朱人 煌(アカヒト コウ)は仲間たち(全員オレ)と共に巨悪(中身オレ)に立ち向かう!
物語は始まったばかりだ!

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主役以外全部オレ!〜メインヒロインもサブヒロインも黒幕もラスボスもライバルも親友も全部オレがやります〜

「みんな……覚悟は良いか?」

     

 周囲に爆発音にも似た轟音が響き渡る中、まるでそんな状況を屁にも思わぬような人当たりの良さそうな笑みを浮かべた少年――朱人 煌(アカヒト コウ)は仲間たちに問いかける。

 

「えぇ、もちろんよ! コウがここまで頑張ってくれたんだもの、今更怖気づいてなんていられないわ!」

 

 それに最初に答えたのは、美しい長い銀髪を携え、少し切れ長な青い瞳の目を持った、緑色の地味めなパーカーを着た少女――マインだった。

 

「コウくんが見てるんだもん! お姉ちゃん頑張っちゃうよ!」

 

「コウ様のご命令ならば、いくらでもこの命かけてみせます……あの時のようにただ一言『がんばれ』と私に仰ってください」

 

「コウちゃま、モテモテじゃねぇか。おじさん妬けちゃうねぇ……いっちょ特攻でもしてカッコいいとこでも見せちゃうかねぇ。どうよ? ユーもモテナイ男同士挑戦してみるか?」

 

「嫌ですよ! 特攻とか! てかなんでみんなこんな覚悟ガンギマリ!? オレだけでも絶対生き残ってやるからな! まだまだやり残した事いっぱいあるんじゃ! 畜生、美少女だらけのパーティだからってこんなとこまで付いてくるんじゃなかったぜ!」

 

 それに仲間たち――姉属性持ちで金髪にその両側についた赤いリボンに童顔に巨乳という萌え属性てんこ盛りの上風 深瀬(ウエカゼ フカセ)、無口で本好きというどこかで聞いた要素のみで構成させてている青髪ショートの女の子の一昔 早里(ヒトムカシ ハヤリ)、ハゲで筋肉ムキムキでサングラスをかけた明らかに頼りになりそうな黒光りナイスガイのアニージャ・キンミート、三枚目で軽薄な言動で女性陣から冷たい目で見られるコウの親友の音駒 裕二(オトコマ ユウジ)――がそれぞれの形で答える。

 

「フフフ……惜しいな。こんな愉快な連中を全員地獄に落とさなければいけないなんてな。せめて楽に死なせてやるからそこで動かず談笑でもしてな」

 

 対するは、いかにも悪そうな顔をした細めでロン毛の黒服の男――テキダーナ・イッショウ。この周囲の轟音の元凶とも言える人物である。

 

「ふざけるな! ここにいる誰も死なせはしないぜ! イッショウ――お前も含めてオレが全部救ってやる!」

 

「……オレを救うだと? 面白いことを言う! すべてオレ様の手のひらの上のお前に何ができるというのだ!」

 

「お前を止められる! オレにはそれが出来る! こんなに良い仲間に囲まれてるんだからな!」

 

「フハハハ! 面白い! やってみろ! 一番の敵は無能な味方だということを思い知らせてやる!」

 

「ああ、いくぞ。喰らえ! 必殺『除蛮業閃光弾』!」

 

「な……なんだと! こ、この技は!」

 

 そんなやり取りが繰り広げられる。

 まるで、主人公とボスの最終決戦かのような熱さだった。

 ……ああ、なんだか飽きてきたな。なんだ、この茶番。

 

 ――そう、茶番である。

 

 この場において心の底から真剣であるのは、なんと先程必殺技を出したコウだけだ。それ以外の登場人物は誰一人として真面目にやっていない。否、そもそもそんな次元の話ではないのだ。

 

 『登場人物』。悪意のある表現のように感じるかもしれないが、何一つ間違っていない正確な呼び方である。

 メインヒロインのマイン、サブヒロイン①・②のフカセとハヤリ、おっさん枠キンミート、親友枠のユウジ。散々長々とキャラクター説明をした彼らであるが全員等しくこの表現が当てはまる。

 

 彼らは一人の人物が綴ったキャラクターに過ぎないのだ。

 それは敵であるイッショウですら、そうだ。

 それっぽい過去と性格と見た目を設定された、最初の敵役。それが彼だ。

 

 ――まどろっこしい説明はやめて、真相を言おう。

 

 彼ら、彼女らは全員、あるたった一人の人物が演じているキャラクターに過ぎない。

 言ってしまえば、全員同一人物だ。

 

 要するに、そう、彼らは

 

 

 

 メインヒロインもサブヒロインも兄貴枠も親友も敵も、『主役』であるコウを除いて――、

 

 

 ――全部オレなのだ。

 

 

 

◆◇◆

 

 オレがこの世界で目覚めた時に最初に思ったことは、『神様になった気分だぜ』というものだった。

 

 なんとなく、この書き出しで分かるかもしれないが、オレは異世界転生をした人間というやつだ。

 どんな世界に転生したか、みたいな世界観説明は後に回すとして、まずはオレがどうやってこんな所業――主役以外全部兼任なんて離れ業をやってのけたかの説明をしたいと思う。

 

 まず最初に特筆すべき点と言えば、オレは透明人間である、と言うことである。

 何を言っているんだ、となるかもしれないが、そのままの意味だ。オレは誰にも見られないし、触れない。幽霊みたいな状態なのだ。

 それって転"生"って言えるのかと思うが、実はちゃんと生きている。そのへんの説明も後々出来たらなと思うが、とにかくオレは神様視点で自由自在に物事を見れるのだ。(空を飛んだりは出来ないけど)

 

 そして、二つ目。これが本題だ。これがオレがこんな荒業をやってのけられる理由。それはオレの持つ能力『脚本作り(ブックメーカー)』によるものだ。ちなみにこの能力名を付けたのはオレ。今後出てくるであろう登場人物名や技名、能力名も基本的に全部オレが考えたものである。

 

 話が逸れたが、この能力はもうチートなんてもんじゃない。

 オレの考えた(見た目や性格の設定)キャラクターを整合性を持たせつつ、現実に生み出すという能力。それがこの力だ。

 

 例えば、オレが『金髪巨乳の美女が欲しいな〜』と考える。その後に、『そんな美女がオタクに優しいギャルだったならなお最高だな〜』と考えたとする。そうすると、そんな人物が現実に実際に生まれてくる。しかも、元からそこに居たかのように、周囲に違和感を持たせることなく自然に、である。

 

 要するに、

 こんな見た目と性格の子が欲しい!→実際に生まれる→某月島さんもビックリの現実改変能力で元から居たかのように現実と認識を改変

 

 という手順の能力である。

 

 ただし、ここで問題もなるのは、この手順で生まれた金髪美女に自由意識が無く、ラジコンのようにオレが動かして喋らせなければならないという事だ。

 オレ自身がオタクに優しいギャルを演じなければならないのだ。

 

 これを知ると、先程のイッショウとの戦闘シーンでオレが如何に頑張っていたかが分かるはずだ。

 コウ以外の登場人物6人全てのセリフを考えて(しかもキャラクターに合った言動で)、バトルまでしなければならないのである。

 もう、大忙しで脳がパンクしてもおかしくない。

 

 実は、これの改善案も考えているのだが、まあそれも後にしよう。

 

 そろそろ、どうしてこんなに頑張るのか、理由を述べようではないか。

 オレはこの能力で何がしたいのか。

 

 まぁ、普通に察しているだろうが、オレの目的は、朱人 煌――彼を主役にした物語を作ることだ。

 

 オレは昔からフィクションに憧れていた。

 何か非日常な事が明日から起きないかと、毎日毎日ただただ待つだけの人生を送っていた。

 小中高時代は、『この教室にテロリスト乱入とかしてこないかな〜』とか『美少女と運命的な出会いしないかな〜』とか妄想をし、大学生になったら『何かループに巻き込まれたりしないかな〜』『面白い奇人と友達になって奇妙なキャンパスライフおくれねぇかな〜』とか妄想していた。

 社会人になれば、その妄想は、『異世界転生して無双できねぇかな〜』になった。

 

 ついに今生で非日常的な人生を送ることを諦めたのである。

 そして、実際異世界転生してみて、分かる。  

 人生とは劇的ではないのだ。大抵の人間が無意味に生まれて、無価値に死ぬのだ。

 

 だが、オレにとってその結論は悔しくて仕方が無かった。物語の主人公のような人生を誰も送ることが出来ないなんて、あまりにもあんまりじゃないか。

 あんなに子供の頃から絵本なり、アニメなり、ドラマなり、映画なり、フィクション漬けにしておいて、いざ大人になったら『現実を見ろ』だなんて、酷い。残酷すぎる。

 

 だから、オレは証明してやるのだ。

 自分が何もしなくとも、人は非日常に巻き込まれることが出来るのだと。

 漫画のキャラクターのような人生を送る事が出来るのだと。

 

 それをオレはコウを使って証明してみせる。

 

 人生は劇的でドラマチックなのだと。

 

 きっと、こんな悍ましい能力を生まれてきたのも、そのために違いない。

 

 しっかりと伏線を張って、まるで週刊連載のような引きの効いた面白おかしい人生をコウに体験させる。

 

 それがオレの目的だ。

 

 さぁ、次はどんなキャラクターを作ろうか

 どんなストーリーを彼に追わせようか

 

 最近流行りの曇らせ主人公にしてやろうか、それとも王道の熱血物語の主人公にしてやろうか、あんまりエグいのをやらせると精神が心配だ。彼だけはキャラクターじゃない生身の人間なのだから。

 

 でも大丈夫……。そう大丈夫だ。お前も言ってたもんな『仲間がいるから大丈夫』って。

 ああ、そうだ。仲間がいる。お前が困ったら手を差し伸べる仲間たち(オレ)がいる。物語の主人公が立ち止まってたらいけないもんな。オレ(仲間たち)がそうする。

 

 さぁ立てよ! コウ! まだまだ物語は終わらないぜ!

 

 

 俺たちの戦いはこれからだ!

 

 

 




※短編の理由

主人公の能力が何でも出来すぎて面白くできる自信がない。

なんか評判良かったら続ける……かも?

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