三井寿は諦めの悪い男   作:ネコガミ

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第143話『田岡の確信』

side:三井寿

 

 

 陵南にリードされた状態で前半が終わった。魚住がゴール下を制している影響がかなり大きいな。

 

「宮城君、準備は出来てますか?」

「はいっ!」

 

 どうやら安西先生は後半頭から安田と代えて宮城を出すようだ。安田との組み立てのギャップで流れを掴むのを期待ってところか。

 

 そこまで考えたところでチラリと赤木を見る。

 

 落ち着いている様には見えるが気が入ってないのが目に見えてわかる。まぁ、そう簡単に気持ちの立て直しは出来ねぇか。これが漫画やアニメなら赤木の覚醒の場面って感じなんだろうが、現実はそう簡単じゃねぇからな。ましてや多感な時期の学生なんだ。落ち着いてる様に見えているだけでも上出来だろう。

 

 安田と宮城を交代して始まった後半、立ち上がりは宮城の速い組み立てによる前半とのギャップで立て続けに得点を出来たが、田岡監督が早々とタイムアウトを取ったことで最小限の傷で立て直された。

 

 タイムアウト後、宮城にボールを要求して3Pを決める。2回、3回と連続で決めたことで一気に点差を縮めたが、陵南は織り込み済みだとでもいうかの如く慌てない。堅実に2点プレイで得点を重ねてくる。

 

 そして刻々と時間が過ぎていき試合終了。最後の最後、あと4点を逆転出来ずに負けた。陵南の優勝だ。

 

 負けたのは悔しいが悪くない収穫もあった。桜木が緊張感のある公式戦……その決勝戦を経験出来たこと。後は赤木が魚住との差を自覚したことだ。

 

 桜木の方は完全にチームにプラス。赤木の方は……プラスになってくれることを信じるしかねぇな。

 

 

 

 

side:田岡茂一

 

 

(やっと勝てたか)

 

 魚住がうちに来てから構想していたチームの完成形……いや、その完成形を超えたチームが出来上がった。そしてそのチームで県大会とはいえ優勝という結果を出すことが出来た。これはインターハイ予選に向けて大きな弾みになるだろう。

 

(随分と頼もしくなったもんだ)

 

 魚住の成長を信じていた。信じて、応えてくれて、俺の想像以上に成長してくれた。俺の知る限りだが高校バスケ史上最強のCになったと確信している。

 

 もちろん成長したのは魚住だけじゃない。池上も、仙道も、福田も、植草も陵南に欠かせない戦力になった。このチームを率いて全国に行けないようなら、それは確実に俺のせいだ。そう断言出来る。

 

「さぁ、帰ったらミーティングだ。優勝したとはいえ反省すべき点はあるからな」

「「「はいっ!」」」

 

 皆に油断はない。そうだ、それでいい。湘北は試合の序盤で流川を使うなどをしてきた。それに赤木の途中交代。彼が復調していたら結果が変わっていてもおかしくはない。それほどに湘北との試合では重要なキーマンになり得る選手だからな。

 

 湘北のエースは三井だ。三井は全国最高の3Pシューター。だがその三井でも全ての3Pシュートを決めることは出来ない。故にゴール下での攻防が非常に重要になる。

 

 もちろん赤木1人なら今の魚住には勝てん。それは今日の試合で確信した。だが桜木とのコンビなら魚住と言えど苦戦は必至だ。それを今日の試合で見ることになるかと思ったのだが……。

 

(予想以上に赤木が脆かった。いや、私の予想以上に魚住が強くなっていたんだ)

 

 赤木が交代した後、角田と桜木のコンビで魚住と競い合ったが、その2人を相手に魚住は十分以上のパフォーマンスを発揮した。試合中だというのに思わず顔が緩んでしまった。

 

(まったく……ミーティングの時には顔が緩まぬ様に気を付けねばな)




これで本日の投稿は終わりです。

また来週お会いしましょう。
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