本日投稿1話目です。
side:牧紳一
春季関東大会の県予選の会場で三井が進学した湘北の試合が始まったが、俺達海南の偵察目的である三井は試合に出場していなかった。
「三井が出てないな。ベンチにはいるがユニフォームすら着ていない…夏の秘密兵器として温存か?安西先生ならありえるかもしれん。」
高頭監督が手にした扇子で肩を叩きながらそう話す。
俺は高頭監督にスカウトされて海南に来たが、高頭監督は三井もスカウトしていたらしい。
まぁ、それも当然か。強豪校なら駄目もとでも三井に声を掛けるだろう。あいつにはそれだけの才能がある。
三井の偵察は出来なかったが、代わりに赤木というセンターのプレイが俺達の目に留まった。
「いいセンターだ。オフェンス、ディフェンス共にゴール下を十分に任せられる。ポストプレイが少ないのが少し気になるが…。」
高頭監督の言葉に頷く。
確かにポストプレイが少ないが、あれはどちらかというとポストプレイをしてもパスを出せる相手がいないんだろう。
それほどにあのセンター…赤木は三井のいない湘北の中で突出し孤立している。
もう少しでいい。周りの奴等が動いてフォローをしてやれば、あいつの意識も変わる筈だ。
だが幸か不幸かあいつは1人でもゴール下で戦えてしまう。
だから周りの奴等はあいつに任せてしまうし、あいつもそれを信頼として受け止めてしまっているんだ。
試合は進んでいき後半、眼鏡を掛けた少し線の細い男が湘北メンバーとしてコートに入った。
すると…。
『赤木!外!』
ベンチから三井の声が飛び、赤木が眼鏡の奴にパスを出した。
そして眼鏡の奴が迷わず3Pシュートを撃つと、見事にスウィッシュで決まった。
このワンプレイで湘北の動きが変わった。
赤木のワンマンチームから、チーム全体で連携しだしたんだ。多少のぎこちなさは残っているが。
「うん、悪くないチームになった。だが、あと1人欲しいところだな。」
高頭監督の言葉に頷く。
そう、後1人欲しい。贅沢をいえばエースと呼べる選手が。
おそらくその役目は三井が担うだろう。
ポジションはどこになるかわからんが…このチームに三井が入れば面白いチームになる事は確かだな。
その後、湘北が勝ち上がったのを見届けると、俺は1人チームから離れて三井の所に向かう。
すると三井は女連れで2回戦の相手を偵察していた。
邪魔をするのもどうかと思いつつも三井に話し掛けると、三井自身から試合に出ていない理由を聞く事が出来た。
運が悪かった。三井が出ていない理由はこの一言に尽きる。
まさか入部初日に怪我をするとはな。
だが三井は腐っていない。それどころかあいつの目からは十分な闘志を感じられた。
そうだ、あの目だ。
どんな状況でも諦めないと言わんばかりのあの目こそが三井寿だ。
三井は必ず復活する…いや、前以上に成長して戻ってくる事を確信した俺は、話もそこそこにチームの所に戻った。
だがチームの所に戻った俺は熱くなった身体と心を持て余す事になる。
あぁ…早く試合がしたいぜ。
◆
牧は三井との再会で燃え上がった心を試合にぶつけた。
積極果敢なカットインから展開を作り味方にパスを、更に自身でも点を取っていくその姿は試合会場にいた人達を魅了していった。
牧の活躍もあって順調に勝ち進んだ海南は春季関東大会神奈川県予選の準決勝で、過去4連続でインターハイの全国大会に出場したことがある強豪の翔陽と戦った。
前半は海南が終始優勢に進めたが、翔陽は後半に藤真健司(ふじま けんじ)という1年生PGを投入した。
牧とマッチアップした藤真は味方にパスを供給しながらも、独特なシュートタイミングと左利きの優位性を活かして牧のディフェンスを何度も掻い潜り得点を重ねた。
だが前半でついた差がつまることはなく試合は海南が勝利した。
この試合がキッカケとなって藤真は牧をライバルとして意識していくようになったのだが、牧は藤真に対して特にライバル意識を抱くことはなかった。
もちろん藤真が今後注意が必要な存在だとは認識したが、彼は既に三井を最大のライバルと意識していたので藤真をライバルだと意識する事はなかったのだ。
その後、神奈川県予選を制した海南はその勢いのまま春季関東大会本戦に挑み準優勝の結果に終わる。
そして春季関東大会本戦で1年生ながらベスト5に選ばれた牧は、神奈川の高校バスケ関係者達から『怪物』と称されていく様になったのだった。
◆牧紳一(まき しんいち):原作では神奈川ナンバーワンプレイヤーと呼ばれる男。
拙作においては捏造設定で中学時代に三井と対戦し敗れている。そのため既に三井をライバル視しており、三井の怪我からの復活を心から望んでいる。
◆魚住純(うおずみ じゅん):原作における赤木のライバル的存在。原作主人公にはボス猿と呼ばれる。
拙作の現時点ではまだ背が高いだけの男であり、赤木と渡り合えるほどの実力はない。しかし赤木に完敗したことで奮起し、田岡の厳しい指導を自ら望み励む様になった。
◆藤真健司(ふじま けんじ):原作では牧とナンバーワン争いをしていた男。
本話で初めて登場。
藤真は牧の事をライバル視する様になったが、牧にはされていない模様。
拙作においても不遇キャラになるかも…?
次の投稿は9:00の予定です。