side:三人称
倉石が伍代を抑え、安田が木暮に積極的にボールを供給し、木暮が迷うことなく3Pシュートを打つ。そして攻守共に桜木と赤木がリバウンドを制することで湘北は安西が課した制限時間以内に逆転することに成功した。
だが、その勢いのままに点差を突き放すことは出来なかった。それは……南郷の活躍があったからだ。
7割強。これはこの試合に於ける桜木のリバウンド成功率である。つまりそれだけ桜木がボールに触れる機会があるということだ。
その桜木がボールに触れる度に南郷が手を変え品を変えボールを奪取する。
ある時はリバウンドの着地際。ある時はリバウンドから着地をして次のプレーに意識が向いた瞬間。ある時はリバウンドから着地をして次のプレーの開始際。といった具合に桜木を翻弄し、湘北の勢いを寸断し続けていった。
この南郷のプレーに会場で見学をしていた仙道や牧は感心する。今年の1年ナンバーワン候補と見ていた桜木を翻弄するバスケセンス。彼等の中で南郷の評価が上昇していく。
「清田、流川ばかり見てると足元を掬われるぞ」
「……はい」
清田信長。今年海南バスケ部に入った1年生である。彼は1年生ながら既に海南のユニフォームを手にしていた。そんな清田は日頃から牧に可愛がられメキメキと実力を伸ばしている。
そんな清田が注目し対抗心を燃やしていたのが流川だった。
流川は中学時代から地元では有名なスコアラーであった。故に清田はそんな流川をライバルだと目していたのだが、今回の湘北対津久武の試合でその思いはひっくり返された。
(流川は相変わらず……いや、中学ん時よりも動きのキレが増していた。けど……あいつよりもヤベェのがいるなんて……)
そう思いながら向ける彼の視線の先には桜木と南郷がいた。
同じ1年ながら既に高校生離れした身体能力を持つフィジカルモンスターの桜木。そしてそんな桜木を翻弄する抜群のバスケセンスを持つ南郷。清田は背中に冷たい汗が流れるのを感じた。
「牧さん、あの2人を抑えられますか?」
「その程度出来んようじゃ、三井のライバルを自称も出来ん。清田、この先にお前が海南のエースを名乗りたいなら、今のあいつら程度に動じないぐらいの実力をつけにゃならん。その覚悟はあるか?」
牧が醸す迫力に思わず唾を飲む清田。だが次の瞬間に彼は……笑ってみせた。
「はっ、上等っすよ牧さん!この清田信長!海南を背負うエースに成ってみせますよ!」
「ふっ、期待してるぞ」
意気揚々と宣言をして席に座り直す清田は驚く光景を目にした。なんと桜木がリバウンドに跳ぼうとした瞬間、南郷が審判に見えない様にユニフォームを引っ張り阻止したのだ。
「う、上手い!」
思わず口に出てしまった言葉を抑える様に両手で口に蓋をする清田。そんな彼を牧は横目でジトっと見る。
「……期待してるぞ」
「う、うすっ!」
その後、南郷の奮闘は続くが徐々に点差は開き決着。湘北が準決勝へと駒を進めた。
準決勝第2試合の組み合わせは湘北と海南。清田は武者震いする身体を抑える様に拳を握り締めたのだった。
これで本日の投稿は終わりです。
また来週お会いしましょう。