三井寿は諦めの悪い男   作:ネコガミ

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第136話『BIG JUN』

side:三井寿

 

 

 春の県大会の準決勝第1試合。翔陽と陵南の試合が行われているが、コート上では驚く光景が広がっている。その光景を作り出したのは誰か?

 

 藤真か?福田か?仙道か?いや……魚住だ。

 

「これは……すごいわね」

「あぁ、素直にすげぇよ」

 

 美和に肯定の言葉を返しながらもコートからは目を離さない。それだけ魚住が凄いんだ。

 

 元々あいつには素質があった。2mというバスケに限らずアスリートなら誰もが羨む様な恵まれた身体だ。そんな魚住を田岡監督は根気よく鍛えていった。

 

 そして魚住は環境にも恵まれた。兼田さんという手本とすべき存在がいたこと。赤木というライバルが存在したこと。2人に何度挫かれても俯かずに前を見続けた。

 

 そうやって成長をした魚住の最後の一押しになったのがアメリカとの親善試合だ。シャックと渡り合ったことで魚住の中で何かが弾け一気に急成長したんだ。

 

 翔陽のインサイドは盤石と言っていい陣容だ。190cmオーバーの選手が3人もいる。日本の高校バスケなら鉄壁と言えるだろう。

 

 だが魚住はそんな翔陽のインサイドの3人を1人で圧倒し、ゴール下を完全に支配している。

 

 全国制覇のための最大の障壁は海南か山王だと思ってたんだが……。

 

「どうやら陵南こそが最大の障壁みたいだな」

 

 

 

 

side:魚住純

 

 

(コートはこんなに狭かったか?)

 

 アメリカとの親善試合が終わってからやけにそう感じるようになった。これがいいことなのか悪いことなのかはわからんが、俺のやることは変わらない。

 

(負ける気がせん……何故だ?)

 

 油断しているのか自問するが確信は変わらない。

 

 花形を始めとした翔陽のインサイドの3人は誰もがいい選手だ。心からそう思う。

 

 だが、そんな3人を相手にしても欠片も負ける気がしない。俺はどうしてしまったんだろうか?

 

 まぁいい。今は置いておこう。俺は俺のやるべきことをやる。チームが勝つためにベストを尽くす。以前も、そしてこれからも俺のやることに変わりはないんだ。やれることもな。

 

「魚住さん!」

 

 植草からのパスを貰った俺はベビーフックに行く。花形がブロックに跳んだのを見てベビーフックからパスに変更。福田にボールを渡す。

 

 すると福田は派手にダンクを決めて吠えた。

 

「「「いいぞ!いいぞ!フ・ク・ダ!いいぞ!いいぞ!フ・ク・ダ!」」」

 

 ベンチや会場から上がる歓声に福田が震える。素直に称賛の声を喜べるこいつが羨ましく思う時もあるが……。

 

「魚住さん、次は俺にボールをくださいよ。福田よりも点を取りますから」

「なら、俺は仙道よりも点を取ります」

 

 切磋琢磨を続ける後輩達がなんとも頼もしい。どうやら引退後の心配はせずにすみそうだ。

 

「ボールが欲しければ足を動かせよ。サボったらやらん」

「サボったらボールより先に田岡監督にどやされますよ」

 

 後輩達のそんな反応にクスリと笑ってしまった俺は、頬を張って集中し直すのだった。




これで本日の投稿は終わりです。

また来週お会いしましょう。
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