Act1.ハルウララ〜桜咲く〜   作:雪狐

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ウララと見知らぬ天井、そして昼食の悪夢

 なんだろう。 とっても温かくて、安心できる感じがする。

 耳にチャプチャプってお水の音が聞こえる。 そしてなんだろう、誰かが優しく私の体を洗ってくれているみたいで、少しくすぐったいなぁ。

 

「これは介護、これは介護、これは介護」

 

 なんだか、トレーナーの声が聞こえるなぁ。 何を言ってるんだろう? 起きたいのに……ウララ、とっても眠くて起きれないんだ……眠いなぁ。

 なんだかね、フワフワした気持ちがしてね。 とっても幸せな感じがするの。

 でも、頑張って目を開けてみたらね。 トレーナーがお顔を真っ赤にしながら、私を洗ってくれてた。

 

 フフッ、なんだろう。 きっとこれは夢なんだろうけど、なんだか嬉しいなぁ。

 トレーナーの手が触れる度にね、ウララの胸の奥の方がポワッて温かくなるの。

 起きなきゃ……んっ、ダメだ……動けない。 そして、とっても眠い……。

 もっとこの温かくて幸せな夢を見ていたいのに……もっと触れてほしいのに……も、う……眠い。

 

「3.14159……」

 

 遠くから何か分からない数字を数えるトレーナーの声を聞きながら、私は深い深い底に沈むみたいに落ちていった。

 

 

 

 

○○○○○○○○○○○

 

 

 

 次にウララが目を覚ました時、最初に目に入ってきたのは見知らぬ天井だった。

 まずは真っ白な天井、次に真っ白なカーテン、そして真っ白な布団が次々に目に映る。 半覚醒状態ではあるが、なんとなく場所がわかった。

 

(あぁ……ここ、保健室だ)

 

 まだ寝起きのためボッーとする頭で、ウララはどうしてここにいるのかを考え始めた。

 

(確か……ウララ、トレーナーに言われてずっと走って……その後シャワーを……あぁ!?)

 

 脳裏に浮かんだ光景は汗と土で汚れ、疲労で倒れ伏したウララをお姫様抱っこしてくれたトレーナー……そして、そんなトレーナーの胸元へ盛大に嘔○(虹色☆)した自分の姿だった。

 

(あ、ぁぁぁぁあ!?)

 

 ハッキリとではないものの、しっかりとトレーナーにやってしまったとんでもない事を思い出し、寝ぼけていたウララは一気に現実へと引き戻された。

 そして気づいた、自分の服が着替えさせられている事に。 そして、先程に見ていた温かな夢が、失神した自分を介抱しながらトレーナーがシャワーを浴びせてくれていた事実へと。

 蘇る感触と朧げではあるが自分を洗うトレーナーのなんとも言えない表情。

 

(あうっ……初日から何しちゃったの、私……)

 

 ウララのやった事といえば、初日から遅刻、初日から倒れる、初日からトレーナーに盛大に嘔○(虹色☆)、トレーナーに自分を洗わせる。 大失態としか言えない、とんでもない事をやってしまったのである。

 

 ウララは頭を抱えて布団の中で丸くなってしまった、自分はなんて事をしてしまったのか。 きっとトレーナーはこんか自分に、呆れてしまっただろうと。

 我慢する事、頑張れる事には自信があった。 それなのに、初日から返上不可能なまでの失態をやってしまったのだ。

 

「トレーナー……怒っちゃったかな」

 

 やっと出会えた自分の夢を笑わずに理解してくれるトレーナー、それなのに自分は……そう思うとウララは無性に悲しくなった。

 それと同時に怖くなった、もうトレーナーが自分に愛想を尽かしたんじゃないか? そう考えると、自分でも止めれないほどに身体が震えた。

 また、独りに戻らないといけなくなる。 独りがとても怖い、また誰からも見てもらえなくなるんじゃないか? もし、また独りに戻ってしまったら……大きくブルリと身体が震えたと同時に、いきなり布団を力強くで剥ぎ取られた。

 

「大丈夫かウララ!!」 

 

 そこに居たのは酷く慌てたトレーナーだった。 狼狽し、まるで壊れ物を扱うかの様にウララを念入りに触ってきた。

 

「まさか……後遺症か?いや、しかしアレくらいで……いやいや!まさかウララは身体が弱いのか?そうなら、練習のメニューを再度、作り直さないと……」

 

 トレーナーはウララの身体を念入りにチェックしながら、ブツブツと何かを口走っている。

 

「あ、あのトレーナー……」

 

 ウララは意を決してリスティーへ声を掛けた、しかしリスティーはまるで聞こえていないのかの如く、ひたすらウララの身体を念入りに触り続けている。

 

「顔色も悪くない……はっ!?まさかケガか!?いや、しかし……ブツブツ」

 

「トレーナー!!」

 

 自分の言葉に反応してくれないリスティーに、ついついウララは大きな声を上げた。

 するとリスティーはピクリと反応し、呟いていた独り言がピタリと止まった。

 

 しばし二人は無言のまま見つめ合う形で向かい合ったままで居たが、ウララが耐えかねて頭を下げ謝罪を始めた。

 

「トレーナー、ごめんなさい!」

 

 深く頭を下げ、申し訳なさそうな表情のまま顔を上げたウララを待っていたのは、想定外の事だった。

 

「ん?ウララ、なぜ君が謝るんだ?」

 

 リスティーはポカンとした表情を浮かべていた。 それは気を遣ってでなく、本心から何に対しての謝罪なのかわからないと言っているかのような対応だった。

 

 この対応には逆にウララが驚いた。 初日から遅刻、トレーニングで倒れ、極め付けはトレーナーに……普通なら怒鳴りつけられてもおかしくないはずだろう、と思ったのにトレーナーは怒鳴るどころか、心配そうな顔でウララを見てくれている。

 

「怒って、ないの?」

 

 恐る恐る、怒ってないのか? と言ってみた。 リスティーは少し考える仕草の後、ポンッと手を叩き納得がいったとばかりに微笑を浮かべた。

 

「あー、盛大に吐いた事だな?別に吐かれるのには、慣れているから気にしないでいい」

 

 吐かれるのに慣れているって……とウララは思ったものの、トレーナーが怒っていないと分かり安心し胸を撫で下ろした。

 その後は、リスティーから体調についてや、改めて今後の練習内容について話し合おうと話をした。

 

 多少は身体が気怠い感じと筋肉痛があったが、授業に出られない程ではなかったので、ウララはリスティーと保健室の前で別れ教室へと向かい歩き出した。

 その別れ際、リスティーから昼食には必ず食堂に来るようにと自分が合流するまで注文はしないようにと念を押された。

 

 

 

 

○○○○○○○○○

 

 お昼になった、なのでリスティーに言われた通り食堂に行くと既にリスティーが待っていた。

 ウララに気づいたリスティーは、こっちだウララと手招きをしている。

 急足でリスティーの元へ向かうと、何故かそこにはオグリキャップとスペシャルウィークも一緒に居た。

 瞬間、嫌な予感がウララを襲う。 そしてリスティーの次の言葉でウララの嫌な予感は、現実へと変わるのであった。

 

「今日から、昼食はオグリとスペシャルウィークと食べなさい」

 

 運ばれてくるあり得ないほどたくさんの食事、オグリキャップ、ウララ、スペシャルウィークの並びで座らされ、ウララの後ろにはリスティーが肩を掴み立っている。

 

「さぁ、食べなさい。オグリやスペシャルウィークに負けないよう頑張りなさいね」

 

 ウララの戦いが今、始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今後、ウララはほぼ毎日オグリキャップ、スペシャルウィークと食事を摂る事になります。 果たして、ウララは食欲の権化に勝てるのか。

次回予告(仮)
食べる事も練習だ! 負けるなウララ、頑張れウララ!

次回
オグリキャップとスペシャルウィークとハルウララ
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