流星との出会い   作:zawadinosaur

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前回投稿から一週間以上経ってて驚きです…。 新キャラの立ち絵と一緒に進めてたので時間がかかりました。 それでは今回も駄文ですがどうぞお楽しみくださいませ!


第三話『CCSRカルコッツ諸島支部 Part.2』

「さて、何にしようかしら。」

 

レイシアをお使いに向かわせた後、ヘレナは施設内の食堂を訪れていた。

理由は二つ。

一つは至極単純、小腹が空いたため。

もう一つは、レイシアとの接触を極力避けるためだ。

今彼女に会えば、間違いなく先程の話を掘り返され、全力で引き止められる。彼女の押しの強さと、人並外れたド根性は並大抵の物事を押し切ってしまえる。

加えてヘレナは、何かと押しに弱いところがあるのを自覚している。ここで押しに押されると、間違いなく今回の件から手を引くことになってしまう。それだけは、避けたかった。

 

──ヘレナがメテオールに感じた違和感。

今はどうしても、この胸騒ぎの正体を突き止めたかった。レイシアには悪いが、今回ばかりは諦めて欲しい。

そんなことに思考を巡らせながらメニューに目を通していると、

 

「ヘ〜レ〜………ナッッ!!」

 

「ひやぁあぁッッ!!??」

 

勢いよく後ろから抱きつかれる。

しかも、その抱きしめ方は一般的な『あすなろ抱き』ではなく、その両手はヘレナの胸にばっちり当たっている。それどころか、何なら揉んでいる。

 

「う〜ん、相変わらずAだね。」

 

下手人は悪びれる様子など微塵もなく、今の体勢を崩さない。

加えて、専門家の如く人様の胸に最低ランクの評価を下している。

一方、柄にもなく変な声を出したヘレナを、周りの職員たちは怪訝そうな顔で見ている。しかも、この光景に男性職員は鼻の下を伸ばしながら、頬を赤らめガン見している。

羞恥で顔が燃えるほど熱くなり、みるみるうちに朱に染まる。慌てて手を振り解き、ヘレナは真っ赤になった顔で背後を睨み付ける。

 

「ナ〜イスリアクション!こっちも驚かせた甲斐があったね!」

 

「……ッッいつもこういうのはやめてって言ってるでしょ、リーラ!!」

 

振り返ると、灰色のスーツに身を包み、黒髪をポニーテールにしたオペレーターがいつも通りのヘラヘラとした様子でそこにいた。

 

「いや〜?オペレーターとして隊員のメディカルチェックはしておかないとね〜。」

 

「っ貴方ね……!!!」

 

いけしゃあしゃあと屁理屈を捏ねる彼女に、ヘレナは抗議の目で睨みつける。

 

彼女の名は、リーラ・フロイツ。

ヘレナの隊を担当するオペレーターだ。

本来、隊員とオペレーターとの接点は少ない。任務中に下す指示や指令が精々だろう。だが、ヘレナはレイシアが部隊に来るまでは彼女と二人三脚で任務をこなしてきた。

任務の度に話す機会も多く、彼女がかなり社交的な性格であったため、任務外でも頻繁に会うようになった。そうして、同僚でもあり友人でもあるような今の関係が出来上がるに至ったのだ。

 

「ま〜ま〜そうカッカなさんなって お詫びに何か奢ってあげるからサ。」

 

そう言ってリーラが目配せする先にあるの、カルコッツ諸島限定の恐竜スイーツの出張店。期間限定品がこれでもかと揃っている。

 

「……ケーキとマカロン。一番高いやつ。」

 

「はは! 上等!」

 

 

───────────────────────

 

「それで?最近レイシアちゃんとかイズモさんとは上手くやれてるの?」

 

リーラはナンを片手にカレーライスを美味しそうに頬張りながら、ありきたりな質問を投げかける。

カレーライスにナンというのはどうかと思うが、彼女は全く気にしていない様子だった。普通ナンにライスは付けないだろう。

 

「まあね。イズモはともかく、レイシアとは上手くやれてるわ。雑用みたいなことをさせてるのに文句も言わずにいつも楽しそうにしニコニコして……本当にいい子よ、レイシアは。」

 

対するヘレナは、コーンスープにパンを浸しながら回答を口にする。

やはりパンにはスープが一番合う。目玉焼きやジャムも嫌いではないが、やはり浸パンが至高というものだ。それに、甘いものを食べるのなら腹は完全に満たさないほうがいいというヘレナの中での暗黙のルールもある。

 

「レイシアちゃん可愛いよね〜。食べちゃいたいくらいだよ。」

 

リーラはうっとりしたような顔で、とんでもないことをサラッと口にする。

 

「………冗談よね?」

 

「冗談冗談。私はどっちもイケるクチだけど、そこまで節操なしじゃないよ。」

 

彼女が言うと、冗談が冗談に聞こえない。

実際、彼女の交際相手は男性だったり女性だったりしていた。

 

「いきなり人の胸揉んでおいてよく言うわね…。」

 

「いやいや、ヘレナのは胸じゃなくてぜっぺ」

 

瞬間、リーラの頬を何かが掠めていく。

その数瞬後、カッという乾いた音が聞こえた。冷や汗を流しながら振り向くと、壁にフォークが突き刺さっていた。

誰が投擲したかは、言うまでもないだろう。

 

「………何か言った?」

 

ヘレナのコンプレックスは、その胸部。

絶壁、滑走路、永遠のゼロなどとリーラからは揶揄されるほど貧相。

加えて、なぜか彼女の周りはレイシアやリーラなど無駄に発育が良い者が揃い踏みしていることもそれに拍車をかけている。

 

「怖ぁ……ヒスはモテないよ?」

 

「いいわよ。今はそういうのは必要ないし。」

 

拗ねたような口調でヘレナはショートケーキにフォークを突き刺し、口に運ぶ。

生クリームの甘味とイチゴの程よい酸味が口いっぱいに広がる。

やはりスイーツはどんな時でもヘレナの味方だ。そのカロリーは、胸には全く行かないのだが。

 

「冷めてるなぁ〜。もっとがっつきなよ〜折角美人さんなんだから。」

 

リーラは苦笑しながらまた一欠片のナンを口に運び、ヘレナはケーキに続いてトリケラトプスの頭骨を模した形のマカロンを頬張る。

男女間での恋愛事情など、現在のヘレナはさらさら興味がない。

だって、今の自分にはやるべきことがある。

あの黒いクロノスを葬るまでは、戦い以外に無駄なことをしたくないのだ。一秒でも早く奴の息の根を止めて、被害の拡大を食い止めなければ。

それまでの間、恋愛にうつつを抜かしている暇なんてない。

 

───そう、そんなもの、必要ないんだ。

 

「……………ところでリーラ。例の件、進展はあった?」

 

瞬間、空気が変わる。

先程までの和気藹々とした雰囲気は消え、代わりに刺々しい雰囲気が場を包む。寒気すら感じる空気の中でも、リーラは相変わらずの様子でカレーを口にしている。

 

「…こっちも色々忙しい身なんだ。まだ完全な回答は出せないよ。」

 

彼女の答えに、ヘレナは気持ちが沈むのを感じたが、仕方がないとは理解している。

リーラはヘレナの隊を担当してはいるが、決して専属というわけではない。彼女は他の隊のオペレーターや、大規模作戦の立案にも回るほど多忙なのだ。そんな中でどこに居るかも分からない存在の調査をこなすのは、さぞ難しかったのだろう。

 

「ただ。」

 

リーラは指についたカレーを軽く舐め取ると、切ったはずの言葉を続ける。

 

「ヤツが、最後にいた場所なら割れてる。そこからどう移動したのかまでは流石に知らないけどね。」

 

ヘレナの仇敵であるクロノス──通称『オケアノス』。

30mを優に超える巨体と、異常なまでの食事量。加えて、どの海域にも出没する環境適応能力と、巨躯に見合わぬ神出鬼没な生態。

既に50を超える時間を起こしているにも関わらず、どうやってここまで発見に至らないのか。そのカラクリが判明しない限りは場所の特定には繋がらないのだろう。

最後にいた場所というのも、恐らく数週間前に起こした被害が手がかりなのだろう。東西南北どの方角へ向かったのか。

次に見つかるのは、一体いつになるのかも分からない。

煮え切らない思いを抱えながらも、ヘレナは自身の感情に蓋をする。

心の奥底の暗い感情が、より濃くなるのを感じながら。

 

「………そう。 ありがとう。じゃあ、それだけでも教えて。」

 

「ん、後で端末に送っとくよ。」

 

そう言うと、リーラは最後の一欠片のナンを口に放り込むと、全ての皿をまとめる。一方ヘレナはすっかり緩くなったコーンスープを飲みきり、空き容器をゴミ箱に投げ入れる。

互いに昼食を済ませ、この会話の時間も終わりが近付いていた。

 

「それじゃあ、私はもう行くわね。」

 

「うん、またね…いんや、また今夜の任務の時に、か。」

 

「ええ。」

 

メテオールの調査及び討伐の任務に当たるのは、今夜の予定だ。

つまり、今日中にはまた言葉を交わすことにはなるのだろう。

 

「本当にレイシアちゃんの手助けいらないの? 一応、位置情報とかのアシストは私がするけどさ、本当に大丈夫なの?」

 

「……ええ。勘なんだけど、この戦いで何か掴めると思うの。」

 

ヘレナの言い分にリーラもあまり納得していないようだったが、それでも構わない。このモヤモヤが晴れれば、それでいい。

ヘレナは席を立つと、食堂の出口に足を向ける。

 

「あ、そうだそうだヘレナ。」

 

リーラは思い出したかのようにヘレナを呼び止める。

突然の制止に、ヘレナは足を止め振り返る。

 

「何?」

 

 

「───ヘレナはさ、今幸せ?」

 

唐突なその質問に、一瞬呼吸が止まる。

 

「………どう、いう…意味?」

 

それが、やっと出てきた声だった。掠れて、震えた彼女らしくもない弱々しい声。

 

(…………幸せ?)

 

一体どういう意味で、いや、そもそもどういう意図でそんな質問を。

彼女からこんなことを聞かれたことは今まで一度もなかった。

リーラはヘレナの過去を知っているが、今までそんなことを気にする素振りもなかった。

それなのにいきなりどうして、そんな、残酷な質問を。

だって、ヘレナにとっての幸せはもうヘレナの手元にはないのだから。

それは彼女だって知っているはずなのに。

そんなヘレナの答えに、リーラは困ったように、なんだか悲しげに笑った。

 

「………いや、いいよ。その答えは今聞かなくていい。それじゃ。」

 

リーラは席を立つと、ヘレナと逆方向に行ってしまった。

ひらひらと、こちらに手を振って。

 

 

 

─────────────────────

 

「…………幸せ…か。」

 

出口への通路で、ヘレナは先程のリーラの言葉を反芻する。思えばこれまで、考えたことがなかった。

……10年前、全てを失ったあの日から、ずっと我武者羅で知識や力を磨いて、戦ってきた。機械的に、ただただノライバーと戦ってきた。

いつか復讐が叶うと、この心が救われるものだと信じて。

幸せかどうかなんて、これまでの生活に介在する余地は欠片もなかった。

ヘレナにとって幸福と呼べるものは10年前に全部、粉々に壊されて水泡に帰したのだから。ヘレナは暗い思考に向かっているのに気付き、頭を軽く振って脳内の暗雲を振り払う。

 

「とりあえず…発掘場でも巡ろうかしら。」

 

現在は大体昼過ぎごろ。

発掘場が閉鎖されるまでまだ暫く時間がある。時間潰しはこの島では事欠かない。

ひとまずはストーンウッズにでも行って、あのエメラルド色の湖を見よう。あれを見ていればきっと、時間もあっという間に過ぎていくだろう。

 

「…!」

 

そんなことを考えていると、通路の先に白衣を纏った大男が、その鋭い目つきを携えて佇んでいるのが、視界に入った。

 

「…………チッ。」

 

ヘレナは反射的に舌打ちをする。

別の通路がない以上、必然的に彼とすれ違わなければならない。

ヘレナが最も忌み嫌う男。

己が師、イズモと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜一方そのころ、隊室前にて〜〜〜

 

伽藍堂になった隊室前に、レイシアは頬を膨らませて立っていた。

 

「やっぱいないじゃないッスかぁぁぁあ!!!!!!!隊長のバカぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!」

 

ヘレナへの抗議の叫びが、施設中に虚しく響き渡る。

頭のアホ毛も、ローリング回転していた。

 




リーラさんのCVは植松佳奈さんかな〜って思ってます。ちなみにヘレナさんのCVは早見沙織さん、レイシアちゃんは金元寿子さんで妄想しておりまする。
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