バトスピ☆明けの星町は大騒ぎ   作:来星馬玲

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黄金龍の伝説 中編 ~翼龍VS尾空白矢~

『ゲートオープン、界放!』

 

 対峙する龍と白矢が同時に宣言する。

 

 すると、霊穴から溢れ出る霊気が龍と白矢を覆い、両者が持つ霊力と合わさり、壮大な世界のヴィジョンが形作られていく。

 

 龍の立っている大地は熱く燃え滾る溶岩が所々から噴出する赤き世界。大地は硬い岩石に覆われ、熱風によって吹き荒れる砂と、露出した溶岩から沸き上がる煙によって視界が遮られる。

 

 昼間であった筈の空は赤黒く染まり、雷鳴が轟く中、時折、この過酷な環境の中でも強靭な生命力で生き続ける力強いドラゴンを連想させる咆哮が鳴り響く。

 

 対して、空矢の立っている大地は氷のような色彩の岩石が散乱する、まるで時の止まったかのような静寂の白き世界。空気の流れも止まっており、まるで静かなこの世界の安寧を願っているかのように、鳴りを潜めている。

 

 上空では 薄い日の光が世界を照らしており、常に夕暮れの中にいるような白夜の情景が広がっていた。その薄明かりが、辛うじてこの世界に色彩を与えているのである。

 

 対照的な二つの世界。龍と白矢だけでなく、観戦しているエドワキアとドラゴンベビーもまたこの世界を見ており、それぞれの世界の空気をじかに感じ取っていた。

 

 直に迫って来るそれぞれのヴィジョンに混乱し、目を白黒させるドラゴンベビー。エドワキアは二つの世界を見比べて、小さく「ふーん」とだけ呟いた。

 

「驚いたね、霊穴で行うバトルがこれほどのイマジネーションをかきたてるものであったなんて」

 

 感心した様子の白矢が言った。

 

「おれたちだけでこれだ。聖龍帝から生まれる世界がどうなるのか……まだまだ期待は尽きないな」

 

 龍もまた、己のイメージした世界が圧倒的な現実感を伴って具現化したことで、驚きを隠せない。

 

「それじゃあ、二人を待たせても悪いし……早速始めようか」

 

「ああ、おれはいつでも準備OKだぜ」 

 

 両者の合意により、今、異界との接点である霊穴で行われるバトルが始まる。

 

 

 

 ☆第1ターン。

 

 尾空白矢のターン。

 

 先行後攻は、両者の世界に潜み棲む龍帝の霊力の衝突を感じ取った、二人の意識の中で自然に決められた。

 

 先に行動するのは白矢。

 

「さあ、行かせてもらうよ、龍。スタートステップ!」

 

 白矢の宣言と共に、それまで凍り付いたような静寂に包まれていた白き世界に、一陣の風が巻き起こった。冷気を含んだ風に後押しされるように、白矢はドローステップを踏み、メインステップに入る。

 

「この世界の皆を導く、希望の担い手。天弓の勇者ウルを召喚!」

 

 召喚されるのは、REVIVALと刻印された勇者ウル。

 

 全身を白い装甲で覆われた人型の武装スピリットが舞い降り、氷岩の大地に立ち上がった。薄緑色の眼光が白夜の空を見上げ、金色の兜のような頭部が煌いた。その手には、己の背丈よりも長い、弓が握られている。

 

「さらにバーストをセット。……これでターン終了」

 

 冷たい大地の中空に、一枚のカードが伏せられた。その正体は定かでないが、この地上において、それは強い存在感を伴って浮遊していた。

 

 

 

 ☆第2ターン。

 

 翼龍のターン。

 

「何だか凄いことになってるけど、これって幻覚なのビー?」

 

 エドワキアの膝の上にいるドラゴンベビーが、白い空と赤黒い空の境界の辺りを指さしながら、エドワキアに尋ねた。

 

「あいつらの意識の根底にあったもの。それが霊穴の力によって五感で感じられるものになったの。……まだ実体はないだろうけど」

 

 エドワキアの視線が龍の方へと向けられた。今は、龍のターン。となれば、次なる変化は龍の側から表れるのは明白だ。

 

「いくぜ、おれのターン!」

 

 龍がターン開始を宣言すると同時に、焼けた大地が激しく振動した。白矢の世界とは別物の、目に見えて活動的な世界。黒ずんだ空に稲妻が奔り、暗かった地上が白光に包まれた。

 

 そのまま龍は各ステップを進め、メインステップに入る。

 

「気の流れを統率する機人。この渇いた世界に咲く鋼の華。アークの秘書・アズを配置!」

 

 雷が地上に落ちた。白熱する空間を割き、一人の女性がゆっくりとした動作で赤き世界に入り込んでくる。ヒューマギアと呼ばれる機人、アズであった。

 

 出現したアズの長い黒髪が熱風に吹かれ、なびいていた。

 

「アズの配置時に、デッキの上から3枚をトラッシュへ置く……雷帝エール・クレル、暴龍王ネロ・ドラグディウス、雷の覇王ライコウ・ドラゴン……おれのドラゴンたちの雷を秘書が集約する!」

 

 神託条件を満たすのは雷の名を持つ2枚のスピリットカード。アズの頭上に赤い「雷」の文字が二つ浮き上がり、それは電光を発するコアとなり、アズの手元に置かれた。

 

「さらに、亡霊怪獣シーボーズを召喚」

 

 稲妻が奔る空に、黒雲がもくもくとたちこめた。少し間を置いた後、黒雲が一点へと集約していき、まるで重さに耐え兼ねた線香花火の先端のように、地上へと落下した。

 

 ボトンという音が大地に木霊した。黒雲であったそれは、既に実体化しており、黒い肉体を白骨が覆っている奇妙な姿の怪獣へと変貌していた。

 

 召喚された亡霊怪獣は落下の衝撃で暫しの間うずくまっていたが、やがて、ゆらりと立ち上がると、虚ろに空を見上げながら、悲し気な咆哮を響かせた。

 

 その咆哮に呼応する形で、アズの神託が発揮され、アズの頭上に紫色の「亡」という文字が浮かび上がり、それはコアへと変化し、アズの手元に置かれた。

 

 これにより、アズのコアは3個となる。

 

「シーボーズ……怪獣墓場からのマレビトか」

 

 白矢が感慨深げに呟く。

 

 ドラゴンベビーは亡霊怪獣シーボーズの様子をまじまじと見つめていた。怨念を背負って生まれ、故郷から落とされ、途方に暮れている悲しき亡霊怪獣の姿。

 

(父上……)

 

 ドラゴンベビーの脳裏に浮かぶのは、黒い強大な力を有した、敬愛する父、ブラックドラゴン。ドラゴンベビーは意識しないうちに、自分とシーボーズを重ねて視ていた。

 

 エドワキアは、一瞬寂しそうになったドラゴンベビーの表情の変化を見逃さなかった。思えば、ドラゴンベビーにも故郷があり、一人で違う世界に迷い込んでしまったのだ。

 

「おれはこのままターンエンドだ。……しばらく、シーボーズにもゆっくりしていってもらおうか」

 

 龍もまた、しょげているシーボーズを眺めていた。

 

 

 

 ☆第3ターン。

 

 尾空白矢のターン。

 

「揺るがぬ機械の魂、ここに顕現せよ。白魔神を召喚!」

 

 上空から八つの黄色い閃光が飛んできた。それは白矢のフィールドにて交差し、瞬時に人型の機械人形の姿が出現し、黄色の閃光は鋭利な刃物のような形状の後光となって、機械人の背中と結合する。

 

「異魔神ブレイヴの召喚時効果を発揮……したけど、龍のフィールドにはネクサスが創界神のアズしかないな……白魔神でデッキの下に戻せるネクサスは存在しない。ぼくはこれ以上は何もせず、ターン終了だよ」

 

 

 

 ☆第4ターン。

 

 翼龍のターン。

 

「紅き雷の奏者、戦の太鼓を鳴らせ。雷帝竜騎レイブリッツ!」

 

 大地を焦がす落雷。雷が落ちたところに立っているのは、電光をまとった剣を手にした、一人の竜騎。そそり立つ二本の紅い角が発光し、虎のような相貌が露わになった。

 

 雷帝竜騎レイブリッツが持つ、翼竜のような両翼が羽ばたき、両肩に四つずつ装着された雷太鼓が大音響を轟かせた。傍らにいるシーボーズがその音にびびり、骨の浮き出た両手で己の耳を抑えた。

 

 レイブリッツの放った熱量が集約し、アズの頭上に「雷」の文字が浮かび、それはコアへと変じ、アズの手元に加えられた。

 

 これで、アズのコアは4個。

 

「バーストセット。……さあて、これで準備は万端だ。いくぜ、アタックステップ! シーボーズ、アタックだ!」

 

 シーボーズが不満そうに龍の方へと振り返ったが、強気の姿勢の龍に逆らえず、ため息をつくような動作をした後、白矢のフィールドへと駆けて行った。

 

「フラッシュ! アズの神技を発揮するぜ」

 

 龍の号令を聞いたアズが、それまで蓄えていた4つのコアを宙へと放り投げた。

 

 投げられたコアは3つの電光と、1つの紫色の球体へと変じ、天弓の勇者ウルを狙い撃つ。

 

「く……ウルが」

 

 アズに撃たれたウルのソウルコアが宙を舞い、コアを失ったウルは白い粒子となって空間に霧散した。

 

「……そのアタック、ライフで受ける!」

 

 突進してきたシーボーズが右腕を突き出し、白矢のライフコアを打ち砕いた。

 

 ライフの砕けた衝撃が伝わり、白矢のフィールドは地震が起こったかのように振動した。

 

「凄い波動だ。これが霊穴のバトルなのか……」

 

 白矢の世界と龍の世界全体が、鳴動する感覚が直に伝わってくる。

 

「この広い世界の中で、自分を見失うわけにはいかない、な。……ライフ減少により、バースト発動! エクスティンクションウォール! 減らされたライフの数だけ、ボイドからコアを自分のライフに追加する」

 

 白い燐光が集まり、砕けたライフを補充する形で白矢のライフに新たなコアが追加された。

 

「減らしたライフは元通りか。……これでターンエンドだ」

 

 

 

 ☆第5ターン。

 

 尾空白矢のターン。

 

「メインステップ……ぼくは、リザーブのコアを1つ、白魔神に置く」

 

 白矢の傍らにあるコアが白魔神の方へと飛び立った。コアは白魔神の頭上に浮いたまま、輝いている。

 

「異魔神にコアを……。くるか、白矢」

 

 白矢の行動の意味を、龍はよく理解していた。

 

「天を舞う、白夜の化身。白き龍帝、出でよ! 空帝ル・シエルを【転召】!」

 

 地上と空を白夜に染め上げていた太陽が黒く染まった。わずかな間、闇に覆われる世界。ふいに、暗黒の太陽の中に白い影が現れる。それは、太陽を塞ぐ暗黒を一身に吸収し、一際強い白光を放った。

 

 白魔神の頭上にあったコアが天へを昇っていった。コアは白光の中へと飲み込まれていく。

 

 暗くなっていた世界が、唐突に真っ昼間の如き光明にさらされる。徐々にその光が収まった時、天より飛来した白いドラゴンが白魔神の真上に顕現していた。

 

「遂にでたか、白矢、お前のドラゴンが」

 

 龍は対峙する空帝ル・シエルの神々しい姿に、見とれていた。自分にとって魂のカードと呼ぶに相応しい雷帝エール・クレルと同等の輝きを持つ、白き空帝。それは、龍自身の闘争心をかきたてた。

 

「ぼくも相棒をこの世界に召喚することができて嬉しいよ。……空帝ル・シエルに白魔神を合体!」

 

 白魔神が空帝ル・シエルの背後へと回り、後光を一層輝かせた。空帝ル・シエルの透き通った翼が、魔神の光を受け、全体が白熱する。

 

「さらにバーストをセット」

 

 白矢が新たなバーストカードを仕掛ける。

 

「アタックステップ。いくよ、龍。空帝ル・シエルでアタック!」

 

 白魔神の輝きと一体化した空帝が飛翔し、鋭い咆哮を上げた。全身で風を切るようにして突き進み、龍のフィールドへと突貫する。

 

「合体している白魔神の効果により、合体していない相手のスピリットかアルティメット1体を手札に戻す。……レイブリッツを手札へ!」

 

 白魔神の両腕が合わさり、大口径の砲へと変形した。巨大な白く燃え上がる火球が放たれ、レイブリッツを直撃する。レイブリッツの全身が白い光の中で分解され、敵の攻撃を逃れるかのように赤い燐光と化したレイブリッツが龍の手札へと戻っていった。

 

「ぐ……これはまずい」

 

 シーボーズは疲労しており、攻め込んできたル・シエルの行く手を阻むものは存在しない。

 

「ライフで受ける、ぜ」

 

 白の龍帝がシーボーズの真上を通り過ぎたところで、天空を貫く勢いで急上昇した。

 

 龍のフィールド内の朱に染まった暗い高空で静止した空帝が両翼を広げると、白い稲光のような波動が空全体に広まっていった。

 

「世界が塗り替えられていく……」

 

 龍が茫然となる。

 

 空帝の緑色の瞳が鋭く光った。天を焼く、星のような光。それを合図としているかのように、空帝が急降下を開始した。

 

「空が落ちてくる……」

 

 空帝ル・シエルの姿に釘付けとなっていたドラゴンベビーが呟いた。

 

「危ない!」

 

 危険を察知したエドワキアが叫ぶと、ドラゴンベビーを抱きかかえ、地上を駆けた。

 

 降下してくる空帝と一緒になって、青白く染められた空全体が地上全体を押しつぶす勢いで迫ってくる。

 

「ぐぅ……わあああ!」

 

 空帝との衝突で圧縮された龍のライフコアが潰れ、粉々になって飛び散った。龍の全身が投げ出され、岩肌の露出した大地に叩きつけられた。

 

「だ、大丈夫か、龍!」

 

 白矢もまさかこれほどの事態になるとは思ってもいなかったので、慌てて龍に向かって呼びかける。龍は「やれやれ」とぼやきながら立ち上がった。

 

「ヴィジョンだけだってのはわかっていたんだが……迫力あり過ぎだぜ。思わず、ちびりそうになっちまった」

 

 龍は微かに笑みを浮かべていた。

 

「下品」

 

「ビー」

 

 エドワキアとドラゴンベビーが口をそろえて言う。二人のいる場所は、現在いる山本来の姿の緑色の原っぱの領域が露わになっており、龍帝の影響力から二人を護るようにして円状に広がっていた。

 

「……大丈夫そうだね、龍。しかし、今のは聖龍帝のより強い影響でもあるのか……世界そのものを揺るがしかねない力を感じたよ」

 

 白矢は己の相棒でもある白き龍帝の姿を見つめた。アタックを終えた龍帝は身を翻すと、白矢のフィールドへと戻ってくる。白矢は、自分の相棒に対する畏怖の念を禁じ得なかった。

 

「まだ霊穴に関するぼくらの知識は、十分とは言えないのかもしれない。これ以上続けるのは、危険かも……」

 

「いや、続けようぜ、白矢。おれたちは龍帝との絆に導かれて、ここにいるんだ。その龍帝が悪いようにするとは、思えない……それに、この場でのバトルを放棄したら、前へ進むための道を自ら閉ざすことになる……異世界からの客人に対しても失礼だしな」

 

「……はあ。わかったよ、龍。じゃあ、バトルを続けるよ」

 

 ため息交じりではあったが、白矢もまた、このバトルフィールドの中に創造されている世界を中途半端なところで手放すのには、強い抵抗があった、白矢は龍に対して同意の意を示す。

 

「……このターン、これ以上ぼくが起こせるアクションはないな。ターンエンドだよ、龍」

 

 龍のライフが一気に残り一つまで削らされたところで、白矢のターンが終了した。

 

 

 

 ☆第6ターン。

 

 翼龍のターン。

 

 このターンのリフレッシュステップで、龍のフィールドにいるシーボーズが回復状態に戻る。ただ、シーボーズは疲労から立ち直っても依然として元気のない様子で俯いていた。

 

「燃える闘龍の化身、紅蓮の異魔神よ。出でよ、赤魔神!」

 

 金色の炎の帯が幾重にも重なり、膨大な熱量を伴った渦を形成し始めた。回転する烈火は勢いを強め、炎の渦の中央から燃え滾る虚空が現出する。その虚空から、赤い装甲に覆われた二つの強靭な手が突き出され、空間の裂け目を押し広げた。

 

 開かれた虚空の穴より、闘気を身にまとった人型の魔神が現れる。魔神の背後には金色の炎が変化した後光の如き円状の物体が浮かび、未だに燃え猛っている炎は、さながら不動明王を思わせた。

 

 フィールドに、二体の異魔神が対峙した。

 

「赤魔神……何という荒々しさだ」

 

「赤魔神は相手の異魔神が並び立つことを許さない……召喚時効果発揮、相手の合体しているブレイヴ、白魔神を破壊するぜ!」

 

 赤魔神の右拳が突き出され、がっと開かれた。開いた掌から黒炎の塊が発射され、空帝ル・シエルの背後に浮かんでいた白魔神の胴体を撃ち抜いた。破壊された白魔神の全身がぼろぼろと崩れ、消滅していく。

 

「やられたね……これで、ブレイヴが龍のフィールドにだけ残ったわけか」

 

「続けて……五つの賢帝を統括せし、暴君。暴龍王ネロ・ドラグディウスを召喚!」

 

 岩のように屈強な身体と力強い翼を備えた、小柄な龍帝が出現した。赤いルビーのような宝石をはめ込んだ金色の鎧を身に着け、その上から巻き付けた紅のローブが雷雲の下を吹いている強風にあおられ、なびいている。

 

「さらに、赤魔神にコアを1つ置く」

 

 荒ぶる赤き異魔神の手に、飛来した一つのコアが握りしめられた。

 

「やはり、龍。きみも……」

 

「そうだ、おれも行かせてもらうぜ」

 

 龍が手札から一枚のカードを取り出し、天へとかざす。

 

「星をも貫く真紅の雷。紅蓮の虚空より現れよ、雷帝エール・クレル!」

 

 赤い稲妻が迸り、天を焼いた。雷鳴が轟き、空間全体がひび割れるように紅い電光が四方へ広がっていく。

 

「暴龍王ネロ・ドラグディウスの効果、このスピリットを疲労させることで、雷帝の召喚コストをリザーブから3コストまで支払ったものとして扱う」

 

 四本の指の先にかぎ爪を備えた暴龍王の手が、雷帝が出現しようとしている天へ向かって掲げられた。広げられた掌から火柱がそそり立ち、雷帝に熱量を加える。

 

「赤魔神に【転召】!」

 

 赤魔神が握りしめていたコアが飛び立ち、暴龍王の作り出した火柱に飲み込まれて、天に昇っていった。

 

 そのコアを吸収した稲妻が一体の獣の如きドラゴンの形となり、地上へと急速度で降下した。

 

 全身に虎のような模様のある、獣のような四肢を備えた赤きドラゴンが渇いた大地に降り立つ。

 

 雷帝エール・クレルの召喚と共に、大地が震動し、至る所の岩石が砕け、マグマが噴出した。マグマは渇きを訴える大地を熱量で以て満たし、雷帝の周囲がドロドロの溶岩で覆われていった。

 

「雷帝エール・クレル……凄まじい闘気だ……」

 

「これでようやく、おれの雷帝とお前の空帝が相まみえた……というわけだ。さらに、雷帝の召喚によりネロ・ドラグディウスの効果で1枚ドローし、アズの神託を発揮する」

 

 龍の手札に、雷帝竜騎レイブリッツとは別のカードが一枚、加わった。さらに、アズの頭上に「雷」の文字が浮かび上がり、コアへと変じた。

 

「雷帝エール・クレルに赤魔神を合体」

 

 咆哮する雷帝。その背後に赤魔神の全身が浮かび上がり、雷帝に力を送り出す。

 

「アタックステップ。雷帝エール・クレル、アタック!」

 

 雷帝が獣の獰猛さを露わに、大地を爆走する。

 

「アタック時、赤魔神の効果で1枚ドロー!」

 

 雷帝と合体している赤魔神の背後の炎が高速で回転し、帯状の炎が龍のデッキへと送られた。炎の加速と共に、龍はデッキからカードを1枚ドローする。

 

「龍。ぼくはそのアタックを通すつもりはないよ。……相手の手札が増えたことにより、バースト発動! 聖皇ジークフリーデンをバースト召喚!」

 

 召喚されたのは、REVIVALとカードに刻印された聖皇ジークフリーデン。白い機械の装甲と一体化した赤い龍皇が白き大地を踏みしめ、咆哮した。

 

「聖皇ジークフリーデンの召喚時効果を発揮。デッキの上から3枚オープンし、その中の系統古竜か武装を持つスピリットカードを手札に加える」

 

 オープンされたカードは、REVIVALと刻印された巨神機トール、秩序の砲術機トゥール・ビヨン、創界神ネクサスJ。武装を持つ2枚のカードが白矢の手札に加えられ、Jはトラッシュに置かれた。

 

「ジークフリーデンか。大した迫力だ……」

 

 龍が感嘆の声を上げた。

 

「が、こっちもその力を揮わせるわけにはいかない。スピリットの召喚時効果が発揮されたことにより、バースト発動。出でよ、雷の四天王サカターノ・ベア!」

 

 黒雲を切り裂き、巨大な斧を手にした熊が大地に飛び降りた。

 

「サカターノ・ベアの召喚時効果により、BP10000以下の相手のスピリット……聖皇ジークフリーデンを破壊だ!」

 

 サカターノ・ベアが振り下ろした斧が地面に突き刺さる。そこから炎が吹きあがり、炎はジークフリーデンへ向かって、地上を走るように直進していった。

 

 ジークフリーデンは天へと飛翔し、これをかわそうとしたが、炎はジークフリーデンの真下で止まると、瞬時に猛烈な火柱を上げ、ジークフリーデンを呑み込んだ。

 

 ジークフリーデンが破壊される一方で、サカターノ・ベアはアズの神託も発揮させ、アズは「雷」の文字から変化したコアを受け取った。

 

 これにより、アズのコアは2個となる。

 

「どうだ、これで雷帝の邪魔をするものはいないぜ」

 

「やってくれたね、龍。だけど、さっきも言った通り、ぼくはそのアタックを通しはしない」

 

 白矢はさらに一枚のスピリットカードを取り出す。

 

「白き空帝は鎧を身にまとい、更なる高みへと飛翔する! 空帝ル・シエルに、煌空帝ル・シエルを煌臨!」

 

 空帝ル・シエルの全身が発光し、白い光の集合体の如き姿へと変貌する。その光の龍と化した空帝が舞い上がっていく様子を、ドラゴンベビーが見上げていた。

 

「光の龍……」

 

 ドラゴンベビーが何事かを思案するような表情となる。心配したエドワキアが尋ねると、ドラゴンベビーが答える。

 

「あれ、見覚えがあるビー……確か、こっちの世界に来る前に……」

 

 光と化した空帝が上空で光の粒子をかき集め、己の身体を覆う鎧を形成し始める。一体の空魚でもあるル・シエルは、より高い空へ昇ることで、甲竜へと姿を変えた。

 

「空帝のもう一つの姿、か」

 

「ああ。そして、煌空帝ル・シエルの煌臨時効果。煌臨元の空帝ル・シエルをデッキの下に戻すことで、雷帝エール・クレルをデッキの下に戻す!」

 

「あ、しまった!」

 

 煌空帝ル・シエルの身体から、光り輝く空帝ル・シエルの形をした分身が出現し、接近してくる雷帝エール・クレルに突進した。

 

 雷帝は背中から四つの光の翼を出現させ、これを迎え撃とうとしたが、分身の空帝は正面から激突し、白い燐光となって雷帝の全身を包み込んだ。雷帝もまた赤い粒子へと分解され、両者は双方のデッキへと戻された。

 

 雷帝が消えたあとには、分離した赤魔神が残される。

 

「ぐぐ……おれは、これで、ターンエンドだ」

 

 龍は悔しそうに言った。

 

 

 

 ☆第7ターン。

 

 尾空白矢のターン。

 

 リフレッシュステップに入ると、疲労状態の煌空帝ル・シエルは回復し、臨戦態勢に入った。

 

「ぼくはバーストをセット」

 

 メインステップに入るなり、白矢は空いたバーストエリアにカードを補充する。

 

「そして……リザーブのコアをコストとして支払い、メカニカルミラージュをセットする」

 

 バーストのすぐ隣に、白い機人を模した紋章が浮かび上がった。

 

「ミラージュだと……。色々繰り出してくるじゃあないか、白矢」

 

 紋章の出現と同時に、上空ではオーロラが現出し、白矢のフィールドを照らし出す。地上に降り立った煌空帝ル・シエルは長い首をもたげ、光に満ちた天空を見上げていた。

 

「白き帝に仕えし白銀の竜騎、天空より舞い降りよ。空帝竜騎プラチナムを召喚!」

 

 全身が機械でできている白い騎士が空から降り立った。騎士は己の背丈ほどもある銃剣を手にしている。

 

「セットしているメカニカルミラージュの効果。白一色でコスト5のプラチナムが召喚されたことで、コスト5以下の相手のスピリット……亡霊怪獣シーボーズをデッキの下に戻す」

 

 紋章がプラチナムに重なるのと同時に、振り上げられた銃剣から白い光弾が発射された。それはシーボーズの足元に着弾し、そこから沸き上がった白いオーラによって、ジタバタと暴れるシーボーズの全身が包み込まれていく。

 

 シーボーズを包んだ白い光の塊は上昇していき、暗い空の彼方へと吸い込まれるようにして消えていった。

 

「……シーボーズ、あれで安息の地へと送られた……のかも」

 

 エドワキアがぽつりと呟いた。

 

 シーボーズを羨ましそうに見つめるドラゴンベビー。エドワキアはそちらへ向き直ると、寂しさを露わにしているドラゴンベビーへ声をかける。

 

「ねえ、ベビー。あいつらはほっといて、一緒に遊ぼうか?」

 

 ドラゴンベビーは一瞬きょとんとなったが、少しムッとした様子で答える。

 

「おいらは小さくても、ドラゴン一族の皇子だビー。おこちゃま扱いするなビー」

 

「うん、ごめん。でも、わたしも遊びたい、から」

 

「……仕方ないビー。そんなら、おいらが付き合ってやる、感謝しろビー」

 

 そんなやり取りを見やった龍は、ふうとため息をついた。

 

「おれとしては、ブロッカーが減って困るんだがなあ……」

 

「……龍、よそ見をしている場合かな? ぼくは更に攻めさせてもらうよ……アタックステップ、煌空帝ル・シエルでアタック!」 

 

 迫り来る煌空帝を前にして、対戦に引き戻される龍。白魔神を失ったとはいえ、力を増した煌空帝の迫力は先ほどの空帝にも決して劣らない。

 

「悪いな、白矢。おれもとっておきを使わせてもらう」

 

 龍が取り出したカードを見て、白矢が「あっ」と言った。

 

「轟け雷鳴! 天を熱し、地を焦熱の雷炎で焼き払え! 雷の四天王サカターノ・ベアに煌雷帝エール・クレルを煌臨!」

 

 サカターノ・ベアの全身が電光の粒子となり、上空の雷雲の塊に吸収されていった。雷雲は周囲からも稲妻を取り込み、凄まじい光量を放った。

 

 集約された光がドラゴンの形となり、雷帝エール・クレルが黒い鎧をまとった煌雷帝の姿で再臨する。

 

「煌雷帝エール・クレルの煌臨時効果を発揮。BP17000以下の相手のスピリットを1体、煌空帝ル・シエルを破壊だ!」

 

 煌雷帝の背中に弩の先端を巨大化したような二つの浮遊物があり、そこから爪のような形状をした二対の光の刃が突き出された。

 

 浮遊物が光の速度で移動し、煌空帝ル・シエルの頭上で静止する。光の刃が煌空帝を回避する隙も与えずに取り囲み、高熱を伴った雷撃が内部ではなたれ、煌空帝の全身が白い粒子となって消滅した。

 

「むう、ル・シエル……」

 

 煌空帝ル・シエルを失ったことで、白矢のフィールドは雷鳴の轟く赤き世界に大きく取り込まれる形となってしまった。対して、龍のフィールドには悠然と構えている煌雷帝がその存在感を誇示しており、背後では新たに神託を発揮したアズの手元に、3つ目のコアが置かれている。

 

「……ぼくもフラッシュタイム! 白の輝石より生まれし、秩序の番人。秩序の砲術機トゥール・ビヨンを空帝竜騎プラチナムに煌臨!」

 

 空帝竜騎プラチナムの全身が白光し、黒鉄の砲を構えた白い機械の戦士、トゥール・ビヨンへと姿を変えた。

 

「トゥール・ビヨンの煌臨時効果! ボイドからコア1個をこのスピリットに置き、相手のスピリット1体を手札に戻す……煌雷帝エール・クレルよ、手札に戻れ!」

 

「な、なに!」

 

 トゥール・ビヨンの砲が火を噴き、上空の煌雷帝を貫いた。明滅する煌雷帝と、煌臨元となっていたサカターノ・ベアが同時に赤い粒子となって龍の手札へ戻されていく。

 

 さらに新たなコアの輝きが加えられたことで、トゥール・ビヨンは強固な重装甲を得た。

 

「秩序の砲術機トゥール・ビヨンでアタックだ!」

 

 砲を構えたトゥール・ビヨンが空を飛び、龍のコアを目掛けて突撃する。

 

「だが白矢、トゥール・ビヨンの持つ【重装甲】は紫、黄、青。おれが得意とする赤は防げない……手札のマジック、レーザーボレーで迎え撃つ!」

 

 雷雲から無数の光線が放たれ、トゥール・ビヨンの装甲を貫いた。破壊され、飛散するトゥール・ビヨン。

 

「……最後のライフ、削れなかったか。ターンエンドだよ」

 

 

 

 ☆第8ターン。

 

 翼龍のターン。

 

 リフレッシュステップに入ると、疲労していた暴龍王ネロ・ドラグディウスが回復した。

 

 そして、メインステップ。

 

「再度、戦いの雷太鼓を鳴らせ! 雷帝竜騎レイブリッツ!」

 

 虎と竜を合成したような外見の竜人、レイブリッツが召喚される。アズの頭上に「雷」の文字が現出し、それはアズに置かれる4つ目のコアとなった。

 

「煌雷帝エール・クレル、その雄姿、もう一度この世界に焼きつけるんだ!」

 

 再び現れる、煌雷帝エール・クレル。龍は暴龍王ネロ・ドラグディウスを疲労させることで支払うコストを軽減し、手札から直接召喚した。

 

 龍帝が召喚されたことで、暴龍王のもう一つの効果により、龍はデッキからカードをドローした。

 

 同時にアズの神託も発揮され、そのコアは5つとなった。既に、神技を発揮するのには十分なコアが溜まっている。

 

「赤魔神を煌雷帝エール・クレルに左合体」

 

 赤き異魔神は煌雷帝を新たな合体先とし、猛々しい炎を吹き上がらせた。

 

「雷帝導く弩弓の名手。真紅の竜使いロッソを召喚!」

 

 新たに召喚されたのは全身を紅の鎧で包んだ、四本の腕を持つ竜人。鎧の材質は雷帝エール・クレルの皮膚と酷似しており、竜人の屈強な体格を更なる頑丈さで保護していた。

 

 竜人は己の身長よりも高い、巨大な黒い弓を支えており、弓の傍には漆黒の浮遊物体が存在する。弓と浮遊物体は、煌雷帝エール・クレルの鎧と同じ素材を使っているらしい。

 

「赤魔神、ロッソにも力を貸してくれ! ロッソに赤魔神を右合体」

 

 赤魔神の両腕が掲げられ、片方はロッソ、もう片方は煌雷帝へ熱量を注ぎ込む。

 

「さらに、ネロのコアをレイブリッツに移動し、レイブリッツをLv2にする。そして、バーストセット。……準備は万端だ、アタックステップ。煌雷帝エール・クレルでアタック」

 

 全身を矛のような形状へと変化させ、突進する煌雷帝エール・クレル。赤魔神の効果も発揮され、龍はカードを1枚ドローした。

 

「レイブリッツの効果により、おれの龍帝と竜騎は最高Lvになる……さらに、ロッソの効果で龍帝はBP+3000。煌雷帝エール・クレルのBPは24000にまで跳ね上がるぜ」

 

 白矢はがら空きとなっている己のフィールドと、リザーブに残された3個のコアを見やった。

 

(龍のアズは神技を使える……それに、3枚の手札。あのバーストはおそらくサカターノ・ベアだろうけど、確証はないな……仕方がない)

 

 白矢は覚悟を決めた。

 

「そのアタック、ライフで受ける」

 

「最初はグー。ジャンケンポン」

 

 龍と白矢の対戦の観戦を放棄して、ジャンケンをしているエドワキアとドラゴンベビー。続けてグーを出したドラゴンベビーに対して、エドワキアはパーを出していた。

 

「あっち向いてホイ」

 

 エドワキアが自分から見て左側を指さすのと同時に、ドラゴンベビーが同じ方向を向いてしまう。直後、弩弓の如き煌雷帝の姿が飛び込んできたことで、ドラゴンベビーは驚いて悲鳴を上げてしまった。

 

 煌雷帝はそのまま白矢のライフを砕きに直進していった。

 

「……びっくりしたビー」

 

 気を取り直して、エドワキアと顔を見合わせるドラゴンべビー。

 

「あれ? 指と同じ向きを向いたら負けだったビー?」

 

「そうだよ」

 

「むぐぐぅ。もう一回だビー」

 

「むきになって、可愛い……」

 

「こんな単純な遊戯にむきになるはずがないビー!」

 

 そう言いつつも、子どもらしくむきになるドラゴンベビー。

 

 エドワキアがその場ですぐ教えられる遊びと言ったら、日本の本を読んで知ったジャンケンぐらいであった。

 

 高い知能を持つドラゴンベビーはもう少し複雑な内容を欲している面もあったが、ドラゴン一族の皇子として育ったドラゴンベビーはこうして誰かと遊ぶという経験がなかったために、とても新鮮な気持ちになっていた。

 

 一際強い轟音に驚き、ドラゴンベビーが手を止めて、もう一度龍と白矢のバトルフィールドを見た。丁度、煌雷帝の閃光が白矢のライフを砕く瞬間。

 

「ぐううぅ! こ、これは龍の言う通りだ……」

 

 同時に4つのライフコアを砕かれた白矢はよろよろとした様子で倒れそうになり、何とか踏み止まった。

 

「こんなに激しいバトル、廿郎さんのようなご老体にはキツイんじゃないかな……」

 

 白矢は心臓が激しく動悸しており、左手で自分の胸を軽く抑えながら言った。

 

「そうか? あの爺さんくらい元気なら大丈夫そうだがなぁ」

 

 龍の呑気な言葉に、白矢は少しあきれ顔になる。

 

「……さあ、まだ勝負は続いているぞ。白矢、このまま最後のライフも砕かせてもらうぜ。ロッソでアタック!」

 

 白矢のフィールドに疾走するロッソ。相手のライフを捉えたところでロッソが弓を構えると、弓の先端に漆黒の物体が浮かび、瞬時に真紅の雷光によって形作られた矢が現れた。

 

「そのアタックは通させない。相手のスピリットのアタックにより、バースト発動、巨神機トール!」

 

 繋ぎ合わされた盾のような翼を備えた巨大な機人の出現。それはREVIVALと刻印された巨神機トール。鋼の剛腕を突き出し、ロッソの前に立ちはだかる。

 

「バースト召喚されたトールのBPは、このターンの間、+10000される、よってLv3でBP21000」

 

「く、ロッソのBPは自身の効果を合わせても17000止まり……」

 

 白矢はトールにありったけの7つものコアを乗せていた。アズの神技を警戒しているのであろう。仮にアズの神技を使用しても、トールのLvは3のまま変化しない。

 

「トール、ブロックだ! そして、ターンに1回、アタックかブロックをしたトールは回復する」

 

 ロッソが矢を放つ。トールは両方の手でもってこれを真剣白刃取りの要領で捕まえると、そのまま押しつぶしてしまった。尚も矢をつがえようとするロッソに向かってトールが飛びかかり、鋼の拳で殴り飛ばした。

 

 赤い粒子となって消えていくロッソ。トールは即座に回復し、後方に控えているレイブリッツたちを冷たい眼差しで睨みつけた。

 

 龍はそのままターンを終了するしかなかった。

 

 

 

 ☆第9ターン。

 

 尾空白矢のターン。

 

「メインステップ。ぼくは、マジック、リボルドローを使用」

 

 マジックの使用に4コスト支払い、2枚のカードをドローする白矢。手札が尽きていた白矢はここで起死回生の一手を期待するが……。

 

「……創界神ネクサス、Jを配置する」

 

 白き大地に颯爽と現れたのは、銀髪の青年、J。

 

「J……輝石のカードバトラーが創界神?」

 

 ドラゴンベビーとジャンケンを続けていたエドワキアが白矢のフィールドに目を留めた。あっち向いてホイのタイミングで止まったため、反対方向を見ていたドラゴンベビーが慌てて振り返る。

 

「かつてイセカイ界と呼ばれる世界で繰り広げられた戦い……それは隣り合う様々な世界へ波紋を広げ、影響を与えた。その中には、輝石によって生み出されていった世界も数多存在し、やがてJも輝石の創界神と呼ばれるに至った」

 

「初耳」

 

「や、ぼくも時菜さんに聞かされただけで真相は知らないけど、ね」

 

 創界神が配置されたことで、白矢はデッキの上から3枚のカードをトラッシュに置いた。置かれたカードは、グラシアルブレス、聖皇ジークフリーデン、闇輝石六将 機械獣神フェンリグ。神託条件を満たすカードは2枚のため、Jには2つのコアが置かれる。

 

 白矢はそのままアタックステップに突入した。

 

「巨神機トールでアタック! アタック時、ターンに1回、トールは回復する」

 

 トールが己の剛腕を武器にしてフィールドを突き進む。白い氷塊の地と赤いマグマの煮えたぎる大地の境界線に差し掛かったところで、龍が待ったをかける。

 

「おっと、トールの進撃は食い止めさせてもらうぜ! コストを支払い、手札から仮面ライダーデルタ[2]のチェンジを発揮だ! BP12000以下のトールを破壊する!」

 

 身体にフィットした黒いスーツを着た、仮面の人物がトールの前に立ちはだかり、銃口を向けた。

 

「ここでデルタか! トールは【重装甲】により、赤のスピリットの効果は効かないが……」

 

「そうだ。仮面ライダーデルタはチェンジを使用するとき、色を無色として扱う……トールの【重装甲】では防げない」

 

 直後、銃撃がトールを撃ち抜く。トールの全身が一瞬で白い粒子となって飛散し、消えていった。

 

 役目を終えた仮面ライダーデルタは銃口を下ろすと、そのままの姿勢で消滅した。

 

「……万策尽きた、な。ぼくはこれでターンを終了するよ」

 

 白矢のフィールドにはJしか存在せず、他には一枚の手札と、セットしているメカニカルミラージュがあるのみだった。

 

 

 

 ☆第10ターン。

 

 翼龍のターン。

 

 このターンのリフレッシュステップで、煌雷帝エール・クレルと暴龍王ネロ・ドラグディウスが回復した。

 

「白矢、霊穴でのバトルが何を生み出すのか……やってみなければわからないが、おれはおれたち全員の夢と希望の実現を信じているぜ」

 

「龍……」

 

「だから、最後まで全力を投じる……それがおれのやり方だ」

 

「ふう……わかってるよ、龍」

 

「おれは雷帝竜騎レイブリッツの効果を発揮。ターンに1回、【転召】を持つスピリットカードを【転召】させずに召喚する……さあ、出番だ、おれの最高のパートナー!」

 

 レイブリッツの右手に稲妻が集まり、新たに出現した赤い剣がその手に握られた。レイブリッツが剣を振るい、己の両肩に備えられた太鼓を素早く打ち鳴らすと、おびただしい量の放電が飛び散り、天空が雷鳴でもって応えた。

 

 地上の雷と天の雷が交差し、中空の一点の空間を突き破って、雷帝エール・クレルが虚空より飛来する。 

 

 アズの配置時にトラッシュに送られたものも含めれば、3体目の雷帝エール・クレル。その召喚により、アズの神託と暴龍王のドロー効果が発揮された。

 

「雷帝エール・クレルに、赤魔神を右合体!」

 

 赤魔神の両腕が、それぞれ雷帝エール・クレルと煌雷帝エール・クレルに力を送り出す。

 

「二体のエール・クレルに赤魔神……勇ましいそろい踏みだな」

 

「これが今のおれが出せる、全力の型だ」

 

 肩を並べる雷帝と煌雷帝。赤魔神を通じて、両者の背中から流れる光の翼が共鳴しており、それに伴って空間に亀裂が奔っていた。

 

「霊穴の影響を受けて構築された世界のヴィジョン……それが壊れかかっている。まるで世界の終りのような……」

 

「だが白矢。おれたちの戦いはまだまだ始まったばかりだ。そして、世界の創造もな。……さあ、いくぜ」

 

「ああ、来い、龍!」

 

 布陣を固め、アタックステップに入る龍。

 

「雷帝エール・クレル、アタックだ!」

 

 飛翔する、赤き龍帝、雷帝エール・クレル。さらに、雷帝竜騎レイブリッツが太鼓を打ち鳴らし、その進撃を鼓舞する。

 

「そのアタック、ライフで受ける!」

 

 強大な熱量の塊と化す、雷帝。今、白矢の最後のライフに激突し、そこから伝わった衝撃波が白矢と龍の両世界を襲う。

 

「世界が……壊れていくビー!」

 

 ドラゴンベビーの声は悲鳴に近い。エドワキアがそっとドラゴンベビーを抱きしめた。周囲の緑は、龍帝の戦いから二人を護っていたが、空間全体の激しい振動はそこにいても伝わってきていた。

 

「ベビー。破壊はあくまで、一つの戦いの終着点。これは、新しい始まり。すべてが終わるのではなくで……生まれ変わる瞬間」

 

「生まれ変わる……」

 

 ドラゴンベビーの思考が一つの記憶と結びついた。

 

 理性を失い、暴走する父の姿。父と戦う騎士ガンダム。ドラゴンベビーの想いと命の籠った魂の宝玉により、正気を取り戻した、父、ネオブラックドラゴン。

 

 そして、ドラゴンベビーの想いを受けた父は自らの意志で、兄弟でもある騎士ガンダムと一つになる道を選んだのだ。

 

 直後、カードバトラーの創造力と、霊穴から流れ出る聖龍帝の大創界石の力によって構築された世界全体が、黄金の輝きに包まれていった。

 

 白矢、龍、エドワキアが何事かを言ったが、ドラゴンベビーの耳には入ってこない。ただ、何かとても懐かしい気持ちが、ドラゴンベビーの内から溢れ出していた。




★来星の呟き

今回のリプレイ

リプレイ1
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=261209&uid=341911

リプレイ2
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=261210&uid=341911


カードバトルを小説に盛り込むって、大変ですなぁ……。。
延々とアタックや召喚の描写が続くから、マンネリから離れる為に色々工夫しなければならないし……。
取り合えず、特に心理描写はもっと上達したい。。

時々、自分で読み返してみて、同じような言い回しが連続している等、気になった際は修正したりしていますが、
それらを活動報告に書いていたらきりがないので、シナリオの根幹に関わるような変更でもない限りは、基本こっそり直しております。


ちゃっかりビルドダイバーズネタを仕込んだり。
ドラゴンベビーが登場するアニメ作品って、他に騎士ガンダムのOVAをレーザーディスクで視聴したことあるけど、どっちもチョイ役なのが寂しい。

ほしの竜一先生の作品では出番が多いし、ブラックドラゴンの半身以上の存在だったから印象的でした。
1話限りだけど、ジャイアントジオングとのコンビも好き。
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