呪術師という職業で世界最強!   作:リーグロード

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いつもの亀更新よりは気持ち早めに投稿してるのでファンの皆さん勘弁してな!!!

あと、低評価じゃなくて高評価やったらやる気うなぎ上りやからな。
今回の話も日間ランキング入りしている、ありふれていない『天の鎖』で世界最強と魔神の子のダンジョンライフ 〜最強を目指して〜の読者層が似ている作品に本作品が一番上で紹介されたテンションで書き上げたので、感想や評価が高ければ高いほど続くし更新も早くなります。


権力者より強者の方が優位ってのは当たり前だよな(ゲス顔)

 昨日の悲劇から帰還したクラスメイト達は、昨日寝泊まりした宿で一晩を過ごして今日の疲れを僅かばかりとはいえ癒すことができた。

 未だ昨日の件を引きずって部屋に籠る者もいるが、大半の生徒は空腹の腹に何か入れたいと食堂まで降りてくる。

 

 その中には、昨日の惨劇を引き起こした張本人である檜山もコッソリとだが混じっている。

 幾人かは檜山の姿を視界に入れればチッ! っと舌打ちをするが、それ以上は何もしてこない。

 

 そのことに居心地悪そうにするが、腹が減って死にそうな思いの為、しょうがなく我慢して一番奥の目立たない席に腰を下ろす。

 

 やがて食事が運ばれてきて、皆がナイフやスプーンに手を伸ばした時、食堂の扉が開いて護衛である騎士たちが入ってくる。

 

「食事中に失礼する。この後、すぐにでも王城に戻られるよう仰せつかっています。お手数ですが、食事が終わり次第すぐに帰還の準備をお願いします」

 

 その騎士の言葉に皆が騒めきだす。もしかしたら、昨日の件で何か言われるのかもしれないと不安を口走るクラスメイトたちに、この中でリーダーである天之川が立ち上がって叫ぶ。

 

「みんな落ち着け! 大丈夫だ。昨日の失態は俺の責任だ。だから、もし何かあれば全て俺が責任を取る。だから安心してくれ!」

 

 皆が天之川の宣言を聞くと申し訳ないという顔をしながらも、どこかホッとした雰囲気をみせる。

 

「昨日はあんなことがあったから心配していたが、今のを見ている限り、どうやら心配無さそうだな」

 

 騎士たちの後ろから昨日王城へ向かって去った筈のメルド団長がやってきた。

 

「メルドさん!? 王城に行った筈じゃないんですか?」

 

「ああ、行って来たぞ。馬も休まずに走らせれば1日もあれば往復ぐらいできる」

 

 それはつまり、メルド団長も休まず丸1日走り続けたということになる。

 あんな出来事があったというのに、それを平然とこなして今もケロッとした顔を見せるメルド団長の体力は化け物レベルだろう。

 

「さあ、帰りの馬車の用意は我々がする。皆は落ち着いてゆっくりと食事を楽しんでくれ」

 

「すみませんメルド団長」

 

「ふっ、謝るな光輝。そもそも、こんなにも早く帰還することになったのは、我々大人の監督ミスだ。子供であるお前らが気に病むことではない」

 

 そう(なだ)めるように天之河の頭を優しく撫でるメルド団長に、こそばゆい恥ずかしさを覚えるが、それを振り払うことはせず黙って受け入れる。

 

「ああ……、ゴホン! ところでなんだが、一応念の為というか愛子の為にも五条の奴も連れ帰りたいのだが、誰か……そう……清水! あいつの寝泊まりしている宿を知らんか!?」

 

「また俺っすか!? ……ああ、流石に俺も五条の泊まっている宿は知らないです」

 

「そうか……。いや悪かった。てっきりお前には居場所の連絡はしているんじゃないかと思ってたからな」

 

 ガッハッハ! と笑うメルド団長だが、コッソリと腹に手を当てているのは見なかったことにしよう。

 だが、五条の泊まる宿は知らないが、行きそうな場所には少しばかり心当たりがある。

 

「あの……。恐らくですけど、あいつが行きそうな場所に心当たりが……」

 

「なに? 本当か清水」

 

「ええ、恐らくですけど……。多分あそこだと」

 

 清水説明中……。

 

「成程、確かに昨日はあれを自慢していたからな。可能性は充分にある。俺はそこへ向かう。お前たちは帰りの馬車の用意を頼む!」

 

「「「はっ!」」」

 

 帰りの馬車の用意を騎士たちに任せ、メルド団長は五条がいるであろう場所に足を運ぶ。

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 昨日は家に帰ると家族からその服はどうした!? と大騒ぎになってしまった。母さんはついに盗みをだなんて泣かれるし、父さんには一発ガツン! と拳骨を叩き落されてしまった。

 ちゃんと理由を説明しても半信半疑で、結局話が本当だと理解してもらうのに2時間もかかってしまった。しまいには、五条に助けて貰ったお礼と買ってもらった服の返却の為に、両親が揃って一緒にギルドまでやってきてしまった。

 なんだろう。昨日は普通に五条に会うのを楽しみにしていたのに、今日はなんだか気恥ずかしくて無性に会いたくない気分だ。

 

 しばらくギルドの中で待つも、五条は中々やってこない。まあ、昨日の別れた時に時間の指定をしていなかったから仕方がないが、だんだん時間が経つにつれて、後ろの両親の目が疑わしいものへと変わってゆく。

 早く来てほしいが、こんな両親に会わせたくないという二律背反の思いが胸中で渦巻いている。

 

 そろそろ両親の目がヤバいくらいに感じてきた。このままじゃ、衛兵さんの元へお世話になってしまう!? 

 た、頼む五条! 早く来てくれぇ!!! 

 

 その願いが天に届いたのか、ギルドの入口からそのよく目立つ白髪を携えて五条がやって来た。

 

「おっ待たせ~♪ いや~、時間指定とかしてなかったから自分なりに早く来たつもりだったけど、結構待たせちゃったかな?」

 

「全っ然待ってないから! 本当にナイスタイミングで来てくれたまであるから! ありがとう五条!!!」

 

「貴方が五条さんですか? ウチの息子がお世話になりました。これはほんのつまらないものですが、どうぞ受け取ってください」

 

「これは昨日息子に買って頂いた服ですが、こんな高価な物受け取れません。一応洗濯しておりますが、なにぶん家は貧乏な為に満足のいく仕上がりにはなりませんでしたが、どうぞお返しいたします」

 

「うえっ、何この状況? まじどうなってんの? 後その服はあげた物なんで返却とか一切しなくていいですよお母さん」

 

 いきなりのことに珍しく戸惑うも、服の返却だけは冷静にきっぱりとお断りする紳士な五条だった。そんな五条の対応にキュンっときたことは母だけの秘密である。

 

 その後、なんとか3人を落ち着かせて事情を聞いた五条は、あの奇行の理由はそれか~っと納得する。

 

 なんやかんやとあったが、マルクの両親にはそのまま帰ってもらった。あのままお礼を言われ続けてもむずがゆいだけだし、何より、隣に立つマルクの顔が茹でダコのように真っ赤に染まっているからな。

 

「そんじゃ、さっそく迷宮に行って昨日よりも稼いで豪遊しようか!」

 

「え~、昨日もそうだけどさ、五条は貯金っていう言葉を知らないの?」

 

「いやいや、これもほらあれ……、そう! 経済効果ってやつだ。一か所にお金を沢山集めていたら他の場所にお金が行き渡らなくなってしまうだろ? だから俺はこうやって豪遊しながらも経済をまわしてるって訳さ」

 

「それ、なんか金使いの荒いダメ人間の発言だと思うんだけど?」

 

「グッサァ! 今のマルクの心無い一言で五条さんのガラスのハートが粉々に砕け散りました」

 

「噓乙www」

 

 どこぞの昼休みの男子高校生的なノリの会話を楽しんだ2人は、会話もそこそこにして切り上げ、迷宮へ向けて足を運ぼうとした。

 

「さ~て、そろそろお仕事しなくちゃね♪ これも悲しき社畜の運命(さだめ)かな」

 

「安心しろ。今日は貴様に仕事をさせるとつもりはない」

 

 ガシッとぶ厚いゴツゴツとした屈強な手が五条の頭を鷲掴みにする。ま・さ・かっと思いギギギッっと油の切れた機械のようにぎこちない動きで振り向く五条の視界には、ニコリと笑ってはいるがその表情は怒っていると丸わかりの顔で立つメルド団長がいた。

 

「昨日は解散前にとっくに解散していたから伝えられなかったが、俺は昨日王城へ一時的に帰還したんだ」

 

「へぇ~、やっぱり昨日のあの件を報告する為に?」

 

「ああそうだ。ついでに、愛子の方にも貴様のやらかした件を報告させてもらったぞ」

 

「げぇ!? ヤベッすっかり忘れてた。あの~、つかぬ事を伺いますが、昨日の弁護の件は忘れちゃったりなんかは?」

 

「勿論、忘れてはいないが……。だが、貴様の昨日の独断行動の数々! 例え伝言を残していたとしても許せん。よって、昨日俺は愛子に厳しく説教してもらうようにお願いしておいた」

 

「え~、そんな!?」

 

 ガックシと落ち込む五条の頭を掴んだまま、メルド団長はそのまま部下たちが準備している馬車の元まで去って行った。

 

「…………いやボクは!?」

 

 五条が連れて行かれて置いてけぼりになったマルクが叫ぶが、誰もがドンマイっと心の中で合唱した。

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 あのままメルド団長に頭を引っ張られたまま皆が待つ場所まで大人しく連行された五条は、これから帰ったらどう愛子先生を騙しゲフンゲフン……納得してもらえるかを考えていた。

 とはいえ、いつまでもこんな状態じゃ恥ずかしいので、ガッチリ掴んでいた筈のメルド団長の手からあっさりと抜け出した。

 そのことに一瞬うろたえるメルド団長だが、もう五条だからという理由で自身を納得させた。

 

「さて、ここにいない者はいないな?」

 

「はい! メルド団長! クラス一同揃っていま「あっ! 待って! 遠藤君がいないわ?!」なにっ!?」

 

 天之河が集合完了の報告をすると、雫が思い出したかのように遠藤の名を叫んでいないことに気づく。

 みんなもそういえば!? っと辺りを見渡して遠藤がいないことにようやく気がつく。

 

「ったく。五条を見つけたと思えば今度は遠藤か……。誰か遠藤がどこにいるか心当たりのある奴はいないか?」

 

 これ以上問題児はいらんぞ! っと心の中で愚痴を漏らしながら、遠藤の居場所を知っていそうな者を探す。

 すると、少し奥の方から恐る恐ると控えめに手を挙げている者がいた。

 

「おっ! 遠藤がどこにいるのか知っているのか?」

 

「あの……、俺最初からずっとここにいたんですけど」

 

 なんと、手を挙げていたのは当の本人である遠藤だった。しかも、どうやらいなくなっていたわけではなく、みんなから存在を忘れられて見つけてもらえなかっただけのようだ。

 

「…………さて、全員揃ったようだな。それでは、さっそく帰還する皆馬車に乗りこめ」

 

「あっ、何事もなかったようにするんだ」

 

 この切り替えの早さが昨日の判断の早さに繋がるのだろう。……とはいえ、少し酷いと思った自分は悪くないと思う。

 

 それから馬車を飛ばして王城へと戻ると、一行はまず先に国王と教会に今回のあらましを説明する。

 それを聞いた国王と教皇は渋い顔をするも、あの伝説に語られるベヒモスと戦って生き延びたことが幸運だと考えることにした。

 

 とはいえ、もしこれが切っ掛けで戦場へ出ないと勇者が言い出せば困るので、しばらくは迷宮での訓練は取りやめて再び城での訓練にのみ専念させる。

 多少力をつければある程度のトラウマは払拭できるだろうという考えでの判断だ。

 

 そんななか、問題児である五条は担任である愛子先生に城の廊下で見つかってしまい、そのまま廊下で説教を受けている。

 

「五条ちゃん! 私が今日までどれだけ心配だったか……。勝手にどこかへ消えてからというもの生きた心地がしませんでした。私だって、五条ちゃんが強いのは知っていますけど。グスッ! それでも急に消えれば心配くらいはするんです」

 

「ああ……。ごめんごめん! 俺もちょっち城にばっか閉じ込められてて窮屈な思いだったからさ」

 

 ポンポンと頭を撫でて泣き止んでもらおうとしたが、それが余計に泣かせることとなってしまい、途中からは何を言っているのか分からないくらいグチャグチャに泣き喚いてしまった。

 それを見たメイドの1人が見た目幼子である愛子先生がイジメられているのかと誤解して騒ごうとしたのを、間一髪で口を塞ぐことで阻止した。

 

 当然そんなことをすれば相手は暴れて抵抗するのだが、自分の容姿の高さを自覚している五条にとって魅了程度は朝飯前である。少し落ち着かせるために耳元で『大丈夫。君は誤解している。僕は生徒であそこで泣いているのは先生。昨日迷宮から生きて帰ってきたことにホッとして泣いちゃってるだけだから』と優しくASMRのように綺麗な声を意識して流せばひとまずは落ち着くし、その後、サングラスを外して相手の瞳をほんの少しジッと見つめれば顔を赤らめて魅了完了である。

 

「そ、そうですか。勘違いして申し訳ございません」

 

「なに、あの現場を見れば誰だって誤解するさ。そうだな、もしまだ申し訳ないと思っているのなら、何か心が落ち着くハーブティーでも淹れて持ってきてくれないか?」

 

「はい。了解しました。それでは急いで持ってまいります」

 

「うん。それじゃよろしく。あ、それと持って来るのはここじゃなくて中庭の方にお願いね」

 

「かしこまりました」

 

 そのままメイドさんは走ることなく、されど急いで調理場へと向かって去ってゆく。

 

「さて、それじゃ先生。ここじゃ周りの迷惑になりますんで、ひとまずは中庭にでも場所を移しましょっか。丁度、メイドさんが美味しいハーブティーを淹れてくれるようですしね」

 

「うぅっ……、本当ですか?」

 

「本当本当、五条噓つかない」

 

 そのまま涙を流し続けている愛子先生の手を引っ張りながら、五条は『まるで迷子の子供を交番に連れていくお兄さんみたいに思われてるだろうな』と思いながら中庭を目指す。

 

「さ、着きましたよ先生」

 

「ん、ありがとうございます五条ちゃん」

 

「なんのなんの。あっ、そろそろメイドさんが来ると思うんでちょっと待ってくださいね」

 

 そのまま中庭に備え付けられているテーブル席に先生を座らせて、メイドが来たかどうか確認すると噓ぶいて、コッソリとその場から立ち去っていった。

 

「ふぅ~、泣かれたのは心臓に悪かったけど、こうしてさっさと逃げられたし良しとするか」

 

 フンフンフ~ン♪ っと鼻歌まじりに廊下を歩いていると、昨日の一件がもう既に噂になっているのか、コソコソと貴族の世間話に混じって死んだハジメに対する侮辱の評価が聞こえてくる。

 やれ死んだのが無能でよかっただの、神の使徒でありながら役立たずなど死んで当然だの、それはもう好き放題に貶していた。

 

(いや~、死んだのが代わりのいる生産職のハジメだからこうだけど、もし死んだのが勇者の相棒役の龍太郎とかだったら勇敢に戦っただとか、勇者様を守るために自らを犠牲にしただとか美化されまくるんだろうな。っていうか、誰も檜山が殺したって話はしないな? やっぱり仲間割れが原因ってのを知られちゃマズいからその辺情報規制でもしてんのか)

 

 のほほ~んっとしながら目的もなくぶらぶらと歩いていると、2階の廊下に2人の男が立っているのが見える。片方はデブで、もう片方はガリという対象的な2人組で、身につけている豪華な服装から名のある貴族なのだろう。

 

 その2人の方のうちデブの方がこっちを見ながら、思いついたように隣に立つもう1人の貴族に話し掛ける。

 

「ほら、あれがエヒト様から頂いた崇高なる使命から逃げた臆病者ですよブルムラシュー候」

 

「ほうあれが……」

 

 イラッ

 

「先の迷宮での遠征では神の使徒の恥晒しが死んだと報告されましたが、そのついでに臆病者も一緒に消えれば良かったのですがね」

 

「こらこら、いくらなんでも神の使徒である者に対してその物言いはいささか不謹慎ですぞペスペア候」

 

「おっと、そうでしたな。いや~、失敬失敬。いくら恥晒しと臆病者でも相手は神の使徒。我らが神であるエヒト様に申し訳がない」

 

 イッラァ!!! 

 

 なんか本人たちは聞こえないように陰口を叩いているようだけど、俺の耳をもってすればこの程度の距離のひそひそ話ぐらい楽勝に聞こえるだよね。

 っで、誰が臆病者だって? 

 

 静かに、されど本格的に頭にきている五条は、呪力を利用して2階にいるペスペア候とかいう生意気な貴族を自分のいる1階まで引っ張り降ろす。

 

「なっ!? おわわぁ!!! た、助けてくれ!!!」

 

「ペ、ペスペア候?!」

 

「おっ、この五条さんに奇襲か? 五条パ~ンチ☆」

 

 急に服の胸ぐらが引っ張られたと思えば、2階の手摺(てすり)を超えて真っ逆さまに引っ張られて落ちてゆく。

 その突然の出来事に恐怖し助けを求めるも、丁度1階にいた五条は受け止める体勢を取るどころか、奇襲かと口にしながら腰を落として正拳突きの構えを取る。

 それに対し、嫌な予感を覚えて手を前に出して拳を受け取めようとするも、案の定、その予感が正しいものだと証明するように、五条のそこそこ力が入ったふざけた掛け声のパンチはペスペア候の頬を捉えて打ち抜く。

 

「ぐぺぎょっ!!?」

 

 汚らしい声と数本の歯がペスペア候の口から飛び出し、弧を描くように吹っ飛んだ。

 着地の際も、受け身もロクに取れずに背中から地面にぶつかり、数回のバウンドの末に地面に横たわる。

 ピクピクと動いている様子から察するに、一応息はしているのだろう。そのまま様子をジッと見ていると、倒れていたデブ貴族は目が覚めたように起き上がる。

 

「きっ、貴様! 私を誰だと思っておる。この国を守る誇りある名家ペスペア侯家の当主であるぞ! それをよくも攻撃してきおったな!?」

 

「はぁ? 最初に飛びかかってきたのはそっちだろ? それを正当防衛で殴り飛ばしたからキレるって頭大丈夫?」

 

 コンコンっと指で頭を叩いて馬鹿にしたように言うと、面白い様に顔を真っ赤に染め上げてゆく。

 

「いいかこの臆病者め! この私に手をあげるということはだな、我が領地にいる2万もの兵士が動き出すということなのだぞ!」

 

 そう言えば戦争を反対した五条がビビッて謝罪でもすると思ったのだろう。確かに、2万の兵力というのは驚異的な数値だろう。

 だが、相手は元の世界では自他共に認める世界最強の存在である五条悟である。そんな脅し文句は逆に火に油を注ぐようなものだ。

 

「へぇ~、随分と調子乗ったこと言うじゃん。そんな兵力持ってんならさっさと戦場に駆り出せばいいのによ。まあいいぜ、ぶつけてこれるもんならぶつけてみな。2万なら2万、5万なら5万、100万なら100万の死体が積みあがるだけだと思うけどな♪」

 

「なっ、ふざけるな! 我が精鋭は一人一人が歴戦の兵士だ。貴様のような戦場が怖くて逃げた臆病者が勝てるなどと──―っ?!」

 

 思いあがるな! そう最後まで言い切ろうとしたところ、五条が乱暴にデブ貴族の胸ぐらを掴み上げる。

 

「だっからさ~、調子に乗んなって言ったろ。それに精鋭がなに? こんな下っ腹が出てる狸親父の部下とか全然強そうに見えなくて草www」

 

 ポンポンとデブ貴族の腹を腹太鼓にしてからかうと、もはや我慢の限界に達したのか、怒髪天来といった様で暴れ回るも、五条の手は一切緩むことなく貴族の胸倉を掴み続ける。

 

「アッハッハッハ♪ なんかジタバタあがくでっかい虫っぽくてキモォ!」

 

「この! だ、誰か!!! この無礼者をひっ捕らえよ!!!」

 

 貴族がそう叫ぶと、廊下の奥から巡回していた複数の近衛兵が走ってきた。

 そして、こちらの様子を見ると慌てたように武器を前にして近づいてくる。

 

「貴様、一体何をやっている!? そのお方はかのペスペア候であらせられるぞ。今すぐに解放せよ」

 

「ま、まて……、あのペスペア候を掴み上げているのは神の使徒様ではないか?」

 

「本当だ。確かに勇者様たちと共に行動していたのを見たことがある」

 

 片方は大貴族の一つに名を連ねる大貴族で、もう片方は人類を救う為にエヒト様が遣わした神の使徒の1人だ。

 一体何がどうなってこのような状況になってしまったのか理解できない近衛兵たちはどうすることもできず、手に持った武器を彷徨わせていた。

 

「な、何をしておるか!? 早くこの無礼な輩をひっ捕らえて牢にでも放り込まんかバカ者共め!!!」

 

 その乱暴な声につい条件反射で動き出す近衛兵の顔の横を通り過ぎて後ろのほうの壁が突如として爆ぜた。いきなりの事でなにが起きたのか理解できなかったが、爆ぜた場所を見ると壁にはくっきりと足跡が刻まれていた。

 そして、五条の方を見てみれば、驚くべきことに片手で成人男性……それもおよそ体重80㎏オーバーであろう男を軽々と持ち上げながら、その上更に片足を上げて蹴りを放った体勢のまま静止している。

 

「そっから一歩でも動くなよ。今のは警告の意味合いを込めた蹴りだが、もし次に俺の許可なく動いたりした奴にはどうなるか……。こっから先は言わなくても理解できるよな?」

 

 そんな五条の脅しに近衛兵たちの背筋にツーっと冷たい汗が流れ落ち、ゴクリと唾を飲み込んでその場から動けなくなる。

 それを見た貴族は信じられないものを見たと言わんばかりの驚愕に満ちた顔をしていた。自分はずっとこの男を見ていたというのに、壁が爆ぜる音がするまでこの男が動いたことに気が付かなかった。

 

 そして、この五条という男の動きが見えなかった事と、あれほどまでの威力の蹴り……それもここから一切動かずに向こうの離れた壁にくっきりと残せる程の衝撃波を生み出す脚力ともなれば常識外過ぎる。

 デブ貴族は今更になってようやく、自分が喧嘩を吹っ掛けた相手が戦争を終わらせる為に遣わされた神の使徒だという事実に顔を青ざめてゆく。

 

「さて、顔色が悪くなってきているけど、まさか今更になって自分がどんな化け物に調子こいた発言をしていたか理解したのかな?」

 

 目の前のこいつには権力や地位といった物等は通じはしない。もしかすれば、この場で本当に殺されてしまうかもしれない。

 その事実に、ガタガタと体が震えて死ぬかもしれない恐怖が心臓を蝕んでいく。なんとか命乞いの言葉を口にしようとするも、自分の意志とは関係なく震える口のせいで何も言えずにいた。

 

「う~ん、その様子じゃこれ以上イジメてもワンパターンで面白くないね。でも、俺もただ臆病者扱いされたことはかなりイラついたからちょい本気のマジビンタで許してあげるよ♪」

 

 掴んでいた胸ぐらを放して開放すると、恐怖で上手く立てない貴族をしっかり立たせると、右手に軽く呪力を流して死なない程度にビンタの威力を上げる。

 そして、はぁ! っと気合を入れて棒立ちになっている貴族の頬にバッチン!!! と音だけで痛くなる程の強烈なビンタが炸裂する。

 

 その際、吹き飛んでブサイクな面になった貴族を見て幾人かがクスッと笑ったとか笑わなかったとか。

 五条の強烈なビンタに顔を歪ませながら涙目で立ち上がる貴族に、五条がツカツカと近づいていく。

 

「さて、これでお互いに遺恨は無しにしようか。まあ、そっちがまだ俺と決着をつけたいって言うんなら、ご自慢の兵士さんたちでもなんでも連れてくればいいよ。その代わり俺も一切の容赦なく殲滅にあたらせてもらう。いいね?」

 

 ニッコリと、されどその言葉に噓偽りは一切混じっておらず、その迫力にデブ貴族は足の力が抜けて無様に尻餅をついて倒れる。

 

「さて、そこの2階でコッチを見ているお前はどうする? さっきまで仲良くしていたお友達がこんな目に合わされてるけど? 復讐や敵討ちならどうぞ大歓迎だぜ!」

 

 そういう奴をプチッ!っと潰すのが最高に気持ちが良いからな♪っという五条の心の声が聞こえたようなブルムラシュー候はゴクリと口の中にいつの間にか溜まった唾を飲み込む。

 

 さあ、どうする? と手を広げて尋ねる五条に、ガリ貴族のブルムラシュー候は冷や汗を流しながら、「自分とペスペア候は貴殿のいう関係ではない。そもそも、今回の件は神の使徒を侮辱した彼に起因します。今後はペスペア候との関係も見直すことにしましょう」と全力で私は敵でもなければそこのデブ貴族とも友好的な関係ではないと保身に走った弁解をかます。

 それに対して、五条は興味を完全に失ったのか、つまらなそうに溜息を吐いて背を向ける。

 

「ふ~ん、あっそう。まあいいや、そんじゃ俺はここいらで退散っすから後はよろしく♪」

 

 バイビーっと手を振りながら去って行った五条の背を眺めながら、ようやく五条が視界から消えた時に、近衛兵たちは、はっ! っと思い出したかのように倒れたペスペア候に駆け寄って立ち上がらせる。

 

「だ、大丈夫ですか? ペスペア候様!?」

 

「お怪我の方は……」

 

「今すぐに医師をお呼びしますので」

 

 口々に自身を心配する声を掛けてくる近衛兵たちだったが、それは先程の騒動をただ黙って立ち尽くしていたという失態を拭い去ろうという魂胆が見え見えであった。

 普段の彼であったならば、こういった声に機嫌を良くしたりするものだが、あの五条からの脅しがよほど効いたのか、手を差し伸べてくる近衛兵たちを押し退けて、未だ震える足を引きずりながら奥へと消えていくペスペア候に護衛しようと付いてこようとする近衛兵たちも、そのペスペア候に大声で付いてくるな!? と怒鳴られてしまった為に、どうするべきかと悩み。

 ひとまずは念の為にこのことを上に報告しようという結論が出て終わった。

 

 それから後日、五条の元に謝罪の文とお詫びの品がペスペア候と教会と国から受け渡される。

 そして、この一件を危惧した教会と国は、城だけにとどまらず、国のあらゆる貴族たちに神の使徒へのあらゆる侮辱は極刑に処すという内容の手紙が送られていった。

 

 




ガキ使の月亭方正さんと伊地知さんへの五条のマジビンタが重なって刑罰の方法を思いつきました。

面白いと思った方は高評価と感想を添えてどうぞ!

次のIFで五条が飛び込む世界

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