三井寿は諦めの悪い男   作:ネコガミ

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第130話『期待の1年2人』

SIDE:三井寿

 

 

「まだまだぁ!来いや流川ァ!」

「……ドアホ」

 

 居残り練習で桜木と流川が1on1をやってるんだが、練習後ということもあって流川がへばってきてるな。まぁ、春の県大会が近いのもあって練習に熱が入ってるし仕方ないか。

 

 対して桜木はまだまだ動ける余裕がある。というかあいつのスタミナは正直少し前まで中学生だとは思えないレベルだ。しかも運動能力なら全国でもトップレベルにある。後は技術と経験を積んでいけばより良いバスケット選手になるだろうな。

 

 流川の方は運動能力は良く技術もある。だがとにかくスタミナが足りない。持ち前の運動能力と技術もスタミナがなくなれば活かせなくなる。だがスタミナは一朝一夕で付くようなもんじゃないからな。じっくりと育成していくしかないか。

 

「っしゃあ!」

「ちっ」

「お~花道の勝ちだな」

 

 審判役兼見物をしていた宮城が桜木に勝利宣言を出す。5回やって1勝4敗と負け越しちゃいるが、バスケ経験1年でこのレベルまで来た桜木の成長力は本当に大したもんだぜ。

 

「よーし!次はミッチー!やろうぜ!」

「俺はやってもいいが、そろそろいい時間だろう?晴子を送っていってやれよ」

「ぬあっ!?すみません晴子さん!決して忘れていたわけでは!」

「ううん、見ていて楽しかったよ、花道君!」

 

 晴子に名前を呼ばれて感涙を流す桜木だが、付き合い始めてからずっとこの調子なんだよなぁ。いつ慣れるんだろうな?まぁ晴子は天然が入ってるところがあるから、こういった感受性豊かな桜木は相性がいいだろうが。

 

「キャプテン、お願いします」

「おう」

 

 桜木と晴子が一足早く帰ると、桜木の代わりとでも言わんばかりに流川が俺に1on1を挑んでくる。こうして流川が俺に1on1を挑んでくるのはほぼ毎回だ。

 

「それじゃ先攻はやるよ」

「……ウス」

 

 今度こそ勝つと闘志を漲らせた目をしてやがる。

 

「フッ!」

 

 目線でフェイクを掛けてきた流川がストレートに抜きにくるがそれを読んで防ぐ。ロールをしようとした流川にチェックを掛けて行かせない。

 

 一度下がると流川がもう一度アタックしてくる。今度はクロスオーバーだ。だがそのキレは牧や仙道には及ばないものだから十分に止められる。まぁ、1年として見ればしっかり武器になるレベルだが……。

 

 攻守交替で俺の攻め。ハンドリングとジャブステップで流川の反応を見ていく。この駆け引きをしていく中で最近意識する様になったことがある。それは……ミスディレクションだ。

 

 ミスディレクションと言うと本命のモノを隠す技術という風に考えがちだが俺の認識は違う。俺にとってミスディレクションは『見せたいモノを見せる技術』なんだ。そうすることで結果的に本命を隠せるって感じだな。まぁ、俺も最初は本命のモノを隠すための技術だと思ってたんだが。

 

 ジャブステップを利用した反発ステップで一歩目を踏み切る……様に見せてバックステップからの3Pシュート。決まって先制。

 

 今の攻防ではジャブステップに興味を持たせ注目させた。それで反発ステップに反応させてからバックステップ……って流れだ。

 

 このミスディレクションを意識する様になってから自分が駆け引きの中で無意識にミスディレクションをやっていたことに気付いた。というかフェイク全般がミスディレクションの一種なんだ。

 

 それに気付いてから俺のボールを持ってからの動き……というか意識が変わった。フェイクに引っ掛けるんじゃなく、フェイクを見せるという感じに変わったんだ。

 

 それがまた面白い。どうフェイクを相手に見せるのか。どう相手に見せれば相手は注目するのか。そんなことを考えるのが頗る面白い。まだまだバスケは奥が深いぜ。

 

 さて、そろそろ俺も終わりにするか。

 

「よ~し、それじゃそろそろ掃除を始めるぞ~」

「「「う~っす」」」

 

 居残り練習に参加していた1、2年が率先して掃除を始めるが、その中で流川は完全にへばって膝をついている。

 

「流川、ちゃんとクールダウンしろよ。ケガするぜ」

「……うっ……す……」

 

 こいつ自転車通学なんだがちゃんと帰れるのか?ちとしごき過ぎたかもなぁ。




これで本日の投稿は終わりです。

また来週お会いしましょう。
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