side:三井寿
さぁ決勝リーグ最後の試合……翔陽との試合が始まるぜ。復調した赤木に俺、安田、木暮、倉石のスタメンで戦っていく。
長瀬さんがスタメンのPGじゃないのは安田と藤真の相性とかを確認する意味がある。
春の県大会で安田が藤真を出し抜いたんだが、それで藤真が安田に苦手意識を持っているか……これが確認出来れば今後の戦略の幅が広がるからな。
さぁジャンプボール……赤木が制してうちの攻めからだ。
安田からボールをもらって……って、いきなりダブルチームかよ。1人は以前にやったやつだな。確か長谷川だったか。
チラリと確認すると木暮にマークが1人、そして中に2人。倉石と安田がほとんどフリーの状況……思いきった作戦だな。
さて、先ずはドリブルで仕掛けてみるか。3Pシュートはかなり警戒されてるからな。
目線で外にフェイクを掛けてクロスオーバーで中へ。タイミング良く倉石がスクリーンをしてくれたのもありあっさりと翔陽のダブルチームを突破。そのまま中を経由し逆サイドの外へ。
左サイドの角度の無いところからフリーで3Pシュートを撃つ……よし、幸先良くスウィッシュで決まったぜ。木暮と軽くハイタッチしながらディフェンスに戻る。
さぁ注目だな。安田と藤真のマッチアップだ。
実力で言えば藤真の方が上だ。だが安田にはその差を埋める強かさがある……って、いきなりファールかよ。
安田のファールで一度試合が止まる。直ぐに再開するべく藤真が動くが何故かファールをされた左手を気にしていた。
安田はケガをするほど強く触っちゃ……なるほど、安田は春の県大会の一件を思い出させるためにわざとやったのか。やれやれ……そういう駆け引きは1年のやるレベルじゃねぇぞ。
呆れと称賛が入り雑じった苦笑いをすると試合が再開したのだった。
◆
side:藤真健司
やりにくい……湘北の安田の印象はその一言に尽きる。
PGととしてゲームメイクをし、更に監督としてチームを采配する。これだけでもすごく頭を使うんだが、安田は更に駆け引きを要求して頭を使わせてくる。
おかげでまだワンプレーしか動いてないのに今後の消耗を考慮し、ペース配分をしていかなきゃならないと思ってしまっている。
……どうする?っ!?しまった!
安田にスティールされ速攻を掛けられる。そのままレイアップを決められスコアは0ー5となった。
(くそっ!)
心の中で悪態を吐くがそれで状況が変わるわけもない。
自分を落ち着かせるべく大きく深呼吸をするとタイムアウトが入った。……三淵監督?
頭に疑問を浮かべながらベンチに戻ると三淵監督がニッと笑う。
「健司、この試合は監督をせんでいい」
「えっ?」
「随分と強かな子がおるじゃないか。あの子の相手をしながらじゃきつかろう?」
確かにその通りだが、それでもきついとは言いたくない。
「健司、お前さんは成長した。けどな、そのせいか誰かに頼る事を忘れてしまっとる様じゃな。そりゃいかん。人間、1人でやれる事には限界がある」
「時には誰かを頼る。これもまた強さの1つよ。さぁ、健司。どうすればいいかわかるの?」
チームを任されガムシャラにやって来た。そしてそれで何とかしてこれたプライドじみたものがある。けど……それじゃダメなんだな。
「三淵監督……チームの采配をお願いします」
「うむ、任された」
ふと胸の辺りが軽くなった様に感じた。それと同時に視野も広くなった様な……あぁ、そうか。俺は気付かないうちにプレッシャーにやられてたのか。
「さぁ、先ずは基本のルックアップとハンズアップじゃ。そしてしっかりと足を動かす。これが出来んと勝てる試合も勝てなくなるぞ」
「「「はい!」」」
当たり前の事を言っただけなのにチームに活力が戻った。これが三淵監督の存在感なのだろうな。俺にはまだ出せないものだ。
グイッと水分補給をしてからコートに戻る。
「さぁ試合は始まったばかりだ!逆転するぞ!」
「「「おぉ!」」」
気が付けば自然と声を上げていた。気持ちのいい発声だった。
行くぞ湘北。試合はまだこれからだ。
これで本日の投稿は終わりです。
また来週お会いしましょう。