三井寿は諦めの悪い男   作:ネコガミ

13 / 201
本日投稿3話目です。


第12話『リベンジ』

side:三井寿

 

 

インターハイ県予選まで残り3週間ってところで練習試合が組まれた。

 

相手は陵南…春の県大会で負けた因縁の相手だ。

 

練習試合を行う陵南の体育館に辿り着くと、田岡監督が安西先生に頭を下げた。

 

「安西先生、今日はご足労いただきありがとうございます。」

「いえいえ、今日は胸をお借りさせていただきますよ。」

 

監督同士の挨拶が終わると俺達はアップをしていく。

 

そしてアップが終わると試合前のミーティングが始まった。

 

「三井君、今日の試合では前半はSF(スモールフォワード)を、後半はPGをお願いします。」

「はい!」

 

練習試合とはいえスタメンで使ってもらえるのか…。

 

安西先生…その決断、絶対に後悔させません!

 

「土橋君、後半はPF(パワーフォワード)をお願いします。石渡君と赤木君と連携の確認をしておいてください。」

「はい!」

「それと木暮君、後半の頭から行きますので準備をしておいてください。」

「はい!」

 

一通りの指示を出し終えた安西先生がニコリと微笑む。

 

「君達は強い。」

 

微笑みながら言った安西先生の言葉に皆が驚く。

 

「もう一度言います。君達は強い。この事を覚えておいてください。自信を持って、強い気持ちを持って戦うからこそチャンスが生まれます。」

 

皆が安西先生の言葉に聞き入る。

 

「春のリベンジを果たし、夏のインターハイ予選の弾みにしましょう。君達なら出来る。」

「「「はい!」」」

 

流石は安西先生だ。一気にモチベーションが高まったぜ。

 

覚悟しろよ陵南。この練習試合が俺の高校初めての対外試合…デビュー戦なんだ。

 

キッチリと勝利で飾らせてもらうぜ!

 

 

 

 

side:田岡茂一

 

 

「さて、どうなるか…。」

 

コートに目を向けると三井の姿がある。

 

「おそらくは、怪我によるブランクがある三井がどの程度使えるのかを確認しつつ、彼に自信を取り戻させるつもりなのだろうが…。」

 

俺はチラリと三井のマンマークを指示した池上に目を向ける。

 

「果たして、そう上手いこといきますかな、安西先生?」

 

池上のディフェンスの上手さは、1年ながら既に陵南の中で上から数えた方が早い。

 

そんな池上のディフェンスを、怪我でブランクがある三井が果たして抜く事が出来るのか。

 

「じっくりと見物させてもらいますよ。」

 

試合が始まった。

 

ジャンプボール…むぅ、取られたか。魚住のタイミングも悪くなかったが。

 

魚住も着実に成長してきている。

 

今はまだ赤木の相手をするのは荷が重いだろうが、しっかりと経験を積んでいけよ、魚住。

 

ボールを確保した湘北のPGの土橋から三井にパスが出る。

 

三井は3Pラインの外でボールを受け取ったが、既に池上はマークについている。

 

さぁ三井…どう打開する?

 

そう思っていると不意に三井が3Pシュートを撃った。

 

「焦ったな三井…立ち上がりの独特の緊張感に飲まれたか?やはり試合勘がにぶ…。」

 

言葉はそこで止まった。

 

何故なら…。

 

「なっ!?」

 

三井の3Pシュートがスウィッシュで決まったからだ。

 

「…勝負強さは健在ということか。」

 

驚いて思わず立ち上がってしまった俺はゆっくりと椅子に腰を下ろす。

 

その後、開幕の3Pシュートで勢い付いたのか三井は止まらなかった。

 

土橋からパスを受けた三井は、3Pシュートを警戒して距離を詰めた池上をあっさりと抜き去る。

 

そして内に切り込めば赤木と魚住の勝負を演出、他にもフリーの味方にパスを出してアシスト、更には自身でも得点を上げたりと大暴れだ。

 

そんな内に切り込む三井に対応しようと池上が距離を開ければ、今度は外から撃っていく。

 

「…これで3本連続か。」

 

開幕の1本だけでなく、これで三井は前半だけで3本も3Pシュートを決めた。

 

それも前半終了間際ではない。前半の半ばでだ。

 

「ふぅ…やはりエース不在は痛いな。」

 

エース不在。それが現在の陵南が抱える一番の問題だ。

 

本来ならそのエースの座を三井に任せていたところなんだが…。

 

頭をガシガシと掻いている間も三井の躍動は続いていく。

 

そして前半が終わったが、前半だけで三井には26得点も取られてしまった。

 

だがうちもやられっぱなしだったわけではない。

 

赤木や三井との勝負を避け堅実に得点を重ねていった事で、まだ勝負の余地は残せている。

 

(まぁ、19点差でギリギリだったがな。)

 

ハーフタイムの間に俺はチームにもっと足を動かす事を指示する。

 

エース不在の現状でうちが打てる手は運動量で勝負をすることぐらいだ。だが、打てる手を打たずに負けを認めては監督失格だからな。

 

(最後まで足掻かせていただきますよ。安西先生。)

 

ハーフタイムの終わり際に湘北の選手達がコートに入っていくのを見ると首を傾げる。

 

(木暮を投入?安西先生、いったい何を…っ!?)

 

そう疑問に思っていた俺は後半が始まると驚いて目を見開く。

 

(三井がPG!?…なるほど、海南の牧を意識してのことですか安西先生?)

 

チラリと安西先生に目を向ける。そして目が合うと安西先生は微笑んできた。

 

「やれやれ、我々は踏み台に使われたわけか。救いはこれが練習試合だったことだな。」

 

肩を竦めた俺は大きく息を吐く。

 

「安西先生、この借りは返させていただきますよ。2年後…いえ、1年後にはね。」

 

仙道には三井と渡り合えるポテンシャルがある。

 

俺はそう信じている。

 

だからこそ是が非でもスカウトを成功させなくてはな。

 

そして宮城だ。彼もスカウト出来ればチームは盤石になる。

 

そうすればあの生意気な後輩…高頭の鼻を十分に明かせるだろう。

 

ふふふ…楽しみだ。

 

その後、63ー101のスコアでうちは負けてしまった。

 

三井には奴1人で45得点も奪われてしまった。

 

この借りも返さなくてはな。

 

「だがその前に…」

 

俺は練習試合が終わり人がいなくなった体育館で、1人悔し涙を流す池上の肩をそっと叩く。

 

池上には随分と酷な経験をさせてしまった。だが池上の成長の為には必要な事だった。

 

この経験を糧に成長出来れば…池上は三井や牧と渡り合える程のディフェンスのスペシャリストになれるだろう。

 

折れるなよ池上…その流した涙の分だけ成長してみせろ。




◆池上亮二(いけがみ りょうじ):ディフェンスに定評があることで有名。

 拙作ではディフェンス面にて1年時から頭角を現しつつある。
 しかし本話で三井にプライドをズタボロにされた模様。
 流した涙の分だけ成長出来るか?今後に期待。

◆石渡(いしわたり):拙作オリジナルキャラ。

 湘北バスケ部のキャプテンで現在3年生。ポジションはPF(パワーフォワード)。
 湘北バスケ部が弱小バスケ部であることを十分に知っているが、それでも練習を真面目にやり続けてきてキャプテンになった優等生。
 三井や赤木を見て最後のインターハイに密かに期待している。

◆土橋(どばし):拙作オリジナルキャラ。

 湘北バスケ部の副キャプテンで現在3年生。ポジションはPG。
 中学時代からの石渡の友人で、彼と一緒に弱小の湘北バスケ部でも勝とうと頑張って練習を積み重ねてきた男。
 石渡同様に最後のインターハイに密かに期待している。


これで本日の投稿は終わりです。

また来週お会いしましょう。
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