三井寿は諦めの悪い男   作:ネコガミ

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第106話『格の違い』

side:三井寿

 

 

 沢北か……ベンチに下がる前と比べると別人みたいな動きをしやがる。おそらく仙道みたいにムラッ気のあるタイプなんだろう。まぁ、こいつは仙道よりもひどいムラッ気だがな。

 

 ドリブルのキレは一級品、駆け引きも上手い。1on1なら全国で五本指に入るかもしれねぇが、それだけだ。

 

「くっ!」

 

 こうして無理に取りにいかず前に行かせなければ、ターンオーバーを嫌ったこいつは強引にシュートに行くしかねぇ。

 

 パスを出来るタイミングは結構あるんだが、こいつは欠片もパスをする素振りがない。そして外のシュートは確率が悪いとなれば、少し面倒だが怖い存在じゃねぇな。

 

 山王がこいつで勝負に来てくれている内にどれだけ行けるかがこの試合の鍵になるな。こいつの動きもだいたいわかったし……仕掛けるか。

 

 ギアを上げてゴールを狙いに行く。5点差、3点差、そして先ずは同点と……次だ。

 

 2点差、4点差、7点差、10点差、12点差、15点差、17点差、19点差、そして……。

 

(これを決めれば21……っ!?)

 

 河田にファールで止められた。シュートをする前だからバスケットカウントはもらえない。そして前半の残り時間は4秒。……やるな、河田。けど、湘北をなめるなよ。

 

 動いてボール出しの倉石からパスを貰うと同時にノールックパス。

 

(いけ、木暮!)

 

 前半終了のブザーが鳴ると同時にボールがネットを通過する音が耳に届く。これで22点差だ。最高の形で折り返せたぜ。

 

 だが憔悴した様子の沢北を除き他の山王メンバーには焦った様子は無い。……流石は王者山王ってとこだな。

 

 

 

 

side:河田雅史

 

 

 まぁものの見事にボコボコにされたもんだな沢北は。ありゃしばらくは立ち直れんわ。

 

「後半頭から仕掛ける」

 

 おっと、今は沢北のことより試合に勝たにゃいかんわな。

 

 堂本監督が指示したのは俺達山王のお家芸のフルコートプレスディフェンスだ。こいつで先ずは同点に追い付くそうだ。

 

 しかし前半最後のファールは結果的に失敗だったな。大人しく取られとけば21点差で済んだのに、22点差になっちまった。

 

 まぁ、湘北にああいったセットプレイもあると知れたからそれでよしとすんべ。

 

 さぁ後半開始だ。先ずは無難に2点を返して20点差。そしてここからは俺達の時間だ。

 

 フルコートプレスディフェンスで圧を掛けていく。特に三井にはボールを回させない。あいつに持たれると面倒な事になるからな。

 

 ボールを奪い追加点。これで18点差。経過時間はまだ1分。いいペースだ。

 

 更に圧を掛けていく。……おっと、三井にボールが回っちまった。囲め囲め。三井を動かせるな。

 

 三井が一歩下がったのを目にした俺は反射的に下がる。予感した通りに一ノ倉と深津の二人を抜き去った三井が上がってくる。

 

(とりあえずディレイを掛けて下がる時間を……あっ?)

 

 3Pラインの前で待っていたら不意に三井がディープスリーを撃った。

 

(ここでディープスリーかよ。しかも決めるたぁな。こりゃ今大会で一番しんどい試合になりそうだわ)

 

 そう思ったのはどうやら俺だけじゃないらしい。深津に一ノ倉、そして先輩達もが背中から闘志が溢れ出さんばかりに集中し始めたのだった。




これで本日の投稿は終わりです。

また来週お会いしましょう。
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