そろそろロボ成分書きたいが故にリハビリとして書いてます。
が、今回は導入部分なのでロボ成分少なめです、ごめんなさい。
これ終わったら「多重クロス世界で~」の執筆にかかる予定です。
術式…多種影法術(スパロボ仕様)
この術式を自覚した時、オレの中で前世の記憶が蘇った。
この世界が呪術廻戦という登場人物に只管優しくないダークファンタジー世界である事も思い出しちゃったのである。
どないしよ?
「…取り敢えず、影絵作るんは無理やな。」
それだけ言うと、頭に流れ込む情報量と術式に目覚めた衝撃か、激しい頭痛を感じて直哉は倒れた。
この日こそ、禪院直哉(成り代わり主)の人生の本当の意味での始まりだった。
……………
末の息子である直哉が突然倒れた日の翌朝、名家の会合から戻ってきていた禪院家26代目当主である直毘人はあくびを噛み殺しながら庭の見える板張りの廊下を歩いていた。
庭は流石は長い歴史を持つ禪院家らしく何代も前から続く庭師達の手によって見事に整備されており、下手な観光地のそれを凌駕している程だ。
しかし、今日ばかりはそれを堪能する事は出来なかった。
『マジーンGoー!』(CV.石丸博也)
「は?」
突如として響く声、同時に見事な錦鯉達(どれも三桁万円)が泳ぐ池の中から、直毘人も見た事のある有名な巨大ロボットアニメの代名詞が水をかき分けて立ち上がる。
大きさこそ2m前後だが、その姿は正しく鉄の城そのものであった。
驚きに思わず直毘人の口からまぬけな音が漏れ出たが、非常識に慣れてる呪術師だって起き抜けにこれは仕方ない。
同時にアニメそっくりの素晴らしい出来栄えだが、その姿には足りないものがあると原作視聴済みの直毘人には直ぐに分かった。
頭部にある筈のコクピットがなく、その超合金Z製のボディーからは力を感じられない。
だが、直毘人の予感通りなら、その不足は直ぐに埋まるだろう。
『パイルダーオーン!』
その予感通りに何処からか飛来したホバーパイルダーが翼を折りたたみ、その頭部へと合体する。
同時にカメラアイに光が灯り、動き出したマジンガーZは漲る力を見せつける様にガッツポーズを取った。
『マジンガーゼーット!』
これぞ正に鉄の城、僕らの夢見たマジンガーZの雄姿であった。
「よし、原作再現は完璧やな。」
偶々通りがかった女中やら使用人やら禪院家の術者やらが足を止めて口をあんぐり開ける中、ただ一人「いい汗かいた!」とばかりに良い笑顔で額を拭う者がいた。
「直哉、説明しろ。」
「起きたら出せるようになってました。」
当代最速の呪術師と言われる直毘人に素早く捕獲された直哉は襟首を猫の様に持ち上げられながら、グッとイイ笑顔で親指を立てるのであった。
それを見て、直毘人は口の端を釣り上げた。
「他にも出せるか?」
「今はこんだけ。」
すると、直哉の影からその呪力を元にずるりと全長50cm程の丸みを帯びた緑のロボットが出て来た。
それもまた、術式と趣味からアニメ、特に古きセル画アニメを好む直毘人もよく知る「むせる」アニメに登場するAT、アーマードトルーパーの中で最も知名度の高いスコープドッグの姿であった。
なお、右肩は赤くはなかった。
「く、ははははははははははは!まさかお前に出たか!はははははははははははは!」
伝承のそれとは大きく異なる、しかし亜種か劣化版かは不明だが、末の息子の術式は紛れもなく禪院家の相伝術式たる十種影法術に他ならない。
若手がどいつもこいつもパッとしない術式ばかりだった状態で、宗家の末の息子が大当たりとは望外の喜びであった。
アニメ(特にロボアニメ)に興味津々であったから自分と同じ投射呪法かと思っていたのだが、まさかまさかの大当たりに直毘人は呵々大笑した。
「これ、今はまだ無理でも他にも出せそやな。」
「ならば修練を積めば良い!幾らでも鍛えてやろう!」
「じゃぁガンバスターにイデオン…。」
「それらは止めとけ。」
跡取り(決定)息子の言葉に、思わず直毘人は真顔になった。
地球容易く吹っ飛ばす様な奴らは止めときなさい。
……………
『スカル1、出ます!』
戦闘機に酷似した式神から影から垂直に飛び出し、空を自在に駆けていく。
次いで手足を生やす様に変形し、ミサイルポッドとガンポッドからミサイルと銃弾(の見た目をした呪力の塊)を撒き散らし、各所に配置された標的を撃ち抜いていく。
更には人型に変形し、用意されていた巻藁を容易く殴り壊し、再度戦闘機へと変形しながら空へと上昇していく。
「VF-1は名機。」
「それな。」
うんうん、と親子二人して頷く禪院家当主と跡取り息子。
術式に目覚めて早半年、当主にして父親に当たる直毘人からほぼ付きっ切りで教育を受けている直哉はメキメキと実力を上げていた。
勿論呪術だけでなく、体術や勉学も同時並行であるが、直哉はよく食い付ていた。
呼び出せる式神の種類は増える一方であり、現在は最大16体まで出せる。
ただ、呼び出せる種類に関してはガンダムやマクロス系等の所謂リアル系が中心であり、今一つスーパー系の伸びが悪かった。
「やはり呪術師っつー根暗では、炎の心を持てないと言うんか…!」
「だからガンバスターは止めろと言うに。」
直哉、御年6歳にして自らの生まれを呪った。
「は!そうだ縛り!それ使えば何とか行けるか!?」
「変な内容は止めておけよ。後が辛いぞ。」
こんな感じで直哉の教育はすんなり進んでいた。
だが別方面、禪院家当主としての教育は今一つであった。
「えーそんな平家に非ずんば人に非ずみたいな奴、どー考えても凋落フラグやん。止め止め。日本人なら勿体ない精神発揮して人材育てようや。」
禪院家特有の術式至上主義かつ排他的で古臭い価値観に、直哉は全くと言って良い程に馴染まなかった。
そりゃー前世からロボアニメ大好きなオタ(ファンタジーや特撮もいける)だもん、転生したとは言えその根底にあるのはアニメで培った価値観その他である。
禪院家の腐った蜜柑的価値観とは全く持って合わなかった。
「まー使えるもんは親でも使え言うし、真面目に仕事するんなら非術師だろうが使用人だろうが使うてやろかね。」
「あ、でも他所様にお見せできない様なのはオレの目の付く所ではしないようになー。」
大体こんな風に明言しているが、その実兵站や後方の重要性を(アニメ好きが高じたミリタリー知識から)十二分に理解している直哉は禪院家の内部改革に対して意欲的であった。
だって後ろから撃たれたり補給断たれたりとか嫌やん?とは後に出会う五条の坊ちゃんへの返答である。
現在、禪院家は直哉の召喚した式神達(スコープドッグを始めとした10体以上の召喚コストの安いAT等)によって監視下に置かれており、女性や使用人に謂れのない無体を働こうとした時点でそいつらに襲われるのだ。
ボロ雑巾の様になった分家出身の術者の数はもう10人を超えて久しい。
それでいて使えそうな人材に関してはそこまで厳しい処置はせず、「他所で専門のもっと質の良いおねーさん買いなね?」と告げるに留めている。
この行動の結果、直哉を悪し様に言う輩は増えたものの、使用人や呪術の才覚は無いが他の才覚を持つ者からの人望は増した。
同時に使えねーと判断された分家の術者からは大層な不興を買い、暗殺騒ぎが幾度も起きた。
その結果として、三つの分家が齢10にならない直哉によって女子供や有望な人材を残して「消毒」された。
これには今まで静観していた当主の直毘人も腰を上げ、直哉に問い詰めた。
それに対して返されたのは、処刑された家々が行っていた禪院家の資産への横領や下級とは言え呪具の盗難と無許可の売却だった。
これを見た直毘人は舌を巻いた。
この子供は既に自身の下に付く者達の選別に入って久しいのだと思い知らされたからだ。
恐らくは使用人らからの情報で当たりを付けた後、気配を遮断したり工作活動の得意な式神を派遣して証拠を固めたのだろう。
「どの道腐り果てて使い様も無いもんやし、見せしめに派手に消しても構わへんやろ?」
「腐ってたのは知っておったがな…これならば良しだ。」
「あの家選んだ理由も禪院の金を見栄のために自分らの収入以上の贅沢してこさえた借金返済とかに勝手に使うてたからやで。」
「他の2家もか?」
「一つは同じ使い込みやけど、もう一つは情報漏洩に加えて呪詛師兼務しとった。」
「手抜かりなくジャンジャンやってしまえ。手を抜けば困るのは次代のお前達だぞ。」
「わかっとるよ。」
必要とは言え、一族の者に対して容赦なく粛清を敢行できる。
意外と直哉も呪術師としてしっかりイカレていた事を確認できた直毘人はあっさりと許した。
こんな感じで禪院直哉は日常を過ごしていた。
……………
甚爾にとって、直哉は変なガキだった。
「おっすー。君が従兄の甚爾君?」
「…これは直哉様。オレの様な者に話し掛けて頂けるとは。」
慇懃無礼。
甚爾の直哉に対する態度は正しくそれだった。
術式と呪力に才能と容姿、極め付けに禪院家の次代を担うとして当主直々に教育を受けていると来た。
そんな子供が天与呪縛によって極めて強靭な身体能力と引き換えに呪力が一切ない自分に話し掛ける?
十中八九厄介事だし、そうでないにしろ周囲が黙ってはいない。
「おい無能!直哉様がお声を掛けて下さってるのだぞ!そんな態度が許されr「デスサイズヘルー」ひ!?」
ずるりと、直哉の影から出て来た黒いロボットの様な式神が直哉に付き従っていた従者の背後に立つ。
その不吉な外見と背後に立たれた事から、従者は悲鳴を上げて硬直した。
「オレ言ったよな?静かに黙ってろって。何、君そんな簡単な事もできひんの?」
「し、しかし!そいつは…!」
「上の言う事には基本絶対服従。そないな事も分からん無能がオレの付き人とは情け無くて泣けてしまうなぁ。」
はぁ~やれやれと言わんばかりに直哉は深々と溜息を吐いた。
まぁ明らかに従者としての態度ではないよな、と一応当事者である甚爾は思った。
「もう良い。お前はオレ付き解雇や。後はご当主ん所行って次の配置に行きなね?」
「おぉお待ちください直哉様!?」
「え、君死にたいん?」
ブゥンと言う独特の音と共に式神の持っていた棒状の得物から二つの大きな鎌状のビーム刃(呪力製)が発生する。
この従者の実力は精々が3級程度であり、もしこの場で直哉がその気になれば一瞬で始末される程度でしかない。
それが分かっている従者、否、元従者は悲鳴も上げられずに死体の様な顔色になって脱兎の如く走り去っていった。
まぁ今逃げ出した所で直哉付きの従者からは外されるのは確定だろうが。
「さてと。これでゆっくりお話できそうやね甚爾君?」
「お戯れを。自分は直哉様にお声がけされる程の価値はありません。」
「あ、敬語禁止ね。それに現時点ではまだ君の方がオレより強く年上やろ?もーちょいラフで行こ?」
「…分かった分かった。これで良いですかね坊ちゃん?」
「おっけーおっけー。話が早いんは高得点やで。」
「で、一体何用で?」
「最近まともな稽古付けてくれるのんはご当主やけ。そやさかい君に稽古を付けてほしおす。」
あ、勿論給料出んでーとニコリと人好きのする笑みを浮かべる未だ齢7歳の少年の意見に甚爾は納得した。
当主である直毘人以外の稽古を担当するのは教育係含めて禪院家の価値観のみを押し付けて、更に言えば媚を売り、自分達に都合の良い傀儡にしようと言う意図が丸見えな馬鹿ばかりだった。
それら全てから教育を受けながら、しかしご当主の戯れから見始めたアニメによって禪院家としては異例な程に一般に近い価値観を身に着け、それを土台に持つらしい直哉は信頼に足る教育係なり護衛なりを必要としているのは当たり前の事だった。
金で背後から殺しにかかったり妙な事を吹き込まない教育係を雇えるのならば安いものなのだろう。
「金額は?」
「月50万から。護衛もやってくれたら月100万かつ出来高でボーナス追加。」
「乗った。」
こうして甚爾は坊ちゃんらしさなんて感じられない、泥臭さを持つ未だ幼い直哉を雇い主とする事に合意した。
そして、直哉は甚爾にとって良い雇い主だった。
給与は月初めに先ず100万渡され、定期的に実戦形式で体術を教える。
その後は幾度か毒物の発見や刺客の排除や捕縛等をしていけば、それに応じたボーナス(大体月に200万)が支給され、今までの甚爾には有り得ない額を稼ぐ事が出来た。
それを苦々しく思う関係者は多いが、それらに対して直哉が返すのはこの一言のみ。
「なら勝てばええ。有能なら誰でも構わへんで。」
しかし、投射呪法を持つ今代最速の呪術師と名高い直毘人よりも更に早い甚爾を捕らえる事は誰にも出来ない。
調伏した呪霊や式神が相手だとしても、既に術式の成長が次の段階に入った直哉からヒートホークやガンポッド等を貸し出されていた甚爾にとっては敵ではなかった。
こうして、なし崩し的に甚爾の直哉付き護衛兼体術の師匠就任は定着した。
だが、それも数年で終わった。
「甚爾君、ちょっと警察に就職してくれへん?」
「あぁ?」
体術も基本は仕込み終わり、後は経験と成長に沿ってスタイルを確立していく段階になった頃。
春麗らかな午後、2人して縁側でお茶している時に直哉はそう切り出した。
「どういうこった?」
「術式無くても皆が皆甚爾君みたいに凄い強い訳ちゃう。ならこんな地獄に置いとくよりも他の居場所作っとくべきかなって。」
「あー成程。」
「ただ無分別に出てってもあかん。禪院に恨み持ってる奴らはごまんといるし、下手に呪力があると呪霊の餌にされてまう。」
もしこの腐臭漂う禪院家が潰えた場合、他に行き場の無い者の末路は悲惨なものとなるだろう。
特に自分の身を守る術も生きる知恵も金もまともにない者は、術式を得るための母胎や種馬として狙われる者も確実に出る。
そうでなくとも禪院家の資産は凄まじい。
この本家の邸宅を守る重厚な結界に蔵に保管された数々の呪具、そして単純に資産。
それらを得るために跡取りと成り得る者の身柄を後ろ盾になる形で得て、自らのために所有権を主張する。
腐った蜜柑ならその位喜んでやるだろう。
「呪術界で生きる意思あるなら本家に残り、そうでないなら他所でフツーに生きてく。」
「お前が頭に立つならこっちでも良いんじゃないか?」
「それにはまだまだ時間がかかってまう。そやさかい甚爾君には先に外に出てもろうて『外でも生きていける』って実績積んでもらう。」
「ついでに受け入れ先作れってか?オレ一人じゃ無理だぞ。」
「その辺は古株の使用人さんらが何人か退職するから任す予定。資金はオレ持ちやし、甚爾君は実績積みに専念してもらう。」
既に齢10にして二級術師の称号を受けている直哉ならば、まぁ無理ではないだろう。
資金に関しても金なら唸る程にある禪院家の跡継ぎとなれば幾らでも用立てられる。
寧ろ集めてもないのに勝手に分家の連中が山積みにして「ころさないでください」と言ってくるまである。
この一週間後、甚爾は直哉の手配した通りに警察学校に入学し、正式に警官となった。
しかし、配属された場所は本庁所属の非公式部署であり、他にも呪術高専に訳あって属せない適性持ちや発見報告担当の「窓」や結界・事務・事前調査等のサポート専門の「補助監督」が精々の者が多数いたのだ。
そこに運び入れられる禪院家所有(と言う名の蔵の肥やし)の大量の眼鏡やゴーグル型の視覚補助呪具(後に真希が装備する奴の劣化品)や3・4級の呪具(刀剣類や銃型)に、甚爾は正確に直哉の意図を読み取った。
「あんの野郎…!」
要は警察側が独自に保有する呪術担当部署の設立に自分は巻き込まれたのだと、この時になって甚爾ははっきりと理解したのだった。
無論、高専上層部や御三家の腐敗ぶりを知っている甚爾としては名家だ特権階級だと言う奴が禪院家に比べれば遥かに少ない警察内で同期や同じ様な境遇の者達と頑張るのはそこまで苦ではない。
苦ではないが、基本的にクズな甚爾からしては面倒極まりない話である事に間違いなかった。
次に会ったらぶん殴ろうと決意しつつも、甚爾は警察内にそんな部署を作る理由は分かっていた。
高専上層部や御三家を引き摺り下ろせない最大の理由は「代替可能な組織が他にいないから」に尽きる。
人道を無視してあらゆる手段で才能ある術者を輩出するため、自家の繁栄のために汚物が如き所業に手を染め続ける。
それでもなお御三家を始めとした呪術界の名家が権勢を振るえるのは、こいつら以外に呪霊や呪詛師に対応可能な呪術師をある程度安定して輩出できる者達がいないからだ。
故にこそ日本政府は国防予算を彼ら呪術師に支払うし、伝手のある政経関係者は直接護衛に雇ったり、大金を出資するのだ。
この体制を崩すには、その役割を代替する組織が必要不可欠となる。
これはそのための第一歩なのだと、天与呪縛によってあらゆる身体能力が超人化している甚爾はあっさりと理解した。
(それはそれとして必ず殴る。)
理解はしたが、それはそれ、これはこれである。
……………
「扇の娘が生まれた。」
「おん?会うた事あらへんでな?」
「外れの上に双子でな。片方は甚爾に近い天与呪縛持ち、もう一人は呪力が低過ぎる。」
「うわぁ…。」
そんな頃、禪院家では当主の弟に当たる扇の双子の娘について話が進んでいた。
序に禪院家的価値観MAXな直毘人(これでも実力主義でここ何代かの当主では一番マイルド)の言葉に直哉はげんなりしていた。
「直哉、こいつらの扱いはお前に任せる。」
「ほーん?どないしたの?」
当主直毘人の突然の言葉に、直哉は疑問符を浮かべた。
生まれて間もない二人の扱いは既に良いものではない。
宗家の生まれであり、母胎としての価値は高いにも関わらずだ。
「禪院家の相伝術式、特に十種影法術は医学的な見地で見た場合、劣性遺伝の可能性が高いと見ている。」
「つまり、他の相伝や術式の方が優先して遺伝されやすいと?」
「少なくとも過去の記録を見る限りはその傾向が多い。」
直毘人は当主として「誰か相伝術式ちゃんと受け継いでる奴いねーかなー」なんて考えては過去の記録を見たりしていた。
これは他の呪術界の名家でもよくある事だが、やはりその家々にそれぞれ伝わる相伝術式は貴重であり、家を継がせていくためには是が非でも欲しいのだ。
そうして平安時代にまで遡る過去の歴代当主による記録を漁ると、薄らとだが相伝が発現し易い条件と言うものが見えて来る。
禪院家の数ある相伝の中で最も人気な相伝術式である十種影法術の場合、他に遺伝し易い術式があるとそちらの方が発現し易いとなっている。
因みに五条家の無下限術式と六眼の併せ持ちは二重に相伝術式ガチャやってるようなものなので、強力無比なだけ他の相伝術式ガチャよりも排出率は遥かに渋かったりする。
「どちらか、或いは二人共か。お前が娶れ。」
「は?」
「お前がさっぱり相手を見つけんからだ馬鹿モン。」
「は???あんな欲の皮突っ張った事故物件に突っ込めと?」
「本命とかは他所で愛人として囲っておけと何度も言ったぞ。」
禪院家の跡取り息子である直哉には見合い話がひっきりなしだった。
余りに多い上に腐った蜜柑予備軍の混入具合たるや9割以上であり、そうでなくとも何かしらの問題抱えてたり、普通の感性でこの禪院家でやっていけるか怪しい娘達ばかりとなれば、直哉は殆ど見合いを受ける事は無かった。
無論、既にして年中反抗期と言われる五条の坊ちゃんの様に名家アレルギーを発症している訳ではないが、それでもその立ち位置に比して受ける回数はかなり少ない。
更に言えば、受けるのはどうしても拒否できない相手に限っている。
具体的に言えば相手側の家格が高かったり、敵対したら面倒だったり、派閥や商売関連で受けざるを得ない相手だ。
極々稀に直哉個人に惚れてその気になった変わり者なんかもいたりするのだが……根っこの部分で前世のオタクでコミュ障で陰キャな性質を引き摺っている直哉にはそういった押せ押せの人と相対するのは苦痛だった。
そのため、未だに直哉の婚約者は決まっていなかった。
「従妹で、まだ生まれたばっかりの赤ん坊やでおっさん???」
「だからだ。長く共に過ごし、傍にいるのが自然な相手ならお前も受け入れるだろう。」
「ぬぎぎぎぎぎ…!その子らが他にお相手見つけるまでやで!」
「それで良い。後の面倒はお前が好きに差配しろよ。」
こうして、生後半年と経たずに直哉は二人の赤子を暫定的な婚約者として迎える事になった、なってしまったのだ。
所で、こんな強力な術式とそれを十全に運用できるだけの呪力が何の代償も無く得られると思っているかね?