Act1.ハルウララ〜桜咲く〜   作:雪狐

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更新が大変遅くなり、本当にすみませんm(_ _)m



ハルウララとでちゅね戦争〜前夜〜

 朝が来た。 

 素晴らしい日の始まり。

 スーパークリークにとって、今日は待ちに待った赤ちゃん(ハルウララ)との合同トレーニングの日。

 

 数日前、ついやる気持ちを抑えきれずにフライングをしてしまい、あわや合同トレーニングを断られそうになってしまった。

 そのせいで奈瀬トレーナーからこってり絞られ、クリークは反省しているように見えたが……しかし、あの日から毎夜毎夜クリークは恍惚な表情でおしゃぶりを念入りに磨いていた。

 

「あぁ〜♪早くヨシヨシしたり、子守唄を歌ったり、バブバブさせたりしてあげたい」

 

 スーパークリークの母性はまさに今、暴発寸前まで高まっていた。

 

 

 

 

★☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 ゴルシとの本気鬼ごっこの翌日は生憎の大雨でトレーニングがお休みになったため暇となり、ウララはリスティーに呼ばれリスティーの部屋に来ていた。

 

「お邪魔しまーす」

 

 部屋に入りウララの目に映ったモノは必要最低限の家具しか無く殺風景で大量の本とダンベルなどのトレーニング器具の散らかった女性の部屋とは思えないものだった。

 床から机の上まで大量の本が積み重なっていて、ウララは崩さないよう慎重に奥へと歩いていく。

 

「少々散らかっているけど気にしないでくれ、とりあえず……椅子は、無いから……ベッドにでも座りなさい」

 

 リスティーはベッド周りの本を端に寄せてからベッドに腰掛け、自分の横をポンポンと叩きウララに座るように促し座らせた。

 

「では今後の希望やトレーニングのメニューなどを話し合おうか」

 

 リスティーはベッド横のノートやらが乱雑に置かれた小さな机からボールペンとハルウララ育成vol.1と書かれたノートを手に取り、二人でトレーニングメニュー、食事のメニューなどを細かく話し合って決めていった。

 

「よし、トレーニングと食事についてはこれで決まり、と……さて、後は今後のレースについて話そうか」

 

 リスティーはそう言うと、レース予定表を手に取り広げ真剣な表情で口を開いた。

 

「とりあえずウララ、今年の有マ記念は諦めた方がいい……今の君では無理だ」

 

 リスティーの言葉にウララは顔を伏せグッと唇を強く噛み締めた。

 わかっていたことではあったが……リスティーから改めて告げられた実力不足の言葉は、ウララの心に鋭く突き刺さった。

 

 俯き微かに震えるウララを真っ直ぐに見ながら、リスティーは言葉を続ける。

 

「まず有マ記念に出るためにはファン投票で上位10人に選ばれるか、残り6枠はG1の制覇などの実績で選定されるかだ、しかし残念ながらデビューが遅れまだ未勝利戦すら勝てていないウララではまずファン投票は確実に無理だろうし、選定枠も実績が足りな過ぎるから無理だろう……それに今のままでは来年も無理だと思う」

 

 ウララ自身も解ってはいた事であったが、自身のトレーナーであるリスティーから告げられた事で覆せない現実を突きつけられたようにまじまじと感じさせられた。

 

「うっ……ぅう、ぐすっ……」

 

 自分でも気づかないうちに涙が溢れ出し、ポタポタと床に落ちては弾け

ていく。

 静かな部屋にウララの声にならない呻くような押し殺した声だけが響く。

 そんなウララをリスティーは何も言わずに強く抱きしめ、ただただウララが泣き止むまで優しく背中を撫でて続けた。

 外では雨がまるでウララの悲しげな声を隠すように激しく降り、ウララの慟哭を表すかのよう雷が轟音を鳴らしていた。

 

 

 

○○○○○○○○○○○○○

 

 どのくらい時間が経っただろうか。

 ウララが泣き止んだ頃には雷雨は嘘のように消え去り、雲間から夕陽が差し込みはじめていた。

 

「落ち着いた?」

 

 ずっと抱きしめ撫で続けてくれていたリスティーは、ウララの涙が止まるのを待っていたかのようなタイミングで今までで1番優しい声音で問いかけた。

 

「……ぅん……あぅ」

 

 ウララは小さく頷く事しか出来なかった。 リスティーはそんなウララの顔を両手で掴み上を向かせた。

 

「フフッ、酷い顔をしているぞ?ほら、上を向きなさい」

 

 涙と鼻水でぐちゃぐちゃになったウララの顔をリスティーは自身のハンカチで優しく拭き、優しく語りかけた。

 

「ウララ、君の悲しみを私はわかるなんては言えない。だけどね、君は私のパートナーだ。ウララが悲しい時も、嬉しい時も、楽しい時も、ずっと側に居てあげる」

 

 夕陽がリスティーの背後の窓から差し込んでいる。 まるでウララとリスティーを照らすよう。

 

「ハルウララ、前を向きなさい。君の夢は今はまだ遥か遠い幻影の様なものかもしれない……しかし、私が必ず君を連れて行ってやる。私を信じて付いてきてくれるかい?」

 

 ウララは直ぐには即答出来ずにいた。 なぜなら夕陽を背にしたリスティーの顔をまるでこの世のどんな宝石よりも美しく、自身を真っ直ぐに見つめる瞳に吸い込まれそうになった。

 

「綺麗……」

 

 返事より先にこの言葉が口からこぼれ落ちた。 今までに感じたことの無い不思議な感覚がウララの全身にピリピリと駆け巡り、この人と行きたい、掴みたい、あげたいと思った。

 先程までの絶望感や悲しみなどが嘘の様に掻き消える、不思議な熱い高揚感

が体を急かす。

 

「……すぅ……はぁ」

 

 一度目を閉じて大きく息を吸い、そして吐き出した。 そして、真っ直ぐにリスティーを見つめ返し大きな声で返事をした。

 

「はい!!私、トレーナーと夢を掴むよ!!トレーナー、私を連れて行って下さい!!」

 

 もう弱い自分(ハルウララ)とは決別した。 この日からハルウララは本当の意味でのスタートが始まった。

 

 

 

 

 

 




次回予告(仮)

弱い自分とお別れしたハルウララ、そんな彼女に更なる苦難と試練を与えんとする最狂のママが襲来する。
果たしてウララはでちゅねに抗えるのか……

次回

スーパークリークママ襲来、ハルウララとでちゅね戦争でちゅねの悪魔その一、おしゃぶりなんかに負けないよ!!


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