三井寿は諦めの悪い男   作:ネコガミ

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第100話『整う準備』

side:赤木剛憲

 

 

 パスを受け取りローポストから仕掛けようとするが魚住に阻止される。

 

「戻せ、赤木!」

 

 三井の声に反応してパスを出す。くっ、また周りが見えていなかったか。

 

 俺自身気をつけているつもりだが、どうしても切り替えが遅れてしまう。

 

 三井から木暮にパスが行き、パスを受け取った木暮は迷わずに3Pシュートを撃つ。リバウンドに備えようとすると魚住に押し退けられる。くそっ、また遅れた!

 

 リバウンドを魚住に奪われてしまったが着地の瞬間に三井がボールを奪う。そして一度長瀬さんにボールを戻して仕切り直しとなる。

 

 俺が魚住に勝つ必要はない。チームが勝てばいい。そう理解しているつもりだが、俺の心は焦りばかりが積もっていく。

 

 長瀬さんからボールを受け取った三井が中に切り込んでくる。いつパスが来てもいい様に準備をするが三井からのパスは来ず、ボールは倉石に渡る。そして倉石がミドルレンジからのジャンプシュートを決めて得点。プレーが切れると俺はホッと息を吐いた。

 

 だが次の瞬間、俺はバシッと強く背中を叩かれた。

 

「赤木、気を抜きたきゃベンチに下がれ」

 

 その言葉を聞きカッと頭に血が昇るが直ぐに三井の言う通りだと理解する。

 

「……すまん」

「いいか赤木、魚住がどういうケアをしてきているのかをよく見て考えろ。それが出来れば少しはマシに戦えるようになるかもしれねぇぞ」

 

 そんな余裕はない。それが出来れば苦労しないと言い返したいが、このままではなにも出来ずに終わってしまうのも確かだ。なら開き直るしかないのかもしれない。

 

 そう思い動きながら魚住を観察した。その結果あっさりとゴールを奪われてしまったが、ベンチやコートの皆からは非難の声が上がらない。すまないがもう少し甘えさせてもらおう。

 

 攻守が切り替わりゴール下でボールをもらうと顔を振ってハイポストから仕掛けるぞとフェイクを掛けるが、魚住はピクリとも反応しない。代わりにローポストから仕掛けようとすると直ぐに反応してきた。……まさか?

 

 無理をせず一度ボールを戻すと魚住の観察を続けるのだった。

 

 

 

 

side:三井寿

 

 

(そうだ赤木、よく見ろ。そして考えるんだ)

 

 赤木の変化に笑みを浮かべる。待ち望んだ変化だからだ。

 

 以前に木暮に聞いていたんだが、中学時代の赤木はダブルチーム等の複数で潰されることが多かったらしい。逆に言えば正面からやれば赤木が勝っていたケースが多いということでもある。

 

 その弊害とも言うべきか赤木は駆け引きが頗る下手だ。そしてそれは兼田さんとのマッチアップでゾーンを経験した事で更に悪化してしまった。格上と目していた相手でも全力でプレーすれば通用するという成功体験をしてしまったんだ。

 

 その結果として赤木は成長と同時に駆け引きが以前にも増して下手にもなってしまった。俺と安西先生は今の状態の赤木を危惧してはいたんだが、その危惧を払ってくれる存在が現れた。魚住だ。

 

(今回の全国で赤木の目が覚めれば御の字と想定してたんだが、まさか魚住がここまで成長しちまうとはなぁ)

 

 兆しはあった。神奈川どころか全国でもトップクラスの体格を有し、更にライバルにも恵まれた環境……魚住の負けん気次第だったが、これで伸びない筈がない。

 

(これで赤木はようやく駆け引きの重要さを理解する。まだ十分とは言えないが最低限は戦える準備が整った)

 

 後は全国という大舞台……ここで振り掛かる重圧に皆がどう打ち克っていくかだな。楽しみになってきたぜ。




これで本日の投稿は終わりです。

また来週お会いしましょう。
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