禪院直哉の趣味的な人生 【完結】   作:VISP

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ま、まだ終わらないいいいいいい!!(発狂

後は一巻と渋谷事変前後で終わりなのにぃー!


第四話 純愛カップル編

 2017年、高専東京校にてある被呪者が秘匿死刑を言い渡された。

 

 その被呪者の名前を乙骨憂太。

 

 未だ15歳の彼は嘗て将来を誓ったが眼前で交通事故によって即死した幼馴染みの少女が成った特級過呪怨霊「祈本里香」によって呪われており、彼に近付く女性や危害を加えようとする者は殺されはしないものの悉く排除されていた。

 先日も高校で憂太に絡んで来たやたらホモくさい不良4名をズダボロにした挙句ロッカーに詰め込んでおり、その一件が窓によって判明し、秘匿死刑を言い渡されたのだ。

 

 「ま、誰も祓えなくてボクの所で実質保護観察処分にしてるんだけどね。」

 『相変わらずやね五条君。』

 「そっちも忙しいって聞いてるよ直哉。冥冥さん雇ってあちこち飛び回ってるらしいじゃん。」

 『やる事多過ぎて困り者やでこっちは。』

 「で、ちょっとお願い出来る?」

 『ちょい待ち。スケジュール確認するから。』

 

 通話中のスマフォの先で、何やらゴタゴタ音が聞こえる。

 スケジュールをメモした書類やデータでも確認しているのだろうが、何かやたら機械の稼働音の様なものが聞こえてくる。

 

 『ういうい、丁度東京に行く予定があるから…クリスマスん時にでもお邪魔させてもらおなぁ。』

 「あいよ。じゃ、ついでにお土産よろしく。」

 『言うて、日本人の舌には日本の食いもんの方が合うで?買うけども。』

 

 そんな訳で、久々に直哉は東京校に行く事となった。

 奇しくもこの通話は呪詛師集団Qの残党他が結託して、12月25日に東京・京都・福岡でのテロ予告を行った日の事だった。

 

 

 

 ……………

 

 

 2017年における禪院直哉は多忙を極めていた。

 理由は幾つもある。

 

 一つ、自衛隊内における対呪霊・呪詛師部隊の設立が漸く決定した事。

 以前から公安を通じて自衛隊内の窓と共に働きかけていたのだが、それが漸く実を結んだのだ。

 とは言え警察組織よりも保守的な所のある自衛隊(じゃないともしもの時ヤバいから当然なのだが)相手となれば、実際に呪霊を可視化する眼鏡やそれを応用した光学観測機器類に捕獲した呪霊や式神、直哉のユニット等を用いての実弾演習やら何やらを行う事で危機感を煽り、更に年1万人以上とされる呪霊・呪詛師による死傷・行方不明事件の数々によって重い腰を上げた形だ。

 まぁ、冥冥の様な美女が身の丈に匹敵するハルバートぶん回しながら銃弾を回避し、自衛隊の格闘徽章持ちや特戦群の隊員がボコボコにされたとあれば、もう認めるしか無いと言えるが。

 それに伴う教官に人員、装備の確保のための予算の融通等々、今まで静観していた呪術総監部からの横槍の排除も含め、直哉は諜報担当の者達と共にすげー忙しかった。

 

 二つ、以前から「うちのユニット連中解析すれば技術革新起こせね?科学で呪術駆逐できね?」と思ってた直哉により、日本の科学者の中でも無名だったり何だったりで何処かの紐が付いてない人を片っ端から当たってユニットの中でも比較的技術レベルの低めな機体(主にMSやAS等のリアル系)の構造の解析を開始した事。

 当初は難航が予想され、気長に行く予定だったのだが、普通の技術開発と違い、既にあるものを解析する形になるため、割と早くに成果が出た。

 結果、初歩的ながらパラジウムを利用した常温式熱核融合炉の開発に成功していた。

 未だ小型は無理ながらも常温なので扱いやすく、音も殆ど出さず、更には破損しても暴走・爆発しない(ただし内部プラズマの制御が失われると、隔壁を融解させる程の高温となる)。

 寿命が約半年と短いが、それを考慮に入れても極めて大きな成果だった。

 この他にも冶金技術等の成果も凄まじく、幾つかの新素材(呪霊・呪力が映るレンズや呪力絶縁素材等)が開発されるに至った。

 ちなみに新素材で最も開発が早かったのは、ゲッター線を浴びせたら何故か変質して出来たゲッター合金であるが、ゲッター線が未知過ぎて完全な再現・解析には至っていない。

 

 三つ、もしもの時を考えて海外に身内や資産を逃す準備も兼ねた海外への販路開拓がスゲー伸びた事。

 元々高専卒業後に特別特級呪術師にして禪院家当主としての資産を運用し、国内で幸運や強運を用いた上で社長スキル持ちのアドバイス等を受けて商売を行い、大きな利益を上げまくっていた。

 損失が出ても、『幸運』『強運』しつつくじ引きでもすれば直ぐに補填できるし、『社長』スキル持ちの助言を受けながら資産運用できたのも大きい。

 

 精神コマンドを発動すれば、通常仕様との二択で名称通りに現実改変が起こる。

 

 これは本来の精神コマンドには無い効果なのだが、術式反転を覚えた頃から徐々にできるようになった応用だ。

 これらの行動は精神コマンドの応用に関する研究で偶然見つけたものであり、同じ様なものに精神コマンド『加速』が移動マス3つ増加だけでなく、純粋に素早くなる事が上げられる。

 その成果は利益として分かり易く数値として出た。

 これには資産運用に関して直哉の実質的な秘書としてほぼ専属になった冥冥もにっこりの成果だ。

 具体的には禪院家+直哉の個人資産の合計額が五条家と加茂家を足して倍にしたよりも大きくなった。

 で、国内だけでは最早市場が足りぬ&多くの要望から新素材に関しては海外にも販路が展開された。

 呪霊被害に悩む国や呪術師にとって、直哉のお抱えの科学者・技術者らが開発に成功した呪力絶縁素材は緊急時の避難シェルターや呪具、教会の建物等の素材として極めて有用であり、注文がひっきりなしに来た。

 もう作った傍から売れていき、予約が数年先までいっぱいの状況が続いており、生産設備と人員の拡充がずっと続いていた。

 

 こんな感じで、直哉はとてもではないが一つ所にいれるだけの時間が無かった。

 

 「で?腹を括るのは何時になるんだい雇い主殿?」

 「言うてもなぁ…。」

 

 ファーストクラスでゆったりと寛ぎながら、直哉は冥冥からの好奇心MAXな問いに眉間に谷間を作っていた。

 

 「12も年下の双子の女の子を手籠めにする外道になんてなりたない。」

 「おや?相手側がこれ以上なくOKと言っているのにかい?」

 「そんなん気の迷いやで。」

 「本当にそう思っているのかい?」

 

 冥冥の鋭い指摘に、直哉はただ押し黙った。

 真希と真依の二人が自分に本気である事等、直哉はとっくに理解していた。

 しかし、理解と納得は別物なのだ。

 

 「あの二人にはもっと別の、呪術なんて関わらへん平和な場所で暮らしてほしおす。」

 「だが、彼女達はそんなもの望まないと思うよ。」

 

 ずっと一緒だった。

 どんな美女美少女(時々美男)に言い寄られようと、直哉は一切手を出す事は無かった。

 前世から引き継ぐ貞操観念のせいもあったが、何もかにもがアニメ調に見える直哉にとって性交渉は気の進まないものだった。

 刺激があれば興奮できるし、生殖能力もあるのだが、直哉は前世からエロアニメで碌なものに出会った事が無かった。

 画素数が低かったり、絵柄にストーリーやシチュが好みじゃない等の理由で、エロアニメは本当にダメだったのだ。

 そのため、現在の特殊な視覚のせいで今一つエロに消極的になっていた。

 一応エロ小説とか漫画とか同人誌、エロゲは大丈夫なのだが、アニメだけはダメなのだ。

 まともに作り込まれたエロアニメで覚えてるのが対魔忍だけだったってのも理由の一つかも知れないが。

 寧ろ普通のアニメのストーリーの一環としてエロ描写があった方が多少興奮する感じ。

 

 「いつまでも子供やと思っとったんけどなぁ…。」

 「女の成長は男よりも早いよ。体も心もね。」

 

 男女七歳にして席を同じゅうせず。

 しかし、禪院家内部の掃除を完全に終わらせるまで、双子の安全を保障するにはやはり直哉の目の届く位置に置いておくのが一番だった。

 そのため、物心ついて直ぐに双子は直哉とずっと共にいて、夜寝る時もずっと同衾していたのだ。

 二人に子供服を買って、アイスクリーム片手にショッピングに行った時も。

 鍛錬の終わった後、流行りの映画を見に行った時も。

 呪詛師に狙われたものの、直哉の手によって助けられた時も。

 高専から帰ってきた日の夜に一つの布団で三人で川の字で寝た時も。

 ずっとずっと、一緒だったのだ。

 

 「これで漸く、直哉の子供が産めるな。」

 「直哉さん、もうちょっとしたら結婚しましょう。」

 

 二人が初潮を迎え、女性としての成長を確認した時も。

 直哉は彼女達と一緒にいたのだ。

 

 「覚悟を決めた女を甘くみてはいけない。彼女らは仮令地獄でも、君と共に居られるなら喜んで堕ちていくだろう。」

 

 でなくば、自分にお金払ってまで恋愛相談とか直哉の様子を聞いてくる訳もない、と冥冥は思った。

 第二次性徴を迎え、急激に女らしい体つきになった二人に直哉は同衾を止め、余り禪院家に寄り付かなくなった。

 視覚はアニメ調でも、他の五感は常人のそれである直哉にとって、女性らしい柔らかさと良い匂いを持ち始めた二人と同衾するのは厳しいものがあった。

 自分は妹分二人に欲情する変態じゃないと直哉は思っているが、何だかんだ二人が大好きな直哉にとって布団に入る度に二人の日々色気を増す肢体を押し付けられる事はとっても毒だったのだ。

 なお、直哉は二人が冥冥の指導の下で美容と健康のための化粧やストレッチ、エステに通っている事は知らない。

 冥冥の入れ知恵により、直哉に女性として認識してもらう作戦は順調に進んでいた。

 

 「……応えたとして、一緒にいれるか分からん。」

 

 直哉は自分の重要性を正確に把握していた。

 日本の呪術的治安を五条悟か、それ以上に維持している要の一つ。

 天元様のそれとはまた異なる重要性を持つ自分を狙う者は多い。

 呪詛師や呪霊のみならず、禪院家の失墜を望む呪術師、最近では国内外の富豪や有力者もだ。

 故にこそ、余り日本にいてはそういった連中の標的として集中砲火を受けてしまう。

 もし結婚すれば、そんな動きの只中にあの二人を置いてしまう事となる。

 それはダメだった。

 仮令あの二人がそれを望んでも、それだけはダメだった。

 余りの忙しさで構えず、まともな夫婦生活なんて出来ないだろうし、二人に寂しい思いをさせるなんて嫌だった。

 だからこそ、こんなロクデナシではなく、何処か暖かい場所で幸せになってほしい。

 それが直哉の偽らざる思いだった。

 

 「難儀なものだね。」

 

 お互いにそんなクソデカ感情抱いてるならとっととくっ付けよクッソ面倒だなコイツら、とは冥冥は思っても雇い主としては最上なので口にしなかった。

 

 

 

 ……………

 

 

 

 2017年12月24日、クリスマス当日

 

 予告通り渋谷に京都市、そして福岡市にてそれぞれ100体の呪霊と呪詛師が一斉に行動を開始した。

 無論、この動きは高専側に直哉の即応体制を通して連絡が来ており、精密に把握された呪霊と呪詛師は次々と排除されていった。

 と言うのも理由がある。

 渋谷には五条悟、京都市には禪院直哉、福岡市には夏油傑と言う現在表立って活動中の特級呪術師3名がそれぞれ配置され、無双していたからだ。

 この配置は首都であり国家機能の中枢がある東京に名家嫌いの五条、周辺への配慮も出来る名家中の名家たる禪院現当主の直哉が京都に、一般出で特に柵の無い夏油が福岡に配置された形だ。

 東京では五条によってリアル無双ゲーが、京都市と福岡市では呪霊と式神という違いこそあれ「物量とパワーの戦争」が展開され、数はあれども連携のれの字もない呪霊と呪詛師は次々と祓われていった。

 

 『いけ、フィンファンネル!』

 『いけ、ファンネル!』

 『ファンネル、オールレンジ攻撃!』

 『いっけぇ、ファンネル!』

 『いけ、スプラッシュブレイカー!』

 『いくぜ、サイフラッシュ!』

 

 京都市にて、幾度も敵味方識別可能なMAP兵器が幸運・努力或いは祝福・応援付きで放たれる。

 収穫した大量の経験値と呪力リソースに直哉はにっこりし、特級呪術師の理不尽さを改めて見せつけられた高専側の呪術師は顔を引き攣らせた。

 

 「んー…これ、囮やね。冥冥はん、東京校に連絡。」

 「おや、これ全部囮かい?」

 

 大量の呪霊は確かに百鬼夜行と言うに相応しい数だが、それだけ。

 大半は3級から2級だけで、とてもではないが本命には思えなかったし、何より呪詛師が殆どいない。

 

 「テロる余力ある内に動くにしても、何の勝算もなく動かんやろ?多分やけど、祈本里香ちゃんの暴走でも狙ってるんちゃう?」

 

 特級過呪怨霊「祈本里香」。

 あの単体では呪術界最強と言われる五条悟ですら「祓うなら命懸け」と断言するのが祈本里香だ。

 乙骨憂太に憑りついている彼女は、乙骨のためならば何でもする程に彼を愛している。

 そんな彼がもしも殺されれば、或いは傷付けられれば、一体どれ程怒り狂う事だろう?

 先ず間違いなく暴走の中心となった東京校は壊滅し、そうなれば東日本の呪術的治安の維持に多大な悪影響が出る事だろう。

 確実に祓うには特級呪術師が総出となる必要があるのが、祈本里香と言う呪霊なのだ。

 

 「ってな訳で、東京校と五条君と夏油君にも連絡お願いね。」

 「分かった。私はどうする?」

 「このまま京都市内で高専の指示に従うて。オレは東京校に行くさかい。」

 「夏油君の方は良いのかい?」

 「そっちには特別な式神送るさかい、心配いらへんよ。」

  

 現状、特級呪術師の中でも最大の物量とそれを活かした戦術・戦略を行うのが夏油の強みだ。

 しかし、個人レベルとなると間違いなく優秀ではあるが、五条悟程の絶対性はない。

 それにしたって無数の呪霊から呪力や術式を抽出して自在に操り、更には自身に纏う事で戦闘力を底上げしたり出来るので、彼相手に確実に勝利するには特級呪霊が複数体、それも5体は欲しい所だ。

 最近ではメカとかロボの呪霊が増えた(直哉の影響)ことで、メタルヒーロー系への変身を考えているのだとか。

 だが、付け入る隙は確実にある、と直哉は睨んでいたが故に、彼の下にとあるユニットを送る事を決めた。

 この機体ならば、どんな相手だろうが生きて帰って来れるだろうと言う確信があった。

 東京校の方は単に直哉が五条に頼まれていた事を履行するためだ。

 

 「ってな訳で、後の事は頼んだで~。」

 「仰せのままに、雇い主。」

 

 こうして、直哉は東京へ発った。

 まぁ原寸大のデルタプラス(パイロットはリディ)に乗って『加速』かけてるから直ぐに着くんですけどね!

 

 

 

 ……………

 

 

 

 福岡市で呪霊の群れのみならず、特級呪霊数体及び多数の呪詛師相手に五分での戦闘を続けていた夏油だが、聊か以上に疲弊していた。

 

 (不味いな、これ以上は…。)

 

 市内のど真中では相手の数を減らす大技は放てないし、かと言って近接や呪霊での攻撃だけでは如何ともし難い物量差だ。

 襲撃によってクリスマスを美々子と奈々子や保護した家族達と過ごせない事の鬱憤をぶつけつつ、呪霊を補給しようと思っていたが、それも難しい。

 さっきから呪霊を取り込もうにも、触れようとすると自爆してくるので迂闊に触れず、補給の目途が立っていないのだ。

 じわり、と消耗が積み重なっていく。

 五条悟や禪院直哉ならこの程度は苦もなく突破するのだろうが、夏油には無理だった。

 それでもこの状況で崩れないのは、やはり彼もまた規格外たる特級呪術師故だった。

 

 「ッチ!」

 

 不意に、視界の端で逃げ遅れた女性と子供、母子と思われる二人組が呪霊に襲われているのが見えた。

 咄嗟に保護しようと近付くも、その母子の内側から呪霊が飛び出し、襲いかかってくる。

 それでやられる夏油ではないが、それでも僅かながら集中が途切れてしまう。

 更に何処からか捕まえてきたのか、補助監督や窓、一般人と思われる者達が盾、或いは肉壁とするために掲げられて夏油を囲んでいく。

 

 「全く、面倒な真似をしてくれる…!」

 

 ニヤニヤと嗤う呪霊と呪詛師の姿に苛立ちながら、これからどうすべきかと夏油が思案し…

 

 

 『ホーミングレーザー!』

 

 

 上空から降り注いでくる無数の光の雨によって、人質を拘束していた呪霊と呪詛師が貫かれていった。

 

 「うわぁ、もう片付けてきたのかい?」

 

 見上げれば、とても有名な黒い巨大なスーパーロボットの姿があった。

 サイズは12m程と小さくなっているが、その力ある威容は見間違えようもない。

 地球帝国宇宙軍超光速万能大型変形合体マシーン兵器「ガンバスター」。

 市街地で使うには余りにもオーバーキルな特機であった。

 

 『ホーミングレーザー!』

 「市街地で使うべき機体じゃないよねコレは。」

 

 そして、再び放たれた敵味方識別可能なマップ兵器により、今度こそ全ての人質は解放された。

 後は残敵の掃討だけで、市内への被害は最小限に抑えられたのであった。

 

 「む、これは無理だな。今回は撤退か。」

 

 その光景を、額に縫い目のある呪詛師が遠くから眺めていた。

 

 

 

 ……………

 

 

 

 東京校に乗り込んで来た大量の呪詛師と一体の特級呪霊を相手に、憂太達は奮戦した。

 呪詛師と呪霊を千切っては投げ、千切っては投げ、しかし多勢に無勢で憂太が駆け付けた頃には同級生三名は重傷で倒れていた。

 

 「来い、里香!」

 

 祈本里香、再びの完全顕現。

 変幻自在にして底なしの呪力の塊である彼女と憂太の持つ術式コピーの術式は既にして特級であり、文字通り一騎当千の戦力だった。

 呪詛師は成す術なく蹴散らされ、特級呪霊は粘りはしたものの最後には祓われた。

 しかし代償は大きく、憂太は祈本里香に己の全てを預けてしまった。

 通常、呪霊にそんな事をすれば、憑り殺されるのがオチだった。

 

 「憂太、ありがとう。」

 

 「時間もくれて、ずっと傍に置いてくれて」

 

 「里香はこの6年が、生きてる時より幸せだったよ。」

 

 だが、里香は憂太を殺さなかった。

 呪い、縛りつけていたのは里香ではなく憂太であり、里香はそんな憂太を誰よりも愛していたのだ。

 とは言え、現世に縛り付けるための呪いが消えれば、死者は逝くべき所に逝くのみ。

 これが二人の今生の別れになる…

 

 

 「ほい、ちょっと待ってやー!」

 

 

 そこに、しんみり感動系の空気を無視して直哉がやってきた。

 

 「ほれ、今時珍しい純愛カップルにクリスマスプレゼント!精神コマンド『奇跡』!か~ら~の『復活』!」

 「え?」

 

 突如としてやってきた直哉(≒三十路)により、祈本里香は軽率に復活した。

 

 「え?え?」

 「直哉!何で此処に!?」

 「説明は後で!ほなさいなら!」

 

 ごめんちゃい♡って感じで手刀を作った直哉は、来た時の勢いそのままに嵐の様に去っていった。

 残されたのは、今生の別れの雰囲気ぶっ壊されて生き返ってしまったせいで呆然とする里香と憂太+同期三名。

 否、真希だけは思い人に碌に相手されずに去られたせいでブチギレそうになっている。

 

 「り、里香、ちゃん?」

 「あ、え、うん。」

 「り”がぢゃあ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”ん”っ!!」

 「わわわ、憂太!?」

 

 顔面からあらゆる液体を出しながら抱き着いてくる憂太に、里香は慌てふためきながらも抱き締め返した。

 取り敢えず、すげー強引極まりないながらもハッピーエンドであった。

 

 

 

 ……………

 

 

 

 「んで、良かったの?祈本里香を蘇生して。」

 「んー?」

 

 十日後、年末年始という事で御三家の会合の最中、早々に離席した五条と直哉は久々に直で顔を合わせた場でそう問いかけた。

 

 「只でさえ若造って事で色々やっかみ受けてる身で、今度は完全な死者蘇生?いい加減排除されちゃうよ?」

 「お爺ちゃん方にそないな度胸あらへんよ。出来ても嫌がらせだけやさかい。」

 

 そう、今の呪術総監部や各名家に直哉を害せるだけの戦力も度胸も無い。

 既に国内では有数の資産家となった直哉相手に陰口を吐く程度なら出来ても、正式に秘匿死刑をするにはその影響力は一般社会と呪術界、双方にとって余りに大きい。

 もし直哉が消えれば、一体どれだけの人が露頭に迷い、人命が消えるだろうか?

 少しでも頭が回る者ならば、迂闊な事は絶対に出来ない。

 まぁそんな事が分かっていながらやらかすのが腐った蜜柑という連中なのだが。

 もし呪術総監部が直哉に対して秘匿死刑を宣告した場合、ガチで自衛隊と警察、そして内閣すら巻き込んで呪術総監部そのものが排除されかねない事に気付いているのは、まだほんの一握りだった。

 

 「里香ちゃんの件は運が良過ぎた。ほぼ丸まま残ってた魂と精神、カップルのための奇跡が起きやすい日、何より…。」

 「何より?」

 「お互いが相手に対して、本当の愛を持っていた事。」

 

 これだけは、腐った蜜柑じゃどうしようもない事やで。

 成程、と五条は納得した。

 前二つの条件ならば、満たす事も出来るだろう。

 しかし、人の心は儘ならぬもの。

 若者特有の混じりっけ無しの真実の愛なんて、呪術界の汚泥に身を置いて久しい老人方では決して満たせぬ条件だった。

 

 「これ教えた時の御爺ちゃん達の顔、見せたかったでw」

 「何それ僕超見たいwwwwww」

 「夏油君と合流したらな。」

 

 語尾に草生やしながら、二人の特級呪術師はもう一人の特級呪術師と合流したのだった。

 

 

 

 ……………

 

 

 

 直哉は術式に目覚めてすぐ、自分の生得領域の中にいるある人物とコンタクトを取った事がある。

 

 「あ、おったおった。はじめましてシラカワ博士。自分は禪院直哉言います。」

 「おや、我々の指揮官たる方が直接会いに来るとは。私に何か御用ですか?」

 

 シュウ・シラカワ。

 スパロボ界隈切ってのチートキャラにしてラスボスの一角である。

 

 「取り敢えず、博士を自由にするけど用意ええどす?」

 「お待ちなさい。確かに私はこの状態を良しとしていませんが、そうも簡単に決めてよろしいのですか?」

 

 この人物、その優れた知性と能力、更に王族としての血故にスゲー高いプライドを持っている。

 加えて、ずっと邪神ヴォルクルスなどと言うクソみたいな存在に心身を侵食され、行動の自由を奪われていたせいで「自由」である事に凄まじい執着を持っている。

 そんな経験のせいか「自分を縛る者」「自分を利用しようとする者」には必ず極めて苛烈な報復を行う。

 コイツと敵対した人物は軒並み死んでるか廃人になってるので、その苛烈さは折り紙付きである。

 但し、仲間意識は強く、恩義のある相手に協力する事も多い。

 おまけにその能力の高さが故か「約束を破ったことはない」「嘘はつかない」と公言し、実際にそれを守っている。

 

 「本当は縛りした方が良いんやろが…あんた、それ好かんやろう?」

 「えぇ、それは勿論。」

 「そやさかい、口約束だけしとぉくれやす。破っても罰則無しで気が向いたらって事で。」

 「ふむ、具体的な内容は決まっていますか?」

 「オレが困ってる時に気ぃ向いたら助けてほしおす。それ以外は望まへん。」

 「それならば構いませんよ。しかし、強制したら…分かっていますね?」

 「重々承知。ほな達者でね。」

 「ついでと言っては何ですが、私の仲間達も連れて行って構いませんか?」

 「えーよ。ただ、呪力はその内供給カットするから堪忍な?」

 「えぇ、もう既に貰い過ぎですからね。その辺は自分達でどうにか工面します。」

 

 こうして、シュウ・シラカワとグランゾン、その愉快な仲間達がこの世界へと解き放たれたのだった。

 なお、この会話の一か月後、何と驚異の電力↔呪力の相互変換装置を発明、仲間達と共にシュウ・シラカワは直哉の下から旅立っていった。

 この成果が後に直哉に科学による呪術の研究の推進を決意させる事となった。

 何年か後に出会った時、メンバー全員が受肉してのんびり暮らしているのを見た時、直哉は驚愕しつつも「流石はシラカワ博士やな」と納得する事となるのだった。

 

 

 

 ……………

 

 

 

 2018年 東京都

 

 「正面からの戦いは彼らの土俵だ。相手の得意分野に付き合ってやる必要はない。」

 

 「言うのは簡単だがな。具体的にはどうするのだ?」

 

 「五条悟に関しては殺さずに封印。無下限を破れないのなら、それごと封印してしまえば良い。」

 

 「禅院直哉とやらは?」

 

 「彼は基本用事で国外にいる。少々その滞在期間を延ばしてやれば邪魔はされない。」

 

 「夏油傑に関しては…。」

 

 「彼は守るものが多い。保護した幼い呪術師の卵達。それらを人質にすればどうとでも。警備はあるだろうけど、特級複数体を想定したものではない。」

 

 「…面倒だな。」

 

 「なら、一度当たってみると良い。その上で決めようじゃないか。」

 

 濁り水はゆっくりと、流れ出していた。

 

 

 




直哉「おとん!真マジンガーZEROがアニメ化決定やて!しかも全編セル画!」
直毘人「マジか!デカした!」
直哉「いやーポケットマネーからぎょうさん出してスポンサーになった甲斐があったわ。」
直毘人「お前豪快過ぎるだろよくやった!」

がらり

真衣「直哉さん…。」
真希「アニメ好きなのは分かってたけど、私らの相手忘れるとはふてぇ野郎だよなぁ?」
直哉「ヒョエ」
直毘人「あ、儂急用思い出したからこの辺で。」

そんな在りし日の禪院家の一幕。
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