「ゲートオープン、界放!」
高らかに宣言する鈴浜辺羅。少し遅れて、月坂小夜の視線に気づいた亀井重武が慌てて「界放!」と声を張り上げた。
「あたしのイメージする光景は遠い南海。……ぽつんと孤島が一つ浮かんでいる心の故郷」
眼を閉じ、自分のデッキから連想される風景を思い描く辺羅。それを訝し気に見る重武と、すっと目を開けた辺羅の視線が合った。
「おっさんは特にそういうの、無いか」
むむっと顔をしかめる重武。重武はそれから途端に得意げになって、語りだす。
「甘く見ちゃあいけないよ。ぼくはこれでも作家の端くれ、創造力において引けを取りはしないさ」
重武は右腕を天へと向かって高く突き出し、豪語する。
「ぼくのイメージは北国。冷たい水と空気の中でも強く生きる亀の逞しさ、とくと見るが良い」
重武の周囲に北方の大地と海面が広がり、対照的な辺羅の南方との対立が強まった。
「さて、ぼくは紳士だからね。レディーファーストだ、先行は譲るよ」
重武はくるりと掌を翻し、辺羅の方へと差し伸べた。
「なに勝手に決めてるんだよ……。ま、いいよ、先行は貰った」
☆第1ターン。
鈴浜辺羅のターン。
辺羅は各ステップを踏み、いよいよ最初のメインステップに入った。
「あたしの可愛い魚。マグマの中より現れよ!」
海底の火山が噴火した。ぼごぼごと煮えたぎった溶岩が海の底を伝っていき、その溶岩をかき分けながら魚の形をしたマグマが飛び出す。
最初、魚は溶けたマグマの塊と見分けがつかなかったが、海中の冷気に触れたことで塊り、岩石のような鱗に覆われた溶魚の姿へと変貌していった。
「なるほど、ピストジャサウルスか。まあ、確かに魚だね」
重武が品定めをするように、Lv3で召喚されたピストジャサウルスを見つめる。
「さらに、あたしはバーストをセット。さあ、次はおっさんのターンだ」
☆第2ターン。
亀井重武のターン。
「ふっふっふ。では、ぼくの雄姿、刮目するのだ」
亀井重武はそのままメインステップに移行する。
「ぼくは西の大樹ワーズワースをLv1で召喚」
大地を割り、そそり立つ大樹。巨大な樹は天を貫く勢いでぐんぐんと伸びていき、やがて、その動きを止めた。
地に生えた大樹には知性と老練さを連想させる相貌がはっきりと浮かび出ていた。
「ワーズワースの召喚時効果を発揮。デッキを上から3枚オープンさせてもらうよ」
オープンカードはREVIVALの文字が刻まれたフォースドロー、パイオニアシルバーオール、シェンウーモン。
「早速来てくれたね、ぼくのパートナー」
嬉々としてシェンウーモンのカードを手札に加える重武。残り2枚のカードは破棄され、トラッシュに置かれた。
(シェンウーモンだって……。あれもバースト効果を持つスピリット)
警戒の色を強める辺羅を尻目に、重武はバーストエリアにカードをセットし、アタックせずにターンエンドを宣言した。
☆第3ターン。
鈴浜辺羅のターン。
「メインステップ。……あたしもそろそろ動かさせてもらうよ」
辺羅の目つきが怪しく煌いた。重武は一瞬悪寒を感じたが、表面上はあくまで平静さを取り繕う。
「戦の流れを掌握せし、弓矢の名手。来な、征矢龍ビョウハ!」
噴火した海底火山の一部が急速に隆起していき、海面から飛び出した。天より真紅の武者鎧で全身を覆った龍の侍が舞い降り、海面に現れた大地の頂上に降り立った。
「アタックステップ。行け、ピストジャサウルス」
勢いよく飛び出す溶魚、ピストジャサウルス。
「フラッシュ、ビョウハの【覚醒】を発揮する。ピストジャサウルスのコア全てをビョウハへ移動」
「な、お嬢ちゃんは可愛い魚を消滅させるのか……!」
咄嗟に身構えていた重武が驚きの声をあげた。
「これがあたしなりの戦い方。おっさんに心配されなくても、あたしと魚の連携はここから始まるんだ」
ピストジャサウルスは魚の形をした炎へと変じ、ビョウハの手元へと運ばれた。ビョウハが弓を構えると、魚の形の炎は矢となり、その矢じりは重武のフィールドにいる大樹へと向けられた。
「ビョウハの効果により、BP4000以下の相手のスピリット1体を破壊する」
放たれる、炎の矢。それは西の大樹ワーズワースへ向かって一直線に進み、大樹の中央に突き刺さった。立ちどころに大樹は燃え上がり、音を立てて倒れ伏す。
「ぐ……ぼくのライフよりも、ワーズワースを破壊しにきたか」
「それだけじゃないよ。今ので、あたしの魚のソウルコアがビョウハに置かれた。よって、あたしはデッキからカードを2枚ドローする」
ビョウハの手元に残った残り火が、中空を伝わり、辺羅の手へと飛んでいった。それはそのままデッキに移り、新たなカードがドローされる。
辺羅はそのままターンを終了した。
☆第4ターン。
亀井重武のターン。
「やられた分はきっちりと返させてもらおうかなぁ」
不敵に笑って見せる重武。それを見た辺羅は否が応でも警戒を強めてしまう。
「太陽を喰らいし狼よ、白き大地を駆けろ! 鎧装獣スコール!」
それはREVIVALの文字が刻まれた白の甲獣、鎧装獣スコールのカード。
獅子のような金色の獣毛を頭部に生やした、高質化した皮膚を持つ狼が飛び出し、大地を駆けた。
天に向かって咆哮する狼を日の光が見下ろしている。狼はその光を吸収しているかのように金色の輝きを放った。
「スコールの召喚成功時にボイドからコア1個を自身に置く。そして……アタックステップ」
狼が動きを止め、辺羅のフィールドに向かって突撃する姿勢に入った。
「スコールでアタック。この瞬間、さらにボイドからコア1個をスコールに置く」
目覚ましい瞬発力でスコールが突進した。重武と辺羅の間のバトルフィールドを駆ける鎧装獣がさらに輝きを増していく。
「これでスコールのLvは2。Lv2以上となったスコールはアタック時、ターンに1度、回復!」
疾走するスコールに力が漲る。
「召喚時とアタック時にコアを増やし、さらに回復してライフも奪う、か。なかなか貪欲な狼だね」
「求めるものに対して真っ直ぐなのさ。ぼくのようにね」
どさくさに紛れて、観戦している小夜に向かってウィンクして見せる重武。きょとんとする小夜。
「はあ……言ってろ。……そのアタックはライフで受ける!」
海上に直立する辺羅の眼前に青色のコアの輝きで形成された壁が現出する。駆けてきた鎧装獣が大きく跳躍し、軽快な身のこなしのサマーソルトキックで青色の壁を打ち破った。
これにより、辺羅のライフは4個となる。
「ふふん、まずは先制で一発与えたよ」
「調子に乗るなよ、おっさん。……あたしは、ライフ減少によりバースト発動!」
辺羅がセットしてあったカードを表に返す。それはREVIVALの文字が刻まれた龍の覇王ジーク・ヤマト・フリードのカード。
「猛ろ、炎の総大将。あたしの外敵を焼き払え!」
現れた龍の覇王に右手に握りしめられた剣に紅蓮の炎を宿る。龍の覇王が剣を一閃させると、放たれた炎が鎧装獣に直撃し、その全身を焼いた。
焼かれた鎧装獣は白光となり、飛散する。
「む……ぼくのスコールを……やってくれたね」
「更にジーク・ヤマト・フリードをバースト召喚。コアはビョウハから貰う」
召喚された龍の覇王は両翼を使って力強く飛翔し、辺羅のフィールドを舞った。燃える真紅の瞳が、未だ収まることのない闘争心を物語っている。
重武のフィールドはがら空きとなり、追撃は不可能となった。渋々といった様子で、重武はターンを終了する。
☆第5ターン
鈴浜辺羅のターン。
辺羅はメインステップに入ると、手札から一枚のカードを取り出し、高らかに宣言した。
「エジットの神、アヌビス。あたしに力を貸しな!」
配置されたのは、創界神アヌビスのカード。漆黒の鎧に身を包み、大剣を手にした黒騎士を思わせる風貌のアヌビスが辺羅の背後から広がる海上に降り立った。
創界神アヌビスの効果でトラッシュに置かれたカードは、古代怪獣ゴモラ、宇宙恐竜ハイパーゼットン(イマーゴ)。それに、REVIVALの文字が刻まれた、化神でもある龍の覇王ジーク・ヤマト・フリード。ボイドからコア3個がアヌビスに置かれた。
「さらにもう一枚、創界神アヌビスを配置」
もう一人、全く同じ姿の創界神が降り立ち、二人のアヌビスが肩を並べた。両者は顔を見合わせ、「やれやれ、神使いの荒い嬢さんだ」とぼやき合っている。
「へえ。アヌビスか。これは、ぼくも自分の心臓を取り出して不死身の証を立てないといけないってことかねぇ?」
おどけて見せる重武に、辺羅はむっとなる。
「……お前はどこぞの不死人か」
「お、話がわかる? その年で」
「……」
辺羅はそれには答えず、ビョウハと龍の覇王をLv2に上げ、アタックステップに入った。
「行け、龍の覇王ジーク・ヤマト・フリード!」
炎の剣を構え、龍の覇王が直進する。赤色の鎧が、太陽の光を浴びて、眩しく煌いた。
「ライフで受けさせてもらおう」
龍の覇王の剣戟が重武を守護するコアの障壁を切り裂いた。
これで、重武の残りライフは4となる。
「ライフ減少により、ぼくもバーストを発動するかな。……電子の妖精にして、愛の伝道者。さあ、ぼくの恋の成就の為に助力しておくれ。マリンエンジェモン!」
ざざーっと重武の周りに青色の海が広がり、水色の電光が迸った。海の中から無数のハート模様が浮かび上がり、大きな波が上がると同時に海面に桃色のクリオネのような姿を下した妖精が飛び出した。
「マリンエンジェモンだって。……シェンウーモンじゃなかったのか」
「マリンエンジェモンのバースト効果により、このターン、ブレイヴのコストを無視してコスト9以下の相手のスピリットのアタックでは、ぼくのライフは減らない」
バースト召喚されたLv3のマリンエンジェモンが、白色のバトルフィールドにゆっくりと降り立つ。重武の周囲は、ハートによって構成されたバリアで覆われていった。
「アタックしても無駄、か。ターンエンドだよ」
☆第6ターン。
亀井重武のターン。
「さてと、ぼくのメインステップ……。ぼくはバーストをセット」
重武は一枚のカードをバーストエリアにセットした。次こそはシェンウーモンかもしれない、と辺羅は推測する。
「緑を守護する虹色の輝き。珊瑚蟹シオマネキッドをLv2で召喚」
海の中から大きな蟹が横歩きで這い出てきた。巨大な右バサミで防御の姿勢を取り、ぶくぶくと泡を吹き出す。吹き出た泡は緑を護る防壁の役目を担っている。
「北国で珊瑚、ねえ。……装甲持ち、か。厄介だな」
「ほう、シオマネキッドの効果はよく知っているみたいだね。では、さらに、ネクサス鋼葉の樹林をLv1で配置。不足コストはマリンエンジェモンからも支払い、Lv2に下げる」
白き大地に鋼の針葉樹林が出現した。樹林は高質化しているが、甲獣たちに生命力を与える緑の力は今もなお衰えてはいない。
「少しずつ、ぼくの世界が構築されていくこの感覚。たまらないなぁ!」
重武はそのままアタックステップに入る。
「さあ、マリンエンジェモンでアタックだ!」
妖精型デジモンのマリンエンジェモンがくるりと身を翻し、辺羅の方へ迫ってきた。
「ライフで受けるよ!」
辺羅の前に現れた青色のコアの障壁の前で、接近してきたマリンエンジェモンが急停止する。そして、マリンエンジェモンがいっぱいのハートを放つと、コアの障壁が溶解するように崩れ去っていった。
これで辺羅の残りライフは3。
「出来れば小夜ちゃんにアタックしたかったんだけどね。ぼくはこれでターンエンド」
☆第7ターン。
鈴浜辺羅のターン。
「地を割り、立ち上がれ。古代怪獣ゴモラ」
逆さ月のような角を備えた恐竜が隆起した岩塊を突き破り、猛々しい咆哮を張り上げた。その恐竜の尾は切断されており、咆哮は己が受けた仕打ちに対する怒声とも思われた。
出現した古代怪獣に呼応し、二体のアヌビスの神託が発揮され、それぞれにコアが追加された。
「ソウルコアはゴモラへ、ビョウハをLv1、ジーク・ヤマト・フリードをLv2に……アタックステップ。行け、ゴモラ!」
ゴモラがバトルフィールドに躍り出ると、どたどたを足を踏み出し、重武の方へ走り出した。
「ゴモラのアタック時効果。鋼葉の樹林を破壊する!」
「え、もう壊すの? マジで?」
茫然となる重武を尻目に、突撃してきたゴモラが強靭な腕力と硬い爪でもって鋼の針葉樹林を蹂躙し、破壊し尽くす。
「ぼ、ぼくの鋼葉の樹林があ……。まだ一回も効果を使っていないのに」
「まだまだ、進撃は止まらないよ。ソウルコアが置かれているゴモラがいる時に相手のネクサスを破壊したことで、あたしはデッキから2枚ドロー」
ドローカードを見た辺羅が小さく頷く。重武は相変わらずに「ぼくの樹林がぁ」と呻いていた。
「あたしの手札が増えたことにより、アヌビスの神域を発揮する。……海底より目覚めしは大いなる海獣、己の存在を轟かせよ! 魔海獣ダガーラ召喚!」
海面が大きく反りあがる。海水を押し上げ、巨大な暗色の海獣、ダガーラが現れる。両翼の先端には蟹ハサミのような突起物が怪しく蠢いていた。
「さらにアヌビスの神託を発揮。さあ、あたしのダガーラ、いよいよ出番だよ!」
ダガーラの出現に、グダグダと未練がましく呻いていた重武が我に返る。
「おっと。悪いけど、きみの海獣の好きにはさせないよ」
重武がバーストエリアにセットされているカードを表に返した。
「相手の効果によりスピリットが召喚されたことで、バースト発動。北方の守護神よ、古より得た甲羅で以て白き世界を揺るがせ! シェンウーモン!」
未だに破壊した樹林を踏み荒らしていたゴモラのいる地面が急激に盛り上がっていった。尾が無いためにバランスを取れずに、ひっくり返るゴモラ。
地の底より現れたのはそびえたつ大樹。大樹の上昇は尚も止まらず、その下から巨大な甲羅が現れ、すべてを背負う双頭の巨亀が立ち上がった。
「シェンウーモン……そいつがおっさんの一番の相棒ってことか」
「そういうことさ。シェンウーモンのバースト効果で嬢ちゃんのダガーラとジーク・ヤマト・フリードを疲労させる!」
シェンウーモンが二つの水流を操り、ダガーラと龍の覇王をなぎ倒した。倒れ込んだ二体は起き上がることが出来ず、力なくうなだれていた。
「ぐ……あたしのダガーラが」
召喚しらダガーラの出鼻を早々にくじかれ、辺羅は動揺を隠せなかった。
「そして……ぼくの樹林を破壊したゴモラには退場してもらおうか。シェンウーモン、ブロックだ!」
ようやく立ち上がったゴモラにシェンウーモンが強烈な頭突きをくらわした。古代怪獣の巨体が一気に突き上げられ、遠い海の彼方へと吹っ飛んでいった。
しもべのゴモラが撃退されたことで、辺羅ははっとなる。動揺のあまり、ゴモラが破壊される前に、ビョウハでゴモラを消滅させてドローしなかったことに気づき、己を叱咤した。
「あたしは……ビョウハでアタック!」
ビョウハが弓を構え、緑色の電光によって形成された矢を放った。
「そのアタック、ライフで受けよう!」
豪速の矢が、重武のライフを貫く。これで、重武のライフは3。
「あたしはこれで、ターンエンド」
☆第8ターン。
亀井重武のターン。
リフレッシュステップで、疲労していたシェンウーモンとマリンエンジェモンが活力を取り戻し、臨戦態勢に移った。
メインステップに入った重武は、先のターンにコアの減っていた珊瑚蟹シオマネキッドをLv2に戻し、さらにシェンウーモンとマリンエンジェモンをLv3に上げた。
ぶくぶくと泡を吹き出すシオマネキッドの虹色の輝きが、自身とシェンウーモンを守護する。
「西の大樹ワーズワースを召喚!」
再び現れた地上に現れたワーズワース。今度はシオマネキッドの輝きに守られており、炎への耐性を備えていた。
ワーズワースの召喚時効果でオープンしたカードはエメロードバリア、兎魔神、珊瑚蟹シオマネキッドの3枚であり、系統:樹魔を持たないため、そのまま破棄された。
「ふ……ま、樹魔よりも甲獣だからね、ぼくのデッキ」
重武はそのままの布陣でアタックステップに臨む。
「さあ、行くんだ、シェンウーモン!」
シェンウーモンが巨体に似合わない俊敏さで大地を走行する。
「シェンウーモンのアタック時効果、【旋風】! お嬢ちゃんのダガーラとジーク・ヤマト・フリードを重疲労させる」
「このうえ、重疲労……!」
二つの水流を伴ったつむじ風が渦を巻き、ダガーラと龍の覇王を閉じ込め、その動きを封殺した。
「……あたしはマジック、白晶防壁を使用。マリンエンジェモンを手札に戻す。リザーブの不足コストは……ダガーラとジーク・ヤマト・フリードからも確保」
コアを失ったダガーラの全身が白く明滅し、消え去った。
「相棒を消滅させるか……苦肉の策かな」
重武が呟いた。
その直後、中空に半透明の白い壁が現出し、飛んできたシェンウーモンの水流を跳ね返した。水流はマリンエンジェモンに当たり、吹き飛んだマリンエンジェモンは重武の手札へと戻される。
「おっと……おかえり、ハニー」
「そして、ソウルコアをコストに使用したことで、このターン、あたしのライフは1つしか減らされない。……シェンウーモンのアタックは、ライフで受ける」
水流と共に進軍していたシェンウーモンの頭突きが辺羅のライフを打ち砕いた。これで、辺羅の残りライフは2。
「これ以上は攻めようがないな。ぼくはターンを終了するよ」
☆第9ターン。
鈴浜辺羅のターン。
リフレッシュステップに入ると疲労していたビョウハが回復し、立ち上がった。一方、重疲労していた龍の覇王は未だに立ち直れないでいた。
そして、メインステップ。
「マジック、エクスキャベーション。トラッシュにある系統地竜を持つ3枚、魔海獣ダガーラ、古代怪獣ゴモラ、宇宙恐竜ハイパーゼットンイマーゴを手札に戻す」
先ほど消滅させたダガーラを手札に加える際、辺羅は微かに安堵の表情を浮かべていた。
「あたしはもう一体、征矢龍ビョウハを召喚する! さらに、バーストをセット」
一体目のビョウハの横に、別のビョウハが召喚され、二体の龍の武者が肩を並べた。
「アタックステップ……征矢龍ビョウハでアタック!」
勢いよく先陣を切ったのは最初からいた方のビョウハ。弓矢を携えたまま、尾を振り上げ、戦場を疾走する。
「フラッシュ、ビョウハの【覚醒】を発揮。あたしは、疲労状態のジーク・ヤマト・フリードを消滅させる!」
咆哮と共に消滅した龍の覇王が炎となり、ビョウハの手元に集約したが、相手のフィールドのスピリットすべてはシオマネキッドに守られており、標的はいない。
「ビョウハにソウルコアが置かれていることにより、デッキから2枚ドロー!……あたしの手札が増えたことで、アヌビスの神域を発揮!」
ビョウハを経由して辺羅の手元に送られた龍の覇王の熱量に呼応し、アヌビスが大剣が一閃される。次元を割き、再びフィールドに戻ってくるダガーラの姿が現れる。
「さあ、ダガーラ。今度こそ、あんたの力、轟かせてやりな!」
召喚される魔海獣ダガーラ。だが、重武は待ったをかけた。
「そうはいかない。ぼくはマジック、エメロードバリアを使用。ダガーラともう一体のビョウハを疲労させる」
重武を守護する、六角形のエメラルドの出現。そこから吹きあがった疾風が、ダガーラと後続のビョウハを絡めとる。
「さらに、シオマネキッドがいることで、白の連鎖を発揮! このターン、ぼくのライフはコスト4以上のスピリット及びアルティメットのアタックでは減らされない」
珊瑚蟹の輝きに呼応したエメラルドが白色の輝きを放ちながら立ちはだかり、攻め込んでいたビョウハを辺羅のフィールドにまで弾き飛ばした。
「ダガーラ……」
「ふふん、攻めあぐねているね」
得意げになっている重武に対し、辺羅は悔しさを隠しきれなかった。
「あたしは……ビョウハの【覚醒】を発揮! ダガーラを消滅させ、2枚ドローする」
再び消滅していくダガーラ。何かを訴えかけているかのような相貌のまま、その姿は掻き消えた。
辺羅はそのままターン終了を宣言した。
☆第10ターン。
亀井重武のターン。
リフレッシュステップに入ると、先のアタックで疲労していたシェンウーモンが回復した。
「ぼくはバーストをセット。……これでぼくの手札は1枚……ここで、マジック、フォースドローを使おう」
フォースドローのメイン効果は自分の手札が4枚になる用にドローするというもの。重武はデッキから3枚ドローし、フォースドローをフィールドに置いた。
「フィールドに置かれたこのカードが存在する限り、お互いのデッキは破棄されない。……お嬢ちゃんがデッキ破壊を使うのかは知らないけどね」
吹きすさぶ火がフィールド上を伝わり、互いのデッキを拘束する。
「さらにぼくは、海皇龍シーマ・クリークⅡを召喚! 不足コストの確保で、ワーズワースは消滅させる」
役目を終えたワーズワースが緑色の燐光に包まれながらゆっくりと消えていき、入れ替わりに海中から機械の装甲に覆われた亀が姿を現した。
「シーマ・クリークⅡの召喚時効果! ボイドからコア1個を系統覇皇を持つシーマ・クリークⅡに置き、Lvは2となる」
シーマ・クリークⅡの脇からと水しぶきが沸き上がり、新たな輝くコアが浮き上がり、シーマ・クリークⅡの口から体内に取り込まれた。
「その召喚時効果に対して、あたしはバーストを発動。双翼乱舞! デッキからカードを2枚ドロー」
辺羅のフィールドに紅蓮の旋風が巻き起こり、辺羅の手に熱量が蓄えられた。
辺羅はコアの消費を抑えるために、双翼乱舞のメイン効果は使わなかった。
そして、重武はアタックステップを宣言する。
「いくぞ、シェンウーモンでアタック。アタック時、【旋風】を発揮し、ビョウハには二体とも重疲労してもらう」
なぎ倒され、力を失う龍の武者たち。辺羅はブロッカーのいなくなった自分のフィールドを一瞥し、手札のカードを取り出した。
「フラッシュ! あたしは、ヘ音獣リスクレフを【音速】召喚する! アヌビス、あんたのコアを使わせてもらうよ」
緑の閃光が辺羅の手元から飛び出し、アヌビスの大剣から放たれたコアの輝きが交差する。すると、金色の装飾が施された緑色のリスが姿が露わになった。
「おっと、驚いたな、まだこんな手を用意していたとは……」
「さらに、マジック、エグゾーストエンドを使用。相手の手札2枚につき、相手のスピリット2体を疲労させる……おっさんの手札は3枚、海皇龍シーマ・クリークIIにはおねんねしてもらうよ!」
薄緑色をした円錐状の物体が次々と飛び出し、海皇龍の頭部と四つの足に取りつくと、高速で回転した。風の力で動きを封じられた海皇龍はその場で動けなくなった。
「やるね。……なら、こっちはマジック、甲竜封絶破を使用。シェンウーモンとシーマ・クリークIIのコアを支払って、シェンウーモンを回復させる!」
拘束された海皇龍の口から、白い波動が放たれた。その波動に後押しされたシェンウーモンが、勢いを増す。
「さあ、まだシェンウーモンのアタックは続いている。どうするんだい?」
「そのアタック、リスクレフでブロック!」
リスクレフは音よりも早くフィールドは駆け巡り攻めてきたシェンウーモンを翻弄した。だが、シェンウーモンはその動きを見切り、片方の口から強力な水鉄砲を放ち、リスクレフを撃ち落とした。
「続いて、シオマネキッドでアタックだ」
珊瑚蟹が横向きになり、猛スピードで両足を動かして辺羅に接近した。
「ライフで受ける!」
珊瑚蟹は辺羅のコアの障壁に両足で取りつくと、巨大なハサミでライフを断ち割った。
これで辺羅のライフは残すところあと1つ。
「追撃だ、シェンウーモンで再度アタック!」
勢いづいたシェンウーモンが辺羅へ向かって突進する。狙うは、最後のライフ。
「それは通さない! リザーブに置かれたコアを使い、手札の鎧鷹スイラン・ホークの【神速】を発揮!」
刃物と化した両翼を備えた鷹が舞い上がり、シェンウーモンの頭上に到達した。
「スイラン・ホークでブロック!」
スイラン・ホークが一気に急降下し、シェンウーモンに体当たりをくらわした。一瞬ひるんだシェンウーモンであったが、すぐにこれへ応戦し、硬い装甲で覆われた頭部をぶつけようとした。
「ビョウハの【覚醒】を発揮!」
シェンウーモンの頭突きが空振りする。スイラン・ホークの全身が緑色の粒子となって分解され、ビョウハの元へと運ばれた。
「ビョウハ、その亀を撃ち抜け!」
「む、その矢ではシェンウーモンを撃ち抜くことは不可能……あ!」
ビョウハが狙ったのは、LvとBPの下がった海皇龍シーマ・クリークⅡだった。
「そうか、シーマ・クリークⅡはシオマネキッドに守られていないからね……でも」
放たれた矢がシーマ・クリークⅡに突き刺さる。だが、シーマ・クリークⅡはこれをはねのける勢いで白色の防壁を展開した。
「シーマ・クリークⅡの【転醒】を発揮! 相手によってフィールドを離れる時、このスピリットは裏返せる。さあ、きみを竜宮城に招待してあげよう!」
重武の背後から、海水が一気に流れ込み、その場が海中に没した。海の底にはシーマ・クリークⅡの住まう、亀を模した石垣によって守られた竜宮城がそびえ、周囲には赤と白の珊瑚が揺らめいている。
「ネクサスになるスピリットだって。これじゃ、ますますこいつの世界に引き込まれてしまうじゃないか」
「ふっふっふ、亀を虐めると思わぬしっぺ返しを受けるのさ」
「……あたしはソウルコアが置かれたビョウハの効果で2枚ドロー」
「ここで着実にハンドアドバンテージを取るか。きみもなかなかしたたかだね。ぼくはこれでターンエンドさ」
☆第11ターン。
鈴浜辺羅のターン。
リフレッシュステップに入ると、重疲労していた二体のビョウハは回復したが、未だ疲労状態からは脱し切れていない。
そして、メインステップ。
「地竜の姫君、あたしに助力して。恐竜姫ジュラをLv1で召喚」
真紅の髪と褐色の肌を備えた道化と地竜の混血、ジュラ。潮風に吹かれた彼女の髪がきらきらと輝いた。
ジュラが地竜の骨で作られた棍を振りかざし、舞を舞う。その舞に対し、アヌビスが手にした大剣を使って勇ましい円舞で応えた。
「ジュラか……や、なかなか美しいね」
「……さらに、古代怪獣ゴモラをLv2で召喚!」
再びフィールドに現れたゴモラ。ゴモラは失った尾を振ることも出来ず、少々もどかしそうにしていた。
「ゴモラ、失われた尾の代わりにはならないだろうけど……あんたにこの力を授けてやるよ。……異魔神ブレイヴ、恐竜魔神をゴモラに直接左合体!」
かぎ爪を備えた赤い恐竜の姿がゴモラの背後に浮かび上がる。炎の形状の後光を模した装飾が真紅に輝いていた。
「殻を破り、覚醒せよ、最強の宇宙恐竜、ハイパーゼットンイマーゴ!」
召喚されたのは宇宙恐竜ハイパーゼットン(イマーゴ)。黒い外殻に覆われた長身で人型の宇宙生物、ゼットンは奇怪な電子音のような声を響かせながら、直立していた。
「恐竜魔神をゼットンに右合体!」
ゴモラとゼットン。二体に向かって恐竜魔神が力を送り出す。
「そして、アタックステップ。あたしは……」
ふと、重武と視線を合わせる辺羅。重武はにやにやと笑みを浮かべたまま構えていた。
(あいつのライフは残り3つ、スピリットはすべて疲労している。手札は2枚しかない。……でも、バーストがセットされている。もし、恐竜魔神と合体したハイパーゼットンのアタックが通れば、あたしの勝ちだ。なのに、何であんな余裕そうな表情で……)
辺羅は逡巡していた。もし、さっきみたいにエメロードバリアなどを使われたら、それだけでこのターンに攻め切ることは出来なくなる。
(く……どうしたらいい)
迷う辺羅の視線が竜宮城に向けられた。
(ここはあいつの場を荒らし、手札を補充する……!)
辺羅は意を決する。
「ソウルコアを乗せたゴモラでアタック! アタック時、恐竜魔神の合体時効果でボイドからコア2個をジュラに置く。さらに、竜宮城を破壊し、デッキから2枚ドロー!」
恐竜魔神の援護を受けたゴモラが突進し、竜宮城の外壁を突き破ると、一気に城を破壊した。
「くう……亀を虐めただけでは飽き足らず、住処まで打ち壊すなんて……情け容赦ないね」
「徹底的に攻めるのがあたし流だ。そして、手札が増えたことでアヌビスの神域を発揮! あたしの一番の相棒、魔海獣ダガーラを召喚!」
海を押し上げ、フィールドに戻ってきたダガーラ。辺羅はこうしてダガーラと同じ、風、香り、風景を感じている時がとても尊いものに感じられた。
「そのアタック、ライフで受けよう!」
角を突き出したまま突撃するゴモラが重武のライフを打ち砕いた。
「ライフ減少により、バースト発動! さあ、ぼくの愛はだれにも止められない! マリンエンジェモン!」
「マリンエンジェモン……ということは」
「そうさ、ブレイヴのコストを無視した場合、一番コストの高いお嬢ちゃんのスピリットでもハイパーゼットンのコスト8止まり。つまり、このターン、きみのアタックではもうぼくのライフを減らすことはできない」
辺羅は力なく肩を落とした。だが、すぐに己の闘志を奮い立たせる。
(次のターン、この手札で防ぎきらないと……)
バースト召喚されたマリンエンジェモンと対峙する辺羅。辺羅はそのままの姿勢でターンを終了した。
☆第12ターン。
亀井重武のターン。
ドローステップ、ドローしたカードをじっと見つめる重武。
(兎魔神のカード。ここでこのカードが来てくれるとは。まるで相手の恐竜魔神に応えたかのようだ)
メインステップ。重武はドローした兎魔神を辺羅に向かって見せつけた。
「ぼくはこの異魔神ブレイヴ。兎魔神を召喚する!」
「な……おっさん、あんたも異魔神ブレイヴを……」
身軽に飛び跳ねる、硬い装甲を備えた兎の登場。兎はシェンウーモンとマリンエンジェモンの背後に取りつき、両者に異次元の力をわけ与えた。
「これでマリンエンジェモンも緑のスピリットになった。つまり、シオマネキッドの守護を受けられるということさ。さらにバーストセット!」
新たにセットされるカード。これで重武の手札は残り1枚となった。
「さあ、アタックステップ。ぼくにはもう後がないからね、全力で行かせてもらう。シェンウーモン、アタック!」
兎魔神の助力を受けたシェンウーモンが先陣を切る。
「まずは【旋風】! ダガーラとハイパーゼットンを重疲労させる!」
水流と暴風の合わさったシェンウーモンの技が、辺羅のスピリットを蹂躙する。
「く……また……」
「さらに、兎魔神の左合体時のアタック時効果。ターンに1回、疲労状態の相手のスピリット1体をデッキの下に戻すことで、シェンウーモンは回復する!」
「デッキの下に……。でも、ジュラの効果であたしの地竜は守られて……あ」
辺羅は自分のフィールドの中で唯一ジュラの恩恵を受けられないスピリット、征矢龍ビョウハに目を留めた。
「そう、きみの布陣を確固なものにしてきたビョウハが、きみのアキレス腱だ」
シェンウーモンの背後に取りついている兎魔神の腕から、緑と白の入り混じった光の球が、マシンガンのように次々と打ち出された。これを受けたビョウハは耐え切れず、フィールドの外へと弾き飛ばされた。
「……そのアタックは、ジュラでブロック!」
辺羅が見やると、ジュラも辺羅と視線を合わせ、こくりと頷いた。ジュラは手にした棍を武器にして、シェンウーモンに躍りかかった。
ジュラの一撃がシェンウーモンに打ち付けられたが、硬い甲羅を持つ究極体デジモンには傷一つつけられなかった。シェンウーモンが水流で以て反撃し、直撃を受けたジュラは赤い粒子となって消えた。
「続けて、マリンエンジェモンでアタック! アタック時効果で、自分のトラッシュにあるネクサスカード、鋼葉の樹林を配置する」
マリンエンジェモンが両腕を差し伸べると、地の底からゴモラに破壊されたはずの樹林が浮かび上がってきた。ハートに包まれた樹林はマリンエンジェモンの能力で再生していき、元通りとなる。
「流石は愛の伝道師……壊されたぼくの世界を修復してくれたよ」
「あたしは手札のヘ音獣リスクレフを【音速】召喚! アヌビス、またあんたの力を使わせてもらう」
アヌビスはふうっと小さくため息をついたが、すぐに了承の意を剣の舞で以て示し、ヘ音獣リスクレフの通過する道を創り出した。
「マリンエンジェモンのアタックは、へリスクレフでブロック!」
緑色のリス、リスクレフがマリンエンジェモンを翻弄しようと飛び回る。しかし、マリンエンジェモンは的確に相手を捉えると、大量のハートを送り出し、リスクレフを包囲した。
ハートに呑まれたリスクレフは戦意を喪失し、そのまま緑色の粒子となって消えていった。
「シェンウーモンでもう一度、アタックだ」
水流を操るシェンウーモンの進撃が再開される。これを前にして、辺羅はさらに手札をきる。
「鎧鷹スイラン・ホークを【神速】召喚! そのアタックは、スイラン・ホークでブロックする」
スイラン・ホークが辺羅の手札から飛び出し、シェンウーモンの追撃を食い止める。シェンウーモンは強烈な頭突きで鎧でできたこの鷹を粉砕した。
「凄いね、まだこれだけのブロッカーを隠し持っていたとは。だが、これはどうかな? 珊瑚蟹シオマネキッド、アタックだ!」
珊瑚蟹がギシギシと音を立て、横を向くと、高速で進軍を開始した。
(こ、このアタックは……)
辺羅は手札にあるカード、エグゾーストエンドを見つめた。もしこのカードで相手を疲労させることでできたら、このターンの総攻撃を防ぐことができたかもしれないのだ。
(でも……おっさんの……あいつの手札は1枚。これを使っても、意味がない)
エグゾーストエンドは相手の手札2枚につき、相手のスピリット1体を疲労させる。重武はそれを見越して、手札を減らしてきたのかもしれない。
「シオマネキッドのアタックは……ライフで……受ける」
辺羅にはもう対抗手段が残されていなかった。
今まで辺羅の攻撃の手を防ぎ続けてきた、珊瑚蟹シオマネキッド。その珊瑚蟹が辺羅に引導を渡す形となったのである。
今、辺羅の最後のライフが砕かれた――。
★来星の呟き
今回のリプレイ(活動報告へ飛びます)
前半
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=259251&uid=341911
後半
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=259252&uid=341911
作者がビョウハの扱いに不慣れなせいで、
「なんでもっとビョウハを使わなかったんだ」的展開になってしまった……感。
鈴浜辺羅は準レギュラー的キャラと言えますので、今後しっかり雪辱は果たしてもらう……かもね。
自分にとってのダガーラは、
坂井孝行氏が『コロコロコミックSPECIAL』に描いていた漫画版のイメージが強いです。
こちらの作品では、ニライカナイの人間が、何の罪もない魚を改造して作り出した怪獣がダガーラという設定で、
ダガーラにはニライカナイの言語で「掃除機」という意味がありました。
この辺は映画版を色々掘り下げた感じでして、妖精ベルベラが身勝手な人類を憎む要因になもなっておりました。
その影響もあって、自分は漫画版のベルベラとダガーラのコンビが特に印象深いのです。
(「鈴浜 辺羅」は、「すずはま べら」と読みます。名前のモデルは勿論……)
まあ、そういうわけで、
ダガーラは自分にとってはラドンの次、東宝特撮では二番目に好きな怪獣ですので、専用デッキも組んでしまうわけなのよね。