呪術師という職業で世界最強!   作:リーグロード

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修行開始

 結局、あの決闘は五条の勝ちということで決着がついたが、その後のギルドの床の修繕の為に邪魔だと支部長に言われて外に放り出されちゃった五条とメグミは仕方なく迷宮に向かうことになった。

 

「まったく酷いよな〜。俺はただ実力差ってのをハッキリ分かりやすく伝える為に床にメリ込ませたっていうのに、あんな怒鳴り声上げなくてもいいだろ?」

 

「でもあれはやり過ぎ。正直言ってあのバカでも可哀想になるほどに哀れだったぞ」

 

 呆れた顔で五条を見つめるメグミだったが、正直なことを言うとあのバカの無様な姿を見て胸がスッとした気分であった。

 

「そういやさ、なんでメグミはあいつと喧嘩してたわけ?」

 

「それは……」

 

 あのバカと喧嘩した理由は、あいつが酒を飲んだ勢いで五条を噓つき呼ばわりしたから。

 それに対してメグミが食って掛かったのだ。そこに後からタイミング良く五条が割って入っていたのだが……。

 

「別に言う必要はないだろ」

 

「ありゃま(笑)」

 

 照れているのか素直に話そうとはしないが、なんとな~く察している五条はおどけたような声を出しながら、それ以上は踏み込んでいかなかった。

 

「ところで、マルク達は何処にいんの? ギルドに居たのもメグミ1人だけだったし?」

 

「そりゃ、あんたが合流する時間と場所を決めてなかったからだろ。だから、マルクの兄さんは今は他所でバイト中で、ノバラとユウジは兄さんの家で面倒みてもらってる」

 

「ああそっか。んで、メグミがギルドにいたのは俺が戻ってくる可能性が一番高いから。そうでしょ♪」

 

「まあ、その通りだけど。その名推理したみたいなドヤ顔は腹立つからやめてくれます?」

 

「無理! っていうか、メグミ。ちゃんと俺の言いつけ通りにしっかり飯食ってたんだね♪ 頬っぺたなんて最初会った時はガリガリだったのに、今はまだちょっぴり骨ばってるけど、子供らしいぷにぷに頬っぺだ♪」

 

「や~め~ろ~!」

 

 嫌がるメグミを無視して両手で頬をムニムニと揉む五条。暫く触り続けてようやく飽きたころにメグミを解放する。

 

「さて、メグミの身体づくりもだいたい合格点ぐらいは出してもいいし、こっからは本格的な修行に移行するとしようか?」

 

「……っ、はい!」

 

 ようやく始まる修行に決意を固めたような顔をしたメグミは力強く返事した。

 

「それじゃ、まずは男の子が大好きなあそこ行っちゃう?」

 

 そうして五条に連れられて向かった先は、冒険者御用達の武器屋だった。

 

「ここに来た理由ってもしかして……」

 

「そう。メグミの専用武器を作ってもらいに来たんだよ。ちなみに、俺のこの首飾りになっているプレートを作ったのもここの武器屋の店主の知り合いなわけ」

 

 武器屋に入ってみると、右も左も剣や槍や弓に杖などが所狭しと置いてあった。

 

「おお〜!」

 

 やっぱり男の子だからか、メグミはその辺にあった武器をジッと見つめて触りたそうにしていた。

 

 すると、突然店の奥からこちらに向かって怒鳴り声が叩きつけられる。

 

「コラァ!! ここは武器屋でガキ共が来る場所じゃねぇ!! さっさと帰って木の棒でも振り回してろ!!」

 

 そうして出ていたのはドワーフかと思うぐらい短い背丈に白いモジャっとした髭を生やしたおっさんだった。

 

「おいこらおっさん。あんま失礼なこと言うなよ。こちとら客だぞ。神様と思って接客しろよ」

 

「はっ、確かに武器を買えるほどの身なりはしているようだが、そんなひょろっこい体でウチの武器が持てんのか? 言っとくがなウチは家の飾り付け用の武器は置いてねぇんだ。そんなのが欲しけりゃ別の武器屋に行くんだな」

 

 しっしっと追い返す仕草にムカッ! ときた五条は、無造作にその辺に置かれていた大剣を握ると、それをまるで小枝を振り回すように片手でブン回す。

 

「なっ!? て、テメェ!! こんな狭い所でそんなモン振り回すな!! このバカ野郎が!!!」

 

 目の前で振るわれる大剣にビビりながら、いきなり非常識な行動に出る五条を叱りつけるが、当の本人である五条は笑いながら大剣を振り回し続ける。

 

 ちなみに、店の中の物には一切傷つけたり当てたりなどはしていない。

 

「なあ、流石に鬱陶しいから止めなよ五条さん。そっちのおっさんもさっさと謝った方がいいぜ。この人怒らせてタダで済んだ奴はいないから」

 

「あ~も~、冷静だなメグミは……。しょうがない。ここは大人として相応の態度をとるとするよ」

 

 やれやれといった態度で大剣を元あった場所に戻して、床に倒れ込んで尻餅ついているおっさんに近づいてゆく。

 

「さて、これで俺が見た目通りのヒョロヒョロ野郎じゃないってことは証明出来たわけだけど、どうする? これでもまだ武器が売れないって言うんなら、俺としても良心が痛くなるようなとびっきりの方法で実力を証明しなければならないけど……、どうすんの?」

 

 もはや交渉というよりも脅しの領域だが、自分よりも明らかに年下の小僧にいいように扱われていることに腹を立てて、ぐぬぬぬ!!! っと悔しそうに唸っているおっさん。

 

 それを見てケラケラと笑い飛ばす五条を見てこれ以上好き勝手にさせていると買えるものも買えないと判断したメグミは笑っている五条を後ろに下がらせて変わりに交渉を始める。

 

「あのさ、今回オレの武器を作ってもらいに来たんだけど、これ以上ゴネてたらあの人マジでトンデモないことしでかすからいい加減に折れた方がいいぜ」

 

「……仕方がない。ちなみに、そこのアホはワシが断っていたら何をするつもりじゃったんじゃ?」

 

「え? そりゃ、ここに置いてある武器を何本かかっぱらって城に投げつけてやろうと思ってたけど」

 

 聞けば冗談としか思えない内容だったが、その顔からは本気の色が見え、五条をよく知っているメグミは内心で『さっさと交渉を交代して良かった』っと安堵の息を吐いていた。

 

「はぁ、まったく。何とも面倒な客が来たもんじゃ。それで、武器を買うんじゃなくそこの小僧に武器を作って貰うのが貴様らの要件か?」

 

「そうそう。これから迷宮に潜るからさ、メグミに扱いやすいナイフ位の大きさの武器を作ってほしいんだよ。あっ、支部長からここで専用の武器を作れるってのはもう既に聞いてるから」

 

「っち、あの野郎が……。ついこないだから妙な依頼を頼んできて、今度は珍妙な奴らまで送り込んできやがったな。……んん?」

 

 ジロジロと五条を見定めるように観察するおっさんは、五条の首にぶら下がっているプレートに目がいった。

 

「ま、まさか……。オメェさん最近噂になっている凄腕の冒険者か?」

 

「おっ、嬉しいね。こうして俺の強さを知ってくれる奴がいるなんて」

 

 ヘラヘラと肯定する五条に対して、オッサンは先程までとは打って変わった態度で接してきた。

 

「おぉぉ! なら、頼みがある。お前さんらの依頼は優先的に引き受けてやるからワシの願いを聞いてくれ!」

 

 縋りつくように頼み込んでくる様相は悪霊に取りつかれた海外のホラー映画の俳優さながらの迫力だったが、それだけで怯むような五条ではなく、虫でも払うかのようにあっさりと投げ捨てる。

 

「ったく、何急に? でもま、頼み事で俺を頼んのは間違っちゃいねぇぜ! こちとら最強を名乗ってんだ。そんじょそこらの依頼なら片手間でクリアしてみせるぜ」

 

 決め顔でそう声高に宣言する五条に、おっさんは感動したように「おおぉぉ!!」っと涙を流して跪く。

 

「では、お前さんが仕留めたという伝説の魔物ベヒモスの素材。ワシはそれが欲しいんじゃ!」

 

 なるほど、確かに武器屋なりなんなり伝説とつくような魔物の素材は誰であろうと喉から手が出る程欲しがるはずだ。

 

「オッケー♪ そんじゃ俺が今日あたりサクッと狩ってきてやっから、メグミの武器の件はよろしくな!」

 

「おお!! 了解したぞ! それじゃ小僧、早速貴様専用の武器を作ってやるから、奥でお前さんの身体を調べさせてもらうぞ!!!」

 

「えっ? ちょっ、待て!!!」

 

「問答無用じゃ!!!」

 

 メグミの悲鳴も無視して、奥の方へと引きずり込んでゆくおっさん。まあ、10分もすれば出てくるだろう。

 

 その間に、異世界の武器で面白そうなものがないか物色して時間を潰すとするか。

 

「っとはいっても、置いてあるのは剣や盾に弓や杖といったゲームと似たり寄ったりの品しかねぇな」

 

 手に取ってみても何か不思議な力を持っている訳じゃないな。ガッカリはしたが、ベヒモス程度の魔物を伝説扱いしているくらいだし、期待はあまりしていなかったけど。

 

「おーい! 小僧の採寸は終わったぞ。コイツの体格ならナイフもいいが牽制目的でムチなんかも用意しておいた方がいいだろう」

 

「そっか、確かにナイフは扱いやすい分リーチが短いから相手に近づかなきゃいけないけど、メグミはまだ体もできていないからスピードで相手を翻弄するってこともできないし、ムチは確かに今のメグミのサブウェポンとしては採用してもいいかもね♪」

 

 取り敢えず、ナイフと一緒にムチの制作も頼むことにした。その後、服が妙にくたびれているメグミが奥から姿を見せる。

 

「あのクソオヤジめ、無理矢理服を脱がせにきやがって」

 

 恨めし気な目でおっさんを睨むメグミだったが、とうのおっさんはそんなメグミのことなんぞ気にせず、ベヒモスの必要な部位やら、どこどこをあまり傷つけずに獲ってきてくれやらと細かく依頼するのに夢中になっている。

 

「はいはい分かった。そんじゃ、依頼内容は以上ね。明日の朝までには終わらせとくから、武器の製作はよろしくね~♪」

 

 用事も終わらせたことで武器屋から出て行き、その後、メグミを担ぎ上げて、速攻で迷宮に到着する。

 

「俺思ってたんだけど、あんたって急に現れたり消えたりするからてっきり隠密能力の高い魔法かなんかを使ってると思ってたけど、まさか瞬間移動を使ってたとは驚きだった」

 

「いやいや、俺が急に現れるときは隠密で隠れながら近づいてるからメグミの考えは当たってるよ。でも、消えたりするときはこんな風に瞬間移動モドキの超高速移動してるだけ☆」

 

 イラッとするようなドヤ顔で説明してくる五条だったが、その説明を聞いてもメグミは相変わらずトンデモないなとしか感想はでなかった。

 

「でもこんな急に迷宮に来て俺の修行はどうすんだよ? 武器が出来るまで修行は無しなのか?」

 

「そこんとこは抜かりがないから大丈夫だよ。ほら、これが今日メグミが使う武器さ♪」

 

「っ!? なにこれ!!!」

 

 そう手渡されたのは少し錆びついた包丁だった。見た目はただの包丁であったが、柄を握ってみるとその歪さがハッキリ分かる。

 まるで死という概念が呪いのように手に付着している。そう思わせるほどな不気味さがこの包丁にはあった。

 

「驚いた? それね、呪いの武器で通称呪具と呼ばれる物でね。その包丁の名前は山姥の人斬り包丁。本来は人間種への特攻持ちで魔物に対して使う物じゃないんだけどね。今回は特別、それは見た目は錆びついてるけど切れ味は鋼の剣に負けないレベルだよ」

 

「へぇ~、凄いんだな」

 

「あと、言い忘れてたけど、それ呪われてるから下手な素人が持っていたら精神が汚染されるから気をつけてね」

 

「──―っ!? いや、先に言えよ!!!」

 

 いきなり危険物だと説明されて手に持っていた包丁を放り投げる。

 それを五条は危なげなく地面にぶつかる前にキャッチする

 

「おっとっと、危ないな。これ一本で金貨30枚分くらいの価値があるんだぞ」

 

「えっ、マジで?」

 

「うん、おおマジさ。呪具ってのは結構貴重だからね。それも山姥なんてそれなりにメジャーな逸話の呪具なんて誰もが欲しがるからね。それなりに価値も上がるってもんよ」

 

 五条の手のなかに収まっている錆びついた包丁を見て本当にそんな価値のある物なのかと訝しげに睨むメグミだったが、さっきあの包丁を握った感覚は本物だった。

 

「なんで俺にそんなモン持たせんだよ?」

 

「え? だって武器がなくっちゃメグミじゃ魔物殺せないでしょ。それに、確かにこれは使い続けると精神イカレちゃうけど、そうならないために今日メグミ専用の武器を注文したでしょ」

 

 五条の説明になるほどと納得する。つまり、あの包丁は武器が出来るまでの繋ぎで、多少使う分には問題ないといった感じでいいのか。

 

「というわけで、納得してもらったんなら、はい!」

 

 包丁を渡されると同時に、五条が指さす方向を見るとコッチ対して敵意の籠った視線を向ける存在がいた。

 

「ガァァァァ!!!」

 

 只今迷宮内で魔物と遭遇中です。

 

「噓だろぉぉ!!?」

 

「グガァァァァ!!!」

 

 ゴブリンのような魔物に追い掛け回され叫びながら逃げ回るメグミに五条は両手にチアガールの持つ黄色いポンポンを持って『がんばれがんばれ♪』と応援という名のイタズラをしてきやがる。

 

「ふっざけんな!!! いきなりこんな状況に放り込まれてどうにか出来ると思うなよ!!」

 

「グガァ!!!」

 

 走りながら五条への怒りを叫ぶメグミだったが、それに答えるのは魔物のみで、五条はポンポンを外してニヤついた顔でコッチを見るだけだった。

 

「ああクソ! いいよ、やってやる。あんたの望んだ通りに動いてやる! けどな、これで死んだらオレはあんたを恨むぜ!」

 

 逃げ回ることを諦め、ようやく戦う覚悟を決めるメグミは包丁を構えて後ろから迫ってくる魔物を睨み付ける。

 

「ゴアッ」

 

 突然獲物の雰囲気がガラリと変わった様子に警戒の色を見せる魔物だが、所詮は迷宮の入り口付近に出現する魔物。知恵と呼べるようなものはなく、本能のみでメグミに飛びかかる。

 

「舐めるなよ!」

 

「ギャン!」

 

 飛びかかってきたゴブリンの攻撃を避けると同時にそのガラ空きとなった胴体にすれ違いざまに包丁を突き刺す。

 本来ならばこの程度の傷では死には至らないのだが、呪具の力によって傷口が呪力によって広げられゴブリンは血の泡を吹きながら倒れ伏した。

 

「……やったのか?」

 

 初めての生死を賭けた死闘のあっけない終わりに疑問を抱くメグミだが、その死闘を見ていた五条がパチパチと拍手しながら近寄ってメグミの頭を撫でてくる。

 

「congratulation、よくやったねメグミ。殺し合いに過度な想像を持ってるかもしれないけど、実際はこんなものさ。大抵の生物は体に穴が開けば瀕死になるし、メグミに渡したあの包丁ならこの辺りの弱い魔物ならかすり傷程度で死に至る呪いが付与されてるからね。……で、どうだい? 初めて生き物を殺してみせた感想は?」

 

 すぐそばで倒れているゴブリンを見ながら自分の手を見る。まだ自分が殺したという実感がまるで湧かないが、それでも自分が勝ったという実感は強く感じる。

 

「よく分からない。……けど、結構俺って強かったんだなって……そう思った」

 

「うんうん、自尊心が天狗の鼻になってて草wwwww」

 

 言っている意味はよく分からないが、バカにされているというのは理解できる。

 

 それに怒って今も頭を撫でまわす五条の足に蹴りを叩き込むも、五条は笑って耐えて逆に蹴ったメグミの方が涙目になってしまった。

 

「いってぇ~、なんだよ!? あんたの足は鉄でできてんのか?」

 

「ふっふっふ、そりゃ俺ってステータスは公開してないけど勇者なんかとは段違いのスペックだからね……。あれ? そういや俺って戦争に無理矢理参加させられたくないからステータスを非公開してたってのに、なんか城に呼ばれて戦争に参加しろって言われたし、……うん。やらかしてるな俺って」

 

 いつの間にかやらかしてる自分の行動を見つめ直すが、数秒後に「ま、何の問題もないし別にいっか♪」っと考えるのを放棄した。

 

「さて、一応言っておくけど、メグミはまだまだ弱いよ。俺と比較してのレベルじゃなくてあの冒険者ギルドに居た冒険者と比較してのレベルだ。まず、1つ目の問題点は自分の武器をいつまで死体に突き刺したままにしているのかな?」

 

「あっ!」

 

 そう、あの包丁は未だゴブリンの腹に突き刺さったままで、そのまま放置され続けていたのだ。

 

「今はあのゴブリン1匹だし、俺がいるから全然問題はないけど、戦闘がいつ始まるかも分からない状況下で武器をずっと手放し状態にしとくのはアウトだよ。これで1つ賢くなったね~♪」

 

 更に撫でる力を強めてグワングワンっと首を揺らしてくる。ムカッ腹は立つが、五条が言っていることは正論だし、今度からは気をつけようと心に刻み込みながら、いつまでも頭を撫でまわし続ける五条の手を振り払ってゴブリンの死体から包丁を回収する。

 

「あれ? この包丁血が全然ついていない?」

 

「ああ、それはね、山姥ってのは人を喰らう伝承を多く持っていてね、その山姥が持つ包丁も人を喰らうという呪いのおかげで刃の部分についた血糊も吸い込んでくれるお陰で、お手入れなんかが楽々の優れ物なんだよ」

 

 随分と物騒なお手入れもあったものだ。とはいえ、武器の手入れなどの知識が全く無いメグミにとってはありがたい機能だった。

 

「1つ言っとくけど、それはあくまで新しい武器が出来上がるまでの貸しなんだから、今後の為にも今のうちから武器の手入れの仕方は覚えとけよ」

 

「じゃああんたが教えてくれよ」

 

「ぶっぶぅ! それは残念だけど無理かな。ほら、俺って武器を装備しなくても強いからね。だから後片付けとか面倒になるようなことは一切覚えなかったのさ♪」

 

 口をとがらせて不正解音を鳴らしながら腕をバツにして大人として情けない……というかしょうもないというか。

 とりあえず、今日の修行が終わって地上に戻ったら誰か適当に酔っぱらっている冒険者なんかに話を聞くことにしよう。

 

「さて、メグミが弱い理由の2つ目は戦闘中の思い切りの良さは褒めてあげるけど、それで武器の特性を生かしきれなければダメだね。包丁なんて刃渡りの短い武器をぶっ指すなんてナンセンスだぜ!」

 

 そう言って五条がメグミの手から包丁を抜き取ると、その場で数回素振りをして感触を確かめた後、パンパンと手を叩くと奥の方から数匹のゴブリンが襲い掛かってきた。

 

「「「グガァ!!!」」」

 

「それじゃメグミよく見てるんだよ。こういうのは力はいらないんだ。とにかく斬れればいいわけだから、的確に急所に向けて素早く武器を振る」

 

 その次の瞬間、包丁を持った五条の手が消えて、変わりに襲い掛かって来たゴブリンの首と手首と足の合計15箇所が一瞬の間に切り裂かれ鮮血が舞い散り、3匹は襲い掛かって来た姿勢のまま地面に転げ伏した。

 

「これが正しい包丁くらいの刃渡りの武器の使い方だよ。コツとしては力任せではなく素早さを意識して斬ることと、傷口は浅くても大量に血が出る箇所を狙うことかな」

 

 この人、何が一切覚えなかっただ! 今の一連の動作なんか誰がどう見たって達人の動きだったろうが! 

 

 圧倒的なまでの実力の差に拳を握りしめるメグミだったが、いつか自分もあの領域に達するまでの強さを手に入れると心で誓いを立てる。

 

「さっ、今のお手本をちゃんと見てたんなら、続きはメグミがやってみよっか!」

 

「は? 続きって……?」

 

 またさっきみたいに包丁を渡されると、今度は2匹のゴブリンが舌を出しながら迫ってきていた。

 

「チックショー!!! いいぜやってやる! 10匹でも20匹でも連れてこいや!!!」

 

 自暴自棄になったかのように叫ぶメグミに狙いを定めたゴブリンは我先にと襲い掛かって来る。

 

 だが、自暴自棄に叫んだとはいえ、メグミの精神は至って冷静で落ち着いており、先に自分の方にたどり着くであろう右側のゴブリンを最初のターゲットに決め、包丁を両手で持つのではなく片手で素早く相手を斬れるようにと親指を包丁の刃の背にそっと添えるように握りしめる。

 

「ふぅ~、はぁ~」

 

 緊張を抑える為に軽く息を整える。既に間合いに入り込んだゴブリンに先程五条に見せてもらったように素早く足と手首を狙って包丁を振るう。

 

「グギョ!!」

 

 五条のように完璧なまでにとはいかないが、多少は上手く傷つけることはできた。足は立てる程度の傷だし、手首を狙ったはずが腕に傷がいってしまったが、それでも呪具による呪いによって出血は傷に見合わない量が飛び出る。その返り血がメグミの着ていた服を汚すがそんなことお構いなしにメグミは追撃の一手を決めにかかろうとするが、視界にもう一匹のゴブリンの存在を視認し、慌ててその場を飛びのいた。

 

「ほらほら、複数を相手する時は自分と相手との位置取りや攻撃の順番なんかも考えて動かなきゃ一瞬で背後からグサーだよ」

 

 後ろからアドバイスなんだろうけども野次に聞こえる応援をかけてくる五条に振り向いて「分かってる!!」なんて言いたくなるが、喉まで出かかった言葉を飲み込んで無言で2匹目のゴブリンに包丁を向ける。

 

「グギャ……」

 

 包丁を向けられたゴブリンも、先に飛び出した同族が斬られたのを見てメグミの包丁を警戒する。

 

「「…………」」

 

 互いに互いを警戒しあうがゆえに硬直状態へと陥ってしまう。

 

「もういいか……」

 

 先に動いたのはメグミだった。肩の力をゆっくりと抜いてダランと腕を伸ばして散歩するかのようにゴブリンに近づいていく。

 

「グゴォ?」

 

 そのあまりにも先程と違いすぎる態度の変化に困惑しているゴブリンはメグミの近づいてくる足に合わせて後ろへと下がってゆく。

 1歩2歩3歩と歩を進めるたびにどんどんと歩幅がデカくなるメグミにやがて一息で包丁が届く距離に近づいたその刹那……

 

「しっ!!」

 

「グギョ!!?」

 

 体の中にある空気を一気に外に吐き出すと同時に加速し、包丁の持ち方を某ヤンデレヒロインの持ち方に変えてゴブリンの脇腹目掛けて突き刺した。このままでは最初と変わらないダメな倒し方になってしまうが、あの戦いの反省点を学習したメグミは握っていた包丁を一瞬だけ手放し、体をゴブリンの内側へと潜り込ませてタックルをかますと、手放した包丁を再度握りやすい形に握りなおして振り払うように包丁をゴブリンの脇腹を切り裂きながら抜き取った。

 

「グヤァァァァ!!!!」

 

 甲高い断末魔を上げながら糸が切れた人形のように倒れ堕ちた。

 

「あともう1匹!」

 

 2匹目のゴブリンを倒したメグミは油断せずに最初に相手したゴブリンの方を見ると、そこには泡を吹いてのたうち回った形跡が残るゴブリンの死体があった。

 

「……? どうなってんだ?」

 

「やあやあ、よく頑張ったねメグミ。思った以上のいい動きじゃないか。それで、なんであのゴブリンが死んだのかが謎だろう? その疑問にこの五条さんが答えてしんぜよう!」

 

 困惑するメグミに状況を説明しようとする五条がお兄さんムーブをかましながら説明してくる。

 

「その包丁は最初に説明した通り人喰いの山姥っていう妖怪の持ってた妖刀に属する呪具だ。あのゴブリンは人ではないけど人に近しい体だからね。それで弱いながらも呪いが発動して恐慌に陥った末に、もがき苦しみ死んだってわけさ」

 

 その説明を聞いて鳥肌が立つ。人でないゴブリンですらあの程度の切り傷であんな様になるなんて、もしこれが間違って己の体を傷つけたらどうなるのか、あのゴブリンのようにのたうち回って死んでしまうのではないか? 

 

 手に持った包丁の気配がより更に不気味に感じ取ってしまう。じっと包丁を見続けていると次第に意識が包丁に吸い込まれるような感覚に陥り、やがて手の感覚が薄っすらと消えてゆくような……。

 

 パン! 

 

「はい! 呪具に飲み込まれないようにねメグミ♪」

 

「はっ!」

 

 危うく飲み込まれそうになったが、五条が手を叩いて現実に戻してくれた。

 

「い、今のは……?」

 

「だから言ったでしょ。その呪具は精神が汚染されるって、使う際は気を強く持っとかないとすぐに引っ張りこまれるから注意な!」

 

「ふっざけんなよ! こんなもん使えるか返品じゃボケ!!!」

 

 あんな物騒なモン渡してくるとこかアホなのか? いやバカだったはこの人! とにかくさっさと別の武器か新しい武器が出来るまで修行は無しにしてもらおう。

 

「え? ダメだけど」

 

「……はぁ?」

 

 メグミの修行(受難)はまだまだ続く。

 




なんか微妙な終わりだけど、これ以上は書くのしんどくなるので切り上げしました。
次回がいつ投稿するか分からないけど感想よろしく♪

次のIFで五条が飛び込む世界

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