彼は神社に居た。 作:華メル
「本当なんだってば!」
昨日起きた事について話さないわけにはできず、今まさに幼なじみの一人の家が経営している『羽沢珈琲店』の一角にて私はみんなに昨日の出来事を語っていた。
当然のことながら、みんなは信じてくれない。当たり前だろう。私だっていくら一番仲良しな幼なじみ達の話だろうと、この不可思議な出来事を信じる気にはなれないからだ。
「ま、まあまあ。蘭ちゃん落ち着こ?」
「だって…だってさ!」
「つぐの言う通り、まずは落ち着けよ。…それで?アタシ達に嘘言って驚かせたいわけじゃないんだろ?」
みんなが信じてくれないことがショックで声を荒らげてしまった。そんな私をつぐや巴が慰める。
でも、本当のことなんだ。自分じゃあ整理もつかないから、みんなに打ち明けるしかないのに。
だけど、そんな陰気な気持ちに沈んでしまっても仕方がない。みんなが信じられないのも無理は無いのだから。
だから私はもう一度ゆっくりと昨日のことを説明した。
「んー。そんなことってありえるのかなー。」
「怖いものが苦手な蘭がわざわざこんな作り話するともおもえないけどねぇ。」
モカやひまりも半信半疑と言ったところ。何度も言うが、今私が語ったものはそう易々と信じることの出来るものでは無い。
神社に迷い込んで、真っ暗だったから送って貰ったら一週間経過していたなんて、誰が信じるのだろうか。
下手なホラーミステリーを読んでいる気分になるような体験。全く真実味がなく、証拠も何も無い話。
「怖いの苦手な蘭が進んでこんな話するとは思わなかったなー。」
「んー、いっそこのとその神社に行ってみるのは?」
ひまりが笑いながら感想を述べ、つぐが提案する。私にとって今のつぐの提案は好都合だった。もう一度確かめたかったという事もあるが、何よりそんな奇妙な経験をして、一人であの神社に行くなんて私には無理だ。
でも、またあそこに行って何かあったら、みんなまで巻き込んでしまったらと思うとなかなか言い出せなかった。
結局、私が何を言うわけでもなく、みんなと一緒に神社に行くことが決定した。
昨日、不思議な男の人と一緒に歩いた道を思い出しながら、神社に向かっているのだが、この時点でおかしいことに気づいた。
何故か全く人の気配がしない。
少しもしない。
「多分、こっち。」
みんなの前を歩き、昼間なのにどこか薄暗いこの道を歩いていく。私は今にも泣きそうな気分だった。
大丈夫みんながついてるから…。
そう自分に言い聞かせ前を見据えて歩を進める。
少し廃れた雰囲気の大鳥居が私を出迎えた。真ん中辺りからヒビが入り、今にも崩れてしまいそうなこの鳥居をくぐり緩やかな階段を上る。
『蛇鳴藻之神』
掠れていたが確かにそう読めた。読み方はわからなかったが、ここの神社に祀られる神様の名前なんだと理解するのに時間はかからなかった。
しばらく上ると朽ちて黒ずんだ板が転がっている。そこには神社の名前が書いてあったのだろう形跡があったが、文字が潰れて読めなくなっていた。
「
突然声が響いた。あの人の声だ。
「昨日ぶりですね美竹さん。」
昨日と同じような神主のような服装の青年。昨日と違うのは逆光であるにも関わらず表情が読み取れること、片手に竹箒を持っていること。
「でも、一人で来て大丈夫だったのですか?」
…え。
彼の言葉を聞き反射的に後ろを向いたが、そこには誰もおらず、廃れた鳥居が見上げているだけだった。