顔合わせ後、っと言っても一方的に私がウララを撫でまわしただけだったのだ。
ウララの頭撫で撫ではとんでもない中毒性があるようだ、決して私に非はない……はず。
「ゴホン……さて、まずは君の実力が知りたい。練習場に行こうか」
まだ撫でたい衝動をグッと堪え、現在のウララがどの程度の実力があるかを知るためのテストをすることを提案した。
すると、ウララは一瞬ビクッと体を強張らせるような動きをした後、小さくはいと答えた。
「……ふむ、では着いて来なさい」
ウララの態度が気にはなったものの、まだ初日ということもあり緊張もあるのだろうと思い深くは詮索をしなかった。
それにしても、なぜウララは私の横でなく後ろからついてくるのだろうか?
着いて来なさいとは言ったが……後ろから.それも心なしか苦しそうな表情はなぜだ?
チラッと背後に視線を向けると、ウララは俯き不安そうな表情をしている。 まるで、これから裁かれる罪人のようなその表情に私は内心、困惑を隠さずにいた。
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「それではまずは……」
たづな君から貰ってきた入学時に作成されたウララのデータ表を、ペラペラと見ながら考えていた。
なぜ入学時のデータかというと、あの無能者がウララを受け持ってからのデータを一切作っていなかったからである。
あの無能者……いや、あのクズは調べれば調べるほどに、ウララに対して本当に何もやってこなかった事が発覚し、はらわたが煮えくりそうになる。
ふむ……まずはスピード、スタミナ、パワー、根性、賢さと大雑把に分けてから調べてみるか。
大まかなテスト内容を簡単に決め、私はウララに声をかけた。
「ハルウララ、まずは君のスピードを見たい。君は、短距離が得意のようだから1200mを走ってくれ」
ウララは小さくはい……と答えると、スタートの位置に向かった。
おかしい……私が見ていた彼女は走るのが好きだったはずだが……。
ウララの態度がどこか気にかかるが、とにかくテストをしてみないと現在のデータが作れないため仕方なく走らせる事にし、テストが始まった。
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全てのテストが終わった後、記録した数値を見て私は絶句してしまった。
全くと言っていいほどに、ウララは成長していなかった。 いやむしろ、入学時の数値よりも悪くなっている。
どういう事だ? 既に入学してから3ヶ月ほど経っている、普通なら成長が始まっている時期のはず……。
「あ、あの……トレーナー、さん……ご、ごめんなさい」
私が測定した記録を眉を顰めて見ていたため、ウララは私があまりの数値の悪さに怒っているのだと勘違いしたのか、今にも泣きそうな顔で謝り出した。
「ウララ……ダメな子だから、何していいのかわからなかったから……ごめんなさい、ごめんなさい」
なんて事だ……ウララは指導指標すら貰っていなかったのか!? 私は驚愕してしまい、すぐにウララへ言葉を返せなかった。
「っ!?違う!悪いのは君じゃない。前のトレーナーだよ」
ポロポロと大粒の涙を零し、嗚咽の声を堪え震えるウララを見た瞬間、咄嗟に私はウララを強く抱きしめていた。
本来トレーナーとはウマ娘達を導き、時には良き友として、時には兄や姉のように彼女達を包む存在。
このトレセン学園では当たり前に享受できるはずのモノをウララは3ヶ月もの間、受ける事ができていなかった。
同じトレーナーとして私は申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまった。それと同時に、あのクズへの怒りが抑えきれない程に大きく燃え上がり、彼女専属のトレーナーとしてウララを育ててあげたい気持ちが熱く強く溢れ出てきた。