三井寿は諦めの悪い男   作:ネコガミ

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第146話『残る必要な1ピース』

side:三井寿

 

 

 陵南との練習試合の1試合目が終わった。結果はうちが勝って収穫もあったが、より多くの収穫を得たのは陵南かもしれねぇな。

 

 その陵南の収穫の中でも光ってたのが1年の相田彦一……だったか?確かそんな名前だ。あいつは安田と同じ駆け引きで勝負するタイプなんだが安田の様な勝負勘等の感覚タイプじゃなく、おそらくはデータを重視して確率で勝負する今の時代(※1)では珍しいタイプだ。

 

 安田の様な感覚タイプは個人のセンスやその日の調子に左右されやすいが嵌った時には試合の流れを一気に引き寄せることが出来たりする。

 

 対して相田の様なデータ重視タイプは安定性は高いが意外性に欠けやすい。だがそれとは別にデータ重視タイプには大きなメリットがある。それは……プレーの一つ一つに根拠があるので修正がしやすいことだ。

 

 例えばパスを出したとする。そのパスの理由はと安田が問われた場合、安田は何となくや流れでといった感じに曖昧な答えが返ってくることが多いだろう。

 

 対して相田はその日のプレーの成功率等を根拠として提示することが出来る。だからこそ一つ一つのプレーの安定感が高いし、一つ一つのプレーの修正が早くなる。

 

 とはいえ今の相田は高校バスケでやるには色々と足りないものが多い。だが将来の期待性という点では陵南の1年の中で一番だろうな。

 

 さて、1試合目後のミーティングを終えて2試合目だ。2試合目は両チームともにベストメンバーでの試合だ。うちはCに赤木、PF桜木、PG安田、SG木暮、SF俺だ。倉石は木暮か桜木との交代要員としてしっかりと身体を温めている。

 

 陵南はCに魚住、F仙道、PF福田、G池上、PG植草の見慣れたメンバー。見慣れているからこそチームとしての連携力は高い。先の春の県大会の借りを返しておきたいとこでもあるし、始めから飛ばしていきたいところだな。

 

 ジャンプボールは魚住が制して陵南ボールから試合開始。……今の赤木の状態を考えるとジャンプボールは桜木に任せてもよかったかもな。まぁ始まっちまった以上は仕方ねぇ。切り換えて集中だ。

 

 植草から仙道にボールが回る。マッチアップしてる俺に仙道は仕掛けてこずじっくりと時間を使う。……春の県大会で優勝したからか、仙道だけじゃなく陵南の連中全員にどこか貫禄がありやがるな。

 

「一本、止めるぞ!」

「「「おう!」」」

 

 俺の発破に安田、木暮、桜木の声が聞こえたが赤木の声は聞こえなかった。そこまでの余裕が無い……か?

 

 仙道は仕掛けてこずに植草にボールを戻す。ボールを持った植草は直ぐに中にパスを出す。ボールは福田へ。

 

 ボールを持った福田がゴールを狙うが桜木が張り付いて前を向かせない。するとヘルプに来た池上に福田がボールを渡し更にボールは魚住へ。

 

 そしてボールを持った魚住が間髪いれずにベビーフックを決める。赤木もブロックに跳んだが余裕をもって決められた。

 

 ……連携がスムーズだ。流れるように。セットプレーじゃなかったろうにセットプレーの様に滑らかだった。

 

「うちは強いでしょ、三井さん?」

「あぁ、強いな」

 

 だからこそやりがいがある。そう感じているのは俺だけじゃないぜ?

 

 木暮も、安田も、桜木もそう感じている。もちろん今はコートの外にいる倉石もだ。残るは赤木だけだが……。

 

 チラリと目を向けると試合開始直後だが何度も深呼吸をしている赤木がいる。

 

 視野狭窄に陥っちゃいねぇみてぇだが……魚住の醸すプレッシャーで上手く動けない。あるいは嫌なイメージが浮かんで萎縮しちまってるって感じか。

 

 ……頼むぜ赤木。うちのゴール下にはお前が必要なんだ。早く復活してくれよ。




※1:拙作中の時代は1990年頃でござる。

これで本日の投稿は終わりです。

また来週お会いしましょう。
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