side:三井寿
合同合宿では夕方の比較的涼しい時間帯になると試合形式での練習が始まるんだが、ここで1つ変わったことをやっている。
それは……本来のポジション以外でプレーすることだな。
例えば赤木や魚住はPFで、牧はSF、藤真はSGといった具合にポジションを変えて試合形式で練習をしている。
この試みは違うポジションでプレーをする事で選手各々の視野を広げる事を目的としているんだが、1人だけこの試みから外れている奴がいる。まだ素人の桜木のことだ。
あいつは視野を広げる以前に基礎を固めなきゃいけない段階にいる。だから今回の試みに参加していない。
さて、今回の試みの中で意外にも苦戦せずに直ぐに順応した奴がいる。それは……魚住だ。
魚住はチームプレーを心掛けているから普段からチームメイトのプレーをよく観察しているらしく、それ故に今回の試みに早く順応出来たのだろうというのが田岡監督の言葉だ。
もっとも田岡監督自身、この魚住の意外な器用さには驚いていたけどな。
「赤木!またCの動きをしてるぞ!もっとPFの動きを意識しろ!」
「わかってる!」
「癖で動くんじゃなく考えて動け!それが出来なきゃ魚住には勝てねぇと思え!」
「おう!」
こうしてアドバイスの声を飛ばしているが苦戦をし続けているのが赤木だ。
見方を変えればCの動きが染み付く程に練習を重ねたってことだが、逆にそれしか出来なくなっているとも言える。
もしクレバーな相手に癖を見抜かれたら完封されることもありえる。実際に決勝リーグで魚住にそれに近いことをされたしな。
赤木は今の状態を乗り越えれば一気に伸びると思うんだが、その前に魚住がブレイクしちまったからな。ウインターカップではゴール下のケアも考えてプレーしねぇといけねぇかもな。
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side:仙道彰
(本当になんでも出来るな三井さんは)
夕方の試合形式じゃ皆がポジションを変えてプレーしてるんだが、その中でも各ポジションで抜群の動きをしてるのが三井さんだ。
とはいってもなにも特別なプレーをしてるわけじゃない。むしろ大会の時よりも地味で基本的なプレーをしている。
多分だが俺達に見せるためにあえてそうしてるんだろうな。監督達の誰かに指示されたのか三井さんが自分で考えたのかは知らないけどな。
その証拠とでも言うべきか、三井さんがコートに入ると見学に回される奴が増える。特に三井さんがプレーするポジションの奴がな。
(おっ?今の面白いな)
基本的なプレーを主体に動いている三井さんだが、今の高いループのレイアップみたいに時折遊び心みたいなのも混ぜてくる。だから見ていて飽きないどころか幾らでも見ていられるぐらいに面白い。
(こんな感じか?)
頭の中でさっきのレイアップの動きをイメージすると、早く練習がしたくて身体がウズウズする。
(そういや中学の時に一回だけ北沢も同じのをやった様な?)
そう思ったが直ぐに意識を三井さんの方に戻す。見逃しちゃもったいないからな。
(今度は片足を上げてフェイダウェイ?……あぁ、なるほど。片足を上げて魚住さんのベビーフックみたいに相手にブロックされない様にしてるのか)
さっきのレイアップみたいに頭の中で動きをイメージしてみるが、どうも上手くイメージが出来ない。こいつは実際にやってみるしかなさそうだな。
(しかし呆れる程に引き出しが多いな三井さんは。でも試合で使わないってことはそれだけ難しいってことか?いいね♪燃えてきた)
三井さんの試合形式の練習が終わり今度は俺がコートの中に入る。
(とりあえずやってみるか。失敗して怒られたらその時はその時ってな)
その後、実際にやってみたがレイアップの方は上手くいったんだが片足のフェイダウェイの方は失敗しちまった。
しかもバランスを崩して転んだもんだから田岡監督にえらい怒られちまったぜ。
けどまぁ感覚は掴めた。シュートが決まるかはわからねぇが次は転ばない様に出来るだろ。
だから田岡監督……そろそろ説教は終わりにしてくれませんかね?
これで本日の投稿は終わりです。
また来週お会いしましょう。