三井寿は諦めの悪い男   作:ネコガミ

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第114話『新たな試み』

side:三井寿

 

 

 選抜は優勝という最高の形で終わることが出来た。表彰式で次々と名前が呼ばれていく。

 

 新人王には仙道。得点数では福田の方が上だが、アシスト等を含めた総合では仙道の方が上だから選ばれた。

 

 得点王には大阪代表の南、そしてアシスト王には秋田代表の深津の名が呼ばれた。うちは2チームで試合を回していたから、試合に出続けていた南や深津に持っていかれても仕方ないだろう。

 

 そしてベスト5にはCに河田、PGに牧、SGに俺、PFに福田、Fに南が選ばれた。

 

 Cの河田は大会出場試合数が大きな要因だろうな。Fの南は準決勝まで通して活躍を続けた結果ってとこか。

 

 それで驚いたのはPFに福田が選出されたことだ。もしかしたら泥臭くガムシャラに得点を狙う福田の姿に惹かれた選考員が多かったのかもな。ちなみにMVPは河田だった。

 

 さて、選抜が終わって湘北に戻った俺達は新チームの連携の再確認を始めた。

 

 メインのスタメンはCに赤木、PGに安田、Gに倉石、SGに木暮、Fに俺となっている。これに他の1年達が虎視眈々とスタメンの座を狙っているのが現状だな。

 

 スタメンのPGに安田が選ばれたのは経験とチームメンバーとの連携が理由だ。個の選手としては宮城の方が上だが、チームとしてみたら安田の方が良いというわけだな。

 

「リョーちんパース!」

 

 そうそう、今のチームとは関係ないが桜木の奴が随分とものになってきた。リバウンドは赤木と渡り合えるレベルになってるし、ゴール下での得点力も戦力として十分に数えられる。

 

 だが他はまだまだってとこだな。これからの成長に期待だ。

 

 

 

 

side:沢北栄治

 

 

『負けた理由がわからない?』

 

 インターハイで三井さんに負けて、選抜では南さんと仙道にも負けた。その理由をずっと考えていたけど、どうしてもわからなくて、だからこうして親父に電話した。

 

『そうか、栄治はミニバスの経験は無いし、中学の時は1人でぶち抜いてたもんなぁ』

 

 親父の言う通りに中学の時は俺を止められる奴はいなかった。山王に来て中学の時よりも上手くなった自信がある。なのに勝てない相手がいる。俺がまだ下手だからなのか?

 

『栄治、答えはパスだよ』

「パス?」

 

 予想外の答えに言葉が続かない。

 

『1on1と通常の試合の違いは人数。つまり1on1なら広く使えるコートも人数が増えたことで、使えるところが減ってしまう』

『そして時には味方がドリブルコースをつぶしてしまうことだってある』

 

 親父の言葉にそういえばと思い出す。中学の時は何度も味方が邪魔だなと思ったことがある。けど、山王に来てからはそう思ったことが無いな。

 

『けど、そんな狭くなったコートを広くする方法がある。それがパスだ』

 

 そう言って親父がパスが如何に大切かというのをこれでもかと語り出す。けどさ……。

 

「パスで逃げるってダサくない?」

『負けて悔しいのよりはいいだろ?』

 

「じゃあパスを使って負けた時は?」

『そん時は相手の方が上手かっただけさ。練習をして出直すんだな』

 

 そう親父に言われて少し気分が晴れた気がする。

 

「わかった。とりあえずパスを試してみるよ」

『おう、怪我すんなよ。歯を磨けよ。宿題やれよ』

「いや、俺は子供かよ」

『子供さ。親にとって子供は何歳になろうとも子供なんだ。それじゃあな』

 

 そう言って親父は電話を切った。

 

「……とりあえずパスをやってみるか」

 

 そう口にしてみたはいいものの。

 

「……パスってどうするんだ?」

 

 パス練はしてきたけど試合では1回もパスをした事がなかったことを思い出し、俺は首を傾げて悩み続けるのだった。




これで本日の投稿は終わりです。

また来週お会いしましょう。
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