三井寿は諦めの悪い男   作:ネコガミ

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第107話『消耗と動揺』

side:三井寿

 

 

 後半始まって20点差以上あるというのに山王の奴等は諦めるどころか集中を高めてやがる。じわりじわりと差を詰められる後半のこの展開は逆にこっちを心身共に追い詰めてくる。

 

 特に消耗が激しいのが木暮と赤木だ。木暮は前半ずっと張り付いてきてた一ノ倉のマークを外すために足を使い続けていた。更に後半も山王のフルコートプレスディフェンスに対抗するために足を使っているから限界が近い。

 

 赤木は河田との駆け引きで常に頭を使っているからか消耗がいつもより早い。おそらく二人共最後までもたないだろう。

 

 時折なんとか得点を返しちゃいるが山王の追い上げは止まらない。後半残り8分で追い付かれちまった。

 

 ここで安西先生はタイムアウトを取る。そして赤木、木暮、長瀬さんの交代を告げた。

 

「私達に追い付いたことで山王はフルコートプレスディフェンスを止めるでしょう。ですが追い上げの勢いはまだ残っており危険です。そこで安田君、相手の勢いに水を差したいのでターンオーバーぎりぎりまで時間を使って組み立ててください」

「はいっ!」

 

 こういった状況で強心臓の安田は頼りになる。それによくみたら長瀬さんも消耗が激しい。それだけ山王の圧力は凄かったということだ。

 

 ……くそっ、俺も周りが見えてなかったな。反省しねぇと。

 

 試合が再開されると俺達はなんとか山王に食らい付いていくが、じわりじわりと点差をつけられていく。

 

 後半残り4分で10点差……いよいよ後が無くなってきた。仕掛けるしかねぇか。

 

 安田からボールをもらうとドリブルで切り込んでいく。すると直ぐに深津がヘルプに来るがここで俺は手札を切った。

 

「っ!?」

 

 驚く深津を尻目にユーロステップで抜き去った俺はそのままゴールを奪う。山王のメンバーの一人が主審に確認を取るが判定は覆らない。会場もざわついている。

 

 そうだもっと驚け。流れを寄越せ。勝つのは俺達だ。

 

 かつて膝をやってから封印していたユーロステップ。使うならこの場面しかないと判断したがどうやら正しかったようだ。直後、動揺していたのかボールを運んでいた深津が安田にスティールされた。

 

 安田からボールを貰った俺は速攻を掛けるが敢えてスピードを緩める。

 

 そしてタイミングを見計らってワンフェイク入れてから3Pシュートを撃つと、手を叩かれてバスケットカウントをもらった。

 

 3Pシュートは決まって次はフリースロー……よしっ!これで4点差!試合も3分残ってる……いける!

 

 そう思ったものの山王はここでタイムアウトを取ってきた。

 

 ……流石は王者というべきか。しぶといぜ。

 

 

 

 

side:河田雅史

 

 

 なんだありゃ?あんなのを土壇場まで隠してるとかやっぱとんでもない奴だな三井は。

 

「落ち着け、どんなプレーでも2点は2点だ」

 

 そりゃそうだ。監督の言う通り。けど、度肝を抜かれるっていうのはああいうプレーを言うんだろうな。それを間近で見て動揺するなと言うのも難しいのも確かだろ。

 

 でも、その後のリカバリーが出来るから俺達は山王なんだ。それを忘れなきゃいい。

 

 チラリと沢北に目を向けるとまだダメなのが一目でわかる。まぁ、こいつにはいい薬になっただろ。薬になってなきゃそれまでの男だったってことだ。

 

 だが大丈夫だろ。少なくとも顔を上げて三井の動きを追ってるみたいだしな。

 

「再三言ってるが三井の3Pには注意しろ。最悪2点は構わない。……さぁ残り3分、勝つぞ」

「「「おう!」」」

 

 さて残り3分……あっ、延長入れたら3分じゃねぇ。……まぁいっか、残りの試合も頑張んべ。




これで本日の投稿は終わりです。

また来週お会いしましょう。
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