side:三井寿
選抜大会を勝ち進み準決勝、俺達は愛知代表と、もう一方は秋田代表と大阪代表の組み合わせとなった。
先ずは俺達の試合から。俺達神奈川代表はAチームがスタメンで試合開始。愛知代表を相手に23点のリードで試合を折り返すと、後半からはBチームが愛知代表と戦う。
後半はスコアラーとして覚醒した感のある福田が中心に攻めていったが、愛知代表もエースの諸星を軸に反撃に転じてジワジワと追い上げてきた。
しかし愛知代表の反撃は届かず9点差で俺達神奈川代表の勝利だ。けどあの諸星の爆発力は侮れないものを感じたな。次にやりあう時は注意が必要そうだぜ。
俺達の試合が終わり次は秋田代表と大阪代表の試合だ。豊玉のメンバーが中心の大阪代表と山王のメンバーが中心の秋田代表の試合は果敢に攻める大阪代表が目立つが、スコアは秋田代表が優勢で進んでいった。
「おっ?北沢だ」
「北沢?沢北だろう」
「あれ?そうでしたっけ?」
仙道の言葉に訂正を入れながらも試合を見ていると、前半半ばで秋田代表のベンチから沢北が出てきた。
試合に出てきた沢北は大阪代表に負けじと果敢に仕掛けていくが、そのプレーは全国でやりあった時から大した変化を感じられない。
「仙道、沢北を抑えられるか?」
「う~ん……まぁ、なんとかなると思いますよ」
「そうか、では決勝で沢北が出てきた時のマッチアップは仙道でいく」
田岡監督の指示に返事をすると続けて試合を見ていく。
……やはり沢北はほとんど変わってねぇな。フェイクとかの駆け引きのバリエーションはちょっと増えたみてぇだが、相変わらずパスを出さねぇから対応が楽そうだ。
そのことに大阪代表の南も気付いたんだろう。徐々に沢北の仕掛けに対応していっている。そして沢北が出場してから4分、沢北の得点がピタッと止まった。
「パスが無いと見切られたら北沢……じゃなくて沢北もあんなものか」
「パスの重要さに早く気付けてよかったな、仙道」
そう田岡監督が言葉を振ると仙道が肩を竦める。
「まったくです。三井さんには感謝しますよ」
「うん?俺か?」
「えぇ、三井さんとやりあったからパスの楽しさに気付けましたから」
そう言えば何度か仙道とやりあったが、最初の方はパスを出さなかったな。
「……このままでは沢北が潰れかねんな」
コート上の沢北が苦しんでいるのがここからでもわかる。それでも秋田代表の監督をしている堂本監督は動かない。
「堂本監督は沢北を信じているのだろうが……沢北はまだ1年だ。その沢北に与えるには少々辛い試練だな」
◆
side:沢北栄治
夏の全国大会の3回戦……あそこで湘北の三井さんとやってから俺のバスケの何かが狂っちまった。
深津さんからパスを貰い大阪代表の南さんと対峙する。フェイクを掛けてクロスオーバーでいくが、南さんにはしっかりと反応されて抜けない。
そこからロールをして逆に行くがそれでも抜けない。何でだ?何で抜けない?俺のドリブルのキレが落ちた?夏の疲れが抜けてないのか?
そんなことを考えてモチベーションが下がるのをグッと堪える。大きく深呼吸して集中しなおす。
「沢北、戻すピョン」
深津さんの声が聞こえた気がするが再度南さんに仕掛ける。これも防がれると笛が鳴りターンオーバーになってしまった。
すると大阪代表が速攻を仕掛けて点を取られ差を詰められる。さっきからこのパターンが続いている。……どうしてだ?どうして抜けない?
南さんを抜くために試行錯誤を続けるが中々結果が出ない。そして結果が出ないまま前半が終わるとベンチに下げられた。
その後、試合は俺達秋田代表が勝ったが、試合中も試合後も監督から何か言われることはなかった。そんな俺の頭には試合前に言われた監督の言葉が響く。
『今のお前に足りないのは何か。先ずは自分で考えろ。どうしてもわからなかったら俺に限らず誰かに聞いてみろ』
(……聞けるかよ)
中学じゃ敵無しだった。自分のバスケをやれば勝てた。だけど……高校じゃ通じないのか?俺はその程度だったのか?
グルグルと抜けられない迷路の様に考えが巡るが答えは出ず。俺は人生で初めてバスケが嫌いになりそうだった。
これで本日の投稿は終わりです。
また来週お会いしましょう。