流星との出会い   作:zawadinosaur

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更新です! 今回はバトル手前で切ることになってしまいました…。申し訳ないっす。 あと変更点として、ヘレナさんの手持ちのイテツク君がクビになって代わりにスーパースが入りました。


第七話 流星襲来

 

あの後、一度家に戻り、シャワーを浴びて短時間ではあるが仮眠をした。

その間、ヘレナの頭の中にあったのはあの危険ノライバー、『メテオール』のことだけだ。

自分は一体何故、ここまであの個体に興味を惹かれているのだろうか。

同情?

それとも好奇心?

それとも、もっと別の何かだろうか?

昼間からずっと言語化出来ていないこの気持ちの答えを出そうと何度か思考を巡らせてみたが、結局は無駄足に終わった。

 

きっと、これは今夜の戦いで分かるのだ。

だからヘレナは迷うことなく戦いに向かうことが出来る。

時刻は既に午後8時を回った。

仮眠で着崩れた制服を新しいものに取り替え、メダルケースを腰に提げる。

 

「働いてもらうわよ、ハダル、レグルス。」

 

頼りになる相棒たちに声を掛ける。

返事はないが、彼らもやる気満々のはずだ。

身支度を全て済ませて、玄関へ向かう。

 

「行ってきます。」

 

いつも通り両親の写真に声を掛け、家を出て向かう先はヘリポート。

静まり返った街は、どこか寂しげでもあるが、まるでこの街を占有しているような感覚もあってなんだか新鮮に感じる。

 

リーラの見立てでは、メテオールは今晩レインボーキャニオンのゴンドラ付近に出現する。

任務のためには自宅のあるアバラータウンからズーガイタウンまで向かわなければならない。

ヘレナは飛行型のリバイバーを所持していないため、パークのヘリを使わなければ自由に目的地まで行けない。

常日頃からリバイブしようとも思っているのだが、意外と時間がなくて出来ないのが現状だ。

 

ヘリポートには既に、あらかじめ手配しておいたヘリが待機していた。

ヘレナは迷いなく後部の座席に乗り込む。

 

「ズーガイタウンまでお願い。」

 

「了解。」

 

横顔しか見えない操縦士は短く返事をすると、機械のような正確な手付きでテキパキと離陸の準備を始める。

プロペラの回る音がし始めると、ヘリの機体が少しずつ浮き始める。

何度も味わっているはずなのだが、離陸の瞬間の身体が内側ごと浮き上がるような感覚にはいつまで経っても慣れない。

ヘレナは軽くため息をつくと、窓ガラスにもたれかかり、眼下の光景をぼんやりと眺める。

人っこ1人いない空間で、月の光を反射する噴水、夕闇の中悠然と立ち聳えるギルド。

 

ーー夜の街は、殊の外昼よりも美しく見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お気をつけて。」

 

「ええ、ありがとう。」

 

目的地に着きヘリを降りると、すぐにインカムを耳に入れ電源を入れる。

ピピッという電子音が少し鳴る、と直後にノイズ音が流れ、接続音が響く。

 

「……リーラ、聴こえてる?」

 

『ああ、感度バッチリだ。 サポートならいつでも出来るよ。』

 

耳元で聴こえる友の声に安堵しながら、ヘレナはレインボーキャニオンの入り口を目指す。

 

「……!」

 

そこには、予想外の人物が通せんぼしていた。

いや、ある意味では予想通りではあるのだが。

 

「………何でいるのよ。」

 

「当ったり前じゃないッスか!! もし隊長が死んじゃったらウサギなアタシはロンリネスで死んじゃうッスよ!!」

 

入り口ではレイシアが頬を膨らませ、鼻息を荒くしながら仁王立ちしていた。

彼女に今日の任務場所は伝えていなかったはずだ。

それなのにここに彼女がいるということは。

 

「……リーラ、教えたわね?」

 

『あはは…どうしてもってせがまれちゃったからね〜。』

 

予想通りだ。

リーラはいつもレイシアに甘い。

この間も、リーラにしか教えていなかったケーキの隠し場所が何故かレイシアに知られていて、しかも完食されていた。

ヘレナとて、彼女の全力おねだりに耐えられる自信はないわけだが、いくら何でも口が軽すぎやしないだろうか。

だがまあ、来てしまったものは仕方がない。

起きてしまったものは変えられない。

 

「………いるのはいいけど、手は出さないで。

今回は私一人でやる。 これは命令よ。」

 

不本意だが、ヘレナは冷酷に命令を下す。

これが自分本位なものとは分かっているが、こればかりは譲れないものだ。

 

「…………隊長、ホントにどうしたんスか?

何か怖いッスよ…。」

 

レイシアの不安そうな瞳に少しだけ罪悪感を覚えながらも、ヘレナは決意を固める。

 

「…大丈夫よ、安心して。 絶対戻ってくる。

ーー今日、何か変わりそうなの。 私が今まで想像もしなかったような何かが。」

 

運命、いや天命というやつだろうか。

不思議と自分は今日、何をすべきかがハッキリと分かる。

その果てにあるものは、まだ掴めないけど、進むべき方向があるのなら進むだけだ。

ーーそう、いつもと同じだ。

 

「お願い、レイシア。 私一人で戦わせて。」

 

「〜〜〜〜〜卑怯ッスよ……そんな顔でそんなこと頼まれたら断れるわけないじゃないッスか………。」

 

ヘレナの言葉にレイシアは喉元までせり上がってくる不満を呑み込むと、大きくため息をつく。

 

「分かったッス……隊長が勝手なのはいつものことッスからね……。 でも条件が2つあるッス!!」

 

耳の痛い評価が胸に刺さる。

鈍感なレイシアはそう思ってないとも思っていたが、現実そう甘くはないらしい。

そんなヘレナを他所にレイシアは高らかに腕を振り上げると、声高に条件を宣言し始める。

 

「一つ! 絶対に無事で戻ってくること!! 二つ! 任務終わったらアタシにお菓子いっぱい奢ってくれることッス!!」

 

どんな条件を出すのかと思えば、彼女らしい可愛げのあるものだった。

いつも通りのレイシアに思わずヘレナは頬を緩める。

 

「ふふ、分かった。 任せて。」

 

レイシアの柔らかな桃色の髪を軽く撫でると、ヘレナは発掘場へ足を向ける。

 

「えへへ、約束ッスよ。」

 

レイシアは子犬に表情を緩ませると、大きく手を振りながら戦場に向かうヘレナを見送った。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

レイシアと別れたヘレナは、レインボーキャニオンの吊り橋を渡っていた。

絶対に橋が落ちることはないと分かってはいるが、ここを通る時は肝が冷える。

 

『それにしてもさ、2人きりの任務ってかなり久しぶりじゃない?」

 

恐る恐る橋を渡るヘレナを他所に、リーラは楽しそうに話題を振って来た。

 

「…そうね。 一年振りくらいかしら?」

 

ヘレナは気を紛らわすためにリーラの会話に応じる。

話に集中していれば、眼下の光景を見て背筋を凍らせることもないだろう。

 

『うんうん。 最後の任務は何だっけね? なんかすごい大変だったような気がするんだけど。』

 

「ゴルゴの群れの退治よ。 あれはキツかったわ。」

 

『あーそうそうそれそれ!! いや〜あれは流石にヤバかったよね〜。 イズモさんホントに鬼畜なんだなって思ったよ!』

 

「…………………………本当にね。」

 

ヘレナはあの時のことに思いを馳せる。

突然イズモに森に呼び出されたかと思ったら、そこにいたのは野良ゴルゴの群れ。

無論、そこにイズモはいなかった。

襲いかかってくるゴルゴを一体ずつ倒し、ギリギリのところで競り勝った。

任務中、三途の川がチラチラ見えていたのをよく覚えている。

それほどまでに過酷なものだった。

だというのに、こんな厄介ごとを押し付けたイズモはいつものようにどこ吹く風。

あの時ばかりは流石に殺意すら覚えた。

 

……と、思い出話はここまで。

橋を渡りきり、ようやく安定した足場にありつけた。

 

「ここからどこに向かえばいいの?」

 

『このままゴンドラ付近まで行ってくれ。』

 

「了解よ。」

 

 

 

 

 

 

 

「…これは酷いわね。」

 

『全くだね。 あんなゴンドラには乗りたくないもんだ。』

 

レインボーキャニオンのゴンドラがなくなっている。

綺麗に寸断されたワイヤーの遥か先の地面に、ゴンドラのカゴがひしゃげているのが確認できる。

これに乗っていたらと思うとゾッとする。

これは数日の間、修理のために発掘場を封鎖しなくてはならないだろう。

そんなことを考えながら下を見ていると、

 

『……!!! 反応近いよヘレナ!!』

 

「……………分かってる。」

 

リーラが慌てながら声を荒げる。

だが、ヘレナも異常には気付いていた。

瞬刻前から聞こえてくる翼竜の飛行音。

いや、それと類似点はあるがどこか異質で歪な風切り音。

間違いない、メテオールだ。

恐らく、こちらの思惑を察知し迎撃をする気なのだろう。

 

『接敵まで3…2……1!! 来るよ!!』

 

「おいで、ハダル、レグルス。」

 

腰のケースからメダルを2枚取り出し、指で弾く。

メダルが白く発光すると、シノサーロが現れ、それに続いて強烈な地響きとともに巨大な竜脚類が姿を現す。

見上げるほどの巨大な黒い身体、背中にビルを背負ったスーパース、ハダルが特大の咆哮を上げる。

咆哮が地を揺らすと同時に、空気を揺らしながら赤い流星が飛来する。

報告書通りの歪な翼、通常個体より比較的大きな体躯、そして敵意に支配された双眸。

満月をバックにした、いっそ絵画のような妖しさ。

危険ノライバーの一角、メテオールがその姿を現した。

こちらの存在を直接認めると、メテオールは耳をつんざくような声を上げる。

それを皮切りに2匹の恐竜は臨戦態勢に入る。

互いの目に映る敵を殲滅するために。

 

「さあ、かかって来なさい。 ここで終わらせてあげる。」

 

ヘレナは突撃してくる紅に、冷酷に宣言した。




次回こそバトルです
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