side:三井寿
前半リードで折り返した後半、秋田選抜はお家芸とでも言うべきフルコートプレスディフェンスを仕掛けてきた。
俺と牧を中心にフルコートプレスディフェンスを突破するが、それでも点差を維持するのがやっとだった。どうやら俺と牧の事は折り込み済みのようだな。
そして後半7分になると秋田選抜のフルコートプレスディフェンスの重圧により仙道がスタミナ切れでダウン。更に須賀さんもダウン寸前になっていた。ここで田岡監督はタイムアウトを取った。
仙道はまだ1年。ここでスタミナ切れになっても不思議じゃないが、3年の須賀さんまでダウン寸前までいくとは……やはり大舞台の重圧ってのはバカに出来ないものがあるな。
それを考えれば魚住は大したものだ。こういった大舞台は初めてのはずなのに適応している。いや、既に高校でバスケを終えることを決めている魚住からすれば、ただ真摯にプレーをしているだけなのかもな。
それはともかく仙道と須賀さんは交代だ。代わりに倉石と藤真が投入された。
倉石はそのまま須賀さんと同じGに入ったが、藤真はSGに入り俺が仙道に代わってFに入る。田岡監督からのオーダーは仙道の代わりに俺がスコアラーになれとさ。
試合が再開されると秋田選抜はフルコートプレスディフェンスを止めて俺にダブルチームをつけてきた。もしかしなくても読まれたっぽいな。
けど関係ない。牧にパスを要求すると秋田選抜のダブルチームを抜き去り中に侵入。直ぐにヘルプが来たがユーロステップで抜いてそのままレイアップに。
ここで河田がブロックに跳んできたがダブルクラッチで得点。都合秋田選抜の4人をぶち抜いての得点に会場からは歓声が上がる。いいな。もっと盛り上がれ。
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side:田岡茂一
「……大したものだ」
秋田選抜を相手に引けを取らないどころか圧倒しているとも言える三井のパフォーマンス……果たして国内に戦える選手が何人いることやら。
私が知る限りでは牧ぐらいのものだ。仙道も候補ではあるがまだ早い。今年の冬にどれだけ鍛え抜いたかで結果が変わるだろう。
「さて、後は見守るだけか」
不測のアクシデントが起きない限りはこのままリードを保って逃げるどころか、点差を広げて勝てる。
チラリと秋田選抜の監督である堂本監督に目を向ける。
(前半、あそこまで沢北を引っ張らなければもっと苦戦したのだが……)
おそらく堂本監督にとって沢北は今大会の優勝以上に価値のある選手なのだろう。
だが去年仙道をスカウトする際に見た彼と比べても、大きな成長は見られなかった。
おそらく原因は彼のプレースタイルにあるだろう。偏執的と形容出来る程に個人技に拘ったのが彼のプレースタイル。
それが悪とは言わないがバスケはチームスポーツだ。個人技での打開が求められる場面は確かにあるが、本来個人技はオフェンスの選択肢の1つとすべきものなのだ。そこに気付かなければ彼の将来は暗いものになるだろう。
大学、社会人と進む毎に篩に掛けられて生き残った天才や秀才達が集う魔境となる。彼が今のまま変われなければ良くて凡人、最悪潰れてしまうのが俺の予測だ。
堂本監督も同じ考えなのだろう。だからこそ彼を壁にぶつけるどころか叩きつけているのだ。
「まぁ、他所の事情に首を突っ込むわけにもいかんか」
今俺がすべきはこのチームを勝たせること。そしてこのチームの選手達の成長を手助けをすることだ。
その後、俺の思惑通りに点差を広げて神奈川選抜は優勝した。やれやれ、これで1つ肩の荷を下ろせたな。
さて、次はウインターカップか……。選抜優勝の余韻に浸るのはそこそこに、気持ちを切り替えなければな。
これで本日の投稿は終わりです。
また来週お会いしましょう。