Act1.ハルウララ〜桜咲く〜   作:雪狐

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ウララとデビューレースと涙〜前編〜

「お、おはようござい、まふ……ぅう」

 

 昨夜、突然に告げられたデビューレースの事を考えすぎてウララはすっかり寝不足となっていた。

 別にデビューレースが嫌とかではなく、まさかなんの前触れもなく決められるとは思ってもいなかったため、心構えができていなかったせいであった。

 

「うむ、おはよう。では、明後日のメイクデビューレースについて話そうか」

 

 そんなウララをよそに、リスティーは気にも留めていないらしく更なるビックリ発言をした。

 

「え?あ、明後日?明後日なの!?」

 

 リスティーから告げられたメイクデビューレースの日付を聞いた瞬間、ウララは一気に眠気が吹き飛んだ。

 近々だとは思っていたものの、まさか明後日とは思っても見なかった事である。

 ビックリし過ぎてポカンとフリーズしているウララをよそに、リスティーはレースの内容を話し出した。

 

「場所は東京、距離は1300m、ダートの短距離だ」

 

 キュッキュッと小気味いい音を奏でながら、リスティーはホワイトボードに場所、距離、馬場を書きだした。

 そしてリスティーがホワイトボードいっぱいに書き終わる頃に、やっとウララは我に返った。

 

「あ、あのトレー……ナー……」

 

 我に返り、初めにウララの視界に入ったのはホワイトボードいっぱいに書き込まれたメイクデビューレースの情報とレースの傾向と対策だった。

 寝不足と膨大な難しい言葉の数に、ウララは考えるのをやめた。

 

「よし、それじゃあまずは軽く説明をするぞ」

 

「……はい」

 

 その後、結局2時間ほどリスティーによるレースの傾向と対策を聞かされ、覚えておくようにと分厚い辞書のような資料を手渡され初めてのレース会議は終わった。

 

 

 

○○○○○○○○○○○○○○○

 

 

「へぇー、やっとデビューレース決まったんか、よかったじゃん」

 

 すっかり日課のようになった、ゴルシとの鬼ごっこの合間にデビューレースが決まった事を話すとゴルシはニカッと笑顔を浮かべた。

 

「ぅん……でも、いきなりだから心ぱ……いんっ!?」

 

 ウララが不安を吐露した瞬間、背後からタックルされ盛大に吹き飛んだ。

 

「馬鹿野郎!!やる前から怖気ついてどうすんだ!ほら、練習すんぞー!!」

 

 そう言うとゴルシはウララを肩に担ぎ上げ、スタート位置へと歩き出した。

 スタート位置へと着くとウララを地面に下ろし、ほら行けと言わんばかり背中を押してきた。

 それに促されるように一気に自身のトップスピードで駆けていく。 するとすぐに背後から今まで何度も聞いて感じた、ドスッドスッと力強い音と圧倒的な存在感が近づいてくる。

 

「オラァ!!」

 

 そして、腰元に激しい衝撃を感じるのだった。

 

「まったくよー、何をビビってるの知らんけどな。メイクデビューレース程度には私よりヤバいのはいねぇから、安心しろよ」

 

 グイッと担ぎ上げられ、スタート位置へと連れて行かれる途中に言われた言葉を聞いて、ウララはどこか心が軽くなるのを感じていた。

 

 

 

 

○○○○○○○○○○○○○○○○

 

 

 

 メイクデビューレースを明日に控えた今日、ウララは新しいトレーニングを言いつけられた。

 

「今日から新しいトレーニングだ、ゴールドシップ」

 

 リスティーに名前を呼ばれると鉢巻をしたゴルシがいきなり走り出した。 そしてリスティーはウララに、ゴルシを追いかけ鉢巻を取ってくるように告げた。

 

 新しいトレーニング、それはゴルシを追いかけて鉢巻を取る事。

 

「ハハッ!!捕まえてみろー♪」

 

 ゴルシは一定の距離まで近づかせると一気に加速し、また一定の距離がひらくとスピードを落としウララを見てはニヤリと悪戯っ子のような笑みを浮かべた。

 

「ハァ、ハァ……くぅぅ!!」

 

 ウララも負けじと急加速したりして距離を詰めようとするが、まるでウララの考えがわかっているかの如くゴルシは同タイミングで加速して一定の距離までしか近寄らせてくれない。

 

 

「よし、今日はここまで」

 

 辺りが暗くなり始めた頃のタイミングで、リスティーから終了の合図が出て練習を切り上げる事になった。

 そして結局、練習が終わるまでウララはゴルシを捕まえる事はおろか近寄ることさえできなかった。

 

「ハァ……ハァ……ぅう」

 

 恨めしそうにゴルシを見やると、ゴルシはウララの視線に気づくとドヤッと笑みを浮かべなんとも腹立たしい笑顔をした。

 

「むぅ〜……わっ」

 

 ウララは悔しくてプクッと膨れていると、リスティーが頭をわしゃわしゃと撫でながら言った。

 

「それでいい。その悔しさを忘れないようにすれば、まだまだ成長できるぞ」

 

 リスティーからの一言で、ウララの中にあった悔しいという気持ちは一気に消え去って、褒められた事への嬉しさが溢れ出してきて自然と笑顔になり元気よく返事をした。

 

「うん!トレーナー!私、頑張る!!」

 

 

○○○○○○○○○○○○○○○○

 

 

 ウララを寮へと送った後、リスティーはゴルシと一緒に自販機の前に居た。

 リスティーは自販機で2人分の飲み物を買うと、一本をゴルシに手渡す。

 ゴルシは手渡されたジュースを一口飲んだ後、ダルそうに口を開いた。

 

「サンキュー、んで?何か用があるんだろ?」

 

 リスティーも飲み物を一口飲んだ後、真面目な表情のままゴルシを真っ直ぐに見つめながら口を開いた。

 

「ウララは勝てると思うか?」

 

 ゴルシはやっぱりな……と小さく漏らした後、少し考えるような仕草をして頭をガシガシと掻きながら口を開く。

 

「無理だな、確かに最初の頃に比べると良くはなってるけど……まだまだ足りねぇ。正直、最下位争いだろうな」

 

 そう言った後、ゴルシは一気に飲み物を飲み干した。

 

「そうか……」

 

 ゴルシの言葉を聞いたリスティーもただ一言だけ呟き、静かに飲み物を飲んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回予告(仮)

ついにやってきたメイクデビューレース。そして緊張しながらも、ゲートへと向かうウララ。
果たしてウララはメイクデビューレースはどうなるのか。

次回

ウララとデビューレースと涙と〜後編〜
ここから始まるハルウララ伝説の初めの一歩。
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