「それじゃあね、花道君!」
「はい!また明日です晴子さん!」
晴子を家に送った花道はそれはもう緩んだ顔をしていたが、家路を歩く中で徐々に表情が引き締まっていった。
(流川の野郎のドリブルはみっちーみてぇにどっちに抜きにくるかわからないほどじゃねぇ。けどこっちが反応した後が上手ぇ)
花道の脳裏に浮かぶのは今日の流川との1on1の光景だ。
(反応して身体を寄せるまではよかった。だが問題はロールされて中に行かれてからだ。なんとか追いついてゴールは防げたが、その前にみっちーみてぇに止めるのが一番いい)
不意に公園が目に入った花道は寄り道をすると、荷物を置いてイメージの流川と対峙する。
(こうか?いや、こうか)
バスケを始めてから1年。今ではしっかりと安西に基礎を叩きこまれた花道だが、バスケット選手としての経験値は少ない。練習試合はともかく公式戦は一度も出場経験が無いのだ。
故に花道は迫る春の県大会を想像すると武者震いを起こす。既にバスケの楽しさにどっぷりと浸かった彼は、早く大会の日が来ないかと何度も思っている。
一通り試して満足したのか公園を後にして家に帰りついた花道は、先に帰っていた父親に一言言うと汗を流す為に風呂に向かう。そして風呂から上がると父親を前に神妙な顔をして話し出した。
「親父」
「おう、どうした?」
「俺……湘北を卒業したらアメリカの大学に行きてぇ」
少し前に晴子に招かれて赤木家に訪れた花道は、そこに美和と共にいた三井の話を聞いた。彼が湘北卒業後にアメリカの大学に行くことを。
三井がアメリカの大学に行く目的……それはプロバスケットボールの最高峰であるNBAに入るためである。それを聞いた花道は全身に電流が走った様な衝撃を受けた。
花道はバスケが好きだ。バスケを始めてから1年が経ちより好きになった。だが先の事までは考えていなかった。
その日の帰り道に花道は将来を考えた。人生で一番真剣に考えた。そして出した答えは……自身もプロバスケット選手になるだった。
「……そうか。じゃあ行けばいい」
「あっ?いや、大丈夫なのかよ?」
「舐めるな。ガキの我儘の一つや二つ、叶えてやれる程度には稼いでる。だから行ってこい」
花道は自然と頭を下げていた。グレて迷惑を掛けていた。そんな自分にここまでしてくれる父親に頭が上がらなかった。
「それはいいんだが……ところで花道、晴子ちゃんはどうすんだ?」
「おぉ!聞いてくれ親父!晴子さんも一緒に来てくれるって言ってくれてるんだ!」
「そうか!」
既に両家の親の付き合いもある故に花道の父親の喜びようは凄いものだ。
そして日は経ち春の県大会の日がやって来る。歯を磨きながら少し伸びた坊主頭を撫でた花道は、玄関を出ると意気揚々と集合場所へと向かうのだった。
これで本日の投稿は終わりです。
また来週お会いしましょう。