彼は神社に居た。   作:華メル

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一刻

 今でも思う。

 

 日が落ち、周りが見えづらく暗闇に沈み始めた神社に居た一人の青年。

 

 神主のような服装をした自分よりもいくつか年上に見える青年、暗くて顔が見えづらいが優しい笑みを浮かべながらこちらに向かってくるのだと気づいた。

 

 

 「大丈夫かい?この時期は日が落ちるのが早い。あまりにも帰るのが遅いと親御さんが心配してしまうよ。」

 

 

 優しい口調、正面に立ったにも関わらず相変わらず青年の表情は暗くて分からない。

 

 少し不気味な印象を抱いたが「だからもう帰りなさい」と優しく諭す青年にすんなりと従った。一言二言言葉を交わし、お礼を言い帰ろうとするが、突如として飛び立ったカラス達に驚き、足がすくんでしまう。

 

 

「君が良ければ僕が家まで送ろう。……なに、長い時間離れる訳でもない、それにこの時間に神社を訪れる者もいないだろう。」

 

「でも──」

 

 

 さすがに初対面に人に家まで遅らせるのは気が引けて断ろうとするが、突如強い風が吹き、それを受け周りが発する音が私を笑っているかのような気がしてならない。

 

 結局私はこの人に送って貰うことになった。

 

 夜道を二人でゆっくりと歩く。初対面にも関わらず何故か一緒に居ると安心感のある彼を不思議に思いながらいつもよりも暗い帰り道を歩く。

 

 何故だろう。普段の私なら初対面の人をここまで無警戒に信用出来ないのに。

 

 私よりも背の高い彼の表情は上から照らす街灯の光で影がかかり口元しかうかがえない。

 

 話題も無く、急ぐわけでもなく、ゆっくりと、音も無い住宅街を二人で歩く。口元から察するに彼は笑みを浮かべているのだろう。

 

 

「あ、あの……。」

 

 

 私の言葉に反応し彼はゆっくりとこちらを見下ろす。

 

 背の高い彼が見下ろすことで顔全体に影がさす。

 

 

「私の家ここなので……。」

 

「無事に家までつけてよかった。今度神社に来る時はもう少し明るい時間に来なさい。あまり、女の子が遅い時間に出歩くものでもないしね。……では、また……。」

 

 

 一方的な会話。

 

 彼はまるで吐き出すかのように言葉を投げてきた。そして、背を向け歩き出す。

 

 

 「あ、そうそう美竹さん。」

 

 

 急に振り向き名前を呼ばれドアを開けようとのぼしていた手が行き場をなくし宙を仰ぐ。

 

 そんな私の様子をおかしく思ったのか彼は笑みを浮かべ言葉を紡ぐ。

 

 

「君はもう一人で夜に外を出歩いてはいけないよ。」

 

「え、どういう──」

 

 

 私の言葉に被せるようにお母さんが扉を開け飛び出してくる。その様子は酷く慌てた様子で、顔も少しやつれていた。

 

 

「蘭!!……よかった……よかった無事で……。」

 

「お、お母さん。少し遅くなっただけだよ。次からは遅くならないようにするから。」

 

「…え、いったい何を言っているの……?」

 

 

 私の言葉にお母さんは酷く困惑した様子で、顔を青く染める。その様子に違和感を覚え、家の中のお父さんを見るが、お父さんもまた、私が今まで見たことの無い表情で私を見つめていた。

 

 

「お母さん…あの──」

 

「大丈夫…大丈夫だから、大丈夫…。」

 

 

 抱き締められ言葉を遮られる。いつの間にか外にお父さんも出てきており、お母さんと私を包み込むように抱き締められた。

 

 

 

 

 聞くと私は一週間ほど行方がわからなくなっていたらしい。幼なじみや知り合いが、家族、もちろん警察も総出で捜索が行われたが、私はどこにも見当たらなかったらしいのだ。

 

 両親から説明された事実に、なんとも言えない恐怖と先程あった神主のような服装の青年。そして、最後の言葉を思い出す。

 

 

『君はもう一人で夜の外を出歩いてはいけないよ。』

 

 

 あの人は私が行方不明だったことを知っていたのだろうか。だとしたら、なぜ警察ではなく直接家に…?

 

 それに彼と一緒に居ると何故か時間の進みが早く感じた。

 

 

「なんだったんだろう…今日。」

 

 

 明日はみんなに謝罪をしに行かなくてはと、幼なじみ達の顔を思い浮かべながらベッドに仰向けで横たわる。

 

 

「あの人いったい…誰なんだろ。」

 

 

 あんな服装をしているし、神主なのだろうか、考えれば考えるほど謎が増える。次はみんなと一緒にあの神社へ向かってみよう。明日にでも。

 

 

「あっ。」

 

 

 なんで、あの人私の名前わかったんだろう…。

 

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