新キャラも増えたのでどうか覚えてやって下さい。
あのデブ貴族との一件が貴族たちの耳に流れ、それ以降は五条のことは勿論のこと、無能と蔑まれていたハジメへの暴言もすっかり消えていた。
もし、……もしもだ。仮に五条があの貴族の2人の会話を偶々聞かずにそのまま城から出て行っていれば、ハジメへの侮辱をたっぷり塗り付けた陰口が勇者一行の耳に入っていただろう?
するとどうなるか、五条のせいでストレス値が限界ギリギリの雫がキレて剣を振り回すか、命の恩人であり自身の愚行でその命を散らさせてしまった負い目からどんな行動にでるか分からない。
つまり、逆説的に言えば、あのデブ貴族であるペスペア候は五条の不興を買ったかもしれないが、勇者一行の不況を買わずに済ました影の立役者とも呼べるのではないだろうか!?
っと、もしものIFストーリーを考えても仕方がないので、さっさと本編へと行くとしよう。
「……なんか、急に意味不明な路線に入りかけたのを無理矢理に修正した気配を感じる」
「……? 何言ってるの五条? ってか、この前は五条が城に連れていかれたせいでコッチは手持ち無沙汰になっちゃって大変だったんだよ。家に帰ろうにも両親がアレだったから妙に帰りづらかったし、知り合いの爺さんに店番のアルバイトを紹介されなかったら無為な1日を過ごすことになったんだから!!」
プンプンというよりもプリプリっといったカワイイ怒り方で喋るマルクに『こいつカワイイかよ……』とポロっと漏らすと、『え、まさか五条ってそういう趣味が……!?』なんて俺の
「痛い痛い! 冗談だから、もうやめて!!!」
「まったく、言っていいことと悪いことがあるんだぞ☆」
「…………自分だってしたくせに」
「ん~? 何か言ったかな?」
「べっつに~♪ あっ! ギルドが見えてきたよ。早く行こうぜ」
小声で反論したことを誤魔化すように五条の手を引っ張ってギルドへと走って行く。そんなマルクのいじらしい頑張りに水を差す気にはなれず、五条は笑いながら手を引っ張られながら付いて行く。
そのままギルドに入ると、中にいた人間全員がこちらを向いて注目してくる。なんだと思いながらも、俺たちは受付嬢から迷宮に関するクエストを受けようとすると、受付嬢が「ちょっとお待ちくださいませ!」と悲鳴じみた声を上げて裏手へと逃げるように走って行った。
一体なんだと思いながらも、適当に近くのテーブルに近づくと、既に座っている冒険者がそそくさと席を譲ってくれる。
「いや~、この間ちょっとひと暴れしていて良かったね♪」
「本当に良かったね~って!? さっきの人たちの顔を見た?! 思いっきり恐れられてたよ! はぁ~、なんか俺たちすっごい悪者っぽくって居心地が悪いんだけど」
「アッハッハッハ♪ 慣れだよ慣れ。ああいう接し方に慣れてればこれは便利だなって思う日が必ず来るもんさ」
「そんな嫌な慣れはしたくないな」
ため息をつきながら、空いた席に腰を下ろすマルクを見ながら、「何だかんだ言いながらマルクも普通に座ってんじゃん」と揶揄する五条。
そのまま他愛ない世間話程度の会話を楽しんでいると、受付嬢が消えていった裏手の方からギルド支部長が慌てたように駆けつけてきた。
「いや~、来てくれたというのに、コッチの事情で待たせてしまって申し訳ない」
ペコペコと頭を下げてやって来るギルド支部長に、五条もマルクも別に大して迷惑を被っていないため、軽く気にするなと言って本題へと移らせる。
「ああ、実はだね。君にこれを渡したくて待ってもらっていたんだ」
そう言ってギルド支部長が取り出したのは、銀で出来たプレートだった。これの意味することはただ一つ……。
「今日から俺も銀級冒険者って訳か……。だけど一体どうして急に? 俺はまだクエストを一つもこなしちゃいないし、評価されることなんて迷宮の素材を売っ払らったことくらい……ああ、そういえば、ガルドの奴をぶっ飛ばした事もあったな!?」
なんてことない事の様に言うが、そのどちらもが一流と呼ばれる冒険者でなければ出来ない偉業だということに素で気が付いていない。
その表情から、支部長も五条が本気で分かっていないという事に気付き、頭を押さえながら、胃薬と一緒に頭痛薬も買った方がいいなと真剣に検討する。
「はぁ〜、いいか五条。お前の取ってきた素材はどれも滅多に取れない深層の魔物の魔石だ。本来ならば一流と呼ばれる冒険者パーティーが幾つもの準備と時間を掛けて挑むのが深層だ。それをたった2人で、しかも相方はただの荷物持ちだ。そんな人物を黒のままにしたままではおれん。この銀級への昇格も本来ならば異常だが、お前の取ってきた素材関連のクエストを後から受注した扱いにしてクリアしたという異例の特例だ!」
なるほど、そうやって無理矢理に俺を銀級にねじ込んだのか……。
「だったらさ、なんで手っ取り早く金級に昇格させなかったんだ? 中途半端な銀級よりも、俺は最高ランクの金の方が良かったんだけどな……」
「無茶を言うな。金級冒険者といえば冒険者ギルドの看板と呼んでも差し支えない存在だぞ。それをついこの最近登録したばかりのルーキーに授与できるほど軽いモンじゃない」
「そっか……。なら、誰も無視できない功績を上げれば文句無しで金級冒険者に昇格できるってことでOK?」
手で輪っかを作る五条に嫌な予感を覚えるが、聞かなければ余計に面倒な事になるだろうと思うので聞いてみる。
「…………はぁ、あまり胃に悪いから聞きたくはないが、一体何をやらかすつもりだ?」
「やらかすだなんて人聞きが悪いな~♪ 人類最高到達階層の壁にして、先日の勇者一行を全滅寸前にまで追い込んだ化け物を討伐する。これほど分かりやすい実力証明は他にないだろう?」
「なっーー!?」
案の定とんでも発言に鼻水を垂らして驚愕するギルド支部長。とはいえ、いつまでもバカ面を晒してはいられんと、ブンブンと顔を振って気を取り直す。
「お前……。それは本気で言っているのか? お前が言っている相手は伝説に謳われるベヒモスだろ!? 先日の勇者一行も奴と遭遇してしまったがために仲間の1人が死んだと聞いている。はっきり言って自殺行為だ。仮に討伐に乗り出すにしても、王国騎士団の助力と勇者一行の回復を待ってからでも遅くはないだろう」
当然だ、ギルド支部長の言っていることはどれも正論で、常識的に考えるのならば五条を止めるのが正解の筈だ。けれど、ほんの僅かな間であったが、五条ならばもしかして本当にできてしまうのではないかという謎の信頼感がマルクの胸の中にあった。
だからギルド支部長の意見に賛成することはない。されど、五条の考えを後押しするつもりもない。
そもそも、五条なら誰が何と言おうともきっと自分勝手に行動するに決まっている。
だったら、ボクはただ五条の後ろをただついて行く。それがきっと一番いいのだろう。
「ねえ、五条はギルド支部長さんの意見を聞いてどうするの? ボクは五条ならベヒモスだって心配ないって思ってる。だから、やるかどうかは五条に任せるよ」
「本っ当にマルクは俺のことを分かってるぅ♪ やるよ当然ね! そんで理解させてやるよ。俺が
不敵な笑みを浮かべて首にぶら下げていた黒のプレートを取り外してギルド支部長に放り投げて返す。そして、新たに渡された銀のプレートを首にぶら下げて席を立つ。
「あっ、そうだ! ねぇ、そこの受付嬢ちゃん。俺たち今からベヒモスをやっつけるために迷宮に潜るんだけどさ、ついでに出来るクエストとか適当に見繕ってよ」
「……は、はい! 了解しました」
急な願いで惚けてしまっていたが、気を取り直してすぐさま壁に貼られていたクエストが書かれた依頼書のいくつかを剝がして五条の前に持って来る。
そのどれもが迷宮の奥底にある為、あまり他の冒険者が受けないような困難なものだった。
「う~ん、それじゃこれ全部受注するよ。後さぁ、今日中にはベヒモスの素材を売りに来るから。ちゃんと払えるように金をかき集めといてね♪」
それだけ言うと、五条は目の前に置かれたクエストの依頼書を全部奪い取って出て行った。その後ろを遅れてマルクが「待ってよ~」っと走って追いかける。
「はぁ~、あいつなら本当にベヒモスを倒してきそうだな。あぁ~!! 伝説の魔物なんて一体幾らで買い取ればいいんだか。とりあえず、国に報告するか? いや、あいつが本当にベヒモスを討伐しに行ったと決まった訳じゃ……。ぐぅっ──!! は、腹が痛くなってきた」
そろそろ本格的に胃に穴が開くのではないかと心配するギルド支部長を横目に、先程の会話を盗み聞きしていた冒険者たちはコッソリと五条が本当にベヒモスを討伐出来るかどうかを賭けていた。
ちなみに、オッズは五条7でベヒモス3といったところだ。意外にも五条の実力を正しく評価する者が多いと思われるかもしれないが、本気で五条がベヒモスに勝つと信じているのは半分程度、残りの半分は面白半分とスリルを狙っての生粋のギャンブル野郎だ。
そんな野郎共に喝の一つでも叩き落してやろうかと思案するも、結局無駄だと思いなおし、弱々しく立ち上がって今後のあれこれについて思案する。
「あ~、俺はこれから王城への連絡をする。お前は各地のギルドに連絡を取って金の用意をしてくれ」
それだけ受付嬢に伝えると、他のギルド職員にも色々と命令を下して奥へ消えていった。
それを見届けると、はっ! と受付嬢や他のギルド職員が慌てて各々の命じられた仕事をこなすために走り出した。
そんなギルドの慌ただしさを作り出した張本人はというと、
「ねぇ? なんであんな事を言って出ていったのに迷宮じゃなくて飯屋に向かってんの?」
「いやなんでって、クエストに挑む前に飯食って力をつけるってのは某モンスターでハンターさんの常識だろう?」
「いや、クエスト前に飯を食べて力をつけるのは常識だけど、そのモンスターでハンターさんってのは誰のこと?」
やっぱ異世界人にこのネタは通じねえか~っとうなだれながら、旨そうな飯屋を探してあてもなく歩き続けていると、道の先にある店屋で3人の子供が店主らしき大人に叩きのめされている光景に出会った。
「このクソガキ共が! 二度とウチの店の物をかっぱらえねぇように徹底的に叩きのめしてやる」
「ぐぅ……、こっちは腹が減って死にそうなんだ! ちょっとくらいいいだろうがケチ!」
「なんだとこの!!!」
「なんだよ! 殴るならやってみろ!!!」
「「兄ちゃんを放せ!!!」」
ボコスカと持ち上げられて顔を殴られる長男らしき子供を引き剝がそうと2人の男女の子供が泣きながら店主の服を引っ張るが、邪魔だと足蹴にされて更に泣き喚き、それを見た長男が怒って店主の手に嚙みついてしまう。
「いってぇぇぇ!!! この野郎!!! もう許さねぇ!!!」
ついに怒り狂った店主が泥棒撃退用の棍棒を手に取って、嚙みついてきた子供目掛けて振り下ろそうとする。
が、その瞬間──
「は~い、ストップ。これ以上の乱暴は中止しましょう」
振り下ろそうとした棍棒の先を摘ままれて、ビクとも動かせないことに驚く店主は後ろを振り返って声を掛けてきた人物を確認する。
「なんだテメェは!? さては、こいつらの仲間なんだな」
「ノーノー、俺はただの通り過ぎの赤の他人だよ。でもね、流石に見ていて気持ちのいいモンじゃなかったから止めさせてもらったよ」
チッチッチ! とバカにするように指を振って否定する五条の胸元を引っ掴もうとすると立ち上がろうとするも、上手い具合に摘ままれた棍棒を動かされるせいで、立とうにも立てないでいた。
「ぐ……この……!?」
「まあまあ、そう頭に血をのぼらせてカッカしなさんな。さっきの怒鳴り声を聞く限り、そこのガキ共が金も払わずに商品をかっさらおうとしてたんだろ。気持ちは分かるさ、俺だってそんな舐めた真似されりゃブチ切れるが、こんな小さいガキ相手にこれを使って殴るのはやり過ぎだ」
そうやって摘まんだ棍棒に呪力を乱暴に流し込んで、内側から爆発するように仕向ける。
すると、ボン! っと店主の持ち手と五条が摘まんだ場所の丁度中間地点の部分が真っ二つになるように小さな爆発が起きた。
「はぇ?」
何が起きたのか分からないが、今の不可思議な現象を起こしたのが目の前に立つこの男だということを何となく理解し、同時に喧嘩を売ってはいけない危険人物だということを察知した。
「あ……ああ……、そうだな。あんたの言う通りだ。俺も大人げなかったよ。とはいえ、このまま許しちまうと店の商売が上がったりになっちまう。だから、もう二度とここに近寄らせないためにある程度のお仕置きは必要だろ?」
決して怒らせないように、されどここで甘い顔をしてまた商品を盗まれたら商売が立ち行かなくなってしまうという問題をさりげなく滑り込ませる。
「確かに、そうなると商売の邪魔になってしまうのは確実だね。なら、その問題は俺が解決してやるよ」
「え、いや……、そりゃ助かりますけど。本当に大丈夫ですか? ああ、いえいえ!! 疑ってるとかそういうのじゃなくて、ああいう奴らは言って聞かせるなんてのが通じない連中なんですよ」
まあ、そうだろうな。見れば服はボロボロだし、靴も履いていない。体つきなんて栄養のある物を満足に食べていないことが丸わかりになるくらいやせ細っている。
これじゃ、いくら説得しても言い換えれば飢えて死ねと言っているようなもんだ。
そんな無茶ぶりに誰が答える。……だが、俺が今からするのは説得じゃない。
「まあ、あんたが不安に思うのも無理はないさ。だ・か・ら、目に見える物で納得してもらおうか」
そうやって五条が懐から取り出したのは鏡のようにピッカピカに輝く金貨だった。
それを店主の目の前に持ってきて、そっと胸元にあるポッケへと忍ばせた。
「それと、あんたの店ってパン屋なんだろ。なら、これでサンドイッチと適当に日持ちするパンを幾つか買おうじゃないか。勿論、お釣りはいらないよ」
懐から取り出したもう一枚の金貨をピン! と指で弾いて店主の手元にパスする。
すると、店主は目の色を変えて立ち上がり、急いでサンドイッチと袋一杯のパンを持って来る。
「いや~、あんたなら信用するよ! また腹が減ったらこの店を御贔屓にお願いしますね!」
先程とは打って変わってにこやかな表情で対応する店主からパンの入った袋を受け取る。
「さて、そこのコッソリと逃げようとしてるガキ共! 腹が減ってるんだろ?」
子供らは店主が立ち上がって店の中に入ったお陰で拘束が解かれ、バレないうちに人混みに紛れてコッソリと逃げようとしたのだが、どうやら五条には最初から気づかれていたようで、慌てて走り出そうと前を向くと、後ろから声を掛けてきたはずなのに、目の前でパンを差し出してくる五条がいた。
「なんだよ! 同情のつもりか!?」
「うんそうだよ。身なりがボロっちくって、体つきも貧弱そうな君たちが哀れなもんだからさ、この悟お兄さんが慈悲の心を配って上げようと思ったのだよ少年」
上から目線で失礼なことを言う五条に警戒心MAXな長男君だが、背中に隠れる2人の腹からグゥ~っと腹の音を聞き、渋々と五条の差し出すパンを奪うようにひったくる。
それを半分に割り、後ろの2人に食わせて自分は一欠片程の大きさのパンを口に入れる。
「もう喰っちまったもんを返せだなんて言うなよ! そっちが勝手に渡してきたんだからな」
「アッハッハッハ♪ この俺がそんなみみっちいこと言う訳ないだろガキんちょ。ところで、お前ら店のモンを金も払わずに盗むってことは当然金がないんだろ?」
「そんなの当たり前だろ。こんな身なりのガキを雇ってくれる所なんて何処にもねぇよ」
そう皮肉気に返すと、五条は笑いながら少年の頭を乱暴に撫でる。
「そうかそうか♪ なら、俺がお前らを雇ってやろうか? 勿論、給料は日払いで一日3食と宿で一泊できる分くらいの金は払ってやるよ」
そんなあまりにもな好条件に、はぁ? っと警戒するなというのが無理なものであろう。
何らかの犯罪の囮役か、もしくは美味しい餌をぶら下げて人攫いの元にでも連れていく気なのかと考えてもおかしくはない。
「悪いけど、これはもう半強制だからね。君たちに断る権利はない! あっ、これちょっと持っといてねマルク」
手に持ったパンの袋をマルクに渡し、有無を言わさず、両脇に子供らをまとめて抱え込んで連れていく。
「は、放せ! 俺たちをどうするつもりだ!?」
「「???」」
「どうするつもりって、さっき言ったじゃない。仕事だよ仕事! 危険がデンジャラスな所で働いてもらうのさ」
暴れる長男君に、突然抱え込まれて困惑する2人の男女の子供らに適当な仕事の説明をして終わる五条を見て、周りの人たちは人攫いだなんだと口にするが、誰も衛兵を呼びに行ったり止めようとはしない。
攫われているのは身寄りのない孤児で、もし助けたとしても子供ら3人を養う余裕も魔族との戦争でない為、黙って見過ごすしかないのだろう。
「ちょっと五条! さっきからメッチャ人攫いだって言われてるから。強引なのは今に始まったことじゃないけど、少しは周りの目も気にしなよ!」
「心配すんなってマルク。ちゃんと明日には綺麗な服で表通りを歩かせれば変な噂とか広まらないからさ」
この楽天家がと口にするも、結局言って聞く相手じゃなしと諦めて、未だ暴れる長男君だけ五条に抱きかかえさせたまま、困惑して声も出せない2人だけはとマルクが預かった。
そして、迷宮目指して歩きながら未だ喚く長男君の口に大きめのパンを無理矢理に口にねじ込ませて黙らせる。
「さて、ここが今日君たちが働く現場です!」
迷宮の前に辿り着くと、脇に抱えた長男君を降ろして地面に立たせる。
「モグモグ、ゴクン! ここって迷宮じゃねぇか!?」
口に入れられたパンを食いきってからツッコミを入れる。
「お前! 俺らをここでどうするつもりなんだ!?」
「良い事を聞いてくれた。今日ご紹介する君たちのお仕事は~ドルルゥゥ……じゃん! 荷物持ちです♪」
ドラム音を口で真似て、勿体ぶって紹介する仕事はいうなればマルクのお手伝いだ。
「お前らにはこれから俺がぶっ潰していく魔物から売れる素材を剝ぎ取って回収する。簡単な仕事だろ?」
ふざけるな! っと騒ぎ立てるのを無視して、無理矢理に手を引っ張って連れていく。
その後ろを迷宮がどんな所かあまり分かってない2人がマルクに「五条の後ろを歩いてれば結構安全な所だよ」っと一応噓は言っていないが本当のことも言っていない説明を信じて一緒になって付いて行く。
~~~~~~~~~~
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!! 死ぬ死ぬ!!!」
「そぉら! もっとしっかり走らねぇと魔物に食われて死んじまうぞ」
泣きながら魔物に襲われる子供と、その魔物を後ろから追い回す五条という意味不明な光景が目の前で起こっており、マルクは溜息をつきながら両隣から泣きながらお兄ちゃんを助けてと叫ぶ2人の手を引きながら五条を止めるために動く。
「もういい加減にしなよ五条。こっちの子らが泣いて助けてくれって言って凄く良心が痛いんだけど」
「え~だってメグミが俺も強くなりたいって言うから修業をつけてやってんだぜ」
メグミというのは長男君のことで、孤児故に名前がないというので五条が目つきが似てるから恵をパクってメグミにしようと決めたのだ。
ちなみに、マルクの手を握っている2人も、ついでだからということで男の子がユウジ、女の子がノバラと命名した。
そして、何故メグミが魔物に追い回されているのかというと、襲い掛かる魔物を次々に蹴散らしてゆく五条に向かって「俺もお前みたいに強くなりたいんだ! だから、俺を鍛えてくれ!」っと頼み込んだのが、この意味不明な光景を作り出した切っ掛けだった。
「いや、今から出来ることって言っても、身体づくりをするには栄養とかが足りなさすぎるし、技を教えるにもまず土台となる基礎も出来てないから、手っ取り早く実戦の空気と死と直面する緊張感でも──って危ねぇ!」
見ればメグミが疲れからか足が絡んで転んでしまっていた。それに気づいた五条は一瞬でメグミの前に立ちふさがって襲い掛かってきた魔物を蹴りの1発で倒した。
「じ……じぬかど思っだ!!!」
涙目になって抱きついてくるメグミにちょっと最初からやり過ぎちゃったかなっと思っていると、後ろからマルクが近づいてきてガツン! と頭を殴られた。
「この馬鹿! 加減ってもんを考えろ。見ろ! ユウジもノバラも泣き過ぎて呼吸困難になっちゃったじゃないか!?」
「「かひゅーかひゅー」」
「うん……。本格的に俺が悪かった。後でこいつらには飯を奢ってやるから許して」
本気で悪いと思っているようで、ガチで怒るマルクに手を合わせて謝る。
子供らにも、ここを出たら美味い物食わせてやるから泣き止んでくれよ……っとご機嫌取りしてようやく泣き止んでもらえた。
その後、メグミは五条のズボンから手を放さなかったし、ユウジとノバラもメグミの服の端を持って離れなかった。
その姿を見てイクメンパパみたいだねっとからかうマルク。勿論、その後すぐに五条から小石をぶつけられて悶絶していた。
そんな状態でも、五条は襲い掛かってくる魔物を相手に石を使わずに、単純に呪力をぶつけるだけで蹴散らしてゆく。一応、メグミたちはマルクの手伝いということで来ているので、五条が魔物を倒すとしょうがなくズボンから手を放して、死んだ魔物から魔石を剝ぎ取っていく。
「さて、結構潜ったな。依頼にあった目的の品もゲットしたし、そろそろ本日のメインディッシュであるベヒモスの討伐に出向くとしますか」
いよいよかとマルクが唾を飲み込み、メグミはマジっていう顔をして驚く。
王城でメルド団長から聞いた話では、20階層でグランツ鉱石を餌にした転移トラップに引っ掛かり、ベヒモスのいる階層まで飛んでしまったと言っていた。
だから、五条はここに降りてくる途中の20階層で自身の目である六眼を使用してお目当てのトラップを見つけていた。
そして、それを解除することなく罠を発動させずにグランツ鉱石を壁から取り外し、いつでもベヒモスの元へ転移出来る状態のまま懐にしまい込んでいた。
そのしまい込んでいたトラップ付きのグランツ鉱石を取り出して罠を起動させる。
すると、グランツ鉱石を中心に全員をすっぽりと覆う程の大きさの魔法陣が出現する。魔法陣が完全に完成しすると、輝きと共に一瞬の浮遊感を感じ、次の瞬間にはその場に誰もいなくなっていた。
気が付いた時には転移は完了し、五条を除く全員が尻から着地して腰を打っていた。
「痛たた……。ここは?」
先程までいた場所とは景観が異なる部屋を見て、転移が成功したことを悟る。
「とりあえず、ここまでは予定通りだな。後はベヒモスをぶっ倒して帰るだけだ」
隣に立つ五条はう~んっと緊張感無く戦う前の準備運動を行っている。
それが一通り終わるのと同じタイミングで、階段の方に魔法陣が出現する。そこから現れるのは大量の魔物だった。
更に、橋の前にも魔法陣が出現し、そこから本日のお目当ての魔物であるベヒモスが咆哮と共に出現したのだ。
「GULUAAAAAAAA!!!!」
「ひぃ、ひぃぃぃ!!!」
「「「わぁぁぁぁ!!!」」」
その咆哮にあてられて、マルクは悲鳴を漏らし倒れ込み。子供らも五条にしがみついて震えていた。
けれど、五条だけは不敵に笑みを浮かべてベヒモスを睨む。
「はぁ……、伝説と語り継がれる最強の魔物と聞いて多少は期待したんだが、これなら準備運動の必要もなかったかな……」
期待外れだとガッカリするも、数だけはいるし憂さ晴らし位にはなるだろうと拳を鳴らす。
そして、未だしがみつく子供らに大丈夫と声を掛けて離れさせ、パニックになって遠くへ行かないようにとマルクに預けて戦場に立つ。
「そんじゃ、あれ全部倒してくるから。後の魔石の回収作業はよろしくな♪」
「──―っ! ああ、分かった。ちゃんと信用してるからね」
軽く言ってのける五条を見て、五条なら大丈夫だと再び確信し、子供らを抱いて五条を見守る。
「んじゃ、まずは数が多いのから片付けるとしましょうかね!」
階段側に現れた無数のトラウムソルジャーたちに一瞬で近づくと、一番近くにいるガイコツの頭を果物でももぎ取るかのようにあっさりと引きちぎると、もぎ取った頭に呪力を乗せボウリングでストライクを取るかのように束になって集まっているトラウムソルジャーの群れの中に剛速球で投げ込む。
その一撃でほぼ半分くらいの数のトラウムソルジャーがバラバラになって消し飛び、残りの半分は瞬きの間に五条が蹴散らしていった。
「さて、これで邪魔者は消え去った。それじゃ、精々伝説の力の一端でも見せてくれよwww」
笑いながら指でかかって来いと挑発する五条の態度にカチン! ときたのか、ベヒモスは唸り声を上げながら突進をかまして来た。
「GUOOOO!!!」
「なんだよ。質量を生かしたただの突進攻撃かよ。なら、カウンターの右ストレート!!」
ベヒモスが目前に迫るなか、一切の怯みも見せずに五条は軽く拳を握ってベヒモスの顔面目掛けて右ストレートを叩き込む。
普通なら、時速80キロを超える速度のトラックに人間が真っ正面から殴り掛かればどうなるか? 子供でも分かる簡単な問題だ。
A.轢き殺されて終わる。
これが現実だ。だが、もしその人間が裏世界最強の存在で、ここがファンタジー世界ならばどうなるのか。
A.世界最強の五条が楽勝でベヒモスを吹っ飛ばす。
「GUMOOOOO!!!??」
「「「「えええぇぇぇ!!?」」」」
五条はその場から一切微動だにせず、逆にベヒモスがあっさりと吹っ飛ばされる結果に終わった。
それを見ていたマルクたちは目玉が飛び出る程の驚愕に満ちた顔をして驚く。
「ありゃりゃ……。これは派手に飛んだな。まあ、これもこの五条さんの強すぎるパワーがいけないんだけどね。テヘペロ♪」
舌を出して可愛い子ぶる五条に、吹き飛ばされたベヒモスは怒りに燃え、その怒りをエネルギーとし自身の角へと集中させて赤熱化させてゆく。
その角の周りの空間は、あまりの熱量に歪んで見えた。それを一体どうするのかと黙ってベヒモスを観察していると、ベヒモスはその角に溜まったエネルギーをビームとして発射させてきたのだ。
その速度はまさしく光線で、一瞬で視界が赤色に染まり、ビームは五条に完全に直撃した。
その威力は部屋全体を大きく揺らす程強烈で、ビームが直撃した場所は大量の黒煙が舞っていた。
「ご、五条ぉ!!!!!」
まさかあの五条がこんなにもあっけなく終わるとは思ってもおらず、されどあんな威力の攻撃を喰らえば誰であろうと死ぬのは道理。
あまりの一瞬の出来事に未だ声を上げて叫ぶこと以外出来ないマルクは、腕の中にいる子供らを守ろうとギュッ! っと抱きしめることしかできなかった。
「GULUAAAAAAAA!!!!」
「っち、な~に勝った気で吠えてんだデカブツが。こんな煙たい攻撃しやがって……」
勝利の咆哮を上げるベヒモスに水を差すように、煙の中から無傷の五条がゲホゲホと咳き込みながら現れる。
「あれが奥の手ならもう興醒めだな。あんなんじゃ俺の無下限術式を突破することなんざ出来ねぇよ」
だがそれでも面白いもんを見せてくれた礼をしなければなるまい。あんなビームを撃って来たんだ、こっちもそれ相応のモンで返してやらねぇと失礼に当たるだろう。
そうニヤついて笑う五条はゆっくりと指を一本掲げ、術式を発動させる。
「そんじゃあまり乱暴すぎると迷宮が使えなくなっちゃうから、弱いので相手をしてあげよう。術式反転【赫】」
先程のベヒモスと同様に空間が真っ赤に染まり、指の先には虚空が出来ていた。それを視線の先にいるであろうベヒモス目掛けて打ち込む。
その結果は先程と同等……否、それ以上の衝撃が部屋全体を揺らし、爆発による衝撃がマルク達にも襲い掛かりゴロゴロと吹き飛ばされて壁際まで転がっていった。
「……うん。やっぱ手加減してもあれくらいで死んじゃうんじゃ強敵とは呼べないね。まあ、一応魔石を回収する為とはいえ、あの術式を喰らって原形を保ってられるんだから、あの世で精々誇っていいよ」
橋の向こう側の壁に埋もれて息絶えているベヒモスに辛口評価を下す五条は、先程の攻撃で壊れてしまった橋をベヒモスの死体を回収するため飛び越えて、転がって壁際で丸まっているマルク達の手前に放り投げる。
「そら、早速魔石の剝ぎ取りを頼んだよ。ちゃんと仕事しないと給料でないよ」
パンパンと手を叩いてすぐに起き上がるように催促する五条に、マルクは立ち上がって幽鬼のような足取りで五条に近づく。
「~っ! 死ぬかと思ったじゃないか!? っていうか、五条が死んだかと思ったよ! なんであんな攻撃が直撃して生きているどころか服すら無傷なの!? 意味が分からないんだけど!!」
肩を引っ掴んでギャーギャー! 騒ぐマルクに落ち着けよ! っと脳天にチョップを入れて黙らせる。
「いや~、あれでも威力を小さくして撃ったんだよ。それと俺が何故生きているのかと聞いてきたけど、多分説明しても無限級数とか専門的な言葉が飛び交うから学のない奴には理解不能だから」
それでもまだ言いたいことはあったマルクだが、きっと適当に丸め込まれるんだろうなという結論に至り、さっさと魔石を剝ぎ取って地上に戻ろうと決意した。
そして、売った魔石の換金分の金額の分け前を考えればきっとしばらくは遊んで暮らせるお金が手に入ると思い、壁際でバタンキュー! と目をまわして気絶しているメグミたちを起こして剝ぎ取り作業に入る。
こうして、伝説と呼ばれたベヒモスの討伐は実にあっさりと終わり、ベヒモス討伐証明の証としてその首を切り落として地上へと戻る。
これが、後に冒険者ギルドで語り継がれる五条悟という
毎回文字が1万を超えるのはキツイ。けれど、それ以下だと納まりが悪い。
中途半端でも、もっと手短に書いた方がいいのだろうか?感想求む!
次のIFで五条が飛び込む世界
-
ゼロの使い魔
-
七つの大罪
-
スレイヤーズ
-
オーバーロード
-
HUNTER×HUNTER
-
蜘蛛ですが、なにか?
-
この素晴
-
ダンまち
-
転スラ