禪院直哉の趣味的な人生 【完結】   作:VISP

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第六話 渋谷編

 2018年 東京都渋谷区

 

 「閉門。」

 

 これにて、五条悟封印は成った。

 

 「ふぅ~~~~~緊張した~~~~。」

 「おめでとう天内。さて、後はコイツを海に沈めるだけだね。」

 「ふぅ…生きた心地がせんかったわ。」

 

 五条悟と直に戦闘した特級呪霊の生き残り、即ち真人と漏湖はほっと息をついた。

 碌に参加しなかった脹相のみが、変わらず沈黙を貫いていた。

 それだけ規格外であったのだ、この時代の単体戦力にて呪術師最強たる五条悟という男は。

 

 「よし、後はすたこらさっさと逃げるのじゃ。」

 「了解っと。ここまで来て死んじゃったらつまらないもんね。」

 「呪詛師共はどうする?」

 「封印成功だけ伝えれば、こっちの指示に従う気のある奴らは逃げるじゃろ。後は知らん。」

 

 彼らにとっては既に渋谷にてやるべき事は終わらせた。

 なら、次の作戦のためにも迅速に撤退するべきだった。

 事実、もしこの場に他の特級呪術師がやってくれば、狩られるのは彼らだった。

 

 「う、お!?」

 

 しかし、此処に来てアクシデントが起きた。

 真人が獄門橿を持ち上げて直ぐに、その重量が凄まじく増加して床にめり込み、動かせなくなったのだ。

 五条悟の無下限術式を処理し切れないせいか、凄まじい重量を発揮していた。

 

 「参ったのう。これでは動かせん。」

 「チ、ならば時間を稼ぐしかあるまい。」

 

 では具体的にどう動くか。

 その算段を付けようと呪霊達が話し合いを始めた時だった。

 

 

 

 ……………

 

 

 

 『指揮官、五条悟が封印されたらしい。』

 「予定に変更は無し。このまんま予定通りよろしくー。」

 

 軌道上のGGGオービットベースには既に直哉の率いるユニット達の中でもこの日のために選抜されたメンバーが揃っていた。

 シュウ・シラカワの駆るグランゾンを含め、その数はたった7機しかいない。

 しかし、この7機の組み合わせは地球滅亡を可能とする程の特記戦力、呪霊換算で言えば間違いなく特級呪霊でも最上位に位置する者達だった。

 

 『準備完了、何時でもどうぞ!』

 『よし!ディビジョンⅠ高速転槽射出母艦イザナギ、出撃せよ!』

 

 大河幸太郎GGG長官の熱い指示の下、今回の母艦たるイザナギは大気圏へと降下していった。

 降下先は一つ、東京都渋谷区である。

 大気との摩擦熱等なんのその、装甲が多少赤熱しただけであっさりと突破する。

 スラスター群で多少の調整を行い、降下していく。

 

 『ゲッターチーム、先に行くぜ!』

 『露払いは任せな!』

 『がはは、腕が鳴るぜ!』

 

 先行するのはゲッターチーム、流竜馬・神隼人・車弁慶の三名だ。

 機体性能にパイロットの腕、その精神コマンドからこの部隊の露払い役を任されていた。

 

 『隼人、任すぞ!』

 『よし来た!行くぜ、ドリルアーム!』

 

 搭乗するのは真ゲッタードラゴン。

 ゲッターにあるまじき変形・合体しないゲッターの一つである。

 だが、武装はゲッターロボGの三形態のものを使用できる。

 右腕をゲッタードリルに変化させたり、腹部からストロングミサイルを放ったりと「物理法則もあったものではない」と形容される程である。

 ライガーとポセイドンの武装を使用する際は隼人と弁慶に操縦系が交代され、運用される。

 今回は隼人によるライガー状態での運用であり、落下速度を一切緩めず、それ所か更に加速しながらその右腕が変形した巨大なゲッタードリルを真っすぐに渋谷に張られた帳へと向ける。

 しかしこの帳は特別製で、直哉の召喚するユニットの影響を受けない。

 ならば、どうするのか?

 

 『いくぜ、ゲッタードリル!』

 

 精神コマンド「直撃」によってバリアや特殊効果・スキルの多くを無効化された帳は碌な抵抗も出来ずぶち破られた。

 そして、内部にあった帳の基点となる呪具を発見するとその圧倒的な速度のまま接近し、あっさりと護衛の呪霊共々撃破された。

 

 『よし、このまま暴れるぜ!』

 『ふ、はしゃぎ過ぎて転ぶなよ、竜馬!』

 

 真ゲッタードラゴンの侵入に気付いたのか、呪詛師に呪霊、真人の改造人間達が続々と集まり出した。

 しかし、フル改造済みでカスタムボーナスによりEN最大+50、特殊スキルEN回復(中)を持ち、素でもゲッター系最新機と言うだけあって凄まじい火力と機体性能を持ち、更にパイロット三名全員がLv100でカンスト済み(有用なスキルも追加済み)のこの機体を相手にするには、彼らは余りに力不足だった。

 

 『あ?終わったぞ?』

 『カウンターの反撃で全滅とはな…。』

 『よし、後はこの辺を見回るぞ。』

 

 全滅するのに1分とかからなかったが、スパロボではよくある事だった。

 彼らはこのまま渋谷周辺をクリアリングすべく、その場から姿を消した。

 

 「よし、帳が消えたで。」

 「では、始めましょうか。」

 

 にっこりとシュウ・シラカワが嗤う。

 まるでこれから始める戦闘をショーとでも思っているかの様な綺麗な笑みだが、直哉には彼が何を思っているかちょっとだけ通じた。

 

 「え、シラカワ博士怒てるん?」

 「えぇ、まぁ。」

 

 にこりと浮かべられた笑みは本当に綺麗だ。

 綺麗だが、修羅場慣れしてる直哉ですらゾッとする怒りの気配が感じられた。

 

 「あのメロンパンと呼ばれる脳味噌ですが、やってる事がヨーテンナイそっくりでして。」

 「あ、あー…。」

 

 天才たるシュウ・シラカワの人生を、運命を弄んだ二つの存在。

 一つはラ・ギアスの三邪神が一角、破壊神サーヴァ・ヴォルクルス。

 もう一つがヴォルクルス教団の頂点にして予言者たるヨーテンナイだった。

 約55000年前のラ・ギアスに存在した古代トロイア文明の人間の生き残りであり、巨人族の怨念の化身である三邪神を封印するため、自身の意志とは関係なく結界の楔の人柱となる役目を強制された。

 地中深き場所で結界内に閉じ込められて自由を奪われた彼女は生きながらにして半身がアストラル界に属する不老の身となり、狭い結界内に閉じ込められたまま50000年以上もの長きに渡る時を生かされ続けた。

 不老なれど人間としての命は既に尽きているため、邪神が完全に解放され封印が解かれると死亡してしまう。

 そのため、己を縛りつけたラ・ギアスへの復讐と自身の自由を手に入れるための計画としてラ・ギアスにて地上世界すら巻き込んで数々の争乱を起こした。

 シュウ・シラカワがヴォルクルスと契約してその下僕になった経緯にもこの女性は深く関わっているため、シュウ・シラカワには目の敵にされ、自身の計画をほぼ完璧に言い当てられた上にご破算にされて死亡した。

 しかし、それまでには膨大な被害が出ていたので、彼女のラ・ギアスへの復讐は成っていたとも言える。

 

 「確かにメロンパンも千年近くコツコツやっとったからなぁ。」

 

 ラ・ギアスで起きた事件の全てはヨーテンナイの計画通りというわけではなかった。

 自身の計画を達成するために必要な条件が整うまで、教団などいくつかの手を打ちつつ只管待ち続けていた。

 事実上の不老不死である彼女にとっては、万か億かの偶然が何時か起こり得ればそれで良いと気長に待っていた。

 その一つが地上人召喚事件であり、シュウ・シラカワの母親もその被害者の一人だった

 結果として自分が生まれたとしても、シュウ・シラカワにとってはヨーテンナイとは過酷な境遇に自分と母親を追い遣った糞外道の一人なのだ。

 この辺り、死体を乗り継いで生き続けながらコツコツ呪いを溜め込んで来たメロンパンとやり口が似てると言える。

 

 「という訳で、八つ当たりも込めてボコボコにしましょう。」

 「まぁやる気あるのは良い事やね。」

 

 直哉はそれ以上突っ込むのを止めた。

 だって怖いんだもん。

 

 「ほなよろしくな勇者王!」

 『任されたぜ!』

 

 渋谷上空に到着したイザナギから次に出撃したのは勇者王ガオガイガーである。

 

 『一気に決めてやるぜ!ディバイディングドライバー!』

 

 その名の通り巨大なドライバーの様なハイパーツールを左腕に装着したガオガイガーが、帳の消えた渋谷のスクランブル交差点へとその先端を突き立てた。

 途端、空間が歪曲され、巨大な円柱状の穴が出来上がる。

 そこには一般人も建物もなく、ただ効果範囲内にいた呪霊と呪詛師、そして獄門橿しか残っていなかった。

 一般人の肉壁や建物どころか地形が一瞬で変わるという想像もしていない事態に唖然とする呪詛師・呪霊連合。

 その隙を、天才たるシュウ・シラカワが見逃す訳も無かった。

 

 『グラビトロンカノン、発射!』

 

 この日のために特別に調整されたグラビトロンカノンが放たれた。

 本来ならば自機の胸部から周囲に最大3200Gの高重力を発生させ圧殺するこの技だが、今回は呪霊・呪詛師、中でも一味の中心であるメロンパンを逃がさぬ様にとこの世界の呪術理論に対して入念に対策されたこの一撃は術式の発動どころか呪力による身体能力強化すら阻害していた。

 

 『回れ、インフィニティ・シリンダー!』

 『ディス・レヴよ、その力を解放しろ!』

 

 そして、スパロボ界でも最上位に入るチート機体こと黒き堕天使アストラナガンとその後継機たるディス・アストラナガン。

 アストラナガンの最強兵器インフィニティ・シリンダーとは、要は時間逆転現象である。

 ティプラー・シリンダー(各物質世界の階層からエネルギーを抽出し、そのエネルギーを用いてタイムスリップや並行世界の転移を可能とするシステム)を応用した攻撃であり、両翼を広げ両腕を翳し、十字状のエネルギーを形成し射出する。

 命中後、10個の中性子星が目標の周囲で回転する事で超光速の時間逆行現象が発生、対象を「存在する前」の状態に戻し、存在そのものを虚無へと消し去る。

 ディス・アストラナガンのアイン・ソフ・オウルもまた、全く同様の機構となっている。

 胸部装甲を開放してエネルギー弾を形成、発射する。

 対象に命中すると同時に出現する魔法陣によって10個の中性子星を召喚、それらを超高速回転させ対象にぶつける事で時間逆行現象を発生させる事で対象の存在を抹消する。

 が、こちらの場合、動力源が負の無限力を吸収して稼働するディス・レヴであるため、これを喰らった相手は文字通り全ての世界から存在を抹消され、比喩ではなく虚空の彼方へと消え去ることになる。

 はっきり言って、地球上での運用は厳禁にしたい程の極めて危険かつ強力無比な兵器である。

 

 『ゴルディオンハンマー、発動承認!』

 『了解!ゴルディオンハンマー…セーフティデバイス、リリーヴ!』

 『システムチェーンジ!』

 『ハンマーコネクト!』

 

 そして、ディバイディングドライバーによって戦場を構築したガオガイガーもまた、大河長官とオペレーターの命の許可の下、ゴルディーマーグと合体する事で使用可能となる必殺技を放たんと準備する。

 更にこの場にいる最後の機体が遂にその力を露わにしていく。

 

 『最終にして原初の魔神…!その力を、今ここに!』

 

 兜甲児とマジンガーZの最終進化形の一つ、マジンガーZEROである。

 直哉と常に共にあったマジンガーZがその秘められた七つの「魔神パワー」を解放し、変貌していく。

 全身が鋭角的にディティールアップされ、全体的にマッシブな体型となり、目には黒目ができ、口部は牙のように上下に開くようになった。

 それは正に「魔神」と呼ぶべき禍々しい姿であり、感じられる威圧感はグランゾンにも比肩、或いは凌駕する程だった。

 本来ならばここにサイバスターとデモンベインの姿もあった筈なのだが、前者は渋谷の他にも都内に展開された帳の対応に、後者は下手にこの世界で顕現するとヤベーモンを引き込む可能性があったのでお留守番である。

 

 「あ、ああああ……。」

 

 その威容にして異様な機人達の姿を見て、次々と重力場によってその場に縫い止められた呪詛師と呪霊達の心が折れていく。

 彼らは全員が禪院直哉対策としてスーパーロボット大戦シリーズを大なり小なりプレイし、直哉の術式の異常なまでの強力さを、使役しているユニットの最強ぶりを知っていた。 

 故にこそ、圧倒的絶望を前にしてその心は折れてしまった。

 窮地にあって尚奮い立つのが英雄であり、英霊であるならば、彼らは真逆の存在だ。

 彼らは英雄に非ず、呪詛師であり、呪霊だった。

 しかし、それは無理もない事だった。

 彼らの状況は、余りにも詰んでいたから。

 

 真ゲッタードラゴンによる帳の突破と基点の破壊。

 蒼の魔神グランゾンによる超重力場による拘束。

 勇者王ガオガイガーによる周辺被害の無い戦場の構築と光と言う呪霊とは真逆の状態への変換兼消滅。

 そして黒の堕天使アストラナガンと黒き銃神ディス・アストラナガンによる消滅必須の一撃。

 更にダメ押しで原初にして終焉の魔神マジンガーZEROの因果律兵器による逃走・生存の可能性の消去。

 

 スパロボシリーズの歴代ラスボス勢でも突破可能なのが少ないラインナップである。

 余りにも殺意の塊が過ぎていた。

 

 「ま、待つのじゃ!妾を殺せば獄門橿の開き方が分からぬぞ!良いのか!?」

 

 メロンパン、もとい偽天内理子。

 最後の望みを賭けてまさかの取引を試みた。

 

 「き、貴様ぁ!それではこれまでの苦労が水の泡ではないか!?」

 「五月蠅ぁい!妾は死にとうないのじゃ!禪院直哉よ、開き方を教える!これ以上の悪事はしないと縛りもする!だから妾だけでも見逃すのじゃ!」

 

 流石千年近く生き延び続けただけあって、メロンパンは生き汚かった。

 この絶望的な状況にあってなお、もう何もかんも放り捨ててでもメロンパン(♀)は生き残ろうとしていた。

 

 「凱はんと甲児君は『勇気』、クォヴレー君は『直感』と『魂』、イングラムはんは『奇襲』と『直撃』よろしくー。」

 「聞けー!人の話をー!」

 

 禪院直哉は偽天内理子の言葉を一切顧みなかった。

 「あーコイツもう殺処分だな」と精肉業者に送られる家畜を見る目を向けるだけだった。

 直哉にとってメロンパンとは、殺す所か輪廻すら超えて消滅させるのが確定しているだけの相手に過ぎない。

 そこには他の感情が入る余地は無く、ただただ純然たる殺意のみがあった。

 

 『さぁ、時の流れを垣間見よ!』

 『時を遡り、お前は無に帰するのだ!』

 

 二つの超高エネルギー弾が天内理子他特級呪霊らへと命中、一切の守りや耐久力を無視する10個の中性子星による超光速の時間逆転現象が発生し、消滅していく。

 

 『ゴルディオンハンマー!うおおおおおおおおッ!』

 

 巨大な戦槌をゴルディ―マーグが変形したマーグハンドによって掲げ、ガオガイガーは飛翔する。

 

 『ハンマーヘル!』

 

 目指すはこの事態を引き起こした怨敵。

 マーグハンドの車輪の軸から引き抜かれた光の杭の一撃が、消滅してゆく偽天内理子の頭部へと突き刺さる。

 

 『&ヘブン!』

 

 ずるりと、脳味噌として居座っていたメロンパン本体が天内理子の身体から取り出された。

 

 『光になれェェェェェェ!』

 

 汚された身体を浄化し、もう二度と利用されぬようにと怒りと哀悼を込めたゴルディオンハンマーが振り下ろされた。

 一般的な防御力の概念が一切通用しない、物理法則的観点から見た場合の究極の一撃によって、天内理子の肉体は光となって消えていた。

 

 『オオオオオオオオオオッ!』

 

 最後はマジンガーZEROである。

 ガオガイガーの手からメロンパン(光の杭付き)を受け取り、それを鷲掴みにしたまま「因果律兵器」を発動、異空間へと飛び込む。

 そのまま音を置き去りに、光に近い速度で縦横無尽に飛翔してメロンパンをボロ雑巾にしていく。

 その状態でなおメロンパンは不幸にも未だ明瞭な思考を保っていた。

 考えるのは一つ、「何故こうなってしまったのか?」だった。

 答えは一つ、最早最初の名前も忘れたコレが焦ったが故だった。

 「最強」五条悟、「呪霊操術」夏油傑、「多種影法術」禪院直哉。

 この三人が同じ時代に生まれ、知ってか知らずか己を追い詰めたのが焦りの原因だった。

 五条悟による呪術界の刷新、禪院直哉の即応体制の確立、そして是が非でも欲しい呪霊操術とその応用を確立した夏油傑。

 日々消えていくコツコツ溜め込んだ呪いと折角腐らせてきた呪術界上層部他諸々。

 混沌の中にこそ光明を見出したメロンパンにとって、それを的確に消し去っていく二人は目の上のたん瘤であり、もう間も無く肉体的な全盛期を過ぎ去ってしまう夏油傑が焦燥を加速させた。

 これ以上機を待とうにも隠れ場所すら徐々にだが的確に潰されていく日々に、メロンパンは賭けに出ざるを得なくなる程までに追い詰められていたのだ。

 その結果が、コレである。

 途中までは上手くいった、いっていた筈なのだ!

 

 (だが最後の最後にコイツのせいで!)

 

 禪院直哉と言う存在の弱点を、限界を見極めたつもりだった。

 しかし蓋を開けてみれば、自分こそが釣り出された獲物だったのだ。

 余りにも想定外、余りにも規格外。

 それが禪院直哉と言う鋼の英雄達を束ねる者の本気だった。

 

 (あああああああああああああああああああああああああああああああああああ!)

 

 その思考には一片の懺悔も謝意も無い。

 

 (ここで死んだら誰が呪いの最適化を行う!誰が人類を新しい世界へ導く!)

 

 ただの呪いらしく身勝手で傲慢な思考。

 

 (死ねない!死ねない!死にたくない!)

 

 しかし、所詮は末期の思考に過ぎない。

 不意に通常空間に復帰し、超高速で大地に叩きつけられた。

 地表が割れ、放たれる圧倒的な光子力エネルギーによって大地は溶け、マグマとなって噴出する。

 

 『さぁ、0に帰れ!』

 

 背面の/の入った0字のスクランダーの上に乗ったマジンガーZEROに掴み上げられたメロンパンは、最早何故形を保っているのか不思議で成らない状態だった。

 

 『焼き尽くせ、ファイナルブレストノヴァッ!』

 

 そして、零距離からのブレストファイヤーが全て焼き尽くした。

 呪詛師も、呪霊も、メロンパンも。

 この凶事に纏わる全てを焼き尽くす様に、地獄の業火が如き圧倒的熱量が全てを舐め尽くした。

 その日、日本の東京から大気圏すら超えてなお伸びる炎の柱が世界各地から観測される事となる。 

 

 こうして、千年近く日本の呪術界を裏から牛耳っていた呪いが消えたのだった。

 

 

 

 ……………

 

 

 

 半年後、東京都渋谷区

 

 「よ。」

 「おーう。」

 

 半年前の激戦等何のその。

 五条悟と禪院直哉は何時ぞやの様に二人で並んで歩いていた。

 

 「で、良かったの?」

 「んー?」

 「京都校の学長の席、おじーちゃんからのプレゼント。断ったそうじゃん?」

 「別にオレ以外でも務まるしなぁ。」

 

 五条悟封印の知らせは直ぐに呪術界上層部に知らされた。

 しかし、封印解除の知らせはその一時間後に知らされた。

 その間に起こった出来事は呪術総監部による五条悟の呪詛師認定並びに封印解除の禁止である。

 以前から五条悟の呪詛師化を危惧した保守派による緊急事態向けの用意は、メロンパン一味と繋がった一部保守派によって想定通りに利用されて発動した。

 

 『あれれー?僕ったら何時呪詛師に鞍替えしたのかなー?』

 

 しかし、それは既に封印から抜け出していた五条悟にとっては絶好の機会であった。

 翌日、呪詛師・呪霊の排除が完了した渋谷での救助活動が始まる中、渋谷で起こった出来事について日本政府は呪術総監部に問い合わせた。

 この当時、呪術総監部は物理的にも政治的にも窮地に追い遣られつつある中、五条悟の呪詛師認定を撤回する等の行動も出来ない程に混乱していた。

 故に調べられれば直ぐにボロが出そうな答えを、即ち五条悟の呪詛師・呪霊連合との共謀によるテロ活動の結果と返したのだ。

 彼らの知る以前の日本政府ならば、物分かりの良い非術師達ならばそう答えれば「いつもより規模のデカい内輪揉め」として内心はどうあれ呑み込んだ事だろう。

 

 『こちらの情報とは随分食い違いがある様ですな。』

 

 しかし、この時の日本政府は強気だった。

 既に彼らは公安と自衛隊双方に対呪霊・呪詛師部門を設立して独自戦力の確保に成功し、更に業界の詳細な情報は逐次入手可能になっていた。

 無論、渋谷で何が起き、呪術総監部が誰と繋がり、何をしてきたかもしっかりと分かっていた。

 混乱中の呪術総監部では証拠の偽造等と言う器用な事が出来る訳もなく、あっさりと尻尾を出した彼らは渋谷テロ事件における重要参考人として確保されていった。

 無論彼らは呪術師であり、並みの警官や自衛官で対処できる程弱くは無い。

 

 『何だ、老い耄ればっかかよ。』

 

 しかし、天与呪縛のフィジカルギフテッドこと伏黒甚爾(格納呪霊&特級呪具多数)と彼によって鍛えられた公安職員並びに自衛官は強かった。

 前線を引いて久しい老人方は容赦なくボコボコにされてお縄に付く事となった。

 

 「僕としてはいい加減直哉にも呪術界の要職の一つ担ってほしいんだけどなー。」

 「冗談言いな。これ以上仕事増やしてたまるかい。」

 

 投資・経営関連を冥冥とその愉快な部下達に任せ、ユニットによる即応体制と研究分野に注力するようになった直哉だが、それでもまだまだ多忙な事に変わりは無かった。

 

 「結局、お爺ちゃん達も続投だしさぁ。」

 「甘い蜜無しで死ぬまで働かせるんやさかい別にええやろ。」

 

 捕まったのは呪術総監部だけでなく、呪術師の名家に連なる保守派の重鎮達の殆どだった。

 以前から証拠集めをしていたが、今回の事で本格的に腰を入れる事となった日本警察は脱税に粉飾決済、人身売買に児童への性的虐待に暗殺毒殺謀殺と不正腐敗悪習の山脈に目を回す事となった。

 その余りの酷さと範囲の広さ、人数の多さから上層部が文字通り総入れ替えになる事は直ぐに分かった。

 が、そうなると日本呪術界が人手不足で機能不全に陥るのが目に見えていたため、日本政府は改革派の一部(五条派)と以前からの相談役である禪院直哉のアドバイスから「不正腐敗悪習他の犯罪行為の一切を禁じ、死ぬまで真面目に働く」とする縛り(破ったら死亡)を設けた後、今回捕まった連中の一時復帰を認めた。

 今後は十年以上かけて地道に裁いていく予定なのだから、どれだけ酷かったかが分かる。

 

 「楽巖寺学長は次の学長が決まり次第引退するってさ。あの人はあの人で悪い事してたのにねぇ。」

 「楽巖寺学長は保守派ってか中立に近い人やったから、死なれたら目覚め悪うなる。」

 

 それが嘗て生徒だった者としての、世話になった恩師への手向けだった。

 楽巖寺嘉伸は確かに呪術界の重鎮らしく不正もしていたし、色々表に出来ない事もしていた。

 しかし、それが清濁併せ呑みながら己の下の生徒は手厚く保護し、しっかりと育て上げた事実は消える事は無い。

 あらゆる呪い蔓延る呪術界の只中で、楽巖寺嘉伸は正しく一角の教育者であった事を、禪院直哉は知っていた。

 故に、楽巖寺嘉伸他「そうせねば生きられなかった・守れなかった者達」に関しては、呪術界の人材保護の名目で減刑するように日本政府側と取引していた。

 これは一般家庭から保護・売買されて無理矢理呪術界入りし、汚れ仕事をさせられた者達も含まれている。

 また、上層部に消されかけた所を逃げ延びて呪詛師認定された者達も対象となっている。

 他にも無理矢理母胎にされた被害者や種馬にされた者達、用済みとなって消された者達の調査など、やるべき事は増え続けるばかりだった。

 

 「結局、膿を出したからって全てが急に変わる訳じゃない、か。」

 「一緒に血もぎょーさん出たさかい。洗って縫って、よくよく養生せなあかんね。」

 

 旧来の腐敗した上層部を一掃した所で、その気風を継ぐ連中は無には出来ない。

 追い出した所で呪詛師化するならば、そんな連中すら使って人々を守らねばならない。

 

 「ま、オレらが頑張れば百年先は無理でも50年先までは大丈夫やろ。」

 「やーれやれ。仕事は山積みだなぁ。」

 

 悪の栄えた試し無し、なれど呪いの途絶えた試し無し。

 今日も呪術師達は人の世に紛れ、呪いを祓うのだった。

 

 

 

 




次回でエピローグとなります。
それで完結なので、短編集から独立とします。
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