side:河田雅史
全国の1回戦と2回戦の湘北の試合のビデオを皆で見ているが、やはり三井が抜きん出て存在感があるな。
「一ノ倉、木暮につけ」
「はい」
うちで一番しつこいディフェンスをするのが一ノ倉だが、監督はその一ノ倉を木暮につけるか。まぁ、3Pシュートを警戒するなら当然とも言える。
「沢北、三井を抑えられるか?」
「任せてください」
沢北の奴はそう言うが……まぁ厳しいだろうな。というか無理だろう。だがそれは監督もわかっていること。という事はここで沢北の鼻を一度折るつもりか。
深津と顔を見合わせて頷く。沢北は間違いなく三井にやられる。それがわかっているなら後は俺達でフォローすればいい。そうすれば十分勝てる。
翌日になり湘北との試合だ。ジャンプボールの相手は……たしか赤木だったか?
ボールが投げられ跳ぶ。うし、取った。一ノ倉がボールを拾って深津に、更に深津から沢北にボールが回る。おっ?沢北に三井がつくか。こいつは都合がいい。
さて、先ずはどう行く沢北?って、あっさりスティールされてんじゃねぇか。ったく、こうムラッ気があると計算しにくくて仕方がねぇ。
初得点は湘北に取られ再度うちのオフェンス。深津はもう一度沢北にボールを渡す。おっ?沢北も少しは集中したみてぇだな。顔付きがしまってる。
二度目の沢北と三井のマッチアップは時間切れのターンオーバーで三井の勝ち。三度目は三井のクロスオーバーに沢北が尻餅をついて三井の勝ち。四度目はターンオーバーぎりぎりに沢北が強引にシュートを撃って外しこれまた三井の勝ち。
「さて、次は……だ」
これはもうやる前から結果がわかる。なんせさっき尻餅をついた沢北のディフェンスだ。当然そうならないように距離を取るだろう。そうすると……。
「……まぁ、こうなるわな」
三井相手に距離を取るのは悪手も悪手。ただ同然で3Pを献上する行為だ。試合前に口酸っぱく言っといたんだがなぁ。
堂本監督はここで沢北を交代させた。まぁ一度下げて頭を冷やさせた方がいいだろうし、まだ序盤とはいえ点差的にもこのままじゃいかんわなぁ。
「さて、あのバカの尻拭いをするかね」
三井に勝つのはともかく湘北に勝つのなら幾らでもやりようはある。そしてそれをしっかりやれるのが俺達山王だ。
深津がボールを持つとゆっくりと展開を進める。先ずは1本取って弾みをつけねぇとな。
深津が向こうのPGの長瀬さんに仕掛ける。抜けそうな気配はあるが深津は無理をせず俺にパスを出す。
インサイドでボールを受け取った俺は赤木とマッチアップ。……うん、まだ大してわかっちゃいないが、十分にやれそうだ。
ローポストから仕掛けるぞとフェイクを掛けて一歩下がる。そしてジャンプシュート。うし、これで先ずは1本。
俺の強みは最初からCだったわけじゃなくCにコンバートした選手だということだ。ゴール下以外の選択肢がある。これは少なくとも高校バスケではどでかいアドバンテージだと俺は思っている。
なら、そのアドバンテージをとことん押し付けないとな?
俺達山王は無理に三井と勝負せずそこ以外で勝負をしジワジワと追い上げていく。そして前半残り10分といったところで逆転すると、沢北がコートに戻ってきたのだった。
これで本日の投稿は終わりです。
また来週お会いしましょう。