バン!ババン!!と迷宮から、否、この世界からは聞こえる筈のない銃撃音が暗い迷宮内に響き渡る。
更にその後にはズドン!!と迷宮内で爆弾でも暴発したのか!?と思うような爆発音が続いて鳴り響いた。
「ふぅー、これでここらの魔物は全滅したか」
「ハジメ、こっちの方も粗方片付いた」
およそ人外魔境のオルクス大迷宮に似つかわしくない男女がまるで大掃除を終えたかのように気楽に会話しているが、その周りに飛び散っている無数の魔物の死体がその異常さを物語っている。
「そんじゃ早速こいつらで飯にすっか」
「了解」
その場に座り込んで魔物の死肉を加熱せずにそのまま貪り喰らうハジメと、そのハジメに抱きついて首筋に嚙みついて血を吸うユエはある程度腹が膨らむと再び立ち上がり迷宮の奥へと歩を進める。
あの日、勇者一行のレベル上げという名目で迷宮へ潜り奈落へと落ちてしまった時から数えて何日が過ぎたのだろうか?
迷宮内では日の光は一切差さず、今が朝なのか夜なのかも分からないが、少なくとも3日以上は過ぎているのは確実だろう。
今頃クラスメイト達は…、いや、あのいつも自分に対して積極的に関わってきたあの女の子はどうしているのかと、ふと唐突に脳裏に浮かんできた。
「むう、ハジメ今他の女のことを考えていた」
「………」
何故分かったと内心で思いながら、下手な言い訳をすれば火に油を注ぐ結果になるのは目に見えているので、無言でユエの頭を撫でながら軽く謝罪する。
「ごめんって、俺が悪かったよ」
「うん。よろしい♪」
頭を撫でられて上機嫌となったユエは素直にハジメの謝罪を受け入れた。
ふと、先程ハジメが考えていたことが気になり、興味本位で尋ねてみた。
「ハジメがさっき考えてたのって前に言ってた仲間のこと?」
「ん?まあ、そうだな。仲間ていうよりただのクラスメイトっていう名の集団だがな」
特に思い入れもなさそうに答えるハジメにふ~んっとおざなりに返答するユエはもっと具体的な質問を繰り出す。
「っで?ハジメが考えていた女ってのはどんな女?」
さっきの謝罪で満足していなかったユエはその尋ねている女と全く同じような目をしてハジメに詰め寄る。
「うっ……、はぁ~、分かったよ。俺が考えてたのは白崎って奴のことだ。どういうつもりか、俺にいつも引っ付いてきて世話を焼いてくるお節介焼きな奴だ」
「………」
じーっと『それって完全に惚れてるじゃん』という思いを込めた目線をハジメにぶつけてくるユエに何も言えずただ黙ってその視線を受け流し続けるハジメ。
そんな2人の気まずい空気を切り裂くかのように魔物の群れが襲い掛かって来た。
「ほら、来たぞユエ!」
「ん。分かった。でもハジメ、なんだか喜んでない?」
「……ソンナコトナイデスヨ」
片言になりながらも返答するハジメを見て、はぁっと溜息をワザと大きく吐きながら目の前に迫りくる魔物に対して魔法を構築する。ハジメも愛用の銃を装備して狙いを魔物の方へ向ける。
そこから始まったのは戦闘と呼べるものではなく、ただの蹂躙であった。これは襲ってきた魔物の群れが決して弱いからではない。むしろ、ベヒモス程度ならば容易く狩り殺す程の強さを持ち合わせていただろう。
ならば何故か?答えは簡単である。単純にハジメとユエが強すぎたということだ。
いかに鋭い爪や牙を持っていようと、それを敵に突き立てる前にハジメの銃弾で撃ち殺される。ならば魔法やスキル等による遠距離攻撃はどうだ?それも無駄だ。ユエの魔法による超高火力の火炎に飲み込まれて返り討ちとなる。
こうなれば魔物に出来ることは少しでも抵抗して敵の体力を削ることか、尻尾を巻いて逃げ出すことくらいだろう。
魔物の群れと遭遇して僅か1分で決着は着いた。勿論、ハジメたちの圧勝という内容でだ。
また再び辺りに広がる魔物の群れの死体から役に立ちそうな能力を持つ魔物の肉を剝ぎ取ってゆく。数が数だけに持ち運ぶ量にも限度があるし、かといってさっき飯にしたばかりなのに、こんなマズい肉を腹が膨らんだ状態で食べられるのかと問われればNO!と断るしかない。
「そういえば、ハジメのクラスメイトってどんな人達だったの?」
剝ぎ取り作業中にユエが唐突に気になったことをハジメに問いかける。
さっきの問いかけよりも答えやすいぶん、ハジメとしては別に話しても構わなかったが、言うほど語れる程の付き合いをした人物はおらず、精々がクラスの中心人物である天之河や八重樫に龍太郎と白崎の4人と、異端児とも呼べる程のハチャメチャな性格とそれを突き通せる実力を持つ
まあ、他にもクラスのいじめっ子である檜山たちの話も出来るといえば出来るのだが、仮にも惚れた相手にいじめっ子にいじめられていたなんて情けない話を口には出来ない。
「いいけど、俺はクラスじゃ仲間外れにされてたから語れることなんて少ないぞ?」
「それでもいい。ハジメのことは沢山知りたいし、そのハジメを貶した連中は別の意味で知りたいから……」
何か不穏な言葉を呟いたユエだったが、それで何か自分に不利益が出る訳もないしと思い至ったハジメはポツポツと語りだす。
「―――という感じだな」
「ふ~ん。そのクラスメイト全員戦争を舐めてるね」
「ああ、そうだな。といっても、戦争なんて過去の映像やニュースくらいでしか知ることなんてなかったからな。それに、異世界の戦争なんて誰も経験したことがなかったんだ。仕方ないといえば仕方ないさ」
確かに、現代人にとって戦争なんてものは遠い世界の存在だ。ましてや、異世界での戦争なんて元の世界の誰もが経験したことのないものに警戒しろというのが無理な話である。
「いや、そういや1人だけいたな。まあ、アイツは警戒して参加を拒んだ訳じゃないと思うが……」
「……? 誰のこと」
「ああ……、俺のクラスメイトの1人で、五条悟っていう名前の奴でな。何というか異質な奴だった。天之河も文武両道で勇者っていう充分漫画のような存在だったけど、アイツはそれに輪をかけて変な奴だった」
「ハジメがそこまで言うなんて。……一体どんな人だったの?」
「そうだな。まず第一印象からして普通の奴とは違うって感じだったな。白髪なんて珍しい髪だったし、常にサングラスをかけていたしで変な奴だった」
「白髪……」
じーっとユエは南雲の頭を……正確にはそこに生えている髪を凝視する。
「そいつもハジメと同じで魔物の肉を食べてたの?」
「いや、そんな筈はないだろう。元の世界に魔物なんていなかったし、神結晶もないから……、いや待てよ。もしかしてアイツ異世界転生2回目なんじゃ……」
思い返してみれば異世界へ急に転移させられたというのに、アイツは動揺なんか一切見せずに冷静だったし、この国の騎士と闘って一方的に倒していた。
こうして考えてみると、どこかラノベの主人公っぽい動きだった気がする。
「マジか……。そう考えれば色々と納得ができる……」
驚くべき驚愕の事実に打ち震える南雲。
まあ、確かに異世界転生は2度目だが、まさか元の世界が最初の異世界転生先とは露程にも思ってはいないだろう。
面白かった、もっと似たようなのが見たいという方は高評価と感想をお願い致します。
五条「俺が一切出番無かったし、もうしなくてよくね?」
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