かりになるかもしれないんだぞ?またとないチャンスだ、掴んで損はないだろう。
ふーむ・・・。
「・・・いいっすよ」
「クラフターさん!」
「本当か!?」
結局また、俺は折れることとなる。
でもただしゃ折れない。
「ただし、俺にもやることがあるので、それなりの自由時間は確保させてもらいますが」
「クラフターさん・・・!」
「その程度であれば、こちらも配慮させてもらおう!」
異世界にいるとはいえ俺もクラフター、ものづくりのための資材集めはしなければならない。ついでにどうせ着いてくるだろう響とのコミュニケーションをとれる、というわけだ。
「では、これからよろしく頼むぞ!クラフターくん!」
「うっす」
交渉成立、おっさんこと風鳴弦十郎のゴツい手を取り、握手をした。
「あ、ところでクラフター」
「ん?」
思い出したような声で俺を呼ぶのは、オレンジ色の髪の美人、さっき横槍をつきさした天羽奏だ。
「2年前、どうやってノイズを倒したんだ?」
「ん?あぁ、それは分かんねぇ」
「分かんねぇの?」
「正確には、推測はあるけど確証がないって感じ」
ノイズに普通の兵装は効かない、それは、俺の武器も例外じゃない。
ダイヤ剣を振ろうが矢を射ろうが、奴らには効果はなかった。が、しかし、ある方法でこれらの武器を普通から格上げできる。
名を、[エンチャント]。
レベル30とラピスラズリを消費してできるそれは、本来はありえない能力を武器、防具、あるいは道具に付与できる。
このエンチャントされた武器は、ノイズに効いた。
「エンチャント、ねぇ」
「その技術があれば、俺たちも戦えるのかもな」
「確かに」
エンチャ防具もあれば、安全にノイズと戦えるのでは?
「じゃあ今ちょっとアイテム化するんで、拾ってもらっていいっすか?」
「アイテム化」
ダイヤ剣は確かバックパックの中にあるはず。
あったあった。
「どぞ」
「え?どっから出した?というか小さ過ぎねぇか?」
アイテム化したからなぁ。
「ほらほら、拾ってみてくださいよ」
「う、うむ」
頷いた風鳴司令が地に落ちた剣を手に取り・・・手に取り・・・。
「・・・拾えん」
「ダメ?え、なんで?」
回復のポーションが手渡せるのは、6年前のアメリカで分かってるけど、んー。あっ。
「響」
「はい、なんですか?」
「拾ってみ?」
「分かりました」
アイテム化した剣に響が近づき、剣が、
「拾えた、だと・・・!?」
「あ〜、なるほど、そういうことね」
「あ、分かります?櫻井さん」
「まぁね。響ちゃん、その剣、今度は奏ちゃんに渡してくれるかしら?」
流石天才を自称するだけはある。俺の意図してるところを理解してくれてる。
「え、嫌です」
「あのさぁ・・・」
響ちゃんは今日も本調子です。
代用に鉄剣渡すか。
「仕方ない、奏さん、これ」
「お、おう。・・・持てた?」
「やっぱり」
これでほぼ確定。
「じゃあ最後に翼さん、持ってみて」
「あぁ・・・持てる、ということは」
「そういうことっすね」
要するに、この世界では俺のアイテムは、聖遺物扱いになるわけだ。
「これじゃ増兵は無理ね」
「上手く、いかないものだな」
夜も深まってきた。俺はいいが、響は帰らなければいけない。帰らなければならないのだ。
「だからな?寮近いんだしそろそろ帰れよ」
「い〜や〜で〜す〜! 私が帰ってもクラフターさん残るんでしょう?」
「カ、カエルヨー」
「絶対帰らないじゃないですか!」
実の所、まだ気になることはある。あの痴・・・少女のことだ。鎧も気になるし、何より、俺と響を狙ったってのがわけが分からない。こっちの情報が漏れたのか、それとも2年前にバレたのか。
ここら辺の情報交換は要ると思う。
ただ、あの少女の話をすると、響がね、うん。だから帰ってもらいたいんだけど。
「むー・・・」
無理っぽいね。しゃーない、諦めようか。
「うんじゃ、俺も帰りますよ」
明日辺り、どうせまた呼ばれるだろうからな。
「送りましょうか?」
「いいや、すぐに帰れるんで」
呪文[帰還]。最後に寝た地点に瞬時に帰る魔術だ。
「それでは?」
「は?」
呆けた顔を最後に、視界がすっと切り替わる。この説明もまた明日、と。
さて、今日の成果はいろいろあったけど、1番の成果、というかショッキングだったのは・・・。
「・・・ドロップなしかよ」
クラフターとして大切な情報は、その一点だけだった。
本格始動はもうちょい先になりそう。