呪術師という職業で世界最強!   作:リーグロード

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最近は偽マフティーにハマってしまい、ダンスも習得中です。
そんな暇があるのなら小説を書けって話なんですけどね。


まさか、香織って前世はビーデルさんだった?

 ベヒモス討伐の翌日の日、今度はメグミの特訓という名目で迷宮に挑もうとしたが、入口前で待ち構えていたメルド団長に捕まってしまい王城へと連行されてしまった。

 

「おいおい、面倒事は勘弁だぜ。しかも、ご用心に先生まで連れ出してきやがって」

 

「仕方ないでしょ! こうでもしなくちゃ五条ちゃんが逃げるって団長さんが言うんですから! それと、聞きましたよ! なんでも、とっても危ないモンスターと戦ったって!! なんでそんな無茶するんですか! 戦争に参加しないって言ったのに、なんでそんな危ないことをしたんですか!」

 

「いや、別にあいつらが普通に生きて帰ってこれるくらいだし、全然危ないって思ってなかったし。現にほら! 何処にも傷はついてませんよ先生。俺にとってあれくらい、ゲーム序盤のスライムをロトの剣を装備した状態で戦うのと同じくらいの難易度だったて話さ」

 

「もぉ~!! そういう話じゃありません! 昨日いきなり夜中にたたき起こされて、団長さんを筆頭にいろんな人から頭を下げられて「五条をどうか城に呼んできて欲しいのです!!」って懇願される先生の気持ちが分かりますか!?」

 

「いや、本当に愛子には世話を掛ける。本来ならば、未だ閉じこもる他の生徒にも気を配りたいだろうに……」

 

 申し訳なさそうに深々と頭を下げる団長を相手に「そ、そんなつもりで言った訳では!!?」っと慌てて頭を上げさそうとする愛子先生。

 ケータイがあれば動画にして後で楽しめそうなんだけどな~っと割と酷いことを考えている五条は窓の外を見て目的地が近いことを悟る。

 

 

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 パパパ~ン! ダダダダダダッッ!! シャーン!!! 

 

 トランペットとドラムとシンバルの大合唱による出迎えが送られた。

 

「うっせぇ~、この間まではこんなのしなかったっていうのに、手のひら返しが早すぎて俺でなきゃ見逃しちゃうね♪」

 

 某暗殺者さんの名言を借りてパレード状態の城門を潜り抜け、王のいる玉座の間まで辿り着く。

 ここに着くまでにも逃げ出すチャンスは多々あったが、終始服の袖を掴んで離さない愛子先生のせいで逃げられなかった。

 状況的には不良の生徒を連行する先生の図なのだが、見た目的には迷子にならないようにお兄ちゃんの服を引っ張る子供にしか見えないのが面白いところだ。

 

 それからの出来事は語らずとも想像できるだろうが、案の定、王様と教皇から戦争参加の考え直しを言い渡されるが、五条は「俺を参加させたきゃ鳥山○先生と尾○っちと芥○先生の直筆サインを持参してこいよハゲ!」っと中指を立てて挑発する。

 隣では五条の暴言にごめんなさい! ごめんなさい! と頭を高速で上げ下げする愛子先生がいた為、王様も教皇も声を荒げて責めてはこなかったが、その表情には確かな怒りが浮かんでいた。

 

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 そうやって城の一部が騒がしいなか、とある一室で変化が起きていた。

 

「なんだか今日は騒がしいわね。噂じゃあの五条がベヒモスを倒したから城に招き入れてるって話だけど……、多分本当なのでしょうね」

 

 あの日感じた五条の強さはまるで底が見えない。

 あのベヒモスでさえ、団長や光輝が束になってかかれば抑え込めたが、あの五条を相手にすればイメージだけでも敵わない、そう思い込まされてしまう。

 

「あの時、あの場に五条がいれば……南雲君も貴方もこんな目にあってなかったかもしれないのにね」

 

 目の前のベットで寝続けている親友の手を取りながら、あり得たかもしれないもしもの未来を想像する。

 それが切っ掛けかどうかは分からないが、ピクッと眠っている親友が動きを見せた。

 

「!? 香織! 聞こえる!? 香織!」

 

 ようやく見せた眠りから覚める前兆。雫は必死になって手を握り親友へ声を呼びかけた。

 それに反応した白崎は、やがて薄っすらと目を開いて口を開く。

 

「……雫ちゃん?」

 

「香織!」

 

 ようやく目を覚ました親友に雫は涙を浮かべながら歓喜し、香織は焦点の合わない目でボーっと涙を流して喜んでいる雫を見つめる。

 

 やがて、意識がハッキリしてきた香織は自分が意識を失う前に何があったのかを思い出す。

 

「そうだ、南雲君! ねぇ雫ちゃん! 南雲君は……南雲君はどこにいるの!?」

 

「ッ……それは」

 

 目覚めたばかりの親友になんて言えばいいのか悩む様子を見せるが、聡明な香織はその雫の様子を見て悟る。

 

「……いかなきゃ」

 

 焦燥に駆られた香織は急いでベットから抜け出そうと上に掛けられてある毛布を乱暴に跳ね除けて起き上がろうとするが、それを見ていた雫が慌てて肩を掴んで無理矢理寝かしつける。

 

「離して雫ちゃん! 南雲君が……南雲君が助けを待っているの。今すぐ行って助けに行かなきゃ、彼が死んじゃう!?」

 

「…………」

 

 必死になって雫の拘束から抜け出そうと暴れるが、武芸者で元の世界から鍛え上げている雫の拘束から抜け出せるはずもなく、体力が尽いて暴れるのをやめて大人しくベットに横たわる。

 

 しかし、その顔は不満気で目から悔し涙がこぼれ落ちていく。

 それを見た雫は自分の力の無さや何も出来ない現実の残酷さに下唇を嚙んで顔を歪ませる。

 それに気づいた香織は涙をぬぐい謝罪の言葉を口にする。

 

「……ごめん雫ちゃん。自分ばっかり我儘を言っちゃって」

 

「ううん、そんなことないわ香織。貴方が悪い訳じゃないもの」

 

 やがて、落ち着いて話ができるようになった香織は、自分が気を失った後のことを雫から聞いた。

 

「……雫ちゃん……南雲くんは……落ちたんだね……ここにはいないんだね……」

 

「…………ごめんなさい香織」

 

「ううん、雫ちゃんが謝る必要はないよ。でも、五条君と檜山君は絶対に許さない」

 

 南雲が落ちた原因が檜山の嫉妬によるものが原因で、それを無罪にして勝手に許した五条に強い怒りの感情が芽生えた。

 

「私、今から五条と檜山君に文句を言ってくる!」

 

「……そうね、幸い五条の奴は今日城に呼ばれているみたいだし、檜山の奴は光輝が監視しているから会おうとすれば会えるわ。……けど、檜山程度なら暴れても私1人でも対処できるけど、あの五条がもし暴れたら私や光輝たちが束になってかかってもどうしようもできないわ」

 

「そんなに強いの五条君は?」

 

「ええ……、文字通り別格って感じね。本当に悔しいけど、あのベヒモスをたった1人で倒したなんて噂が城中で広まってるわ」

 

「そんなに強いんだ五条君は……」

 

 あの化け物を1人で倒せるなんて噂が立つ程に凄いというのが香織の認識だが、雫はあの五条ならば噂が本当なのだろうという認識だ。

 すれ違う認識だが、五条は強いという共通認識だけはしっかり合っている。

 

「……でも、それなら五条君に頼めば南雲君を助けてくれくかもしれない」

 

「けど、香織。それは……」

 

「うん。分かってる。あそこに落ちて生きていると思う方がおかしいって。……でもね、確認したわけじゃない。可能性は一パーセントより低いけど、確認していないならゼロじゃない。……だから、最後まで信じたいの!」

 

 常識的に考えて生きていると考える方が異常だ。けれど、香織には上手く言葉にできなのだが彼がまだあの迷宮で1人生きている。そんな確信がある。

 それを察した雫は優しく香織を抱きしめてこの優しい幼馴染を応援することにした。

 

「香織……。ええ、そうね。そういえば五条君は冒険者になったって言ってたし、依頼って言ってこき使ってあげましょう」

 

 アッハッハッハ♪ と楽しそうに未来へ想いをよせて笑いあう。きっと未来は明るいのだとそう信じて……。

 

 

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 ところ変わって、ここは王城のとある廊下の1つ。そんな普段であれば物静かな場所の筈なのだが、今日はいつもと様子が違う。

 

「おい見つかったか!?」

 

「いやコッチにはいない。他を探せ!」

 

「決して見つけてもその場で対処しようとするな! メルド団長と愛子様をお呼びするのだ!」

 

「いたぞぉ! こっちだ!!」

 

 何故城の衛兵たちが血眼になって騒いでいるのか、それはほんの少しだけ時を巻き戻す必要がある。

 

 あれは今から15分程前の出来事だった。

 

 王と教皇がいる玉座の間で五条が中指立てて挑発してから更にひと悶着あり、愛子が頭を下げて平謝り状態になった隙に逃げ出したのだ。

 まさか、王と教皇の2人の御前で逃げ出すとはその場の誰も思ってはおらず、みすみすと五条を逃がす結果となった。

 

 その後は衛兵たちを総動員させて逃げ出した五条を捕えようと城中を隈なく探し回っているのが現状だ。

 されど五条は一向に捕まらない。時折お遊びのように姿を見せもするが、すぐに逃げられるか衛兵が近づいてもなぎ倒されるか。誰の目か見ても分かるほどにバカにされている。

 

 当初はプライドを刺激された衛兵たちが怒りに声を上げたが、それ以上の声でメルド団長に怒鳴りつけられ、五条を見つけ次第自分か愛子を呼べと命令した。

 その判断は正しくはあるが、五条を捕えるには1手も2手も足りはしない。

 

「こっちですメルド団長!」

 

「何処だ!?」

 

「ダメです! 逃げられました!」

 

「こちらです愛子様!」

 

「は、はひぃ~、すぐ行きます!!」

 

「申し訳ありません。五条を取り逃がしました!」

 

 そう、メルド団長や愛子先生が報告を受けて辿り着いた時には既に逃げられてしまうのだ。

 そして、その場に残っている衛兵からの申し訳ないという謝罪が送られるのも1度や2度ではない。

 

 そうやって右往左往する城の衛兵たちを見下ろし満足そうに笑う五条はそろそろ帰ろうかと思案する。

 

「さ~て、憂さ晴らしもできたし、そろそろ街に戻ってメグミに修業をつけてやんないとな」

 

 今頃はここに連れてこられる前にマルクに渡した金で肉体づくり用に飯を死ぬほど食っているだろうな。金貨20枚は渡したけど、一体幾ら減っていることやら……。

 せめて、2枚くらいは減らしておいて欲しいものだ。

 

 そんなことを考えながら、いまだ騒がしい廊下を吞気に鼻歌まじりに歩いていると、衛兵たちとは違う騒ぎ声が聞こえてきた。

 

「こっちに近づいてくんなよ殺人鬼が!!」

 

「私たちをあんな危険な目に合わせてどの面下げてここにいるってのよ!」

 

「…………ごめん。こっちに来ないでくれ」

 

 声の聞こえる中庭を覗いてみると、1人の男子をつまはじきにしている光景が映った。

 よ~く見てみると、どうやら檜山の奴が他のクラスメイト達から除け者にされているようだ。それも、一緒になってハジメをイジメていた友人である奴らも巻き込まれるのを恐れて拒絶している様子だ。

 

「これはこれは……、ちょっと面白い出来事が起きそうだ」

 

 悪い顔してそう呟く五条は、騒ぎとなっている場所に見つからないように気配を殺して忍び寄る。

 完璧に気配を殺した五条に、ただの一般人であるはずのクラスメイト達が気づくはずもなく、目と鼻の先ほどの距離まで近づけた。

 

「な、なんだよ。お前らだって南雲の野郎を嫌ってたじゃねぇか! 俺だけが悪者扱いかよ!! なんだよ、たかが落ちこぼれの役立たずが死んで何が問題だ! あの五条だってあの野郎が死んでもお咎め無しだったんだぞ! 俺は……、俺は間違っちゃいねぇ!!!」

 

 うわ~、痛たたたぁぁ! あの時は別に南雲とか友人じゃないし、嫉妬で行動したこいつの言い訳がなんか面白かったからノリで無罪にしちゃったけど、こうして暴走している様を見せつけられると何やってんだよ過去の自分! って言いたくなっちゃうわ。

 

「「「「「…………」」」」」

 

 ほら、気づいて檜山! 周りのクラスメイト達の目が生ゴミを見る目へと変わってきているよ。

 っていうか、お前が口を開く度にお前に無罪判決を言い渡した俺の評価も道ずれで急転落下していくからマジ黙れ。

 

 面白半分で様子を見に来たが、最近のザマァ! 系キャラ並みに酷いクズっぷりを見て随分と久しぶりに過去の自分の軽はずみな言動に後悔を覚える。

 もうこれ以上あの馬鹿が口を開く前にそろそろ姿を現して止めるとするか。なんて考えて一歩前へ踏み出そうとしたその時だった。

 

「待て! 一体何の騒ぎだ!?」

 

 ここでまさかの勇者光輝が登場だ。その後ろには友人の龍太郎がおり、更にその後ろには幼馴染の八重樫と白崎が歩いてやって来た。

 

「天之河君か……。コイツが原因だよ。俺たちは人殺しをしたっていうのに全然反省してないんだ。そしたら、突然コイツがキレだして無茶苦茶な事を言い出したんだ!」

 

 と、檜山を追い立てていたグループの1人が指差して事情を説明してくる。

 それを聞いた天之河は膝を折り、その場で土下座の態勢をとった。

 

「それなら俺も同罪だ! あいつを……南雲を殺したっていうなら俺の我儘も原因の1つだ。謝って許されるような罪ではないのは重々承知している。だから、檜山を責めるというなら俺も一緒に責めてくれ!」

 

「そ、そんな!? 天之河君は俺らを助けるために戦ったんだし、そんな土下座して謝る必要なんてないって!」

 

「そ、そうよ! 悪いのは檜山のせいだって!」

 

 これも普段の行いの結果というものなのだろう。チンピラだった檜山なら遠慮なく責められるが、皆のヒーローである天之河は責められないみたいだ。

 

 今も土下座して謝罪を続ける天之河をどうにかしようと皆が右往左往しているさなか、後ろからやって来た白崎が周りの空気の悪さに居心地悪そうにしている檜山の元にやって来て問いただす。

 

「ねぇ、檜山君。なんで南雲君を奈落に突き落としたのか、その理由を教えてくれないかな?」

 

 その目からハイライトを消した白崎がワントーン低くした声で檜山に迫る。

 そんな普段の温和な彼女らしからぬ振る舞いに周りのクラスメイト達はギョッ! と驚いて振り返る。

 

「えっと、それは……」

 

 それは檜山も同様で、片想いの相手から凍えるような声で問いかけられ咄嗟に答えられず、口をまごつかせながら必死に言い訳を考えるも白崎はそんな檜山に強烈なビンタをお見舞いした。

 

 パン! 

 

 乾いた音が中庭に響き渡り、一瞬だが時が止まったかのように凍りつく。

 

 檜山の頬には真っ赤な手形の跡がくっきりと残っており。呆然と何が起こったのか理解が追いついていない檜山に涙目になった白崎が声を荒げて責め立てる。

 

「南雲君があなたに何をしたっていうの!? 死ななくちゃいけないほどのことをした? ねぇ、答えてよ……答えなさいよバカ!!!」

 

 自分の想いを……この怒りを口に出すたびに感情は押さえつけられなくなり、その目から涙は絶えず零れ落ちてゆく。

 そんな彼女を見て檜山の胸の内に湧いたのは反省や後悔ではなく、酷く醜い嫉妬の感情だった。

 

「あいつは……南雲の野郎は詐欺師だ! 白崎はあいつに騙されてるんだ! あんなオタク趣味の役立たずに白崎が近づくのはあり得ない!? きっとあいつに騙されてる……いや、脅されてるかなんかされてるんだろ! なあ!!」

 

 その顔からは狂気が滲み出ており、とても正気とは思えなかった。自分の中の世界が正しく、それ以外のものは全て間違っている。

 そんな考えを白崎に押し付けるように迫る檜山の前に八重樫が割り込んで入り、その鳩尾に拳を叩きつける。

 

「──っがは!?」

 

 もろに喰らった檜山は体の中の空気を全て吐き出したような感覚に陥り、空気を求めてパクパクと口を動かすも苦しみは消えずもがき苦しんだ。

 

「大丈夫香織?」

 

「うん、ありがとう雫ちゃん」

 

 姫を守るように立つ騎士と称するに相応しい行動を魅せる雫に一部の女子が胸を矢で撃たれたかのようにキュン♡っと悶える。

 

「ウググッ……、なんで、俺がこんな目に……」

 

 痛みで蹲りながら涙ながらに後悔とは違う、恨み言に近い言葉を吐きながら今の現状を認めようとしない檜山をどうするかという空気が流れ始めたところで八重樫がこの場に漂う異変に気が付く。

 

「ねぇ、ちょっと待ってみんな。今から変な事を言うかもだけど……、ここに私たち以外の存在がいる?」

 

「「「「「「???」」」」」」

 

 確かな確信はなく確かめるようにこの場にいる全員に向かって確認を取るが、皆が? を浮かべて八重樫の発言の意図が理解出来ていない。

 

「ごめん。私なんか変なこと言った」

 

「謝らなくていいよ雫ちゃん。今はこんな状況だもの、混乱しても無理はないって」

 

 そう未だ地面で情けなく涙を流し続ける檜山を横目に、親友である八重樫を慰める。

 

「そう……よね……、ごめんなさい香織。心配を掛けちゃって」

 

「ううん、私だって迷宮で雫ちゃんに迷惑をかけたんだし、お互い様だよ」

 

 互いに互いを支えあう美しき友情に、皆がほっこりとした暖かい気持ちになる。

 

「いや~、美しき友との支えあい。感動で涙が止まらないね~♪」

 

「「「「「「────っ!!?」」」」」」

 

 そんな空気に水を差すかのように現れる五条に、その場の全員が驚いて目を開く。

 

「あんた何時からここにいたのよ?」

 

「ん? さっき八重樫が言ったじゃないか? ここに自分たち以外の存在がいるって、そん時よりも前から気配を殺して檜山の醜態を見物させてもらってたよ」

 

 にこやかに答える五条に八重樫は憎たらしいとでも言いそうな顔をして五条を睨む。

 誰もがこの一触即発の空気の中で固唾を吞んで見守っていると、地面に横たわって泣いていた檜山が飛び起きて五条に(すが)り付いてきた。

 

「な、なぁ五条! さっきからいたってことはさ、今の状況を分かってるよな!? お前からも言ってくれよ。俺は悪くないって! 全部あの南雲の野郎が原因だって!!!」

 

 これが最後の救いとなると直感した檜山は地獄に舞い落ちた蜘蛛の糸を掴む勢いで助けを求める。

 だが、その蜘蛛の糸はただの幻に過ぎなかった。

 

「檜山さ〜、何を勘違いしてんのか知らないけど、別に俺はお前の味方って訳じゃねぇからな」

 

「はぇ?」

 

「お前を無罪にしたのはあの時のノリによるものだから、そこんとこ()()()()()()()()()()

 

 底冷えするかのような五条の冷徹な声に檜山は最後の救いである蜘蛛の糸が千切れたことを理解する。

 そうして檜山は救いがないことを理解し、完全に絶望した。そんな檜山への興味が失せた五条はその場からとっとと逃げ出そうとさり気なく歩きだす。

 

「ちょっと待って!」

 

 だが、そうは問屋は降ろさないとばかりに白崎が待ったの声を掛ける。あちゃ~と呟いて渋々と白崎の方へ顔を向ける。

 

「さて、何かな白崎さん。恨み言を言いたいなら聞いてあげるよ。まあ、聞くだけなんだけどね」

 

「そう……、なら1つだけ言わせてね。なんで檜山君を()()()()()()()()()()何の関係もない五条君が勝手に決めていいわけないよね」

 

 目の前の白崎からは強い怒りが感じられる。返答次第では襲い掛かってきても可笑しくはない雰囲気だ。

 周りのクラスメイト達はこの空気に耐え切れずに息切れすら起こしている者もいる。

 

 迷宮での一件もあって八重樫は勿論のこと、天之河と龍太郎も何時でも動けるように体を前に傾けている。

 

「ふむ、檜山もそうだけどみんなは1つ勘違いをしている」

 

「勘違い?」

 

「そう。俺は確かに強いよ。でも、この世界における法的権力は何1つ持ち合わせてはいない。あの時の俺の発言はあの場では効力があったかもしれないけど、その後における力は何も無いただの戯言の1つさ」

 

「どういうこと? 何が言いたいの」

 

 五条の発言の真意が未だよく汲み取れない白崎は、純粋にその意味を問いただす。

 

「あ~、つまり簡単に言うとだ。今現在、檜山がこうして自由に振舞えているのは国や教会があの一件を無かった……つまり、見て見ぬふりを決めこんだというわけだ」

 

「──っ!? どうしてそんな……」

 

「そんなの元の世界でもよくある印象操作の一環だよ。勇者一行の仲間が裏切りによって死んだのと、魔物によって死んだのでは民衆に与える影響(イメージ)は大きく変わってくる。それも、戦場で役に立たない無能ならば尚更ね……」

 

「…………」

 

 五条から語られる内容に絶句する白崎。

 

 だが、この五条は1つ騙している……否、黙っている事がある。聡明な者なら気づいている者もいるかもしれないが、白崎が五条に(たず)ねた言葉の裏側には、何故勝手に無罪に(檜山の味方を)したのか? というものがあった。

 

 五条がやったのは相手の質問を否定し、それに注目させ白崎の質問の回答を明確に答えずに悪いのは別の奴だ! という詐欺師のようなミスディレクションを仕掛けたのだ。

 案の定、白崎はもはや五条に何も言えず、八重樫や天之河も口を挟めずにいた。

 

(計画通り……!!)ニヤッ!? 

 

 内心で某死神のノート使いの笑みを浮かべる五条。仮にあの場で「だからノリだって言ったじゃん。別に友達でもない奴の為に怒るとかしないから俺は」なんて口にしようものならどうなるか? 

 ただでさえ檜山のやらかし発言のせいで評価がマイナスの領域に入っているというのに、これ以上の悪評は流石に勘弁したい感じだな。

 他人の評価なんぞに興味はないが、噂が広がって第一印象が最悪という後々の足枷になるような面倒はごめんだ。

 

「さて、そんじゃ俺は質問に答えたし、ここいらでおさらばするとしよう」

 

「待って、まだ五条君には言いたい事があるの!」

 

「まだ何か恨み言が? 言いたいのは1つだけって話じゃなかった?」

 

「そうだね。恨み言っていうか、五条君への聞きたいことは1つだけだよ。けど、もう一つ恨み言じゃなくて頼み事ならあるの!」

 

 頼み事? 一体何を……!? ああ、そういうことか。まったく、面倒なことを……というか、無駄なことをと言うべきか。

 

「まあ、何となく想像はつくけど言ってみな。同じクラスメイトのよしみで聞くだけ聞いてやるよ」

 

「──っ、お願いします。南雲君を! 南雲君を助けてあげてください。まだ彼はまであの迷宮に取り残されたままなの! だから……」

 

 目に涙を浮かべて必死になって頼み込んでくる白崎にクラスの誰もが白崎はやはり南雲に特別な感情を抱いているのだと理解した。

 

「私からもお願いよ五条君。香織は本気で南雲君が生きてるって信じてるの、だから貴方にお願い……いいえ、依頼するは。内容は奈落に落ちた南雲君の救助要請。冒険者ならこの依頼は受けてくれるよね?」

 

 白崎を援護する形で間に入った八重樫はお願いではなく依頼という名目で五条に助けを求める。ご丁寧に冒険者ならとちょっとした挑発も込めて。

 

「はぁ~、確かに俺は冒険者だよ。けど、今の俺が冒険者としてどういう立ち位置にいるのかを理解してないよね2人共?」

 

「どういうこと?」

 

「つまりだ。こういうことさ」

 

 首にかけていた金のプレートを見せる。それを目にした白崎はキョトンと首を傾げる。

 

「金色のプレート?」

 

「ああそうか、冒険者の意味は知っていても、この世界の冒険者のシステムの仕組みは知らないのか」

 

 面倒臭そうに頭をかく五条はこの場の全員に分かりやすくこの世界の冒険者システムを教える。内容は前の世界のアニメなんかで出てくるものによく似ているため、白崎を含めて全員がすぐに理解してくれた。

 

「じゃあつまり、五条君は冒険者の中でも最高位の金級冒険者になったってことね」

 

「うんうん、理解が早くて助かるよ」

 

「それで、それがどうしたっていうのよ?」

 

 感心したように頷く五条に続きを早く話せと言わんばかりの態度で催促する八重樫に焦らない焦らないと宥めつかせて話の続きを口にする。

 

「つまりだ、今の俺はギルドという組織の最高位の立場に立っている。そんな人物に対してクエスト(仕事)を依頼するってことは当然、それ相応の()()が必要になってくる」

 

 そうやって指で()を描く五条に、ちっ! と舌打ちをしかける八重樫に現実的な話に顔を伏せる白崎の2人を見て、勇者である天之河が前に出る。

 

「待ってくれ五条! お前に依頼するのに金が必要だというのならば俺が払う。だから、香織のお願いを聞いてやって欲しいんだ! 頼む!」

 

 必死な顔をして頭を下げる天之河の反応を見て意外そうな顔をする五条。

 

「うん? 光輝ってさ、そんな南雲関連のことで必死になるようなキャラだったけ?」

 

「……そうだな。確かにこの世界に来る前の俺だったら……、いや、南雲が死んだ原因が俺にあると突きつけられてからようやく分かったんだよ。あいつが死んだのは現実をちゃんと見ていなかった俺のせいなんだって。そしたら、あいつがこの世界にやってきてからの行動はちゃんと正しかったって素直に認めることが出来た。だから、俺はあいつが生きているかもしれないんだったら助けないといけないんだ。でも、今の弱い俺じゃ助けられない。なら、助けられる力を持つ者に頼むのが今の俺に出来る正しい行動なんだって思うんだ」

 

 頭を下げたまま自らの行いを反省するように語る天之河の独白に納得した五条はその依頼に対しての返事を口にする。

 

「あっ、ごめん。普通に嫌だから体よく断る為にお金の話をしただけなんで、実際に持って来られても困る」

 

 平然と断るのが五条クオリティといえるだろう。これには天之河を含めて全員がポカーンっと呆けた面で固まった。

 

「えっ、なんで? 普通今の流れでそんな感じに断る?」

 

 五条のあまりの態度に先程までの主人公っぽかった雰囲気も抜け落ちて、つい普通に問いただしてしまう。

 

「あ~、だってほらさ、俺って確かに強いよ。うん。そこは自他共に認めるくらいにはね。でもねぇ、死んだ人間を探す依頼は普通に嫌だし……」

 

「……はっ?」

 

 五条の歯に衣着せぬ物言いに、再び目のハイライトオフのヤンデレ系キャラにジョブチェンジした白崎に『あ~、やっぱりこの子そっちの素質があるわ』と内心で面白がっている。

 

「そっか、香織はまだ南雲が生きてるって本気で信じてるんだ」

 

「当たり前じゃない。私はまだ……まだ南雲君が死んだとこを見ちゃいない! だったら、まだ生きている。そう信じているの!」

 

 魂からの偽りなき言葉だ。絶対に死んだとは微塵も思っていない本気の言葉に「厄介だな」と零す五条は指を3本立てて現実を教え込む。

 

「いいかい香織? 南雲が生きているなんて言ってるけどそれはあり得ない。その理由は3つ。まず1つ、俺もその奈落ってのを見てきたけど、あれはパラシュート無しで落ちて助かるような深さじゃない。仮にあの下が湖みたいに水があっても助からない。その理由を詳しく知りたい人はテイコウペンギンの高度1万mの高さから落ちても助かる方法とは? を検索して再生してくれ♪」

 

 突然のお気に入りプロットアニメの番宣に「えっ、なにそれ?」と疑問を浮かべる人もいるかもしれないが、ひとまず一回見てみよう。

 

 https://youtu.be/Tbg7LxmvAOk

 

 見てくれた? なら話を先へと続けることにしよう。

 

「ん? 何か可笑しな時間が流れたような?」

 

「は~い、気にしない気にしない。さっさと2つ目を説明させてもらうよ。2つ目は生産職の南雲じゃ魔物だらけの迷宮じゃ生き残れない。もし奇跡が起きて1つ目の理由をクリアしたとしても、まだ魔物の弱い浅い階層ならともかく、ベヒモスが出た階層よりも下の階層じゃ雑魚の類であっても倒すことは出来ないでしょ。まあ、生死の境目を彷徨って奇跡的に覚醒なんかしたら話しは別なんだけどね♪」

 

 自分で可能性の話をしたのにナイナイと手を振って自分で否定する。

 

「そして、落下もクリアして魔物をクリアしたとしても、まだ3つ目の理由が残っている。それは、ズバリ! 食料問題だ。あの事件から今日まで何日経った? 少なくとも、水さえあれば人間は1ヶ月は食事しなくても平気だろうけど、極限状態のなかで断食は死に直結するよ。そんな中で生きている可能性は0だ」

 

 説明のために立てた3本の指を畳んで0にする五条に、分かっていた現実をハッキリと言われて落ち込む様子を見せる白崎と天之河は何も言えなくなっている。

 

「んじゃ、反論とかも特に無さそうだし俺は行くわ」

 

 んじゃねぇ♪ っと去って行こうとする五条を引き止めるように白崎が声を大にして叫ぶ。

 

「待って五条君! 確かに、南雲君が生きている可能性なんてないかもだけど……、それでも! 私まだ南雲君が生きている……、そんな気がするの!!」

 

 南雲の生存が絶望的状況だと聞いても、これだけは決して譲れないといった確固たる信念が白崎にはあった。

 

「ふ~ん、随分と南雲が生きているのを信じているんだ。これだけ懇切丁寧に説明してあげたってのに、まだそんなこと言うのなら、そりゃもう愛だね♪」

 

 ニヤニヤしながら白崎を見る五条は機嫌よく話を続ける。

 

「まあ、もし仮に香織が言うように南雲が生きているんなら、そりゃもう魔人ブウに殺されたと思われた悟飯ちゃんがアルティメット化するぐらい強くなってるかもね♪」

 

 冗談めかして言う五条は最後に「まあ、無駄かもしれないけど、気が向いたら南雲が生きている痕跡探しくらいはしといてやるよ」と言い残して去っていった。

 

 そのすぐさま後に城の衛兵を引き連れた愛子先生がやって来て、五条を探していると言われた全員が五条はついさっき何処かへ去って言ったと告げると、愛子先生はその場にヘタレ込んで「もう~、五条ちゃんのバカ~!!!」と泣き叫んでしまった。

 

 




次回は番外編のようなものを書きます。
まあ、奈落に落ちたハジメ視点の内容なんですけどね。

次のIFで五条が飛び込む世界

  • ゼロの使い魔
  • 七つの大罪
  • スレイヤーズ
  • オーバーロード
  • HUNTER×HUNTER
  • 蜘蛛ですが、なにか?
  • この素晴
  • ダンまち
  • 転スラ
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