Act1.ハルウララ〜桜咲く〜   作:雪狐

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誤字のお知らせありがとうございました(・∀・)

お気に入りがまさかの100件越え……ありがとうございます。

なるべく毎日更新を目標にしたいと思います。


顔合わせ

 朝、目が覚めた。 いつもは熟睡できなくてとっても憂鬱な気持ちだったはずなのに、今日はとってもスッキリしててポワッて気持ちになっている。

 

「ん……ん〜、んっ?」

 

なんでだろう?どうして今日はこんなに気持ちいいのかな? 昨日は確か……。

 まだ寝ぼけているのか、頭がしっかりと働かない。

 うーんうーんと唸り、不意に自分から香る自分のじゃない匂いに気づいた。

 誰の匂いだろう?

この匂い……あ、思い出した。

 昨日の事を思い出しウララは顔から火が出るほど恥ずかしくなった。

 全部、思い出した。 寝起きから意識がはっきりとしてくると同時に、新しいトレーナーさんにまるで子供のように泣きついてしまった。

 

「あぅ〜、恥ずかしい恥ずかしいよぉ」

 

 昨日、自分がやらかした事に悶えながらも新しいトレーナーさんについて考えてしまう。

 確か名前は……桜井リスティーさんだった。 髪がとっても長くて薄い緑色の力強い瞳がとても印象的だったなぁ。

 それに……あんなに優しく抱きしめてもらったのなんて、子供の頃以来かも。

 自分でも気づかないうちに顔がニコニコと笑ってしまい、頬はリンゴのように赤く染まっている。

 

 前のトレーナーさんはウララには無関心でお話すらまともにした事がなかった。

 新しいトレーナーさんはどうかな、ウララとたくさんお話してくれるかな。

 モジモジと考えていると、不意に自分に貼られた無数の絆創膏が目に入った。

 

「これ……全部トレーナーさんがしてくれたんだ」

 

 絆創膏の一つ一つからトレーナーの優しさを感じれるような気がして、また顔がニコニコとなってしまう。

 こんなにも嬉しいのはいつ以来だろうか、苦しくない笑顔なんて本当に久しぶりだなぁ。

 

「桜井リスティートレーナー……んっ〜!!」

 

 まだちゃんとお話してないけど、予感がする。 きっといままでの辛い事はウララが、リスティートレーナーに出会うためのモノだったんだって。

 ウララはこれからたくさん笑えるんだって思う。

 

 

 

************

 

 

「むぅ……」

 

 なんたる事だ……まさか、ウララの事ばかり考えてしまい、気づいたら朝になっていた。

 いざあの子のトレーナーになったと自覚してから妙に、ウララの匂い、ウララの体温、ウララの声……ウララの、ウララの、ウララの。

 えぇい!! 何を考えているんだ私は!! これではまるで初めて恋をした少女のようではないか!!

 落ち着こうと、目を閉じると……。

 

(トレーナー〜トレーナー〜♪)

 

 んぐっ!? 瞼の裏にウララが住み着いている!!

 そう瞳を閉じればイマジナリーウララがあの太陽のような笑顔で走り回る姿が見えてしまうのだ。

 

「……戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ」

 

 ただひたすらに戻れ戻れと唱えながら、私は冷水のシャワーを浴び続ける。しかし、私の中で育ってしまった思いの形のウララはずっと笑い続けていた。

 

 

 

 

 

*******

 

 

 ついに放課後になった。 ウララのトレーナー権は正式に私へと移っている、つまり今日からウララとマンツーマンでトレーニングをする事となる。

 しかし、昨日はまともに会話らしい会話はしていないし……ここは私からウララを出迎えに行くべきなのか? むぅ〜!!っと唸っていると、不意に後ろから物音がした。

 

「む!?誰、だ……!?」

 

 ついつい反射的に睨みつけるように振り返ると、そこにはジャージ姿のウララが立っていた。

 露出している部分には昨日、私が貼ってやった絆創膏が見え隠れしている。と、いうか……グッスリ眠れたのだろう、虚ろ気だった瞳には強い光が戻り、頬にも薄らと赤んで私が魅入られたあの愛らしい雰囲気へと戻っている。

 綺麗な桜の浮かぶ大きな瞳、春を連想させる艶やかで色鮮やかな髪、まるで生まれたての赤ん坊のようなシルクのような肌……見れば見るほどに、ウララは美しく愛らしく見える。

 

「ふむ……んむ」

 

 自分でも無意識だったのだが、気づかないうちに左手でウララの頭を撫で、右手は頬をフニフニと摘んでいた。

 

「あ……トレーナー、さん……あの」

 

 私が行った突然の行動にウララは少し戸惑うように、私を上目遣いで見ている。

 

「……す、すまない。ゴホン、こちらから迎えに行こうかと思っていたのだが、手間が省けたな」

 

なでなで、なでなで、なでなで、なでなで。

 

 キリッと威厳を出そうと表情を引き締めてみたものの、あまりにも触り心地の良さに、ウララの頭を撫でる手を止まれずにいた。

 

なでなで、なでなで、なでなで。

 

「あぅ、あの……トレーナー、さん。そろそろ……」

 

 私にされるがままになりながらも、ウララは必死に意見を口に出そうとしているのだが、前の無能者のせいで上手く自分の意見を伝えるのが苦手になっているようで、モゴモゴと小さく呟くしかできていない。

 

 ふむ……本来のウララならば、底抜けの明るさと物怖じしない人懐っこさで接してくるはずだろうに。

 あの無能者の仕打ちですっかりウララは元気を無くし、人懐っこいフレンドリーな態度も形を潜めてしまっている。

 あの無能者め……許さんぞ。昨日は急いでいた為、一度殴っただけしかできなかったが……フン、後日キッチリと地獄を味合わせてやる。

 無能者への制裁をどうしてやろうか、などと考える間も私の手はずっとウララを撫で続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




私に絵心があれば、この撫で撫でシーンの挿絵などを描けるのですけど……。
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