side:清田信長
湘北との試合が始まった。ジャンプボールは高砂さんが競り負けて湘北の攻めから。……この試合まで一度もジャンプボールを取られなかったからこの展開に少し驚いてるが、気を引き締め直して直ぐに三井さんのマークに。
「改めてよろしくっす」
「おう、よろしくな」
軽く拳を合わせて挨拶。この人が高校バスケナンバーワンプレイヤー……やっぱ雰囲気あんなぁ。
そう思ってたら向こうのPGの安田さんから三井さんにボールが回ってきた。へへ、早速マッチアップか。お手並み拝見と……って!?
「……マジかよ」
ストレートに来ると思って反応したらその逆。クロスオーバーでぶち抜かれた。しかもアンクルブレイクのオマケ付きで。
俺を抜いた三井さんがドフリーで悠々とジャンプシュートを決めて2点先制された。
「くそっ、牧さんから聞いてたのに……」
牧さんから三井さんのクロスオーバーについては散々聞かされていた。だが聞くと見るでは大違い。止められる気が微塵もしなかった。
「けどよ、そう簡単に諦めてちゃ、海南のユニフォームは着てられねぇってな」
立ち上がった俺は挑戦の意思を込めて三井さんに目を向ける。すると三井さんはニッと笑った。
(上等!何度でも、何回でも挑戦し続けてやる!時間が許す限り、あんたが根負けするまでな!)
◆
side:三人称
清田が不屈の闘志で三井に挑んでいく一方で牧とマッチアップしている流川は、まだ試合序盤であるにもかかわらず多くの汗を流していた。
彼の持つプレイヤースキルが、幾多の激闘を経験してきた凄みがプレッシャーとなって流川を襲う。だが流川はこの状況を心の底から楽しんでいた。
(ありがてぇ。監督、感謝します)
己の成長の為に一部とはいえ試合を使ってくれる。それが希少なことだと、これが貴重な機会なのだと流川はわかっていた。
アメリカでは学生達が所属するスポーツクラブでは、所属メンバー全員を試合に出す義務がある。機会は均等に与えるというのがアメリカの教育方針だからだ。それ故にスポーツクラブに加入出来る人数が制限されていたりもするが、多くのスポーツを掛け持ちしたりするのが普通なアメリカならば然程大きな問題ではないだろう。
一方で日本では国民性なのか競技を一つにすることが多い。もちろん多くの習い事をする少年少女もいるだろうが、大多数は何か一つの競技に集中した経験の方が多いだろう。
閑話休題。
流川はその貴重な機会を存分に活かそうとしていた。それは流川が湘北に入って変化したことでもある。
とある日の居残り練習の時、ふと気紛れに流川は桜木に中学の時はどうしていたのか問い掛けたことがある。その時の桜木の返答にはとても驚いた。なんと桜木はまだバスケの経験が1年しかないと知ったからだ。
そしてどの様な1年を過ごしたか聞いて更に驚いた。己の努力が如何に温かったかを嫌でも思い知らされたからだ。
(盗めるだけ盗む。限界まで成長する。それが最低限)
どこか漠然とバスケを続けていれば何とかなる、アメリカでやれると思っていた流川の意識は変わった。好きや憧れや夢ではなく、NBAプレイヤーになることを明確な目標として定めたのだ。
(あぁ、試合が終わったら勉強もしなくちゃならねぇか。まだまだ足りねぇもんばっかだ)
そう思った流川だがフッと笑う。日々の成長を実感出来る今が、目標に着実に近付きつつある今が楽しくて仕方ないのだ。
(まぁそれよりもとりあえず……試合に勝たねぇとな)
そう気を引き締め直した流川は集中を高めていく。
その後、流川と清田は共にマッチアップ相手に手も足も出ずに一方的にやられてベンチへと下がる。
しかしベンチに下がった二人は俯くどころか両の目を爛々と輝かせながらコートをみつづけていたのだった。
これで本日の投稿は終わりです。
また来週お会いしましょう。