三井寿は諦めの悪い男   作:ネコガミ

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第123話『2年目ウインターカップ神奈川予選決勝リーグ決着』

side:三井寿

 

 

 海南にリードされた状態で始まった後半、ジワリジワリと差を縮めて3点差まで追い上げたが、もう一押しが出来ない状況が続いた。

 

「フッ!」

 

 牧を抜いて中に切り込む。ノールックで木暮にパスを出せば木暮が3Pシュートを決める。これで同点となったが、返しのオフェンスで宮益に3Pシュートを決められた。

 

 こんな感じでシーソーゲームが続く後半も半ばを迎えたが、宮城のスタミナが限界だった。

 

 宮城のスタミナは少なくない。1年としてはむしろ多い方だ。だがずっと宮益のペースで振り回され続けたことで、いつも以上に消耗が激しかったんだろうな。

 

 俺は安田と交代するのかと思ったが、驚いたことに安西先生は安田ではなく東を起用した。

 

「安西先生からの伝言です。三井先輩はPGに、俺はSFにだそうです」

 

 なるほど。安西先生はより攻撃的な布陣で行くつもりか。

 

 東は器用で外もこなせる。まだ木暮ほどの決定力はないが、海南と同じ形で真っ向勝負ってことだ。燃えてくるぜ。

 

 東は木暮の所にも行った。おそらくマッチアップ相手の変更だろうな。東なら神が相手でも身長差でのミスマッチが起きない。だから宮益とのマッチアップに慣れている木暮をってわけだ。

 

 流石は安西先生。素晴らしい采配だぜ。後はその采配に応えねぇとな。

 

 倉石からボールを貰いゲームメイクをしていく。マッチアップしている牧の目が更にギラついた気がするな。

 

「PGで負けるわけにはいかねぇな」

「それも興味はあるけどよ、先ずはチームが勝たねぇとな」

「フッ、違いない」

 

 こうして前半以上にバチバチになった俺と牧のマッチアップに呼応する様に、両チームの選手達の戦いもヒートアップしていく。

 

 ゴール下で赤木と高砂が、その2人をフォローする様に倉石と武藤が、シューターとして木暮と宮益が、同じ1年として東と神がそれぞれにチームの勝利を目指してガムシャラに足を動かす。

 

「くそっ、3点差が遠い」

「あぁ、けどまだ時間はある。最後まで諦めるなよ!」

「「「おぉ!」」」

 

 倉石の言葉を受けてチームに発破を掛けると皆が気合いの声を上げる。そんな俺達に負けるかと海南の連中も声を上げる。

 

 熱い試合だ。冬の寒さを吹き飛ばす様な熱い試合だぜ。

 

 そんな試合も残り30秒。まだ逆転のチャンスはある!

 

 閃き。そうとしか言えないイメージが頭を過る。

 

 俺はドリブルで仕掛けると木暮に目を向けつつ赤木にノールックでパスを出した。

 

 この試合は外が中心の展開がずっと続いていた。中で仕掛けるのが少なかった。だから突然中で勝負に行けば驚き、一瞬だが意識に空白を作れる。

 

「叩きつけろ赤木!」

 

 そして俺は声を出す。赤木にダンクの指示を聞かせる為に。赤木も面を食らったんだろうな。素直にダンクに行った。あぁ、それでいい。

 

 なにせ俺が求めたのは高砂の咄嗟の反応。本能的に跳んでしまうブロックなんだからな。

 

「よせ高砂!」

 

 牧は気付いたみてぇだがもう遅い。赤木が高砂の上から強引にダンクを決めると主審の笛が鳴る。

 

「バスケットカウント!ワンスロー!」

 

 俺は赤木を称賛する感じで近付くと耳打ちをする。

 

「赤木、フリースローは外せ。リングに当ててな」

「……リバウンド勝負か?まさか、さっきのパスは初めからこれを狙って?」

「頼んだぜ」

 

 このフリースローを決めても同点になるだけだ。だがリバウンドを取ってゴールを決め直せば少なくとも2点入る。そうすりゃ逆転。遠かった勝利が見える。

 

 可能なら3Pシュートを狙いたいとこだが……まぁ、リバウンドを取った後の状況次第だな。

 

 視線を送ると倉石が頷いた。どうやら俺の意図が伝わったらしい。木暮と東も頼んだぜ。

 

 2人も頷いた所で赤木のフリースローが始まる。俺と倉石の集中力はこの試合のピークに達する。

 

 赤木がシュートをした瞬間に始まるポジション争い。ボールの飛ぶ勢いと角度から直感的に動く。

 

 ガンッとリングに弾かれたボールが俺の所に。倉石が高砂を抑えてくれたことでベストポジションで跳べた俺はボールを確保出来た。だが着地と同時に牧と武藤に囲まれる。

 

 木暮と東は宮益と神に張り付かれている。俺のリバウンドのフォローをしてくれた倉石を高砂がマーク。なら……。

 

「もう一回派手なのを頼むぜ、赤木」

 

 俺と背中に張り付いていた武藤の股下を通してワンバウンドのパスを出す。ボールを受け取った赤木は跳び上がると、その巨体を活かした力強いダンクを決めた。

 

「うぉぉぉおおおおっ!」

 

 赤木が吠えた。気持ちはわかるがまだ試合は終わってねぇぞ。

 

「ラスト!集中!」

「「「おぉ!」」」

 

 残り5秒。ワンチャンスを祈ってのボールすら投げさせるな!

 

 高砂がボールを出す。牧が持った瞬間に距離を詰めると牧がドリブルで仕掛けてきた。

 

 ちっ!詰め過ぎたか!抜かれ掛けたところでファールをして止めた。残り3秒。

 

 熱くなりすぎるな。冷静に。ワンチャンスも与えるな。

 

 試合再開。牧が再びボールを持つ。残り2秒。まだ終わらないのか!

 

 牧がボールを持ち上げた。シュート!っ!?いや違う!

 

 ここでシュートフェイクかよ。やるじゃねぇか。

 

 シュートフェイクに引っ掛かって跳んだ俺を尻目に牧が横に一歩ずれてシュートを打つ。試合終了の笛が鳴り響く中で牧のシュートがネットを通過する音が耳に届いた。

 

「ッシャア!」

 

 牧が叫び拳を握り締めると、俺は息を吐きながら天井を見上げるのだった。




これで本日の投稿は終わりです。

また来週お会いしましょう。
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