あと、ちょっと前に保存と間違えて投稿を押してしまい、一瞬で消したんですが、結構焦りました。
迷宮内では様々な種類の魔物が人に向かって襲い掛かってくる。
そんな中で冒険者たちは日々の糧を得る為に魔物の体内にある魔石を手に入れるために魔物と戦い続ける。
そして、こういった迷宮は己を鍛え上げる修業場としてはうってつけなのだ。
だからこそ、五条はメグミへの修業場所として迷宮を選び、そこで数時間に渡る魔物との殺し合いを体験させる。
未だ幼いながらに堂々と魔物と戦う姿は道行く他の冒険者たちからしても関心を寄せるもので、その目には若さと才能による嫉妬の目もあったが、メグミにはそんなものを気にしている余裕が無い程に迷宮と五条に追い込まれていた。
「よ~し、新しい敵がそっち行ったぞ!」
「っく、またかよ。早すぎんだろ、鬱陶しい!!!」
五条が注意すると通路の奥からリザードマンが湧き出てメグミに襲い掛かって来た。
さっき別の魔物との戦闘が終わって1分も経たないうちにやって来た、魔物の中でもドラゴンに近い見た目のリザードマンの襲来にメグミは苛立ちの声を上げながら左手に持ったムチを振るう。
それは蛇のようにしなやかに動き、ムチの先端部分が音速まで迫り先頭に立つリザードマンの顔に命中する。
「キィイイッ」
顔面を強打され怯んだリザードマンに近づき、その無防備となった上半身にナイフの一撃を叩き込む。
「ふんっ!」
「キギャァァァ!!!」
胸に刺された一撃で断末魔の雄たけびを上げるリザードマンを蹴り飛ばし、後ろから迫った他のリザードマンにぶつける。
それと同時に、ナイフの持ち手を変えて走り出し、蹴飛ばしたリザードマンに当たらなかった方に詰め寄る。
「グギィッ」
自身に近づてくるメグミに反応したリザードマンは伸びた爪で威嚇しながら、迎え撃つように走り出した。
その距離は僅か6m程の至近距離ではあるが、そこからではナイフも爪も届かない。
故に、ムチという武器を持ったメグミが先制攻撃を仕掛けた。
今度はムチの先端を顔に当てるのではなく、リザードマンの首にムチを巻き付かせて引っ張り上げる。
そうすると、走っている姿勢のリザードマンはバランスを崩して前に倒れる。その倒れて頭が落ちる場所に持っているナイフをタイミング良く振り上げる。
「うおらっ!!」
「ギャッ!!!」
頭の半分がナイフによって裂かれたリザードマンは、短い悲鳴を上げて地面に倒れ伏す。
それと同時に、蹴飛ばしたリザードマンをぶつけられた他のリザードマンが立ち上がり、仲間の仇と言わんばかりにメグミに迫ってきたが、フゥ~っと息を吐いて昂った気持ちを落ち着かせて目の前に迫ってくる敵の動きに適応させる。
「「「キシャアアアア!!!」」」
(なんとなくだが見える。敵の殺せる場所が……自分が助かる活路が……)
生物として格上であるリザードマンや他の魔物を殺した事によってメグミはレベルアップを果たしたのだろう。
今のメグミの集中力は殺し合いによって極限にまで磨かれ、溢れ出す
敵の動きが普段よりも遅く感じられ、ナイフを振るべき軌道【光る線】が幻視出来る。地面には自分が踏むべき足跡が薄っすらと見える。
この現象が何なのか理解は出来てはいないが、脳が……本能が直感した。
自分が考えて動いているのだろうか? それとも、体が生き残るために勝手に動いているのか?
どちらでもいい。今はこの衝動に身を任して突き進むのみ!!!
「うぉぉぉぉぉぉ!!!」
腹の底から噴火するような雄叫びと共に体を動かす。
イメージは既に出来ている。さっきよりも疾くリザードマンに近づき、そして、さっきよりも鋭くリザードマンを斬り殺す。
するとそれは、手に持ったナイフが意思を持ったかのようにリザードマンの首筋を切り裂いた。
動脈を斬られ噴水のように飛び出る返り血を浴びながら次の標的に視線を向ける。
「クギャ!?」
「……?」
メグミと目が合ったリザードマンは蛇に睨まれた蛙の如く硬直し、次の瞬間にはその首は宙を舞っていた。
突然の視界の変化と目に映る泣き別れた自身の胴体を見て何が起きたのか理解出来ないままに死んでいった。
それは、メグミにとっても同じで、自分が無意識に何をやったのか? 体が動いたのは分かったが、無意識のままにどう動いたのか理解出来ていない。
今あの場で何が起こったのか理解出来ているのは、恐らくこの場では外野から戦場を眺めている五条のみだろう。
あのリザードマンの敗因はメグミの気迫に飲まれて動かなかったこと。大抵の生き物は集中力にムラがある、それは波のように高低さがあり、低い無防備な状態のとき、言うなれば意識の空白地帯。そこを突かれれば簡単に首なんて斬り飛ばせる。今のメグミには無意識ながらにも敵のそれを察知することが出来ている。だけど、所詮は無意識だ。ほんの少しでもタイミングがズレれば効果は無い。
(マグレや偶然に近いものではあるものの、強くなってんじゃんメグミ)
斬り飛ばされた首がボトリと地面に落ちると同時に、胴体がようやく斬られた事に気が付き、切り口から大量の出血を出して倒れ堕ちる。
残るリザードマンは1体となった。最早、こうなっては今のメグミにとっては消化試合に等しい。
振り落とされた爪を紙一重の距離で躱すと同時に腹に真一文字の傷をつけて五条の方へ歩き出す。
「クギャギャッ!!」
斬られた腹を手で抑えつけながら倒れたリザードマンは、数回痙攣した後に動かなくなった。
「終わったよ。五条さん」
「うんうん。見てたよメグミ。随分と成長したじゃないか。たった2回の冒険でこうまで強くなるなんて。最初の戦闘からじゃ想像もつかないよ」
「やめてくれ。あれは……もう忘れろ」
「ふっふ~ん、けどねメグミ。……冒険者にとって油断と慢心は死因の第1位だぜ」
「……っ!!?」
パチン!
「ゴワッ──―」
完全に終わったと油断していたメグミの背後に、最初ナイフで刺したリザードマンが飛び掛かってきていたが、それを五条が伸ばした手によるデコピンで上半身が木っ端微塵に消し飛んだ。
「乱戦の中で殺した相手が実は生きていたなんてよくある出来事だぜ。それを今ので理解しろメグミ」
厳しい言葉ではあるが、それを理解できずに無視あるいは分かった風を装った者たちから死んでいく世界だ。甘んじてその言葉を受けねばなるまい。
現在のメグミの心中は背後に迫った死の恐怖と、自らの成長していない心の未熟さへの苛立ちだった。
「ほら、気持ち切り替えて次行くよ。こんな場所でいつまでもウジウジしていたら次こそ本当に死ぬぞ」
パシッと後頭部をはたかれて正気に戻ると、勝手に奥へと進んで行く五条の後ろを慌てて付いて行く。
未だ自身の未熟さに納得は出来てもいないし、頭の中にこびりついた死の恐怖も拭えてはいない。
だけど、五条は決して甘やかさない。敵だろうと味方だろうと、相手に見せた態度はよっぽどのことがない限りは崩さない。
この先の戦闘で例えメグミが瀕死の重症を負おうとも、助けはするが救いはしない。
腕を砕かれようが、足が折れようが五条には反転術式による回復が出来る。原作では自分自身以外には使えなかった技だが、この世界に生まれて色々とあった為に他者への回復も可能となっている。
故に、多少どころかイカレた拷問レベルの戦いを強要させる。
普通の人間ならば逃げ出す程だが、メグミには逃げた先には何もない。
いや、あるにはあるのだろう。きっとここから無様に逃げ出しても五条はこれまで通りに接してくれる。
それにナイフやムチもある。いざとなればそれで魔物を狩って生計を立てればいい。
だが、メグミにはプライドがある。五条への恩がある。そして何より、自身の背には守るべき対象がいる。
そんな様々な思いをまとめて『信念』が生まれた。強くなる! その一念でメグミは迷宮の奥へと向かってゆく。
さらに迷宮の奥へと進めば魔物の強さは跳ね上がってゆき、必然的にメグミの体には傷が増えてゆき、武器を握る手にも力が入らなくなってきた。
「ハァ……ハァ……まだだ……!!」
だがそれでもメグミの目から光は消えてはいなかった。既に30階層まで下ったことで体力は限界を超えているにもかかわらず、後ろに立って見守る五条に助けを求めることもせず、気力と意地のみで武器を構える。
「「「ギャギャァツ」」」
だが、そんな限界状態のメグミを遠慮容赦なしに襲い掛かって来る毛むくじゃらの猿のような魔物たち。名をゴラルムと呼ばれる魔物で、黒級冒険者パーティーが狩るレベルの強さを持ち、ソロでこの魔物の集団を相手取るには銀級冒険者レベルの強さが必要だと言われている。
そんな魔物を相手に、疲労困憊に陥った今のメグミにはゾーンに入る体力もなく、ギリギリの状態で魔物の猛攻を受け流すのみだった。
最早メグミの意識は朦朧としており、下唇を嚙む痛みのみで意識を食い止める。
「ほ~ら、メグミ! そんな調子じゃ死んじゃうぞ!」
軽い調子で言ってくるが、ハッキリいって今の状況はメグミにとって最悪のピンチである。
だが、この状況をこそ五条が狙っていたもの。先にゾーンに入るというのは予想外であったが、五条がロクな修業もつけずにこの迷宮に挑ませたのは1つやってみたい修業があったからだ。
戦闘や修業において体力は必要不可欠な要素であるが、時にはその体力が足を引っ張ることもある。
それは武において重要視される脱力である。また、必要以上の体力が無い状態では無駄な姿勢ではなく正しい姿勢へと自然と動くのでフォームの改善にうってつけなのだ。
かのドラゴンクエスト外伝であるダイの大冒険では、この修業で身につけた技をこう評した【最小限の動きで、最大限の力を発揮させる術】だと。
「ぐぅっ……!!」
遂に魔物からの猛攻をさばき切れなくなったメグミが一撃を許してしまい、壁際まで吹き飛ばされてしまった。
攻撃をもろに受けた腹の部分は青あざが出来ており、痛みでまともに立つこともできずにいる。
「ありゃりゃ、もうここらでギブアップかなメグミ?」
「まっ……だだ、まだ、立ち上がれる」
ナイフを杖変わりに痛む腹を抑えながら立ち上がる。当然、腹は痛むし戦いすぎて手も足もズタボロの状態で、目尻からは涙だって溢れ出している。
その状態だというのに、あと少し……、あとほんの少しの切っ掛けで変われそうな気がする。
今の自分が蛹だとするのならば、既に殻は開きかけ羽化する直前のような感覚なんだ。
脳ミソがイカレたのか今の自分は疲れがあまり感じられない。痛みだって痛すぎて何が何だか分かんない状態だ。
「だけど、今の俺の状態が生涯で一番最高のコンディションだ!!!」
自然と零れる笑みを浮かべてナイフを握りしめる。
頭から頬に落ちる血を舐めとって腹の底から湧き上がる興奮に身を委ねる。
なれる! 強くなれる!! もっともっと強くなれる!!!
痛みも疲労も全て置いてけぼりにして、もっと強さの前へ突き進め。
その胸の衝動と共に、目の前の敵に走り出した瞬間、今まで見ていただけの五条が目の前に立ちふがった。
パァン!
五条のビンタによる鋭い痛みが頬に走る。突然の出来事に理解出来ないでいるメグミは足を止めてキョトンとした顔で五条を見る。
「今のメグミの感情は戦いにとって重要なものだ。必須と言っても過言ではない。けれどね、今のボロボロの状態のメグミがその感情のままに出ていったら死んじゃうよ」
「……なら、どうすればいいんですか?」
「心は熱く、頭は冷静にってのが有名だね。戦いで勝つという熱い想いは大切だ。けど、それで視野を狭めてバカみたいに猛進したら死んでしまう。だからこそ、冷静になって死なずに勝つ道筋を見つけるんだ」
「死なずに勝つ道筋……」
「メグミ、その為に必要なものはもう既に揃っている。1つアドバイスをするのなら俺を見習って楽しくバトルしてみな♪」
「……それがあんたのアドバイスか?」
「そうだよ。さっ、敵さんも待ってくれてるみたいだし、行っておいで」
立ち塞いでいた道を譲ると、こっちを……いや、五条を警戒していた猿型の魔物はメグミに向かってじりじりとゆっくりと近づいてくる。
さっきのアドバイスは役に立つのだろうか? 楽しく戦えって? バカを言うなよ。1つの判断ミスが生死を分かつ状況でどう楽しめっていうんだ。
でも、そうだな……
「やるだけやってみるとしようか」
ただバカみたいに突っ込むんじゃさっきと何も変わらない。なら、どうすればいいのか? 心は熱く、頭は冷静に……まだ勝ちたい心は残っている。後は冷静さ、勝つ道筋を描く理性を取り戻せ!
作戦を今ここで決めろ3秒以内にだ! 敵は3体、体格差はあるが大人と子供程度の差、こっちの武器はナイフとムチのみ、あっちは完全な素手の攻撃。
中距離からの先制攻撃でスキを作り出して一撃で仕留めていく。
単純だが効果的なこの作戦だが、この階層の魔物は強靭でタフな肉体を持っている。あのリザードマンを倒した時のようにゾーンと五条が呼んでいる状態になれば一撃で殺すことは出来るかもしれないが、今の俺じゃゾーンには入れない。
作戦の実行は不可能だ。
「「「キシャアアアア」」」
「もう考えてる時間はねぇか!!」
前に出るしかない。ここで立ち止まっていても待っているのは蹂躙される結末だけ。
なら、無謀でも立ち向かえ! 出来るかどうかとか、やってみるまで分かんねぇだろうが!!!
「やってやるぞ!! チクショウォォォォ!!!」
(俺を見習って楽しくバトルしてみな♪)
飛び出す前に頭の中に唐突に浮かんだ五条からのアドバイスが蘇る。
(楽しくってどうやるんだ? 何をすれば、どうすればいい? あの人はどういう風に戦っていた?)
思い出すのは絶対強者である伝説の魔物ベヒモスとの戦い。あの人は笑っていた。何故笑っていた? 相手との力の差が大きかったからか? それとも──―
(なら、俺はどうする? 自分の強さに自信を持てるか? 無理だ……けど、あの人みたいに笑うことぐらいなら出来る!)
「ああ、そうかい。なら、やってやるよ。楽しめっていうんなら、笑って敵をぶっ殺してやる!!!」
笑みを浮かべろ! 虚勢だろうがハッタリだろうが関係ない。思い込め! 自分は強いと、笑って敵を倒せるくらいに強いんだと、キヒィ、アッハッハッハッハ!!!
突然のメグミの豹変に五条は笑みを浮かべる。
「ようやっと、殻が剥けたかメグミ」
今までメグミは全然笑っていなかった。怒ったり泣いたりなんて感情は見せたことは何度でもあった。
けど、笑うという感情は一切見せてこなかった。いや、見せなかったというよりか見せれなかったという方が正しいかもしれない。
あんな劣悪な環境で笑える余裕なんてなかっただろう。しかし、今は虚勢でもハッタリだろうと笑っている。
今のメグミを見てたら分かるよ。笑うことに意識を向けたお陰で肩やナイフを握る手に余計な力が入っていない。なら、もう後は勝つだけだ。
「いける! やれる!! ぶっ殺せっぇぇぇぇ!!!」
「「「──―っ!!?」」」
メグミから放たれるムチの一撃はこれまで以上に疾く鋭かった。それは蛇のように地を這って獲物を仕留めるが如き動きだった。
下からのムチによる打撃はいかに強靭さとタフさを持ち合わせる魔物といえど動きを止めて怯むもので、その間に一気に距離を縮めたメグミが魔物の懐に入る。
(もう力はロクに入らねぇ。けど! 笑ってぶった斬る!!!)
「フヒィッ──―」
「グギャッ!?」
殺すのではなく楽しくを念頭に動いたメグミの剣技には無駄な力は一切なく、五条がこの修業で教えたかった正しい姿勢による完璧な一撃が完成した。
スッと紙か豆腐でも斬ったかのようなまるで手応えのない感触を覚えると、メグミのナイフは綺麗にスッパリと切り裂いた。
その後、切り裂いた反動を生かして後ろにまだ残っている2匹の魔物の胴体を同じように切り裂いて泣き別れさせていった。
「「グギギャッ!!!」」
「や……った……のか?」
こうして3匹の魔物を倒したメグミはその場で呆然と立っていた。
「よ~し、よくやったメグミ♪」
「…………」
パチパチと拍手を鳴らして近づく五条だったが、何の反応も返さないメグミ。
「ん、メグミ?」
「…………」
フラフラとメグミの体が揺れたかと思うと、バタリと膝から地面に倒れ込んだ。
慌ててメグミを抱きかかえるとスゥスゥっと小さな寝息を立てて眠っていた。
どうやら、最後の敵を倒して気が抜けた緩みから、全身から力が抜け、その場で気絶してしまったのだろう。
幼い顔でスゥスゥと寝息を立てて眠る姿からは、先程までの雄々しさは感じられず、この子が魔物を倒しただなんて言っても信じる人はいないだろう。
「よく頑張ったねメグミ」
ソッと優しく眠るメグミの頭を撫でながら、頑張ったメグミに目が覚めた後のご褒美は何をあげようかと悩む五条であった。
メグミ君が1話で滅茶苦茶強くなってるけど、読者の皆はこれぐらい覚醒したメグミなら当たり前だろ!って言える?
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