side:三井寿
第3Qでは少しアクシデントがあった。日本代表メンバーの野辺が、日本の高校バスケとは規格が違うアメリカ代表メンバーのフィジカルに思った様にプレーが出来ず熱くなった結果、リバウンド時に相手Cと激しく接触をしてしまったんだ。
幸いにもケガは無かったが野辺と相手C双方共にヒートアップしてしまい、二人共に頭を冷やす為に交代する事となった。
そして代わりに出たのが仙道とシャック。二人共に予定外であったが楽しそうにコートに出てプレーをしてるぜ。
「おっと、諸星のやつ大丈夫か?」
ゴール下でシャックと競り合った諸星が吹っ飛ばされた。幸いにも尻を少し強く打ったぐらいでケガは無し。むしろびくともしなかったシャックを見ながら驚いているな。
そんなこんながあって頭が冷えた二人がコートに戻り第3Qは進んでいくと、終わる頃には15点差がついていた。
「やっぱインサイドでの勝負は厳しいな」
「あぁ、第2Q同様に外を中心に組み立てるぞ」
俺と牧の会話に第4Qのメンバーが頷く。
そして始まった第4Q。第2Qでこちらの出方を見たからか、アメリカ代表メンバーはしっかりと対応してきた。
魚住と同等サイズでありながら、仙道や牧にも劣らない運動能力すら持つフィジカルモンスター達。そんなアメリカ代表が相手だからこそ中々点差は縮まらない。
それでも僅かずつではあるが点差を縮めていく。その要因は俺が絶好調でブロックされない限りほとんど3Pシュートを外さなかったからだ。
そのせいか不意に俺にダブルチームがついた。おいおい、マジかよ……。
『親善試合だぜ?』
『それと同時にNBAや大学からのスカウトの目もあるからな』
俺の問い掛けにフィンリーが肩を竦める。まぁ、いいさ。なら俺も存分に楽しませてもらうぜ。
右45度の位置で牧からボールを貰った俺はボールハンドリングとジャブステップで牽制を入れる。そして隙を見付けると縦に抜く様に見せ掛けてバックステップ。そしてディープスリーを打った。
『凄いな。試合が終わったら少し教えてくれよ』
『いいぜ。時間があればだけどな』
上手い奴は上手いと認める。例え敵チームだったとしても。だからこそNBAの歴史に名を残す様な選手になれるんだろうな。
決めれば決め返され、決められたら決め返す。そんなシーソーゲームを打破したのは魚住だ。
魚住は残り5分で第2Qの時と同じ様にシャックのダンクをファールで止めた。するとシャックはフリースローを2本共外し、返しの速攻で俺が3Pシュートを決める。
それを2度繰り返すと集中力が切れたのかシャックのパフォーマンスが落ちた。……まぁ、シャックも今はまだ高校生だ。メンタルコントロールをするにも限度があるか。
そこからは一気呵成に得点を稼ぎ逆転。そのまま試合は終了し俺達日本代表が勝利した。
そして挨拶が終わり勝利を喜ぼうとしたその時、俺と魚住はスカウトの人に声を掛けられた。いや、よく見ると他の日本代表メンバーやアメリカ代表メンバーも声を掛けられてるな。
『やぁ、少しいいかい?』
『勿論さ。あぁ、こいつは英語が苦手だから俺が訳すけどいいかい?』
『あぁ、助かるよ』
スカウトの人達の言葉を魚住に通訳していくが、魚住は高校バスケが終われば板前になると決めている。だから何度もスカウトの人達に詫びの言葉と共に頭を下げた。
『なんてもったいない!なんせウオズミはアメリカの高校バスケ界でも特に注目されているオニールと渡り合ったのだからね』
『そうかもしれないが、日本食のシェフ……板前になるのは彼の小さな頃からの夢なんだ。応援してあげてくれ』
『oh……とても残念だがそうしよう。ウオズミ、グッドラック』
『ところでミツイ、君はどうなんだい?』
『俺はアメリカの大学に行くつもりさ。そしてNBAを目指すよ』
『ほう……少し詳しく話してくれないかな?』
アメリカ代表との親善試合は良い経験を積めただけでなく、より多くの実りを得られた実感があったのだった。
これで本日の投稿は終わりです。
また来週お会いしましょう。