三井寿は諦めの悪い男   作:ネコガミ

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本日投稿3話目です。


第10話『勝負には勝ったが…』

次の湘北の相手は陵南に決まった。

 

俺と美和は偵察で得た情報を安西先生に報告していく。

 

「ご苦労様でした。三井君と赤木さんもお昼を食べてください。」

 

安西先生の労いの言葉に頭を下げると、美和と一緒に適当な場所に移動してから弁当箱を開ける。

 

「安西先生はどう陵南と戦うつもりかな?」

「陵南の方が運動量が多いからな。試合終盤までにある程度はアドバンテージを作っておきたいとこだ。」

「序盤は剛憲を中心に粘って、機を見て木暮君を投入って感じになるかな?」

「たぶんそうなるだろうな。」

 

弁当を食いながら俺と美和は話していく。

 

「木暮君の出来次第になりそうだね。」

「プレッシャーになるから本人には言うなよ。」

「わかってるってば。それより三井君、次は海南の試合みたい。」

 

コートに目を向けると海南のユニフォームを着た牧の姿が目に入った。

 

「ユニフォームだけじゃなく、もうスタメンも勝ち取ってるのか。」

「ねぇ三井君、牧君ってどんなプレイヤーだった?去年の県大会決勝は見てたんだけど、コートの中から見るとまた違って見えるだろうし聞いてみたいなぁ。」

 

美和の言葉を受けて去年マッチアップした時の牧の動きを思い出す。

 

「積極的なカットインから展開を作っていくプレイヤーだったな。当たり負けしないパワーとボディバランス、味方に的確にパスを回せる広い視野、そしてスコアラーとして十分な得点力もある。3Pシュートを撃ったのを見た覚えがねぇから外があるのかわからねぇが、それを除けば理想的なPGだ。」

「おぉ、評価高いねぇ~。じゃあ戦う時に備えて偵察しますか。」

 

そう言って急いで昼飯を食い終えた美和がノートを手に取る。

 

「あっ、三井君はゆっくり食べてていいからね。」

「悪いな、美和。」

「いいのいいの、これもマネージャーの仕事だから。」

 

試合前のアップから海南の偵察をしている美和がノートにペンを走らせる。

 

「海南は皆レベル高いけど、その中でも牧君は十分に存在感を発してるわね。う~ん、外から撃たないなぁ…無いのかな?とりあえず保留ってことで。」

 

なんとか試合が始まる前に昼飯を食い終わった俺は、美和と並んで偵察していく。

 

そして少し経つと海南の試合が始まった。

 

牧を起点に海南は攻撃を展開していくが…牧の動きが少し鈍い様に見える。

 

…そういや去年マッチアップした時も、中盤から動きが良くなってきてたな。もしかしてスロースターターなのか?

 

「美和、牧はスロースターターかもしれねぇ。確定じゃねぇが一応メモしておいてくれ。」

「りょうか~い。それにしてもスロースターターであのキレかぁ…うちだと三井君以外止められる人いないんじゃないかな?」

 

先輩達に対して失礼だが、たしかに先輩達じゃ牧を止めるのは厳しいだろうな。

 

赤木も今は無理だ。将来的にはある程度やりあえるかもしんねぇが…。

 

試合が進んで前半の終わり頃になると、牧の動きのキレが増してきた。

 

「牧君の動きが良くなってきたね。これは三井君の言う通りに、本当にスロースターターかも。」

 

試合が後半に入ると牧は更に躍動していく。

 

そして後半残り10分の時点で、海南が相手チームに対してトリプルスコアに近い大差をつけると牧はベンチに下がった。

 

「強いなぁ…流石は強豪の海南ってところだね。」

「あぁ、強いな。いずれは海南とも戦うことになるだろうが、今は次の陵南戦だ。」

「うん、そうだね。次に勝たなきゃ先は無いもん。」

 

牧が下がったところで海南の偵察を終えた俺達は、陵南戦に向けて準備をしていた皆と合流したのだった。

 

 

 

 

side:赤木剛憲

 

 

春の県大会の2回戦は陵南との試合なのだが、そこで俺は俺よりもデカイ男とマッチアップする事になった。

 

そのデカイ男は魚住純(うおずみ じゅん)という名らしい。

 

試合前のコートを使ってのアップの最中、チラリと魚住に目を向ける。

 

三井と美和からの情報によれば技術は拙く、今のところはデカイだけの選手らしいが、それでも油断する気は無い。

 

アップが終わり試合が始まる。

 

先ずはジャンプボール…俺が制して湘北ボールから試合が始まった。

 

素早くゴール下に向かうと魚住が俺のマークにつく。

 

副キャプテンでPGの土橋さんから俺にパスが来た。

 

迷わずに仕掛けるとゴールを決めた。思いの外あっさりとだ。

 

攻守が入れ替わり今度は魚住が仕掛けようとしてくる。

 

それを防いでいくと3秒のバイオレーションでボールは湘北に。

 

二度ボールを受け取ると直ぐに魚住がチェックを掛けてくるが、冷静にベビーフックでゴールを決める。その際に魚住のハッキングでバスケットカウントを貰うとフリースローも決める事が出来た。試合の立ち上がりとしては最高の出来だろう。

 

その後もリバウンド争いを始めとしたゴール下の勝負で次々と魚住に勝利していった。だが魚住との勝負には固執せず、一回戦で受けた三井からのアドバイス通りに周りにパスを出していく。

 

しかしチーム全体としては五分の状態が続いていった。

 

だが前半残り10分のところで安西先生がタイムアウトを取ると木暮を投入。そしてコートに入った木暮が3Pシュートを決めると、試合の流れは湘北にやって来た。

 

そのまま優勢な状態で前半を終えたが、後半に入ったところで陵南が仕掛けてきた。

 

今日2試合目ということもあって運動量が落ちてきた湘北メンバーは陵南の仕掛けについていけなかった。安西先生も比較的フレッシュな控えを投入したりして対抗しようとするも、後半残り5分のところでスコアは横並びとなってしまい、後半残り3分には逆転されてしまった。

 

まだ勝機はある。その一念で俺は俺の仕事をやり続けたが…試合は77ー84で負けてしまった。

 

悔しさに拳を握りしめる。

 

ふと魚住と目が合った。

 

奴との勝負には勝ったが試合は負けてしまった。

 

…次は試合にも勝つ!

 

そう己を奮い立たせた俺は、胸を張ってコートを後にしたのだった。

 

 

 

 

side:田岡茂一(たおか もいち)

 

 

「安西先生、今日はありがとうございました。」

「えぇ、こちらこそありがとうございました。」

 

前半の半ばに伏兵の木暮に3Pシュートを決められると流れを持っていかれて冷や冷やしたが、ディフェンスに光るものがある池上を投入して彼をマークさせた事でなんとか致命的な程に点差が開かずに済んだ。

 

そして後半からは計算通りの試合展開になったんだが湘北の選手達…特に赤木の予想以上の奮闘で中々追い付く事が出来なかった。

 

だが最終的に試合はうちが勝った。

 

安西先生率いる湘北に勝った事も嬉しいが、今回の試合では勝利以外の収穫もあった。

 

あの弱気な魚住の負けん気に火がついたんだ。赤木の存在に刺激を受けて。

 

今回の魚住と赤木の勝負は魚住の完敗だが、そのおかげで魚住はこれから確実に伸びていく。ふふふ…基礎を徹底的に鍛えてやらないとな。

 

「ところで安西先生、今大会に三井は出場してなかったみたいですが、どうしたのですか?」

「あぁ、三井君は怪我の療養中ですよ。」

「怪我の?大丈夫なんですか?」

 

そう問い掛けると安西先生はニコリと微笑む。

 

「えぇ、経過は順調な様です。夏のインターハイ予選ではお披露目出来るでしょう。」

「そうですか…その時を楽しみにしています。」

 

安西先生に頭を下げた俺は踵を返す。

 

(三井か…スカウト出来ていればな…。)

 

もし三井をスカウト出来ていれば、もう少し楽に魚住を育てる事が出来ただろう。

 

(ふぅ…ないものねだりをしてはいかんな。)

 

気持ちを切り替えて次の事を考える。

 

(まだ5月で気が早いが、仙道と宮城のスカウトでは遅れを取らんようにしなければな。あの2人をスカウト出来たら魚住が3年になる年には…ふふふ、落ち着け茂一。まだ2人をスカウト出来たわけじゃない。)

 

思わずニヤけた顔を戻すために片手でもみほぐす。

 

「スカウトはさておき先ずは次の3回戦だ。試合の日までしっかりと準備をしておかなければな。」




前回、前々回と細々とした事を後書きに書いたので、今回は3人ほどキャラ紹介をば。


◆三井寿(みつい ひさし):原作主要キャラの一人で拙作の主人公。

 三井寿としての自我が確立した後に前世の記憶を取り戻したので、前世の人格に乗っ取られず記憶を吸収した形に。
 一応原作知識はあるのだが、原作の不良化した自分を見て色々と思うところがあったので原作知識は封印している。そのため前世の記憶は主にバスケのスキルアップや、勉強の時に用いられている。
 前世の記憶を参照してトレーニングを積んでいたのもあって湘北入学時には原作の1年だった頃の自分を超えていたが、運悪く原作同様に入部初日に怪我をしてしまった。
 しかし原作と違い挫折せず復活に向けて励んでいる。


◆赤木剛憲(あかぎ たけのり):原作主要キャラの一人。原作では湘北の大黒柱。

 三井のアドバイスを受けて成長中。既に神奈川ナンバーワンセンターの座が見え始めているかも。
 ベビーフックを使う赤木を止めるセンターが県内に思い当たらず、作者は正直やり過ぎたかもと思っている。


◆木暮公延(こぐれ きみのぶ):原作主要キャラの一人。原作主人公曰く『メガネ君』

 赤木同様に三井のアドバイスを受けて成長中。身体能力は凡庸だが、3Pシュートで田岡を冷や冷やさせて存在感を主張。
 原作では活躍が少なかった分、将来が楽しみなキャラの一人である。


こんな感じで今回の後書きは終わりです。

また来週お会いしましょう。

幕間で他校サイドを見たい?(書くとは言っていない)

  • よろしい、書きたまえ(見たい)
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